ドイツ、ベルリン発の検索エンジン『ECOSIA』(エコシア)、それなりに使える。
画像検索が弱いという指摘もあるけれど、10年ほどまえのGoogleよりはマシだろう。
このECOSIAは、広告収入の80%をアフリカ、南アメリカ、ポリネシアなどの植林に遣っている。上の画像の「55,743,254」は、これまでの検索によって植えられた木の本数。1回の検索で、0.5セントの収入になり、40-50回の検索で1本の木になるそうだ。「いいね!」を押しておこう。
そうした、自分の検索行為で発生した収入が植林に使われること以外に、ECOSIAでは次のようなポリシーで運営されている。
「より良いインターネットへ向けての取り組み」として、左から、「(財務会計の)完全な透明性」、「CO2排出量ゼロを超えて」、「プライバシー尊重」をあげている。それぞれ現代の、きわめて重い課題で、その課題に対してオルタナティブな -- その重みに気づかずにいるか、仕方ないと諦め流され、見て見ぬ振りをするか、あるいはそうした課題すら利権化のネタにしてみずからの強欲のなかに取り込むか、とういうような状況に対する-- 選択肢をもたらしているようにみえる。
ECOSIAは、会社のカネの流れをオープンにして、消費者の「行為」から生み出された価値が、どのように使われるかを「見える化」する。その利益を内部留保して企業価値の増大を目論む方向ではなく、利益を放出して森林の回復という価値に転換する。サーバーを動かす電力は、100%再生可能エネルギーを使う。そして、おそらく「人間性」と「人間の可能性」に対する最大の挑戦である、個人情報によるプロファイリング(これには”ホモ・エコノミクス”としてクリーンな人間を求めるスコアリングや、中共がやっているような危険思想分子の排除のような活動も含まれる -- あ、蛇足だけど「キャッシュレス化」も気をつけた方がいい)を否定し、人の多様性や可能性を留保する方向に沿っている。これは少し前、英国で起きた「自分の人生を演出する権利」運動や、欧州で2018に施行されたGDPR(General Data Protection Regulation -- 『EU一般データ保護規則』)の根底的な思想と戦略にも連なる。
GDPRは対米対中の貿易保護・安全保障戦略の側面も強く、生臭く胡散臭い面もないわけではないが、個人情報利用で圧倒的な力を持つ企業と個人の権利とのバランスを取る必要性があるのは明らかだし、個人情報のEU域外への流出規制も、欧州人のデータは欧州人のもので、それは日本人でも同じで、もはや国家レベルで守るべきものという認識は妥当だろう。
最近、GAFA叩きが始まっているけれど、スマホによる位置情報、画像(顔、指紋)や音声、オンラインでの閲覧行動、買い物とカード利用履歴…、こうしたものがすべてサーバーに蓄積され、おそらく個人は、ある側面で国よりも正確に、詳細に企業に捕捉されている。そうしたGAFAの脅威は、5年以上前から指摘されていたが、取り合われることはあまりなかった。
「消費者の購買行動は、投票行為である」という認識がある。差異消費によってみずからの「リア充」やら社会的地位の権勢を誇示する、DQNな物欲的価値の充実に邁進するパリピーな人々がいる一方で、着実に、強欲企業での消費を最低限に抑え、ECOSIAのようなポリシーを持った企業を選択する消費者も、世界規模で増えているように見える。
「金融経済のように、お金を使う権利の移動ではなく、生活が豊かになる意味での実体経済が飽和した。生活が豊かになるのは、自然からの収奪以外にありえない。エネルギーや食糧を考えればわかる。お金に目を奪われると、それが見えなくなる。お金は単に使う権利だから、それ自体は何も生み出さない。一〇〇億円あっても、食物がなければ飢え死にする。でもお金のために、畑や作物を貧相にしていくことは、グローバルに行われてきた。そのやり方もボチボチ煮詰まった。
まだ、やろうとしている人たちがいることは知っている。でも自然は必ず報復する。それを自然災害と呼んでいるが、地震はともかく、気候変動では人為が疑われている。」(養老孟司「半分生きて、半分死んでいる」PHP新書 186,187頁)<まるいしさんのブログから拝借>
ECOSIAのビジネスモデルは、「ふるさと納税」のようなもので、ECOSIAを使った分が森林になるのは、検索行為で自然に対して納税するようなものかな。
しばらくECOSIAを使って見守ってみようと思う(ともあれ、GDPRやECOSIAのような取り組みは「左派」の手柄のように言われている。ポピュリズム的右派の成果でないのは明らかだが、レガシーな政治勢力の左右で見るのははちょっと違うと思っている。やっぱりオルタナだな。くまは自然保護志向の保守かw)。
Clara HIll, "Nowhere(I Can Go)", 2006
ドイツのエレクトロニカ/ハウス系シンガー、クララ・ヒル。ヨーロッパにありがちな無機質で直線的な近代建築をイメージさせるサウンドに、蠱惑的な彼女のボイスが乗ると気持ちい。
Good Luck
半分生きて、半分死んでいる (PHP新書)
929円
Amazon |