第1181回「伊福部昭の芸術シリーズ:Disc 8,9《頌》」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんにちは😃本日も定期的に取り上げている「伊福部昭の芸術」シリーズをみていきます。今回は《頌》特別編 卒寿を祝うバースデイ・コンサート完全ライヴが収録されたDisc 8,9です。2枚組みとなりより一層聴きごたえが増した素晴らしいライヴを楽しんでいきましょう。


〜伊福部昭の芸術シリーズ:Disc 8,9《頌》卒寿を祝うバースデイ・コンサート完全ライヴ〜


「本名徹次指揮/日本フィルハーモニー交響楽団」

伊福部昭作曲:
フィリピンに贈る祝典序曲

日本狂詩曲

SF交響ファンタジー第1番

交響頌偈「釈迦」

シンフォニア・タプカーラより第3楽章



 2004年5月31日サントリーホールにてライヴ録音された今回の《頌》、他のDiscにも収録されている曲がいくつか見受けられるが、ライヴであるということとSHM-CDの高音質盤が功を奏している。また、どの曲も非常に難易度が高いのに対して絶妙なバランスを持って演奏しているのはまさにさすがと言えるだろう。1930,40,50,80年代の代表的な作品を辿っていくというコンセプトのもと聴いていて各曲の個性がより楽しめる名演揃いとなっている。


 伊福部昭:フィリピンに贈る祝典序曲

・・・6《亜》にも収録されていたこの曲。今回の演奏では響きにゆとりがあるのか残響がやや多めとなっており音の処理に若干の余韻を感じる仕様となっているようにも思える。これに関しては悪いことではない。元々の構成が緩急のあるダイナミックなものとなっていることもあって攻撃的なサウンドではなくなったこともあり、さらに聴きやすくなったような印象を受ける。特に各楽器の音色には奥深いエネルギーを感じることができるようになっている。幻想的で美しい弦楽器や木管楽器にも注目するのも面白いと思う。


 日本狂詩曲

・・・1《譚》にも収録されていた伊福部先生の初期管弦楽作品の一つである。「緩→急」というシンプルで親しみやすい形のため、比較的演奏される回数も多い。ライヴ録音であるためダイナミック・レンジの幅広さにはゆとりがあり、奥深い残響や日フィルのまとまりあるサウンドが功を奏している。第2曲「祭」もそれほどテンポが速いわけではないが、全体の統一された空気感が圧倒的なものとなっており安定感のあるバランスの良さを演奏から通して聴くことができる。そしてなんといっても終結部の追い込みに関しては聴いていて圧倒されるエネルギーの強さを感じることができるだろう。


 SF交響ファンタジー第1番

・・・4《宙》にも収録されていた日本が誇る特撮映画である「ゴジラ」シリーズなどの映画音楽が多数盛り込まれたメドレーである。今回の「伊福部昭の芸術」で頻繁に登場する曲でもあるので今後毎回とまではいかないかもしれないが、繰り返し他のDiscにも収録されている。今回オーケストラは日フィルと同じだが、4《宙》の時は広上さんによる指揮だったが今回指揮者は本名さんとなっている。演奏はやや重心が低く設定されており、固めというよりも伸びやかで幅広く取られている。テンポの緩急も変化が細かくなっており、ラストの「怪獣総進撃」あたりはわりかし速めなアプローチが行われている。弦楽器が主にそうだが低音がやや強めとなっている印象が強いかもしれない。


 交響頌偈「釈迦」

・・・第1楽章「カピラバスツの悉達多」、第2楽章「ブダガヤの降魔」、第3楽章「頌偈」の3楽章からなる作品となっており、釈迦の生涯がテーマとされている。神秘的かつ幻想的な世界観は聴いているだけですぐに理解することができるというか、「ゴジラ」シリーズなどの特撮映画音楽に使われていたモチーフがいくつも垣間見ることができるようになっている。各楽器が一番良い音色かつサウンド、響きで演奏されているため聴いているだけで重厚感のある物語が展開されている。目を閉じるだけでその世界観を知ることができると言っても過言ではない。第2楽章からは合唱が加わるので若干混沌とした雰囲気にもなるかもしれないが、聴いていてうちに秘めたる白熱する何かを感じるだろう。合唱の歌声もバランス良くとられているので聴きづらいといったことはない。最後はオーケストラと合唱が融合した凄まじい音響となっているので、大きな衝撃を持ってして聴き終えることができる。


 シンフォニア・タプカーラより第3楽章

・・・2《響》でも収録されていた「シンフォニア・タプカーラ」、今回はアンコールのため第3楽章だけが収録されている。攻撃的ではないものの、エネルギッシュでいて危機迫る躍動感を聴くことができる。終結部での追い込みはやや暴走気味にも聴こえるかもしれないが、ライヴであるという点も含めてこれくらいの熱量を持ってした方がアンコールとしても終楽章としてもきっちりと締まるだろう。オーケストラ全体のダイナミクスやアーティキレーションも統一されており、個々が飛び抜けて聴こえるというような瞬間はそれほどない。元から難易度はそれなりに高い曲のため、それをここまでの完成度で演奏しているのは本当にさすがだと聴いていて感じている。


 「伊福部昭の芸術」では貴重なライヴ録音が収録されている。個々での発売もされていたものもあればBOXで初登場するものもあるのでいずれにしても目が離せない代物であることは言うまでもないだろう。今後も定期的にこの「伊福部昭の芸術」シリーズは取り上げていくのだが、今後どのような名演を聴くことができるのか本当に楽しみで仕方ない。


https://tower.jp/item/3905788/伊福部昭の芸術-20周年記念BOX<初回限定盤>