伊福部昭生誕100年記念として高関さんと札響の第569回定期演奏会で演奏された記録である。「踏」に収録されているヴァイオリン協奏曲第2番と「シンフォニア・タプカーラ」と一緒に一つ前のDisc 12《凛》に収録されている「日本狂詩曲」と「土俗的三連画」もこの演奏会で演奏された。
伊福部昭:ヴァイオリン協奏曲第2番、2014年5月30,31日ライヴ録音
・・・単一楽章によるヴァイオリン協奏曲だ。ちょうど最近この曲の世界初演CDが発売されたばかりではあるが、「ヴァイオリンとオーケストラのための協奏風狂詩曲」ともまた間違う独特な曲と言えるだろう。一種の古典芸能を聴いているような趣もありながらどこか不気味さを感じた。ヴァイオリンの生々しい音色と響きにはライヴ録音だからこそなせる独特な世界観となっている。札響の音色や響き、音形もヴァイオリンに合わせる形で幻想的ながら個性的なものとなっているので一度だけでなく何度でも聴きたくなるような演奏が展開されている。
シンフォニア・タプカーラ、2014年5月30,31日ライヴ録音
・・・今回高関さんと札響によって演奏されている「シンフォニア・タプカーラ」はここまでで聴いてきた「伊福部昭の芸術」シリーズで収録されてきた同曲録音と比べても一番きっちりかっちりとしていたオーケストラ全体の音形が明確化された演奏だったと思う。そういう意味では「緩→急」や「急→緩」の際変化の差がわかりやすくなっていて、バランスも非常に良い形となっている。音色やサウンドも攻撃的なものではないため、耳が疲れるような場面は基本的にない。豊かで奥深いサウンドとなっているので聴いている感覚としてはブラームスやブルックナーのような深みと重み、渋さがある非常に面白い演奏となっている。テンポ設定も全楽章として安定感のあるドライブとなっているので危険な場面は基本的にはなく安心して最初から最後まで聴き終えることができる。
今回の《踏》に収録されていた「シンフォニア・タプカーラ」は個人的に一番好きな録音となった気がする。これまで何種類かの録音を聴いてきたが、ほぼほぼ攻撃的なものが多かった。もちろんその方がかっこいいということはわかるが、今回のような交響曲としての豊かな響きが重視されているようにも感じることができた。今後もこの曲の録音は一つでも多く聴いていくつもりだ。そしてもう少しで「伊福部昭の芸術」シリーズがもう少しで終わりを迎える。全てのDiscを聴き終えた時また新しい伊福部先生の良さを知ることができるだろう。
https://tower.jp/item/3905788/伊福部昭の芸術-20周年記念BOX<初回限定盤>