バーンスタインによる第二回の交響曲全集の一つとして知られているコンセルトヘボウ管との「巨人」。これまで定期的に復刻されるケースは度々あったのだが、今回取り上げるUHQCD盤が現時点で手に入れられる一番高音質盤となっている。当ブログでも第二回の交響曲全集に関しては何曲か取り上げてきたが、第一回の交響曲全集と比べて同じ部分もあれば多少アプローチが違っている点もいくつかある。それを見つけることができるというのも楽しめる部分と言えるだろう。
マーラー:交響曲第1番「巨人」第1楽章
・・・ニューヨーク・フィルと録音した際の勢いと感情に任せたような熱量多めの演奏から21年経った1987年に録音されたコンセルトヘボウ管との「巨人」。やや重心が低めながらダイナミック・レンジの幅広さが増した豪快な演奏となっている。テンポの緩急が非常にわかりやすく変化がつけられており、それぞれの面でベストな音色、響きを明確に作り込まれている。UHQCD盤のためややサウンドは固めなのだが、壮大な巨人の姿を想像することができるような始まりである第1楽章となっている。
第2楽章
・・・推進力というよりは安定感が重視された第2楽章で、ここでも同様にやや低めの重心によって演奏されている。特にこの楽章ではチェロやコントラバスが全体の流れを作っているような面があるので、それも無理はないのかもしれない。中間部に入る前や終結部に向かう際にやや速くなったとしても第一回ほどの追い込みはない。そのかわり中間部の優雅さやコンセルトヘボウ管によるキャッチーで平和な牧歌的なサウンドと響きは今回の演奏の方が非常に良いと私は聴いていて感じた。
第3楽章
・・・ベースとなるテンポの重心が第1楽章、第2楽章から特に変わることなくやや低めの重めにアプローチされていることもあって重々しい音色と空気感が第3楽章でぴたりと当てはまっている。第3楽章ではテンポチェンジが細かいのだが、今回の演奏ではそれがより一層効果的なものとなっていることを実感することができる。個々の楽器における特徴的な音色はもちろんのこと、キャッチーな演奏を楽しむことができるので十二分に楽しめる。
第4楽章
・・・やや重めの重心低めで、それでいて溜めもしっかりと行われているのでぐんぐん進んでいく演奏ではないものの、テンポの緩急も明確に細かいスパンで頻繁につけられている。コンセルトヘボウ管全体のサウンドにも統一感があり、特に金管楽器なのだが聴き手を圧倒するような分厚めの音圧が素晴らしいと思える頂点が何回もあるのでその時の衝撃が非常に良い。終盤でホルン(トランペットとトロンボーン含む)が全体を圧倒する時の破壊力と言ったら言葉を失うくらいだ。この第4楽章が一番UHQCD仕様の効果を受けた演奏と言えるだろう。
やはりバーンスタインによるマーラーはいつ聴いても白熱する良さを持ち合わせている。第二回の交響曲全集に関しては勢いに満ちた部分に加えて落ち着きも兼ね備えられているため、その際の緩急が聴いていて非常に面白い。第二回の交響曲全集でまだ取り上げていないマーラーの交響曲も残りわずかとなってきたが、また定期的にマーラーが聴きたくなった時に取り上げたいと思える名盤であることに間違いはない。あとはSACDハイブリッド仕様で復刻してくれることを願いたい。
https://tower.jp/item/4728927/マーラー:交響曲第1番≪巨人≫<初回限定盤>
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