2003年録音。さて、今回Disc 6に収録されている上記3曲に関しては私自身はじめて聴く曲ばかりとなっている。「交響的エグログ」に関しては別の演奏者によってCD化されているが、その他の2曲はあまり見ないかもしれない。いずれにしてもそういった曲も含めて新しい発見と共に楽しむことができるのがこの「伊福部昭の芸術」シリーズであると私は考えているので、基本的に退屈なことはない。
伊福部昭:バレエ音楽「日本の太鼓」ジャコモコ・ジャンコ
・・・伊福部先生によるバレエ音楽といえば「サロメ」の方が有名となっているかもしれない。今回の演奏としてはオーケストラ演奏でもあるのだが、あくまでメインとしては「日本の太鼓」である。
1.プレリュード〜八ツの鹿(ししの踊り)
2.女鹿かくしの踊り
3.二ツの鹿の踊り
4.八ツの鹿の踊り
からの4曲からなる作品で、一部メロディーに関しては「東宝特撮映画」でも聴き覚えのあるものが聴こえたりする。テンポは全体的に重めとなっている。そのためか、太鼓や弦楽器の重厚的で一音一音が非常にずっしりとした重量感を聴いていて体感することができるようになっている。伝統的な音楽がもとになっていることもあるのだが、木管楽器や弦楽器の音色や響きが太鼓及び作品の世界観にぴたりと当てはまるサウンドとなっているので、非常に聴きやすいと言えるだろう。SHM-CD仕様の高音質盤となっていることもあってダイナミック・レンジいっぱいに聴こえる大音響の太鼓の音はインパクトに満ち溢れている。
二十絃筝とオーケストラのための「交響的エグログ」
・・・様々な協奏曲(協奏風含む)を作曲してきた伊福部先生が筝とオーケストラのために作曲した作品であるこの曲。初演は今回筝を演奏している野坂惠子と小林研一郎指揮東京交響楽団で行われた。単一楽章であり基本一定のテンポで進行していくのだが、その幻想的でこれまで聴いてきたことがないような西洋と東洋の融合的な作品を約30分間楽しむことができるようになっている。テンポの緩急はそれほどないものの、曲全体の世界観は非常にまとまっているものがある。そして終盤に入ると若干テンポが早まり曲も終わりへと向かっていく(26:00あたり)。野坂さんが演奏する筝と日フィルの音色や音型、響きなど全てがぴたりと当てはまるようになっており、全体的に統一感のある素晴らしい演奏となっている。ダイナミック・レンジが幅広い分筝の音も聴きやすくなっている。
フィリピンに贈る祝祭序曲
・・・1944年に初演されるも戦争で楽譜が焼失してしまい長いこと表に出てこなかった作品の一つである。2002年に発見され今回録音されている。この曲の終盤では「宇宙大戦争」戦争シーンで演奏されるメロディのもとが存在している他に、様々な伊福部作品と関連性の強い部分が見え隠れしている。今回の演奏では特徴的なリズムはもちろんのこと、テンポの緩急に合わせダイナミクス変化及び演奏運びが明確に付けられているため、聴いているだけで非常にワクワクする演奏となっている。
「伊福部昭の芸術」シリーズからDisc 6《亜》をみてきた。この曲集もはやいもので、当盤でほぼ折り返しとなる。とはいえまだまだ今後も素晴らしい名曲の名演を聴くことができるので、非常に楽しみである。次回のDisc 7では「ゴジラVSキングギドラ」や「わんぱく王子の大蛇退治」が収録されている。今後も目が離せないこのシリーズを少しずつ楽しんでいきたい。
https://tower.jp/item/3905788/伊福部昭の芸術-20周年記念BOX<初回限定盤>