今日も暑いですね。
書ける気力が残っているうちに、前回の続きを書いてしまいます。
”耳鳴り”については、症状が出始めた2年ほど前からいろいろ調べていました。聴神経腫瘍の手術前は、聴力がいくらか残ればそれなりに対処法がありそうでした。
しかし、手術の直前に執刀医の先生から言い渡されたのは、聴力残存確率は3〜4割程度。
実際の手術の中では音を伝える神経である”蝸牛神経”は”解剖学的には温存”、つまり物理的には切断されなかったものの、信号測定の結果では神経の機能は失われました。
蝸牛神経は非常に繊細で、手術操作のちょっとした刺激によっても機能しなくなることが知られているそうです。
そして、”片耳”に...。
前回ご紹介した、済生会病院の新田清一先生が、最近の耳鳴診療について書かれているものを見つけました。
先生が、「耳鳴りは治らない」というのが、耳鼻咽喉科医の常識だった時代から研究を続けられて、現在の治療に至るまでが簡潔にまとめれらています。
”耳鳴りは耳鼻咽喉科医の中ではできれば避けて通りたい症状”で、研究テーマにするなんてとんでもない、という状況の中でナゼか縁あってこの分野の道に進まれたそうです(笑)
ほとんどの患者が耳鳴りという症状に不安を持っていましたが、医師から「耳鳴りの原因はよく分からない、治療法はない」という説明をされて、その不安が悪化していたのです。
それで先生は、たとえ推定であっても納得できる説明であれば患者の不安は軽減するのではないかと考えました。
そんな中でその糸口となる文献に出会います。
アメリカの耳鼻咽喉科系雑誌に掲載されたJastreboff博士という方の”耳鳴の神経生理学的モデル”を用いて耳鳴のメカニズムを説明した論文です。
(以下がその要点)
・耳鳴には中枢の聴覚路と非聴覚路(大脳辺縁系、自律神経)が関わっている。難聴(蝸牛障害)は耳鳴のきっかけであり、発生の本態は中枢にある。
・耳鳴治療として行うべきことは耳鳴を慣らすことである。その目的は、耳鳴を聞こうとすれば聞こえるが普段は気にならない状態にすること、さらに耳鳴を聞いても苦痛を感じない状態にすることである。
・耳鳴を慣らすために必要な治療法は、指示的カウンセリングと音響療法である。
この文献により、
・耳鳴りを説明できるモデルがあること。
・耳鳴の治療の目的は耳鳴を治す(消失させる)ことではなく、慣らすこと。
ということが分かった先生は、耳鳴りのメカニズムをこの”耳鳴の神経生理学的モデル”を使って患者さんに説明することになります。
今まで原因不明でよく分からない、といわれていた耳鳴のメカニズムを説明されたということで、納得して帰られる患者も少しずつ増えてきたそうです。
(参考)
↑↑↑『難聴・耳鳴りの9割はよくなる』
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