「すごす」は「過ごす」か「過す」か?(プロの翻訳者がバイブルとしている用字用語集もご紹介)
送り仮名ですが
たまに分からなくなったり
迷ったりすることがあります
先日別の記事でも話しましたが…
翻訳の仕事をしていると
常に締め切りに追われていたり
じっくり考えている余裕がなかったり
度忘れしてしまったり
ゲシュタルト崩壊してしまったり…
そして
何よりも
自分の曖昧な記憶でミスをしてしまわないように
すぐに調べる癖がついています
ということで
今日も1つ
先日迷った言葉について
記事にします
それが
「すごす」
を漢字にしたときの送り仮名です
予測変換では
「過ごす」と「過す」の
両方出てきます
でも
調べてみたところ
「過ごす」
が正しいようです
UnsplashのCaleb Jonesが撮影した写真
パソコンの予測変換機能は
だいたいは正しい候補を先に出してくれるので
普段はそれに従っていればいいのです
しかし
日々、予測変換をヘビーに使っているからか
たまに
順番が狂っていたり
文字を見過ぎていて
とつぜん
「????」
と自信がなくなったりしてしまうことが
よくあります
ということもあり
迷ったら
秒で調べることにしています
今はインターネットで簡単に調べることができます
ただ
注意したいのは
インターネットの情報も
常に正しいとは限らない
ということです
インターネットの情報は当てにならない
ということを
言うつもりはありません
しかし
素人みたいな人が
ちょっと調べて記事にして
解説している場合も
多くあります
(この、私みたいに!ww)
その人たちも
もちろん
しっかりと根拠を踏まえて
しっかりと調べて上で記事にしていることでしょう
しかし
私もよくやりますが
調べ方が甘かったり
たとえば〇〇大学の先生だから正しいだろうと高を括ったり
あるいは
時代によって変化していたりして
適切ではない情報があることも
多々あります
そういうことを踏まえて
(私のように)プロの仕事として情報を取る場合は
その情報が正しいかどうかの
根拠を持つこともとても大事になります
いわゆる
「説明責任」です
そういう意味で
情報を得るときに大事になるのが
その情報の「出典」です
送り仮名など
とくに言語に関する情報は
100%正しい情報というものは
ないかもしれません
たとえば
スペイン語の場合
という王立の機関が
言語の標準を定めているので
これが100%正しい
と言ってもいいわけです
仮に「違う」という人がいても
「王立機関で言ってるのでこれでいいのです」
と言えます
日本語の場合は
ここまで「権威」のある言語機関はありません
ですので
もっと民主的な方法で
言語の根拠を示さなければなりません
NHKはスペインの王立機関ほどの権威はありません
(言語に関してであっても)
それゆえに
日本語の場合は根拠を見つけるのが大変なのですが
とは言え
ある程度の人が説明を聞いても
納得できるような出典が必要になります
そういう意味では
NHKと言えば納得してくれる人が
相対的に多いかもしれません
「過ごす」の送り仮名についても
そうです
実際
いろいろ人の説明を見ても
「過す」という送り仮名も可能であるが
読み違えを避けるために
「過ごす」とした方が望ましい
と言われているのが
一般的なようです
ですから
「過す」でいいんだ!
と、主張を頑なに通すことも
可能ではありますが
より多くの人に納得してもらえるのは
「過ごす」なのかと思います
産業翻訳という仕事をしている限りは
あえて「過す」を通す理由もなく
「過ごす」としておけばいいのかな
と、思います
「すごす」に特別な意味を持たせて
「過す」とあえてするのは
どちらかと言うと
文学的な仕事になるかと思います
ちなみに
送り仮名について
動詞以外にも
形容詞や名詞を含めて
1973年内閣告示に準拠した一般的基準
も含めて
詳しく解説しているサイトがありましたので
参考までにリンクを貼っておきます
送り仮名の付け方3つのルールを解説【間違えやすい送り仮名一覧】 | 記事ブログ (xn--3kq3hlnz13dlw7bzic.jp)
翻訳の仕事をしているときに
大事なのは
「送り仮名を正しくふること」
というのもあるのですが
それ以上に
「その送り仮名が正しいという客観的な根拠を持つこと」
が大事になります
これは
訳語の選択においても言えます
絶対的に正しい
というものがないものであれば
なおさら
このような相対的に信憑性の高い根拠を持つことが
大事になるわけです
その信憑性のバックアップとなるのが
「権威」と「数」
です
「権威」とは
その説を「誰」が主張しているのか
その主張している人自身の信憑性です
そして
その説に信憑性があるかどうかは
信憑性の高い「権威」が言っているというだけでは
不十分で
どれだけの人がそれを支持しているか
という意味での
「数」
も要件になります
要するに
「権威がある」と言われている人が
たった一人で主張しているだけでは
その説に信憑性がないということになります
独裁者ひとりで主張しててもダメ
それが支持されてはじめて
その説に「信憑性がある」と
言えるのです
送り仮名や訳語だけでなく
なにかの説の根拠を主張するときには
この2つのこと
つまり
「権威」と「数」
が揃うように
調べものをするとよいと思います
「うわ、メンドクサイ!」
と思った人もいると思いますが
プロの仕事とは
そういうことです
そして
経験・実績を積んでいけば
これは蓄積されていくものです
そういう意味で
長く仕事をしている人に
新人は勝てないわけですよね
翻訳者だけではないと思いますが
大変な道のりなわけで
これは一生続く道でもあります
10年、20年とやっていても
終わることはないのだなぁと
思い知らされる毎日ですが
10年前に比べたら
何も調べなくても根拠が言える言葉が
増えてきているのは確か
みなさんも
徐々に増えていくはずですので
日々、丁寧に調べることを忘れず
一緒にがんばっていきましょう
ちなみに
翻訳の仕事では
クライアント(発注者)によって
このような言葉のルールが
細やかに定められていることも
多くあります
送り仮名の送り方も
ちがったりします
そんなときは
いくら「根拠」のある用法をしたとしても
クライアントのルールに従うのが原則です
そのルールは
言葉の用法だけでなく
文体や選択する言葉の雰囲気など
幅ひろく決められていることが多いです
スタイルガイド
Style Guide
と呼ばれるものです
最近では
スタイルガイドをきちんと定めて
プロジェクトが進められることが多いと思います
特に大きなプロジェクトになると
なおさらです
私の場合
そのスタイルガイドのほかに
翻訳をするときの「バイブル」のようにして
常に参照しているものがあります
それは
「最新 用字用語ブック | 時事通信社」
です
アマゾンの購入履歴を見たら
購入日が2008/6/23になっていたので
もはや「最新」とは
ほど遠いですがww
最新版は
こちらです
これにも
送り仮名などが
詳しく書いてあります
これは
私が初めて書籍の和訳をさせてもらったときに
編集から徹底的に叩き込まれた
用事用語集です
これをバイブルにしている翻訳者も
少なくないのではないかと思います
これは
今でも大事にしています
先ほど紹介した記事にも
こちらが紹介されていましたね
こういう基準となるものが
指定される場合もあります
そういうときは
それを基本にしつつ
翻訳をしていくことになります
こういうルールは
たまに確認することも大事です
いろいろなプロジェクトに携わっていると
他のルールに惑わされて
基本を忘れたりしていることも
多々あります
こういうルールブックは
インターネットで雲をつかむような検索をするよりも
楽だし安心感があるので
とても便利です
みなさんは
どんなルールブックをご使用ですか?
今日も最後までお読みくださり
ありがとうございました
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