1997年6&8月録音。後の伊福部作品を彩る形となった2曲が収録されている今回、協奏風交響曲、協奏風狂詩曲は基本演奏される回数は少ないものの、聴いてみると驚かされる箇所が多々ある。上記2曲を聴いた後にいくつかの伊福部作品を聴いてみるとなお面白いと言えるだろう。
伊福部昭:ピアノと管弦楽のための協奏風交響曲
・・・1941年に作曲されその後戦争により楽譜が消失したが、パート譜が見つかったことにより再演奏が可能となった。楽譜が消失したことによりこの曲の断片を後の作品である「シンフォニア・タプカーラ」や「ピアノと管弦楽のためのリトミカ・オスティナータ」などで使用されている。協奏風交響曲というため交響曲というよりも実質的なピアノ協奏曲ではある。「急→緩→急」というシンプルな構成ながら前衛的な部分が多い。演奏ではピアノとオーケストラの対話はもちろんのこと、全体的にやや固めのはっきりとしたメリハリのあるサウンド、タッチと統一感を持って演奏されている。ダイナミック・レンジの幅広さもあるため残響もうまく味方につけている。トーンクラスターなども演奏されているわけだが、それが不快に聴こえるというよりは非常に美しく聴こえるのだからこれがまた面白い。
伊福部昭:ヴァイオリンと管弦楽のための協奏風狂詩曲
・・・以前取り上げた「伊福部昭の純音楽」にも収録されていたこの曲。注目すべき点としては「ゴジラ」のテーマの原曲ということである。その部分は第1楽章でみられる。今回ヴァイオリンを演奏している徳永二男さんは「伊福部昭の純音楽」に収録されていた同曲でもヴァイオリン独奏を演奏している。今回の演奏でもその生々しいくらいのリアリティ溢れるヴァイオリンを味わうことができる。幻想的で前衛的な音色と響きをまといながら演奏されている今回の協奏風狂詩曲、ヴァイオリンの技巧も味わいつつ「ゴジラ」のテーマ含めて後の「東宝特撮映画」の音楽の元となったこの曲を存分に味わえる素晴らしい録音となっている。やや荒さが演奏にはあるかもしれないが、それがなお良いと聴いていて感じている。
「伊福部昭の芸術」シリーズに収録されている協奏曲作品は全曲ではないものの、よりコアで貴重な曲が録音されていると言えるだろう。特に今回の「協奏風交響曲」と「協奏風狂詩曲」の2曲に関しては頻繁に演奏されるような定番曲ではない。今後少しずつ演奏されれば良いと思うのだが、「伊福部先生の作品でこんな曲もあるのか。」と言ったような参考になればまた一つ新しい扉が開けるのかもしれない。聴けば聴くほど新たな魅力を知ることができる素晴らしいBOXだ。
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