第1201回「伊福部昭の芸術シリーズ:Disc 14《壮》」 | クラシック名盤ヒストリア@毎日投稿中!!

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 みなさんこんばんは🌆本日も定期的に取り上げている「伊福部昭の芸術」シリーズをみていきます。昨日に武満徹管弦楽曲集を取り上げたばかりですが、それがあったためか非常に今回のDiscは聴きやすかった印象が強いと言えるでしょう。今回はDisc 14に収録されている。《壮》第4回伊福部昭音楽祭ライヴをみていきます。演奏は和田薫&東京フィルハーモニー交響楽団で、曲目としては「日本狂詩曲(校訂版)」、「シンフォニア・タプカーラ」、「SF交響ファンタジー第1番」の3曲が収録されています。元々個々で発売されたシリーズとしてはこの《壮》が最後となっていて、残り2枚はBOXにのみ収録されているボーナスCDとなっています。それらはまた後日として、今回はDisc 14《壮》をみていきます。


〜伊福部昭の芸術シリーズ:Disc 14《壮》第4回伊福部昭音楽祭ライヴ〜


「和田薫指揮/東京フィルハーモニー交響楽団」

伊福部昭作曲:
日本狂詩曲(改訂版)

シンフォニア・タプカーラ

SF交響ファンタジー第1番



 2014年7月13日に東京オペラシティコンサートホールにて行われた「第4回伊福部昭音楽祭 生誕百周年記念〜ゴジラ生誕60周年とともに〜」。第一部にて「日本狂詩曲」、「シンフォニア・タプカーラ」を演奏し、第二部では「ゴジラ」1954年のデジタルリマスター版全編上映に合わせて全音楽を生演奏で行うというまさに夢のような空間が行われた。残念ながら今回のBOXには第二部での演奏は収録されていない。しかし、和田さんは後に日本センチュリー交響楽団とライヴ・シネマ形式でセッション録音を行なっている。こちらはまた後日取り上げられればと思う。


 伊福部昭:日本狂詩曲、2014年7月13日ライヴ録音

・・・1935年に作曲され、翌年1936年にファビアン・セヴィツキー&ボストンピープルズ交響楽団によって世界初演された。作曲当初は3楽章形式だったが最終的には第1楽章「夜想曲」、第2楽章「祭」の全2楽章になった。また、今回演奏されているのは改訂版でありその初演というのも記載がある。構成としてはシンプルな「緩→急」の形がとられており、注目すべきなのは打楽器の多さもそうだがエネルギーを常に感じることができるリズムだろう。これは後の伊福部作品にも精通する点があると思う。演奏は緩急がわかりやすく付けられており、弦楽器は非常に柔軟性のある音を聴かせてくれる。それにプラスして多数ある打楽器の存在感には独特な雰囲気を醸し出している。


 シンフォニア・タプカーラ、2014年7月13日ライヴ録音

・・・1980年に芥川也寸志&新交響楽団による演奏で改訂版を初演したCDを持っているが、今回の演奏はそれを思い出させる場面がいくつかあったかもしれない。3楽章からなる交響曲で、題名の「タプカーラ」はアイヌ語で「立って踊る」という意味を持つ。編成も3管で、一部の曲のように打楽器が多用されているわけでもない。「急→緩」、「緩→急」がより明確化されている演奏で、特に第1楽章の冒頭や第2楽章は今回の「伊福部昭の芸術」シリーズに収録されている演奏の中でも一番テンポが遅く重いのではないか?と私は考えている。その分加速した第1楽章や第3楽章がより効果的に描かれる仕様が出来上がっているので変化に差が付きやすく聴きやすい構成が出来上がっている。和田さん自身作曲家であるということもあり細部まで細かく突き詰めているのが演奏からよくわかる。また、全体的なサウンドも上手くまとまりがあり、別の演奏では暴走しかけているものもあったが今回の東フィルによる演奏はダイナミック・レンジの幅広さも功を奏し、ダイナミクスや音形などコンパクトな面もあるがベストなポジションに収まっている印象が強い。


 SF交響ファンタジー第1番、2014年7月13日ライヴ録音

・・・さて、今回のSF交響ファンタジー第1番はいつもと違い「ショート・ヴァージョン」との記載がある。今回の演奏でカットされているのは「キングコング対ゴジラ」タイトル・テーマ、「宇宙大戦争」夜曲で、他にも一部分やリピートしていない曲がいくつかある。そのため私のように繰り返し「ノーカット・ヴァージョン」を聴いている側からすると違和感を感じてしまう。しかし、アンコールで演奏されているため全曲版だと少々長いということを考慮してのことかと思われる。演奏としてテンポはやや遅めとなっている。その分「間奏曲」での重量感はまさにゴジラが動き出す瞬間のような圧倒的な存在感を感じさせる。また、打楽器の打撃は申し分ないのだが、金管楽器などの勢いやスタミナがもう一声いってほしいと感じた。といってもアンコールで一番最後に演奏する曲としては割と重いので仕方ないと思う。


 今回実質的な最後の「伊福部昭の芸術」シリーズをみてきた。ここまでに取り上げてきた計14枚のDiscはどれも貴重な録音だった。しかし、この後に残されている2枚のDiscもそれに引けを取らないくらいの素晴らしさを誇る貴重な録音となっている。それらはまた定期的に取り上げるが、この「伊福部昭の芸術」シリーズは値段が高いからと避けてはもったいないと1枚1枚聴いていて感じる。