第1192回「ルガーノのフルトヴェングラー、1954年ライヴがSACDハイブリッド盤で登場」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

こちらはクラシック音楽のCDの名盤をレビューするブログです!
年間500枚以上クラシック音楽のCDを購入します。
好きな作曲家はマーラー、ストラヴィンスキー、ブルックナー、三善晃、ショスタコーヴィチなど
吹奏楽を中心にトランペット演奏の他、作曲なども行います。



 みなさんこんにちは😃本日はここ最近聴いていなかったフルトヴェングラーをみていきます。内容は3月18日に「King International」から発売された「ルガーノのフルトヴェングラー」です。1954年5月15日ライヴとなっている晩年のフルトヴェングラーによる貴重な録音で、世界初出LPのマスターテープから完全復刻というのが売りのようです。今回はSACDハイブリッド盤と同時に日本フルトヴェングラー協会盤を入手することができたので、そちらにも収録されている同曲録音と音質等も含めて比較しつつみていきたいと思います。


〜ルガーノのフルトヴェングラー〜


「ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」

ベートーヴェン作曲:
交響曲第6番 ヘ長調作品68「田園」

リヒャルト・シュトラウス作曲:
交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」


「イヴォンヌ・ルフェビュール(ピアノ)、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」

モーツァルト作曲:
ピアノ協奏曲第20番 ニ長調K.466



 SACDハイブリッド盤を購入するタイミングと同時に日本フルトヴェングラー協会盤を入手することができたのは非常に大きいと思われる。今回比較に使用したのは「WFJ-63/64」のCD2枚で、収録されているのは以下の通り


[Disc 1]WFJ-63

1.リヒャルト・シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」

2〜6.ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」


[Disc 2]WFJ-64

1〜3.モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番

4.歌劇「フィガロの結婚」序曲

5.歌劇「後宮からの逃走」序曲

6〜9.夜曲「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」

10.歌劇「後宮からの逃走」序曲

11.夜曲「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」よりアレグロ


 赤字が今回「ルガーノのフルトヴェングラー」にも収録されている1954年5月15日ライヴである。その他に収録されているのは「モーツァルト序曲集」で、4,5,10は1933年、6,9,11は1936年12月28日、7,8は1937年に収録されたSP録音による「モーツァルト序曲集」を楽しむことができる。



 ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」、1954年5月15日ライヴ録音

・・・フルトヴェングラーによる「田園」は複数の録音が残されている。その中でもSACDやSACDハイブリッド盤などの高音質フォーマットとなっているものはそれほど多いわけではない。そういう意味では今回の「ルガーノのフルトヴェングラー」は非常に貴重な代物と言えるだろう。演奏として重厚的でやや重めのテンポながら楽章が進んでいくごとにテンポの緩急が明確につけられている。今回のSACDハイブリッド盤はノイズが抑えられており、伸びやかなベルリン・フィルの弦楽器の音色と豊かな響きを味わうことができるようになっている。パワー不足に感じられるかもしれないのと若干固めでぼやけているようにも聴こえなくはないかもしれないが、この「田園」にとっては非常にベストな演奏であると私は聴いていて考えた。日本フルトヴェングラー協会盤は、若干のノイズがあるものの演奏の妨げになるほどではなく、聴きやすさの残った形と言えるだろう。SACDハイブリッド盤は多少の抑えられた印象があるものの、こちらはダイナミックでよりライヴの臨場感が味わえる仕様となっている。一つ気になるところとして、SACDハイブリッド盤は曲が終わる際不自然な切り方になっている。それに対して日本フルトヴェングラー協会盤は演奏に食い込む形とまではいかないが、同じような切り方が入っている。テープの劣化か録音状態によるものと考えられるが、SACDハイブリッド盤では演奏に食い込む形となっていることで若干不自然な終わり方となってしまっているので注意したい。


 モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番、

・・・今回の聴きどころは有名な第2楽章ではなく、私個人としては第3楽章が特に素晴らしいと感じた。「緩→急」、「急→緩」という細かい変化が非常に素晴らしい演奏となっている。第3楽章ではイヴォンヌ・ルフェビュールによる軽快かつ華麗なピアノのタッチと重さを感じることのない重厚的なベルリン・フィルのサウンドが非常に功を奏していると感じた。また、SACDハイブリッド盤と日本フルトヴェングラー協会盤を聴き比べている。それぞれをみていくと、SACDハイブリッド盤はダイナミック・レンジの幅広さはそれほどなく、マスタリングによってノイズを抑えすぎたのかややこもり気味に聴こえるかもしれない。しかし、イヴォンヌ・ルフェビュールのピアノやベルリン・フィルの各楽器の音色を美しく聴くことができるようになっているのは素晴らしい。対して日本フルトヴェングラー協会盤はノイズが抑えられていない分ノイズが多少あるものの、他のフルトヴェングラーによる録音と比べてもそれほど多いようには感じない。SACDハイブリッド盤はこもり気味だったが、日本フルトヴェングラー協会盤は輪郭がわかりやすく、ダイナミックで緩急がより明確なものとなっていて聴きやすさがある。若干ピッチに揺らぎがある点が少々気になるところかもしれない。


 リヒャルト・シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」、1954年5月15日ライヴ録音

・・・フルトヴェングラーは「ティル」を何種類か演奏、録音している。今回の「ティル」は初CD化ということをCD紹介文では記載しているが、日本フルトヴェングラー協会盤や「AIS」から発売されたUHQCD盤、IDIS盤などですでに発売されている。その中でもAIS盤は一番手に入れやすい代物と言えるかもしれない。ただ私は今回試聴するにあたってAIS盤は所有していないので、今回のSACDハイブリッド盤と日本フルトヴェングラー協会盤を一緒にみていきたいと思う。SACDハイブリッド盤は、多少のノイズが抑えられているものの、演奏の後ろで「ゴーッ」という音が冒頭特に聴こえるのでそれが気になるかもしれない。残響はほとんどなく、ベルリン・フィルの演奏を集中して聴くことができるマスタリングと言えるだろう。ノイズを抑えたことによって多少ばかりダイナミック・レンジの幅が狭くなっているのが少々残念な点である。日本フルトヴェングラー協会盤はややノイズがあり少々音形がわかりにくい部分もあるものの、ベルリン・フィル全体のまとまり具合や重厚的で美しい音色とスケールを味わうことができるようになっている。先ほどのモーツァルトほどとまではいかなかったようだが、ライヴの臨場感を味わえるのは日本フルトヴェングラー協会盤かもしれない。


 今回は久しぶりにフルトヴェングラーを取り上げるということで、3月18日に発売された「ルガーノのフルトヴェングラー」をみてきた。「King International」からは5月18日に「ローマのフルトヴェングラー」が同じくSACDハイブリッド盤で発売されている。こちらに関しても購入し次第試聴し取り上げられればと思う。今回フルトヴェングラーの録音を久しぶりに聴いたが原点回帰といおうか、十二分に楽しむことができる代物だったことは間違いない。後日「AIS」から発売されているUHQCD盤を見かけることがあればそれを購入して今回のSACDハイブリッド盤とも聴き比べてみたいと思う。


https://tower.jp/item/5332929/ルガーノのフルトヴェングラー<限定盤>