第10回浜松国際ピアノコンクール 本選 第2日 および結果発表 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

第10回浜松国際ピアノコンクール 本選 第2日

 

【日時】

2018年11月24日(土) 開演 14:00

 

【会場】

アクトシティ浜松 大ホール

 

【演奏・プログラム】

1

22 今田 篤 IMADA Atsushi (日本 1990年生まれ)

P. チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 Op.23

 

2

41 イ・ヒョク LEE Hyuk (韓国 2000年生まれ)

S. ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 Op.30

 

3

10 ジャン・チャクムル Can CAKMUR (トルコ 1997年生まれ)

F. リスト:ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調 S.124

 

 

指揮:高関健

管弦楽:東京交響楽団

 

 

 

 

 

静岡県の浜松市で開催されている、第10回浜松国際ピアノコンクール(通称「浜コン」)(公式サイトはこちら)。

11月24日は、ついに本選の第2日(最終日)。

これまでネット配信を聴いてきたが(こちらのサイト)、都合がついたので本選第2日については実演を聴きに行った。

ちなみに、第10回浜コンについてのこれまでの記事はこちら。

 

第10回浜松国際ピアノコンクール 出場承認者発表

第10回浜松国際ピアノコンクール チケット販売開始

第10回浜松国際ピアノコンクールの課題曲を見て思うこと

ステファノ・アンドレアッタが第10回浜松国際ピアノコンクールへの出場を辞退

第10回浜松国際ピアノコンクール 出場順決定

第1次予選 第1日

第1次予選 第2日

第1次予選 第3日

第1次予選 第4日

第1次予選 第5日

第2次予選 第1日

第2次予選 第2日

第2次予選 第3日

第3次予選 第1日

第3次予選 第2日

第1~3次予選 最終日追記

本選 第1日

 

 

 

 

 

今田篤の、チャイコフスキー第1番。

しっかり弾けているし、部分的に特にここがいまいち、ということもない。

安定した演奏で、味わいもある。

ただ、音量・音色ともに、コンチェルトにしてはやや地味な印象。

聴き手を圧倒する、といったところはあまりない。

また、終楽章最後のクライマックスで、左右の手を交互に弾くトレモロの部分は、少し焦りすぎている感があった。

最終的にはオーケストラとずれることなく曲を終えることができたけれど、それまで落ち着きのある演奏だったのもあり、ここは少し目立ってしまった印象。

 

 

イ・ヒョクの、ラフマニノフ第3番。

彼ならではの、独特な存在感で聴かせる。

第1楽章の第2主題では美しいメロディが魅力的に歌われ、カデンツァでは分厚い和音やトレモロがエキサイティングに展開される。

ただ、濃厚なロマンティシズムというよりは、少し幼いというか、素直な感じの表現となっており、そこが彼の特徴の一つであるように思う。

15歳ですでに完全に成熟していたチョ・ソンジンとは違い、自身の「若さ」をむしろ武器にしている、と言ったらいいだろうか。

また、彼のもう一つの特徴として、「完璧さよりも勢いを求める」傾向があるように思う。

例えば、終楽章は相当速いテンポが採られ、スリリングだが、主題の属音2音連打音型はきわめて曖昧にしか聴こえてこない。

また、同楽章中の至る部分でさらに加速され、音楽が大いに盛り上がるが(再現部直前やコーダ直前など)、こうした箇所ではミスタッチが必発している。

ただ、フレージングなど大まかなところはよく整えられているため、割ときれいにごまかせており、それほど不格好には聴こえない。

これまで、多くの韓国人ピアニストたちが様々なコンクールで同曲を弾いてきたが(ルービンシュタインコンクールのPark Jaehong、クライバーンコンクールのソヌ・イェゴンなど)、みな完璧志向だった。

イ・ヒョクは、韓国でも少し珍しいタイプのピアニストなのかもしれない。

 

 

ジャン・チャクムルの、リスト第1番。

音に力があり、存在感という点では本日の3人の中で一番である。

また、彼らしい音の明瞭さも健在。

ただ、なにぶん粗削りである。

音があちこちで突出し、なだらかに聴こえないし、ミスも多い。

前半はそうでもなかったのだが、第3楽章からテンポがぐんと上がり、そのぶん完成度が犠牲になった。

曲の冒頭に出てくる両手オクターヴの跳躍音型が、第3楽章で再現される際、テンポが速すぎてあまりにガンガン力任せに奏され、音も外れるので、不謹慎ながら危うく噴き出しそうになった。

終楽章冒頭の主題が、その後ピアノ・ソロによって細やかにパラフレーズされる箇所など、同音連打は不揃い、アルペッジョはでこぼこ。

イ・ヒョクが「整ったミスタッチ」なのとは対照的である。

曲の最後、「Presto」の直前のプラルトリラー風跳躍音型など、一つ一つの音が分離せず、ひとかたまりの和音に聴こえた。

本年春の高松国際コンクールでの、古海行子による洗練された同曲演奏が懐かしくなってしまった(そのときの記事はこちら)。

と散々酷評したが、迫力や存在感は十分にあり、特にコンチェルトではこういう演奏を好む人も少なくはないと思われる。

 

 

そんなわけで、私の中で勝手に順位をつけるとすると

 

1:  50 務川 慧悟 MUKAWA Keigo (日本 1993年生まれ)

2:  79 牛田 智大 USHIDA Tomoharu (日本 1999年生まれ)

3:  41 イ・ヒョク LEE Hyuk (韓国 2000年生まれ)

4:  22 今田 篤 IMADA Atsushi (日本 1990年生まれ)

5:  90 安並 貴史 YASUNAMI Takashi (日本 1992年生まれ)

6:  10 ジャン・チャクムル Can CAKMUR (トルコ 1997年生まれ)

 

というような感じになる。

あるいは、1と2は逆でもいいかもしれず、3~6は入れ替えてもいいかもしれない。

さて、結果はどうなるか。

発表はもうすぐである。

 

 

 

 

 

―追記(2018/11/24)―

 

さて、本選の実際の結果は以下のようになった。

 

【本選結果】
1位: ジャン・チャクムル Can CAKMUR (トルコ 1997年生まれ)

2位: 牛田 智大 USHIDA Tomoharu (日本 1999年生まれ)

3位: イ・ヒョク LEE Hyuk (韓国 2000年生まれ)

4位: 今田 篤 IMADA Atsushi (日本 1990年生まれ)

5位: 務川 慧悟 MUKAWA Keigo (日本 1993年生まれ)

6位: 安並 貴史 YASUNAMI Takashi (日本 1992年生まれ)

 

日本人作品最優秀演奏賞: 梅田 智也 UMEDA Tomoya (日本 1991年生まれ)

奨励賞: アンドレイ・イリューシキン Andrei ILIUSHKIN (ロシア 1995年生まれ)

室内楽賞: ジャン・チャクムル Can CAKMUR (トルコ 1997年生まれ)

聴衆賞: 牛田 智大 USHIDA Tomoharu (日本 1999年生まれ)

 

まさか、こうなろうとは。

優勝者を酷評してしまい、恥じ入るばかりである。

こうなると、もう好みの相違としか言いようがない。

聴衆賞は、牛田智大。

私は、審査員による結果よりも聴衆賞のほうが気が合うことが多いが、今回もどちらかというとそうであった。

 

 


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