知床で起きた遊覧船の事故が連日報道されております。
ただ、あの報道を観ながら私が思うのは、冷たい水の中でお客さんたちはどんな状態に陥ったのか。
その事がとても心配でした。
というのも、私は2015年のエクステラ(オフロードトライアスロン)に出場した際、レース中に低体温症に陥り救急搬送されました。
当時の私は水温15℃の湖の中をウエットスーツを着用して泳いでおりましたので、水温5℃の海に放り込まれた人とは比較にはなりません。
しかも私の場合は、たまたま居合わせた医師の適切な処置のおかげで軽度の低体温症で済みましたが、あの時のことを思い出すと今でも背筋が凍る思いです。
そもそも低体温とは体温が35℃以下になることで、水温20℃以下では要注意、水温10℃以下では1時間で致命傷になるそうです。
軽度では唇にチアノーゼ(紫色)が出て、手足の力が抜けたり激しく震えたたりします。中度では手足の震えが止まり、意識の混濁が起こります。重度では意識がなくなり、呼吸が極端に少なくなります。
低体温症は水の中でのみ起きる訳ではなく、汗をかいたまま風にさらされるだけでもなり得るので、釣りや登山でも低体温症の可能性は十分に考えられます。
トライアスロン大会は水温が12℃未満の時は、原則として水泳部門を中止とします。
北海道では真夏でも水温が20℃以下の場所が多いので、ほぼ全選手がウエットスーツを着用して泳ぎます。
私もトライアスロン大会には何度か出場しており、20℃前後の水温で泳ぐことが多かったのですが、その大会の水温は15℃でした。
泳ぐ距離は600m×2周でしたので、さほど心配もせず水泳はスタートしました。
1週目の途中ですでに足は吊っていましたが、周回までは何とか泳ぎ切ったという感じで、応援の人達に笑顔を見せる余裕もありました。
しかし、2周目に入ると左足と左手が上手く動かなくなり、気が付くと周りの選手とは遠く離れて違う方向に泳いでいることが何度かありましたが、その時はとにかく必死で泳ぎました。
やっと足が付くところまで来ましたが左足の感覚が弱く、ちゃんと立てずに何度も左側に倒れてしまい、更には左腕の力も無くなっていたので立とうとすることさえ出来なくなり、気が付くと大会関係者の方に体を支えられていました。
陸に上がると更に寒さが増し手足の震えは尋常ではなく、自分の意思に反して15㎝幅で大きく横揺れして勝手に動いていました。
意識はハッキリしていたつもりでしたが、体の自由が利かないことに気が付くと急激に怖くなりました。
その後はその場に居合わせた医師の指示で、濡れているものを脱いで乾いた服に着替え、タオルや毛布などで体を温めてもらいました。
そして、関係者の車両で消防署まで運んでもらい救急車に運ばれましたが、その頃には体も温まり手足の感覚が戻りしっかり歩けるようになりました。
本来は病院で診察を受けなくてはならないようでしたが、救急病院まではかなりの距離があることもあり、そのまま大会会場に戻り帰宅することが出来ました。
私は水温15℃の中で、ウエットスーツを着て20分くらい泳いだ時点で片方の手足の自由が利かなくなりました。
これが、水温5℃の中で普段着のまま海水に飲み込まれたことを考えると、本当に言葉がありません。
一日も早く行方不明の方々が見つかることを祈ります。