第10回浜松国際ピアノコンクール 第1次予選 第4日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

静岡県の浜松市で開催されている、第10回浜松国際ピアノコンクール(通称「浜コン」)(公式サイトはこちら)。

11月12日は、第1次予選の第4日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、第10回浜コンについてのこれまでの記事はこちら。

 

第10回浜松国際ピアノコンクール 出場承認者発表

第10回浜松国際ピアノコンクール チケット販売開始

第10回浜松国際ピアノコンクールの課題曲を見て思うこと

ステファノ・アンドレアッタが第10回浜松国際ピアノコンクールへの出場を辞退

第10回浜松国際ピアノコンクール 出場順決定

第1次予選 第1日

第1次予選 第2日

第1次予選 第3日

 

 

1

89 イワン・ヤルチェフスキー Ivan YARCHEVSKIY (ロシア 1996年生まれ)

 

F. J. ハイドン:アンダンテと変奏曲 へ短調 Hob.XVⅡ:6

G. リゲティ:練習曲 第1番 「無秩序」

G. リゲティ:練習曲 第10番 「魔法使いの弟子」

G. リゲティ:練習曲 第6番 「ワルシャワの秋」

 

ハイドンは味があるし、リゲティは少しロマン風のテイストがあってなかなか悪くない(さらにもう一歩キレがあるとなお良かったが)。

 

 

2

44 リー・ティエイー LI Tianyi (中国 1998年生まれ)

 

F. ショパン:練習曲 ハ長調 Op.10-1

J. ブラームス:4つの小品 Op.119

D. スカルラッティ:ピアノ・ソナタ ト長調 K.427(L.286)

 

ショパンは余裕が感じられ、ブラームスは瞑想的な味わいがあり(ブラームス風というよりスクリャービン風だが)、スカルラッティは歯切れ良く、全体的になかなかの好印象。

 

 

3

84 リオ・シャン Rio XIANG (オーストラリア 1999年生まれ)

 

J. S. バッハ:トッカータ ハ短調 BWV.911

F. リスト:パガニーニによる大練習曲 第2番 変ホ長調 「オクターブ」

S. プロコフィエフ:練習曲 ハ短調 Op.2-3

 

ところどころ瑕はあるが、軽妙さと力強さとが感じられて良い。

ただ、プロコフィエフはときどき苦しそうで、前日に太田糸音の凄演があったこともあり、分が悪いか。

 

 

4

88 八木 大輔 YAGI Daisuke (日本 2003年生まれ)

 

R. シューマン:トッカータ ハ長調 Op.7

F. クライスラー/S. ラフマニノフ:愛の悲しみ

S. ラフマニノフ:絵画的練習曲 ニ長調 Op.39-9

 

若者らしい元気の良さがあり、またテクニック面もなかなかで、オクターヴ連打がこれだけ弾ければ大したもの。

情感表現の点ではさらなる成熟を望みたいが、チョ・ソンジンのように15歳で技巧も音楽性も完璧、というのはまれだろうし、これからだろう。

 

 

5

21 アンドレイ・イリューシキン Andrei ILIUSHKIN (ロシア 1995年生まれ)

 

D. ショスタコーヴィッチ:前奏曲とフーガ ニ短調 Op.87-24

C. グルック/G. ズガンバーティ:オペラ「オルフェオとエウリディーチェ」より メロディ

S. ラフマニノフ:絵画的練習曲 変ホ短調 Op.39-5

 

テクニック面での見せ場があまりなし。

そのぶん大きな個性があるかと言われるとそこまでではなさそうで、割とおとなしめの印象(少し独自の雰囲気を持ってはいるけれど)。

 

 

6

47 フィリップ・リノフ Philipp LYNOV (ロシア 1999年生まれ)

 

F. リスト:超絶技巧練習曲 第4番 「マゼッパ」

A. スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第5番 Op.53

 

力強さはあるが、リスト、スクリャービンともに、ややおおざっぱな音楽づくりという印象。

指のもつれもときどき目立つ。

 

 

7

22 今田 篤 IMADA Atsushi (日本 1990年生まれ)

 

F. J. ハイドン:ピアノ・ソナタ ト長調 Hob.XVI:40

M. ラヴェル:「夜のガスパール」より スカルボ

S. ラフマニノフ:絵画的練習曲 ハ短調 Op.39-1

 

彼は、何気ない演奏のようでいて、実は曲の雰囲気を出すのがなかなかうまいと思う(特に暗めの曲で)。

ただ、テクニック的なアドバンテージは大きくない(丁寧なのだが)。

 

 

8

38 コ・ヨンギョン KO Yeon-Kyoung (韓国 1992年生まれ)

 

D. スカルラッティ:ピアノ・ソナタ イ短調 K.54(L.241)

D. スカルラッティ:ピアノ・ソナタ ト長調 K.427(L.286)

F. リスト:超絶技巧練習曲 第10番 ヘ短調

S. プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ 第3番 イ短調 Op.28

 

全体的に音色がきつめ。

指回りもあまりスムーズとは言えない。

 

 

9

17 タチアナ・ドロホワ Tatiana DOROKHOVA (ロシア 1991年生まれ)

 

R. ワーグナー/F. リスト:イゾルデの愛の死

M. ラヴェル:「鏡」より 悲しい鳥たち

F. ショパン:練習曲 ロ短調 Op.25-10

F. リスト:超絶技巧練習曲 第10番 ヘ短調

 

こちらも音色がきつめというか、力強いけれどごつい感じ。

ワーグナーやショパンなど、もう少しロマン的な表現力が欲しい。

指回りも、いまいちというほどではないが、まぁまぁくらいか。

 

 

10

69 バルトシュ・スクウォドフスキ Bartosz SKŁODOWSKI (ポーランド 1993年生まれ)

 

F. ショパン:バラード 第4番 ヘ短調 Op.52

F. ショパン:練習曲 嬰ハ短調 Op.10-4

S. ラフマニノフ:絵画的練習曲 ニ長調 Op.39-9

W. ルトスワフスキ:練習曲 第2番

 

全体的にテンポがやや遅め(安全運転的)。

また、バタバタした感じの演奏になっており、もっとしっとりした味わいが欲しい。

 

 

11

91 イエ・ファンヂョウ YE Fangzhou (中国 2000年生まれ)

 

F. リスト:超絶技巧練習曲 第12番 「雪かき」

B. バルトーク:ピアノ・ソナタ Sz.80

F. ショパン:練習曲 イ短調 Op.10-2

 

バルトークは悪くない。

ただ、リストはテンポが遅めで、やや締まりのない印象。

逆に、ショパンはかなりの高速テンポだが、指が転んでしまっている。

 

 

12

25 チョン・ホンヨン JEONG Hongyeon (韓国 1998年生まれ)

 

D. スカルラッティ:ピアノ・ソナタ イ長調 K.499(L.193)

A. スクリャービン:練習曲 嬰ハ短調 Op.42-5

A. スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第5番 Op.53

 

全体的にかっちりした演奏。

音色面でも技巧面でもやや地味であり、もう一押し何かしらの個性が欲しいところ。

 

 

13

20 アンナ・グロト Anna GROT (ロシア 1990年生まれ)

 

F. リスト:超絶技巧練習曲 第12番 「雪かき」

A. スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第5番 Op.53

 

音はやや硬めではあるが、弱音が美しい。

ただ、リストはなかなか良いのだが、スクリャービンではテクニックの不足が目立ち、もたつくような印象を受けてしまう。

 

 

14

41 イ・ヒョク LEE Hyuk (韓国 2000年生まれ)

 

D. スカルラッティ:ピアノ・ソナタ 二短調 K.9(L.413)

D. スカルラッティ:ピアノ・ソナタ ト長調 K.455(L.209)

I. ストラヴィンスキー/G.アゴスティ:組曲「火の鳥」

F. リスト:パガニーニによる大練習曲 第3番 嬰ト短調 「ラ・カンパネラ」

 

素直な歌心の感じられる演奏。

ただ、テクニック的には洗練されているとは言えない(例えば、スカルラッティやリストに出てくる同音連打がいまいち)。

 

 

15

82 ワン・イーヌオ WANG Yinuo (中国 1996年生まれ)

 

L. ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第27番 ホ短調 Op.90

A. スクリャービン:ワルツ 変イ長調 Op.38

F. ショパン:練習曲 嬰ハ短調 Op.10-4

 

スクリャービンはロマン的な味が出ていて良い。

ただ、ベートーヴェンでは、この曲に必要と思われる細やかな情感のひだが表現されておらず、単調になってしまっている。

ショパンも、よく弾けてはいるがやや直線的に過ぎる印象。

 

 

16

29 ネイツ・カムブレツ Nejc KAMPLET (スロベニア 1996年生まれ)

 

S. ラフマニノフ:前奏曲 嬰ト短調 Op.32-12

F. ショパン:練習曲 変ト長調 Op.10-5 「黒鍵」

O. メシアン:「前奏曲集」より 鳩

F. リスト:メフィスト・ワルツ 第1番

 

どの曲もテンポが遅めで、その割にタッチコントロールも緻密とはいえず、もっさりしている。

 

 

17

86 シン・ビーグオ XING Biguo (中国 1999年生まれ)

 

F. ショパン:バラード 第4番 ヘ短調 Op.52

F. リスト:超絶技巧練習曲 第5番 「鬼火」

F. ショパン:練習曲 イ短調 Op.25-11 「木枯らし」

 

表現が丁寧なのは良い。

ただ、技巧面での問題のためか、全体的にテンポは遅めであり、(曲本来の性質からして)微温的な印象を受けてしまうのも確か。

 

 

18

33 キム・ジュノ KIM Jun Ho (韓国 1995年生まれ)

 

F. リスト:超絶技巧練習曲 第11番 「夕べの調べ」

M. ラヴェル:ラ・ヴァルス

 

彼らしい線の細い音による、精緻な音楽表現が聴かれる。

リスト、味気なくなりがちなこの曲が、繊細に美しく奏されている。

ラヴェルも緻密な彼にぴったりなのだが、ルバートを工夫するあまり、推進力がやや損なわれてしまっているのは惜しい。

 

 

19

36 木村 友梨香 KIMURA Yurika (日本 1993年生まれ)

 

F. ショパン:練習曲 イ短調 Op.25-11 「木枯らし」

J. ブラームス:4つの小品 Op.119

 

力強さとロマン性の同居した演奏であり、もちろん良いのだが、ブラームス晩年の渋い選曲がコンクールにおいて吉と出るか凶と出るか。

より華やかな曲がもう一つあると良かったかもしれない。

 

 

20

34 キム・サンウォン KIM Sang-Won (韓国 1994年生まれ)

 

B. バルトーク:練習曲 Op.18-2

I. ストラヴィンスキー:「ペトルーシュカ」からの3つの断章

 

音は硬め。

ストラヴィンスキーの「ペトルーシュカ」、この難曲にしてはよく弾けているし、豪快なのは良いのだが、洗練という点ではいま一歩。

 

 

21

83 ウー・ロンシュアン WU Longxuan (中国 1995年生まれ)

 

J. S. バッハ:半音階的幻想曲とフーガ 二短調 BWV.903

F. ショパン:練習曲 嬰ト短調 Op.25-6

C. ドビュッシー:練習曲 第11番 「組み合わされたアルペッジョのための」

 

音色に落ち着いた味があって良いが、それ以上の音楽的な表現力やテクニック面はと言われると、そこそこか。

ショパンもいま一つ(前日の中川真耶加の同曲演奏がうますぎた)。

 

 

そんなわけで、第4日の演奏者のうち、私が第2次予選に進んでほしいと思うのは

 

44 リー・ティエイー LI Tianyi (中国 1998年生まれ)

33 キム・ジュノ KIM Jun Ho (韓国 1995年生まれ)

 

あたりである。

次点で、

 

89 イワン・ヤルチェフスキー Ivan YARCHEVSKIY (ロシア 1996年生まれ)

84 リオ・シャン Rio XIANG (オーストラリア 1999年生まれ)

22 今田 篤 IMADA Atsushi (日本 1990年生まれ)

36 木村 友梨香 KIMURA Yurika (日本 1993年生まれ)

 

あたりか。

今回(第4日)は、第3日とは打って変わって、圧倒的にうまいと感じる人がなかなかいなかった。

 

 


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