私自身ショスタコーヴィチ作品はほとんど交響曲や管弦楽作品しか聴くことがないに等しい。弦楽四重奏曲全集も購入してはいるのだが、まだ聴くことができていないのでそれも近いうちに聴きたいと思う。そして今回はショスタコーヴィチのピアノ曲を取り上げていくわけだが、演奏しているイゴール・レヴィットはベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集を残している。そんなレヴィットによるショスタコーヴィチとショスタコーヴィチに関係する曲である「DSCHによるパッサカリア」を演奏する。
ショスタコーヴィチ:24の前奏曲とフーガ
・・・当初は練習曲として様々な前奏曲とフーガを作曲してきたが、1950年にバッハ没後200年を記念して行われた第1回国際バッハ・コンクールの審査員として参加したこととそのコンクールで優勝した旧ソ連のピアニストであるタチアナ・ニコラーエワに深く感銘を受けたことにより、バッハの代表作である「平均律クラヴィーア曲集」にならい、全ての調性を作曲した。全曲初演はもちろんニコラーエワが演奏している。今回は2枚のDiscに分かれており、演奏時間は約145分となっている。今回私が聴いたのは国内盤のBlu-specCD2で、ダイナミック・レンジの幅広さがよくとられた高音質盤だ。このくらいの演奏時間の長いピアノ曲はバッハの「平均律クラヴィーア曲集」くらいしかあまり聴いたことがないため、それなりの集中力が必要ではあったが、各曲一曲一曲非常に個性的で聴きやすい印象を受けた。普段聴き慣れたショスタコーヴィチの交響曲とはまた違う姿には驚かされつつも、十二分に楽しむことができた。ダイナミクスやタッチなど全てが絶妙なものとなっていてその世界観に「スッ」と入り込むことができたのはレヴィットの力もあるし、「SONY Classical」の高音質盤であるBlu-spec CD2の影響が強いと思う。
スティーヴンソン:DSCHによるパッサカリア
・・・曲名にある「DSCH」といえばショスタコーヴィチがバッハの「BACH」主題に倣い表現した「DSCH」音型(動機)が該当する。こちらはショスタコーヴィチの作品である交響曲第10番やヴァイオリン協奏曲第1番などで使用されている。今回の「DSCHによるパッサカリア」はその「DSCH」音型をオマージュして作品に取り入れた約1時間30分の演奏時間を要する変奏曲である。Blu-spec CD2であることによるダイナミック・レンジの幅広さが功を奏しており、ピアノ曲の中でも大音響の演奏となっている。
さて今回はイゴール・レヴィットによる「オン・DSCH」をみてきたが、はじめて聴く2曲ではあったもののそれなりに楽しむことができた素晴らしい演奏だったことは間違いない。ショスタコーヴィチの交響曲や管弦楽作品以外の曲を聴いたのはほとんど記憶にない中で、3枚のDiscにわたってショスタコーヴィチの魅力を余すことなく楽しめたのではないか?と私は考えている。この流れで他の作曲家によるピアノ曲を聴くのはもちろん、ショスタコーヴィチの他作品も聴きたいと思うことができた。まず近いうちに弦楽四重奏曲全集を聴きたいと思う。
https://tower.jp/item/5219223/オン・DSCH