第10回浜松国際ピアノコンクール 第1次予選 第3日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

静岡県の浜松市で開催されている、第10回浜松国際ピアノコンクール(通称「浜コン」)(公式サイトはこちら)。

11月11日は、第1次予選の第3日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、第10回浜コンについてのこれまでの記事はこちら。

 

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第1次予選 第1日

第1次予選 第2日

 

 

1

71 ソン・ユル SUN Youl (韓国 2000年生まれ)

 

J. P. ラモー:新クラヴサン組曲 より 「エンハーモニック」
J. P. ラモー:新クラヴサン組曲 より 「エジプトの女」
F. ショパン:練習曲 変イ長調 Op.10-10

F. リスト:メフィスト・ワルツ 第1番

 

心優しいお方のご厚意で、完売だったこの日の最初の3人の演奏を生で聴くことができ、本当に心より御礼申し上げたい。

ラモー、ペダルやや多めのロマン的な解釈だが美しい。

ショパン、鮮やかで輝かしい演奏であり、見事。

リスト、躍動感と完成度とを兼ね備えた大変な名演。

かなりのハイテンポで通せており、終盤の跳躍部分も正確で、私がこれまでに実演および録音で聴いた同曲演奏の中でもベストかも。

 

 

2

58 太田 糸音 OTA Shion (日本 2000年生まれ)

 

S. プロコフィエフ:4つの練習曲 Op.2

F. リスト:ハンガリー狂詩曲 第6番 変ニ長調

 

これはすごい。

プロコフィエフ、すさまじいまでに鬼気迫る表現力、激しいにもかかわらず全くうるさくならない充実した打鍵、そして安定したテクニック。

リスト、こちらも難しい連続オクターヴが両手ともに大変鮮やかに大きな迫力をもって奏され、文句なしの出来。

逸材である。

 

 

3

54 中川 真耶加 NAKAGAWA Mayaka (日本 1993年生まれ)

 

J. P. ラモー:新クラヴサン組曲集 第2番 「雌鶏」
F. ショパン:練習曲 嬰ト短調 Op.25-6

D. ショスタコーヴィッチ:ピアノ・ソナタ 第1番 Op.12

 

こちらも素晴らしい。

ラモー、やや薄めのペダルでバロックらしくくっきりとした、それでいて美しい情感を湛えた演奏。

ショパン、この曲において、彼女ほど速いテンポと安定したタッチで曲特有の疾走感を美しく表現する人を、私は他に知らない。

ショスタコーヴィチ、激しい曲調とソナタらしい構成感とのバランスの取れた、引き締まった名演。

この日、私が生で聴けたのはここまでであり、3人だけだったが、いずれも優勝候補といっていい、とんでもない3人だった。

 

 

4

46 リー・イン LI Ying (中国 1997年生まれ)

 

C. ドビュッシー:映像 第1集

F. ショパン:練習曲 イ短調 Op.10-2

F. リスト:パガニーニによる大練習曲 第3番 嬰ト短調 「ラ・カンパネラ」

 

ドビュッシーをはじめとして、色彩豊かで美しい演奏。

技巧的にも、驚くほどではないがなかなかのもので、ショパンやリストのエチュードも安定感があり、また音楽的でもある。

 

 

5

57 ノ・ヒソン NOH Heeseong (韓国 1998年生まれ)

 

F. ショパン:舟歌 嬰ヘ長調 Op.60

F. リスト:超絶技巧練習曲 第5番 「鬼火」

S. プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ 第3番 イ短調 Op.28

 

素直な歌心があるが、テクニック的に不安定な箇所が時折みられる。

リストも、内声部の装飾音型やペダリングなどに工夫がみられるが、技巧的不安定さをカバーするほどの効果はない印象。


 
6

61 パク・ヨンミン PARK Yeon-Min (韓国 1990年生まれ)

 

D. ショスタコーヴィッチ:前奏曲とフーガ 変ニ長調 Op.87-15

F. ショパン:舟歌 嬰ヘ長調 Op.60

F. リスト:パガニーニによる大練習曲 第6番 イ短調 「主題と変奏」

 

安定した技巧と美しい情感が聴かれる。

ショパンは一つ前の人と同じ曲だが、より成熟したロマン性を感じる。

リストも、力強さ以上に音楽的な美しさを重視した演奏になっている。

 

 

7

15 ドミトロー・チョニ Dmytro CHONI (ウクライナ 1993年生まれ)

 

F. リスト:「巡礼の年 第1年 スイス」より ジュネーブの鐘

A. スクリャービン:練習曲 嬰ト短調 Op.8-9

G. リゲティ:練習曲 第5番 「虹」

F. シューベルト/F. リスト:魔王

 

スラヴ風とでもいうべき独自のロマン的気質があり、美しい。

リゲティは現代音楽というよりは後期ロマン派のよう。

「魔王」も力強くて良い(オクターヴ連打が曖昧な箇所もあるけれど)。

 

 

8

76 アレクセイ・タルタコフスキー Alexei TARTAKOVSKY (アメリカ 1989年生まれ)

 

D. スカルラッティ:ピアノ・ソナタ ヘ短調 K.466(L.118)

D. スカルラッティ:ピアノ・ソナタ ニ長調 K.33(L.424)

F. ショパン:練習曲 嬰ト短調 Op.25-6

S. ラフマニノフ:絵画的練習曲 イ短調 Op.39-6

F. ショパン:スケルツォ 第3番 嬰ハ短調 Op.39

 

スカルラッティは味わい深いが、ショパンのエチュードはたどたどしい。

ラフマニノフやショパンのスケルツォも、ロシアらしい力強さや音の美しさは良いのだが、指回りは両手ともに完全でないのが惜しい。

 

 

9

7 アレクサンダー・バーンスタイン Alexander BERNSTEIN (アメリカ 1988年生まれ)

 

F. J. ハイドン:ピアノ・ソナタ ハ長調 Hob.XVI:50

F. ショパン:練習曲 嬰ハ短調 Op.10-4

F. リスト:パガニーニによる大練習曲 第3番 嬰ト短調 「ラ・カンパネラ」

 

こちらはさらに指回りがいまいち(特にショパン)。

弾けている箇所とそうでない箇所の差が大きい。

ハイドンの緩徐楽章など、なかなか美しくて悪くないのだが。

 

 

10

92 吉見 友貴 YOSHIMI Yuki (日本 2000年生まれ)

 

J. S. バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第1巻 変ロ短調 BWV.867

F. ショパン:練習曲 イ短調 Op.10-2

M. ラヴェル:ラ・ヴァルス

 

緩徐部の繊細な美しさと、急速部の煽るような盛り上げ方が印象的。

ただ、ショパンやラヴェルでは速めのテンポである分、ところどころメカニックの不安定さが出てしまっている。

 

 

11

30 兼重 稔宏 KANESHIGE Toshihiro (日本 1988年生まれ)

 

L. ヤナーチェク:霧の中で

B. バルトーク:練習曲 Op.18-1

 

渋い選曲だが、独特な味わいのある演奏(思索的、とでも言おうか)。

ただ、技巧的な見せ場はあまりなかったかもしれない。

バルトークも、キレッキレというほどではない気がする。

 

 

12

13 千葉 遥一郎 CHIBA Yoichiro (日本 1997年生まれ)

 

J. S. バッハ:半音階的幻想曲とフーガ 二短調 BWV.903

F. ショパン:練習曲 ハ長調 Op.10-1

F. ショパン:スケルツォ 第3番 嬰ハ短調 Op.39

 

勢いのある、自由闊達な演奏。

ショパンのエチュードやスケルツォのコーダが見事。

バッハも、なかなか明瞭度の高い音楽づくりとなっている。

ただ、全体的に音はやや硬めか(特に強音部)。

 

 

13

87 シォン・ジアチャン XIONG Jiacheng (中国 1997年生まれ)

 

A. スクリャービン:練習曲 変ニ長調 Op.8-10

F. ショパン:練習曲 ホ短調 Op.25-5

F. リスト:スペイン狂詩曲

 

全体的にテンポが遅めで、ぼてっとしている。

遅めである分、他の何らかの音楽性を重視し前面に出しているかというと、特にそのような特長もあまり感じられない。

 

 

14

66 フィリップ・ショイヒャー Philipp SCHEUCHER (オーストリア 1993年生まれ)

 

L. ベートーヴェン:幻想曲 Op.77

G. リゲティ:練習曲 第10番 「魔法使いの弟子」

F. リスト:超絶技巧練習曲 第4番 「マゼッパ」

 

ベートーヴェン、彼の得意曲であり、音色やテンポ感にオーストリア風の味があってなかなか良い。

ただ、リゲティやリストでは細部のムラや不明瞭さがときに気になる。

 

 

15

68 アンドレイ・シチコ Andrei SHYCHKO (ベラルーシ 1994年生まれ)

 

F. リスト:パガニーニによる大練習曲 第3番 嬰ト短調 「ラ・カンパネラ」

F. ショパン:練習曲 嬰ト短調 Op.25-6

M. バラキレフ:イスラメイ

 

ロシア系の力強い打鍵と、ぱきっとした音色が魅力。

ただ、テクニック面では最高度にスムーズとは言えず、リストやバラキレフのコーダは少し苦しそう(音の迫力でかなりカバーできているが)。

 

 

そんなわけで、第3日の演奏者のうち、私が第2次予選に進んでほしいと思うのは

 

71 ソン・ユル SUN Youl (韓国 2000年生まれ)

58 太田 糸音 OTA Shion (日本 2000年生まれ)

54 中川 真耶加 NAKAGAWA Mayaka (日本 1993年生まれ)

46 リー・イン LI Ying (中国 1997年生まれ)

61 パク・ヨンミン PARK Yeon-Min (韓国 1990年生まれ)

 

あたりである。

次点で、

 

15 ドミトロー・チョニ Dmytro CHONI (ウクライナ 1993年生まれ)

13 千葉 遥一郎 CHIBA Yoichiro (日本 1997年生まれ)

68 アンドレイ・シチコ Andrei SHYCHKO (ベラルーシ 1994年生まれ)

 

あたりか。

今回(第3日)はうまい人が多かったため、もしかしたら私の判断も厳しめになってしまっているかもしれない。

 

 


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