1955年6月録音。当盤をレビューを見てみると賛否両論の嵐を巻き起こしている。今回の演奏に関しては1955年当時のモノラル音源を使用し、コンピュータ・ソフト「ゼンフ」で解析し、グールドのタッチやダイナミクス、ペダルの踏み込み加減など細かくデータ化されている。演奏に使用されたのはヤマハ製ディスクラヴィア/9フィート・フルコンサート・グランドの自動演奏ピアノ。録音は当時録音されたコロンビア30丁目スタジオではなく、トロントのCBCスタジオにて行われた。
バッハ:ゴルトベルク変奏曲
・・・1955年のモノラル音源を使用しての自動演奏ピアノによる録音で、2006年9月25,26日に行われた。当盤では何種類かの「ゴルトベルク」が楽しめるようになっている。種類は以下の通り。
1. Zenph Studio Re-Performance ステレオ・ヴァージョン
2. Zenph Studio Re-Performance バイノーラル・ステレオ・ヴァージョン
3. Zenph Studio Re-Performance SACD ステレオ・ヴァージョン
4. Zenph Studio Re-Performance SACD サラウンド(5.1ch)・ヴァージョン
を楽しむことができる。3,4に関してはSACDプレイヤーでのみ再生可能なため、大抵の場合は1,2のみとなるかもしれないが、より高音質で最新テクノロジーを使用した素晴らしい「ゴルトベルク」を楽しむことができると言えるだろう。SACDハイブリッド仕様ということもあってダイナミック・レンジの幅広さが明確になっており、全体的に輪郭もはっきりとしてより聴きやすくなった印象を受ける。それぞれのヴァージョンを聴いてみて、同じ音源を使用した録音ではあるもののグールドによる「ゴルトベルク」をこの形で聴くことができたのは非常に嬉しく思える。グールド絡みのSACDハイブリッド盤はまだいくつも試聴できていないものがあるので、それらをまた聴こうと前向きな気持ちにさせてくれた演奏だった。
今回私は1,2のヴァージョンしか聴くことはできていないが、今の技術をフル活用してより良い演奏を再構築するというのは非常に面白い試みだと考えている。レビューを見てみると賛否両論の嵐となっているが、実際私自身大学では今回の内容に近いものを学んでいたということもあって当盤の解説などを読みながら聴いていたところ非常に懐かしい気持ちでいっぱいになった。ガーシュインのピアノロールなどのデータを聴いたりしていた時期が懐かしい。当盤が発売されたのは2007年だが、それ以降同様の試みというものは行われていないように思える。これは私の情報収集不足かもしれない。賛否両論があったとしてもこれは今後も続けていってほしいところだ。
https://tower.jp/item/2198878/グレン・グールド-バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1955年)の再創造-ZENPH-RE-PERFORMANCE