第1211回「伊福部昭の芸術シリーズ:Disc 16〜SF特撮映画音楽の夕べ〜」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日ご紹介していくのは定期的に取り上げてきた「伊福部昭の芸術」シリーズ最後を飾るDisc 16〜SF特撮映画音楽の夕べ〜をみていきます。曲目はSF交響ファンタジー第1番、第2番、第3番、オーケストラのためのロンド・イン・ブーレスクの4曲で、演奏は汐澤安彦&東京交響楽団によるものです。


〜伊福部昭の芸術シリーズ:Disc 16〜SF特撮映画音楽の夕べ〜


「汐澤安彦指揮/東京交響楽団」

伊福部昭作曲:
SF交響ファンタジー第1番

SF交響ファンタジー第2番

SF交響ファンタジー第3番

オーケストラのためのロンド・イン・ブーレスク



 1983年8月5日に日比谷公会堂にてライヴ録音された演奏会である。同時に今回演奏されている「SF交響ファンタジー」3曲とオーケストラのだのロンド・イン・ブーレスクは全て初演となっている。1986年にはCDが発売され、その後レコードでも発売されたがその際は2枚組で発売された。すでにCDが発売されていたため当盤に関しては初CD化でないにしても中々手に入れづらく、めったに聴くこともできないと同時に、今回以降頻繁に演奏される曲である「SF交響ファンタジー」の最初の演奏はクラシックファンよりも特撮ファンにとって非常に嬉しい代物なのではないだろうか?


 伊福部昭:SF交響ファンタジー第1番、1983年8月5日ライヴ録音

・・・今回の「伊福部昭の芸術」シリーズで何種類も録音が残され他のCDでも頻繁に演奏されているが、今回の録音が初演であるため同じ特撮でよく使われているある言葉を借りるならば「原点にして頂点」という言葉がぴたりと当てはまるだろう。演奏として汐澤さん独自のアプローチがされているのか、後に演奏されているようなアプローチとは違うやや固めなサウンドが出来上がっている。また、金管楽器の音色はどこか不安定だが、昭和時代の特撮映画の劇中に流れる音楽と音色が近いものとなっているため、これはこれでベストな再現となっている。後に演奏されているSF交響ファンタジーは映画音楽の再現というよりもクラシック音楽としての姿を印象付けるため、一特撮ファンとしては今回の初演の演奏が一番聴いていて楽しいと思える。


 SF交響ファンタジー第2番、1983年8月5日ライヴ録音

・・・第1番から難易度も上がり、演奏されている曲も有名な映画とマニアックな映画半々といった形に近いようにも思える。その中でも打楽器と金管楽器のサウンドに関しては映画本編で聴いているかのようなものに近い形で演奏されていることもあって聴いているだけで白熱する場面が多い。特に最後に演奏される「フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラ」より自衛隊マーチは東響が一体感を持って演奏されていることもあって、一つの狙いへと集中して演奏されている追い込みなども感じることができる。


 SF交響ファンタジー第3番、1983年8月5日ライヴ録音

・・・「SF交響ファンタジー」シリーズの最後を飾るにふさわしい難曲となっている。各楽器に等しく高い難易度を要求していることもあるため、頻繁に演奏される第1番と違ってそれほど演奏される回数は少ない印象を受ける。というのも選曲された映画音楽も有名な「キングコング対ゴジラ」以外はマニアックなものが多いということもあるのかもしれない。しかし、「海底軍艦」よりマーチから「地球防衛軍」よりマーチへと曲が移り変わった瞬間のカッコ良さと言ったら鳥肌が立つくらいの気持ちである。特に今回演奏している東響のサウンドに関しては音楽にもぴたりと当てはまる音をしていることもあって、若干の荒さは残るもののキレ味やダイナミクスに関しては素晴らしいエネルギーを放つ名演となっている。


 オーケストラのためのロンド・イン・ブーレスク、1983年8月5日ライヴ録音

・・・原曲が吹奏楽曲として知られている曲だが、この演奏会のために管弦楽編曲され今回演奏されている。演奏として和太鼓の存在感は中々のもので、オーケストラが若干圧倒されているような仕上がりとなっている。和太鼓の張りのある歯切れ良い音は非常にカッコいい。また、この曲において重要な軸と言ってもいいトランペットが不安定な音色となっているので、それが少々気になるところではあるのだが元々の吹奏楽曲とはまた違う世界観と弦楽器による深みのある音色と響きに聴いていて非常に心地良い思いをすることができる。


 長きに渡った「伊福部昭の芸術」シリーズも本日で終わりを迎える。購入するにあたり、確かに値段は他のBOXと比較しても明らかに高い値段ではある。しかし、それを払ってまで得る内容は非常に大きかったと言うのが全16枚のCDを聴き終えた感想と言ってもいいかもしれない。重要なものは値段ではないということだ。SHM-CDになったことによる高音質盤で伊福部先生の作品を楽しむならばこのBOXはぜひオススメしたいと思う。


https://tower.jp/item/3905788/伊福部昭の芸術-20周年記念BOX<初回限定盤>