「伊福部昭の芸術」シリーズも当盤含めて残り5枚というところまできた。伊福部先生の主要な作品も含みつつ、貴重なライヴ録音を高音質盤で聴くことができるのはファンにとっては嬉しいはず。値段が大分高めではあるものの、1枚1枚の存在感は素晴らしい仕上がりとなっている。今回こうして取り上げていて気になった曲、録音が非常に多く毎回楽しみながら聴くことができている。
伊福部昭:音詩「寒帯林」、2014年5月6日録音
・・・1944年に満州国からの委嘱によって作曲され1945年に「ヤマカズ」こと山田一雄と新京交響楽団によって初演された。手稿譜を中国当局が管理したことによって長らく演奏されることもなかったが、伊福部先生の遺品から発見され2010年に蘇演されている。第1楽章「うすれ日射す林」、第2楽章「杣の歌」、第3楽章「山神酒祭楽」
からなる。第3楽章ではお馴染みの「ゴジラ」の主題が登場している。演奏として、後の伊福部作品に類似する箇所もありつつ、神秘的かつ重厚的な美しい音色と豊かな響きを東響は奏でている。各楽章ごとに緩急も失われることなく演奏もされているので、聴きやすさもある素晴らしい名演となっている。
日本狂詩曲(原典版)、2014年5月30,31日ライヴ録音
・・・伊福部先生の初期管弦楽曲の中でも代表的な作品の一つである。原典版との記載があったため削除された第1楽章にあたる「じょんがら舞曲」を加えたものかと思ったがそうではないようだ。第1楽章には「夜想曲」、第2楽章「祭」が置かれている。演奏としては第1楽章、第2楽章ともに重心が低く、重めのテンポで演奏が進行している。そのため普段よりも演奏時間はほんの少しばかり長くなっている。しかし、重心が低いことによって安定感が生まれ札響全体のサウンドには統一された音色と響きを聴くことができる。同時に大変多くの楽器が使われる打楽器の打撃も素晴らしい存在感を放っている。2014年ライヴという点とSHM-CDという点が功を奏しているのか、一音一音の重みがあるダイナミックな演奏に仕上がっている。
土俗的三連画、2014年5月30,31日ライヴ録音
・・・1《譚》初期管弦楽に収録されていた以来の録音である。1《譚》では広上さんと日フィルによる演奏だったが、今回は高関さんと札響による2014年ライヴだ。金管楽器に若干の荒さが音色に残るものの、それが野生的な躍動感とエネルギーを生み出していて非常に聴きやすい。打楽器との絡みや高音質盤となったこときより細部までしっかりと聴き込むことができるようになったのは非常に大きいと思われる。
伊福部先生の貴重な初期作品を今回聴くことができて今はただ満足感に浸っている。あと何回かでこの「伊福部昭の芸術」シリーズは無事聴き終えることとなるが、今後も伊福部作品は繰り返し聴きたいと思えるような凄みを知ることができた。残り収録されている貴重なライヴ録音はまた後日定期的に取り上げていきたい。
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