つづきです。
『ミセス・ハリス パリへ行く』
ネタバレ含みますので ご注意ください。
前回はミセス・ハリスの変化を
色的に緑と赤で深読みしましたが
劇中では並行して
社会問題の変化も描かれていました。
その社会問題を表す色が青で
象徴していたのは労働者です。
ミセス・ハリスが家政婦として
働いている時の服が青い花柄のブラウスと
同じく青い花柄のエプロンだったり
パリではもっとわかりやすく
ストライキ中の労働者たちの多くが
青系のシャツを着て
青い帽子をかぶっていました。
クリスチャン・ディオールで働くお針子たちも
ブラウスが青っぽかったり
襟元に青のラインが入っていたりね。
彼女をパリで最初に手助けする老人男性は
青い服は着ていないけれど
青の壁の前にあるベンチに座っていて
これはかつて労働者だった人
を表しているんじゃないかな。
他にも
(ここは青が強調されているな)
とわかるシーンがあるのだけれど
青の場面はたいてい
労働者に良からぬことが起きていた!
ミセス・ハリスは青い壁の家で
お給料を踏み倒され続けていたし。
パリの道端にズラッと駐車しているのが
ほぼ青系の車だったのだけど
その辺りは労働者の居住地だろうし
働けない状況が見て取れるし
市政の不正でストライキが起き
街中いたる所に放置されたゴミ山にも
青が散見され そこに
労働者たちの理不尽さや怒りを感じました。
青はこんな風に
上の奴らが自分たちをいいように使い
不正に利益を得て
自分たちは一向に報われない!
そんな
労働者たちの
痛切な心情を表す色
でもあると感じたのです。
ミセス・ハリスがそうだったように
労働者もまた 社会的に
見えない
気づかれない
目立たない
何者でもない
Invisible
透明人間
なのですね。
でも そうした青に なぜか
黄色が垣間見えるシーンが何度もありました。
そして 青と黄色が合わさると
その後 出来事の意味が一転!
青の場面で不幸な出来事があっても
黄色が見えると
少し時間が経ってから
その出来事は幸福へと転換するのです。
例えば
彼女がドックレースで大金を賭け
大負けして
一気にお金を失った犬のゼッケンが青
だったけれど
隣のレーンが黄色で
その後 友人の助けにより
元の大金+ちょっと増えて戻ってきた
とか。
クリスチャン・ディオール社で
お針子さんたちの解雇騒ぎがあったけれど
経営方針の変更によって 解雇はなくなり
むしろ好待遇が見込まれるようになった
とか。
この時
従業員たちのブラウスや襟元が
青と黄色 なのね。
他にも
(ここ わざわざ映してるよね)
と感じる青と黄色もありました。
この場面とか。
そして
ストライキしていた労働者たちは闘いを経て
とうとう勝利を勝ち取ります!
そんな青と黄色を見ていて
思い浮かんだのがこのカード。
災い転じて福となす
不幸中の幸い
塞翁が馬
と説明することが多いカートです。
映画ではミセス・ハリスをはじめ
労働者たちが
一見不幸な出来事をキッカケに
一心に 一丸となって動くことで
社会が 世界が 時代が
変化へと向かう
一大ムーブメントになりました。
見えない
気づかれない
目立たない
何者でもない
という意味で
自ら自虐的に使っていた
Invisible
透明人間
という言葉を彼女は最後に
They don’t even know what we do
縁の下の力持ち
と言い換えます。
「わたしたちのような
誰かの後ろや下で働く者が
みんながめちゃくちゃにしたものを
片付けて 素敵にするのよ
みんな 私たちを頼りにしてる
私たちがいなくちゃ
ハチャメチャよ」
と。
この言葉は彼女が家政婦の自分に
確かな誇りを持った証拠。
そして 同時に
すべての労働者を尊敬し尊重する言葉。
特に この映画では
仕事を持つ女性や家族のために尽くす女性に
焦点が当てられているので
働く女性への賛歌 でもあるのでしょう。
見えない
気づかれない
目立たない
何者でもない
そんな透明人間のような存在ではなく
これも劇中のセリフにあった
Angel 天使
Hero 勇士
なんだって。
青い壁のおじいさんは
最初から ミセス・ハリスに
「君は高貴な女性だ
労働者こそ王だ」
と言っていたしね。
社会を 時代を 世界を
よりよく回してくれているのは
1人1人の誇り高き労働者なのですね。
つづく






