今回朝比奈先生最後のブラームスを取り上げたのは、単純に私がここ最近ブラームスの交響曲をあまり聴いていなかったような気がしたため、ブラームスの交響曲全集を聴こうとした時にまだ聴いていない全集の中でも朝比奈によるもので複数種類があったためということが大きな理由である。
ブラームス:交響曲第1番、2000年9月11日ライヴ録音
・・・私が想像していた以上に遅くなく、柔軟性のある重厚的なブラームスだと聴きはじめた時には感じた。後味は意外にもスッキリしており、しつこさがない。音色はやや明るめで、まとまりもある。聴く前の時点で、ベートーヴェンの交響曲のような重めでスケール及び存在感のある演奏をイメージしていたが実際の演奏はテンポの緩急も抜群に良い。そしてなにより機動力や推進力に満ち溢れているのでどんどん聴くことができる。また、ダイナミック・レンジの幅広さも「fontec」ということで通常CD盤ながら高音質となっている。
交響曲第2番、2000年10月4日ライヴ録音
・・・第1番よりもより一層自由度が増したことによる柔軟性が功を奏しており、「暗→明」という親しみやすい交響曲がさらに聴きやすくなった印象を受ける。重厚的でまとまりのある弦楽器群によるどっしりとした安定感のある土台が構築されていることもあって、安心しながら金管楽器や木管楽器は濃厚で美しい音色を奏でている。ブラームスの交響曲の中でも特に美しさが極まっている曲なだけあってライヴ録音ということも重なって群を抜いた美しい響きが展開されている。
交響曲第3番、2001年2月26日ライヴ録音
・・・細かいテンポチェンジや溜めがあるというわけでもないため、気づいた頃には第4楽章となっていた。オーケストラ全体の音色や響き、ダイナミクスなどのバランスも非常に良く、各楽器が目立つ際にはたっぷりと歌い上げている。透明度の高い美しい音色を奏でる木管楽器と弦楽器が今回の第3番では軸となっており、金管楽器は推進力やエネルギーを加えるための後押しの役目を持っていると聴いていて感じた。サントリーホールで演奏されていることもあり、豊かで奥深い響きはこの第3番含めてブラームスの交響曲と相性が良いことを実感した。
交響曲第4番、2001年3月19日ライヴ録音
・・・曲全体の音色としては濃厚かつまろやかな印象で、非常に聴きやすい美しいサウンドとなっている。特に木管楽器と弦楽器が非常に良い音で奏でていることもあるのだろう。今回の全集の中でも一番テンポの緩急が明確なものとなっており、ダイナミクスやアーティキレーションがわかりやすくなっている。音形は強すぎることが基本なく優しすぎるようにも感じられるが、この第4番を演奏する上では絶妙なバランスで一番ベストに思える。
昨年2021年にタワーレコードで再販されたことにより手に入れやすくなった朝比奈隆の名演たち。それは今回のブラームスだけでなく、「ニーベルングの指環」もそうだがこれだけにはとどまらない。後日また朝比奈先生の名盤たちを取り上げられればと考えている。その時はベートーヴェンやブルックナーか、それか「ニーベルングの指環」か、まだ先のことなのでわからないが聴きたいという欲が生まれたことは言うまでもない。久しぶりに聴いたブラームスは心を動かされる演奏だった。
https://tower.jp/item/1106935/ブラームス:-交響曲全集-(2000-2001年ライヴ)<タワーレコード限定>
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