第10回浜松国際ピアノコンクール 第1次予選 第2日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

静岡県の浜松市で開催されている、第10回浜松国際ピアノコンクール(通称「浜コン」)(公式サイトはこちら)。

11月10日は、第1次予選の第2日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、第10回浜コンについてのこれまでの記事はこちら。

 

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第1次予選 第1日

 

 

1

12 チャン・ソヨン CHANG Soyeon (韓国 1991年生まれ)

 

F. ショパン:練習曲 変イ長調 Op.10-10

M. ラヴェル:「鏡」より 悲しい鳥たち

I. ストラヴィンスキー/G.アゴスティ:組曲「火の鳥」

 

ショパン、元気があるが、少しバタバタした感じがする。

ストラヴィンスキー、昨日の田母神夕南よりも少し勢いがあるが、コントロールの精度ではやや譲る印象であり、総合的には同じくらいか。

 

 

2

62 佐川 和冴 SAGAWA Kazusa (日本 1998年生まれ)

 

F. ショパン:練習曲 変ト長調 Op.10-5 「黒鍵」

C. ドビュッシー:前奏曲 第2集 より 「月の光がそそぐテラス」

J. ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲 Op.35 第2集

 

力強く余裕のある打鍵で、安心して聴ける。

ただ、全体的にもう少し速いテンポで攻めてほしい気もする。

ブラームスも、落ち着いたテンポの割には瑕もちょこちょこある。

 

 

3

79 牛田 智大 USHIDA Tomoharu (日本 1999年生まれ)

 

F. リスト:超絶技巧練習曲 第1番 「前奏曲」

S. プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ 第7番 変ロ長調 Op.83

 

丁寧な演奏であり、弾き飛ばすような箇所がない。

プロコフィエフの終楽章でさえ、品のいい歌になっている。

ただ、全体的にテンポが遅めであり、もう少しガツガツした方が好み。

 

 

4

8 ステファン・ボネフ Stefan BONEV (ブルガリア 1993年生まれ)

 

S. プロコフィエフ:風刺 Op.17

S. ラフマニノフ:絵画的練習曲 イ短調 Op.39-6

F. リスト:超絶技巧練習曲 第10番 ヘ短調

 

全体的に少し遅めのテンポによる、冷静な感じの演奏。

プロコフィエフではこうした冷静な現代音楽風の演奏もありだが、ラフマニノフやリストでは物足りない。

 

 

5

5 アンドレイ・バラネンコ Andrei BARANENKO (ロシア 1989年生まれ)

 

F. ショパン:幻想即興曲 嬰ハ短調 Op.66

P. チャイコフスキー:「四季」Op.37bis より 10月 「秋の歌」

S. ラフマニノフ:絵画的練習曲 嬰ヘ短調 Op.39-3

G. ロッシーニ/G. ギンズブルク:「セヴィリアの理髪師」より フィガロのカヴァティーナ

 

ロシア人らしい力強さを持つ。

ヴィルトゥオジティも(特にロッシーニなどで)発揮されているが、ただ意外にたどたどしいパッセージもあって、ムラがみられる。

 

 

6

32 アンナ・ホミチコ Anna KHOMICHKO (ロシア 1991年生まれ)

 

K. シマノフスキ:練習曲 変ロ短調 Op.4-3

S. ラフマニノフ:絵画的練習曲 ハ短調 Op.39-1

S. グバイドゥーリナ:シャコンヌ

 

シマノフスキ、音色にスラヴ風のしっとりした味わいがある。

グバイドゥーリナ、昨日の坂本彩の力強い演奏とはまた違った、細身の音による演奏で、こちらも良い。

ただ、ラフマニノフでは技巧的におとなしめ(雰囲気は出ているが)。

 

 

7

11 ジャン・カイミン CHANG Kai-Min (台湾 2001年生まれ)

 

F. J. ハイドン:ピアノ・ソナタ ロ短調 Hob.XVI:32

F. ショパン:バラード 第1番 ト短調 Op.23

S. ラフマニノフ:絵画的練習曲 ニ長調 Op.39-9

 

打鍵は力強く、テクニックもなかなかスムーズ。

ただ、全体的にやや四角四面な印象がある。

もう少し抒情的な味わいが欲しいところ(特にショパン)。

 

 

8

1 アン・ミヒョン AHN Mihyun (韓国 1991年生まれ)

 

F. ショパン:ロンド 変ホ長調 Op.16

A. スクリャービン:練習曲 変ニ長調 Op.42-1

A. スクリャービン:練習曲 嬰ヘ短調 Op.42-2

A. スクリャービン:練習曲 嬰ハ短調 Op.42-5

S. ラフマニノフ:絵画的練習曲 イ短調 Op.39-6

 

明瞭さを保ちながらロマン的な音楽を作っていくことができている。

テクニック的にも、水準以上となっている。

ただ、ここが持ち味、というような明確な個性には欠けるか。

 

 

9

59 パン・リンズ PAN Linzi (中国 1994年生まれ)

 

F. ショパン:練習曲 ヘ長調 Op.10-8

F. リスト:「巡礼の年 第2年 イタリア」より ダンテを読んで-ソナタ風幻想曲

 

ショパン、勢いがあって良い(もう少し安定感があるとなお良いが)。

リストのほうもなかなかの力演で、かつよくまとまっている。

ただ、ともに「こうでなければ!」というほどの説得力を持つかと言われると、そこまでではないか。

 

 

10

2 ピオトル・アレクセヴィチ Piotr ALEXEWICZ (ポーランド 2000年生まれ)

 

W. A. モーツァルト:ロンド イ短調 K.511

S. ラフマニノフ:絵画的練習曲 変ホ短調 Op.33-6

S. プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ 第3番 イ短調 Op.28

 

モーツァルト、朴訥とした味わいがある。

ラフマニノフ、よく洗練されており、テクニック的にもスムーズで見事。

プロコフィエフはいま一歩のキレを望みたいが、それでも悪くない。

 

 

11

67 篠永 紗也子 SHINONAGA Sayako (日本 1994年生まれ)

 

F. ショパン:前奏曲 嬰ハ短調 Op.45 CT190

A. スクリャービン:練習曲 嬰ハ短調 Op.42-5

A. スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第5番 Op.53

 

音が美しく、ロマン的な味わいが豊か。

特に、ショパンの前奏曲とスクリャービンの練習曲が良い。

スクリャービンのソナタも悪くないが、もう少し推進力があると良いか。

 

 

12

51 永井 希望 NAGAI Kibou (日本 2000年生まれ)

 

F. ショパン:練習曲 嬰ト短調 Op.25-6

R. ワーグナー/F. リスト:「タンホイザー」序曲

 

ここから最後までは、当日券追加販売により生で聴くことができた。

ショパンは少したどたどしい。

リストはなかなか良く、中間部の細かいパッセージが滑らかで美しい。

中間部から再現部への移行における分厚い和音の迫力も印象的。

 

 

13

49 ナイル・マヴリュドフ Nail MAVLIUDOV (ロシア 1992年生まれ)

 

S. ラフマニノフ:絵画的練習曲 変ホ短調 Op.39-5

F. リスト:スペイン狂詩曲

 

確かな技巧があり、華やかで力強い。

ただ、フォルテが硬くきつい音色になるのが難点。

また、速いパッセージもときどき曖昧なところがある。

 

 

14

63 齊藤 一也 SAITO Kazuya (日本 1990年生まれ)

 

A. スクリャービン:練習曲 変ロ短調 Op.8-11

M. ラヴェル:「夜のガスパール」より オンディーヌ

F. ショパン:ポロネーズ 第5番 嬰へ短調 Op.44

 

清澄なスクリャービンやショパンであり、彼らしい演奏。

ラヴェルのオンディーヌも端正な演奏でなかなか良いのだが、欲を言うともうひとさじの色気というか、人を惹きつける魔力のようなものが欲しい(例えば2015年浜コンの天川真奈の同曲演奏のような)。

 

 

15

73 アレクセイ・シチェフ Alexey SYCHEV (ロシア 1988年生まれ)

 

C. ドビュッシー:前奏曲 第2集 より 「花火」

F. リスト:ハンガリー狂詩曲 第12番 嬰ハ短調

F. リスト:パガニーニによる大練習曲 第3番 嬰ト短調 「ラ・カンパネラ」

 

安定した技巧を持ち、ミスは少なく、完成度は比較的高い。

ただ、強い個性やインパクトには乏しい。

また、リストでは少しもっさりしてしまっている箇所もある。

 

 

16

53 アントニウ・ナギ Antoniu NAGY (ルーマニア 2000年生まれ)

 

J. S. バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第2巻 嬰ト短調 BWV.887

C. ドビュッシー:練習曲 第11番 「組み合わされたアルペッジョのための」

F. リスト:ハンガリー狂詩曲 第12番 嬰ハ短調

 

硬質の美しい音を持つ。

バッハやドビュッシー、きりっとしてなかなか悪くない。

テクニック的もまずまずだが、リストではときに速い走句が不明瞭。

 

 

17

43 イ・セジュン LEE Sejun (韓国 1997年生まれ)

 

J. S. バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第1巻 変イ長調 BWV.862

F. ショパン:練習曲 ハ長調 Op.10-1

A. スクリャービン:練習曲 嬰ニ短調 Op.8-12 「悲愴」

J. ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲 Op.35 第2集

 

バッハは各声部に歌が乏しく味わいに欠け、ショパンやスクリャービンは元気一杯の華麗な技巧が聴けるがもう少し陰影が欲しい。

ブラームスでは、技巧的にもスムーズでない箇所が散見される。

 

 

18

35 キム・ソンヒョン KIM Song Hyeon (韓国 2002年生まれ)

 

F. メンデルスゾーン:無言歌集 第1卷より 「甘い思い出」 Op.19-1
F. メンデルスゾーン:無言歌集 第6巻より 「紡ぎ歌」 Op.67-4

F. メンデルスゾーン:厳格なる変奏曲 ニ短調 Op.54

F. リスト:パガニーニによる大練習曲 第6番 イ短調 「主題と変奏」

 

メンデルスゾーン、メロディの歌わせ方が淡白で味気ない。

リストでは優れた技巧と力強い打鍵が聴けるが、音色はやや硬め。

まだ若いし、今後化ける可能性はありそう。

 

 

19

52 永康 毅 NAGAYASU Takeshi (日本 1998年生まれ)

 

C. ドビュッシー:映像 第1集

A. スクリャービン:練習曲 嬰ハ短調 Op.42-5

F. ショパン:練習曲 ヘ長調 Op.10-8

 

ドビュッシー、色彩豊かというよりは単彩色風の印象だが、派手すぎず印象派らしいとも言え、これはこれで良いかもしれない。

スクリャービンやショパンでは、なかなかスムーズな技巧が聴かれる。

 

 

20

94 ザン・シャオルー ZANG Xiaolu (中国 1999年生まれ)

 

J. S. バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第1巻 ロ長調 BWV.868

F. ショパン:練習曲 変ニ長調 Op.25-8 

C. ドビュッシー:前奏曲 第2集 より 「月の光がそそぐテラス」

A. スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第4番 嬰ヘ長調 Op.30

 

バッハはなかなか安定した演奏だし、ショパンはきわめて流麗とは言わないにせよ、難しい六度の和音をしっかり処理できている。

そしてスクリャービンは、瞑想的な曲想と対位法的な書法とをバランス良く整理した、なかなかの名演(音はやや硬めだが)。

 

 

そんなわけで、第2日の演奏者のうち、私が第2次予選に進んでほしいと思うのは

 

2 ピオトル・アレクセヴィチ Piotr ALEXEWICZ (ポーランド 2000年生まれ)

94 ザン・シャオルー ZANG Xiaolu (中国 1999年生まれ)

 

あたりである。

次点で、

 

32 アンナ・ホミチコ Anna KHOMICHKO (ロシア 1991年生まれ)

59 パン・リンズ PAN Linzi (中国 1994年生まれ)

67 篠永 紗也子 SHINONAGA Sayako (日本 1994年生まれ)

51 永井 希望 NAGAI Kibou (日本 2000年生まれ)

63 齊藤 一也 SAITO Kazuya (日本 1990年生まれ)

73 アレクセイ・シチェフ Alexey SYCHEV (ロシア 1988年生まれ)

53 アントニウ・ナギ Antoniu NAGY (ルーマニア 2000年生まれ)

52 永康 毅 NAGAYASU Takeshi (日本 1998年生まれ)

 

あたりか。

今回(第2日)は、第1日におけるシエ・ズウェイや務川慧悟のような、特別な存在感を持つ人はいなかった気がする。

 

 


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