ある時期心に刺さったミュージシャンが亡くなるたびに、自分の一部が失われる感覚は、やっぱりある。
ニュー・オーリンズには、あの人造国家アメリカの、フランス系が多い土地柄にもかかわらず(オーリンズは、オルレアンだって)、なにか、ヨーロッパ系でもなくアフリカ系でもない、不思議と南北、そしてカリブを含めたアメリカ大陸を通じての歴史的土着性を感じる独特のサウンドがある。クレオール系とも、なにか違うんだよね。
Dr. John(Malcom John Rbennack Jr. 1941-2019)はそのニュー・オーリンズ・サウンドの伝道師の一人だった。
そして、ジャズもファンクもブルースもロックも、どんなジャンルの音楽を演っても、「いなたい」って言葉が、「カッコイイ」という意味で使われる代表格だった。
若い頃は将来を嘱望されるギタリストだったにも関わらず、酒場の喧嘩で友人をかばって左手を撃たれて鍵盤(ピアノ、オルガン)に転向。鍵盤の習得と作曲活動で十数年を経て再デビュー。苦労の多い人でもあった。
Dr. John, "In A Sentimental Mood", 1990
'90年代に夜、J-Waveを聞いていれば、「ああ、これね」と思うだろうね。Dr. Johnは結構、知らず知らず多くの人の耳に届いている。TVCMにも使われてたかも知れない。この田舎臭いユーモラスな気取りっぷりに味わいを感じるかどうかが、聴き手を良くも悪くも選別するかも。
Dr. John, "Moon River", 2006
スタンダードを2曲、続けてみた。あのおセンチな名曲が、なんだかね。ちゃんとブルースになる。
Dr. John, "Iko Iko", Live at Montreux 1995
ニュー・オーリンズ・サウンドの代表。カーペンターズの”ジャンバラヤ”と似てるでしょ。もともとルーツは同じだから。天国があれば、そこでも彼はこれを歌ってくれとせがまれるだろうね。
R.I.P Dr. John
Good Luck