第10回浜松国際ピアノコンクール 第1次予選 第1日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

静岡県の浜松市で開催される、第10回浜松国際ピアノコンクール(通称「浜コン」)が、ついに始まった(公式サイトはこちら)。

11月9日は、第1次予選の第1日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、第10回浜コンについてのこれまでの記事はこちら。

 

第10回浜松国際ピアノコンクール 出場承認者発表

第10回浜松国際ピアノコンクール チケット販売開始

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ステファノ・アンドレアッタが第10回浜松国際ピアノコンクールへの出場を辞退

第10回浜松国際ピアノコンクール 出場順決定

 

 

1

31 片田 愛理 KATADA Airi (日本 1992年生まれ)

 

D. スカルラッティ:ピアノ・ソナタ ト長調 K.427(L.286)

G. リゲティ:練習曲 第6番 「ワルシャワの秋」

F. ショパン:練習曲 嬰ト短調 Op.25-6

F. ショパン:バラード 第4番 ヘ短調 Op.52

 

音楽が単調にならず、曲の雰囲気がよく出せている。

ただ、テクニック的な華やかさにはやや欠けるところがあり、スカルラッティやショパンなど少し重い(そのぶん表情豊かだが)。

 

 

2

95 アンドレイ・ゼーニン Andrey ZENIN (ロシア 1995年生まれ)

 

F. ショパン:4つのマズルカ Op.17

S. ラフマニノフ:絵画的練習曲 ハ短調 Op.39-1

F. ショパン:練習曲 ロ短調 Op.25-10

 

ロシア人らしい余裕のある音、独特の悠揚たる歌心を持つ。

しかし、技巧的な不足があり、それをカバーするほどの個性や表現力(例えばドミトリー・マイボローダのような)までは感じられない。

 

 

3

64 坂本 彩 SAKAMOTO Aya (日本 1989年生まれ)

 

S. グバイドゥーリナ:シャコンヌ

F. ショパン:練習曲 変ト長調 Op.10-5 「黒鍵」

J. ブラームス:主題と変奏 ニ短調 Op.18b

 

力強く充実した打鍵と音楽づくりである。

グバイドゥーリナにブラームス、どっしりとした構えで聴きごたえ十分。

ショパンも、(最高度とまでは言わないが)なかなかうまい。

 

 

4

80 臼井 秀馬 USUI Shuma (日本 1989年生まれ)

 

L. ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第24番 嬰へ長調 Op.78 「テレーゼ」

S. ラフマニノフ:絵画的練習曲 嬰ヘ短調 Op.39-3

S. ラフマニノフ:絵画的練習曲 イ短調 Op.39-6

S. ラフマニノフ:絵画的練習曲 ニ長調 Op.39-9

 

力強い演奏であり、ラフマニノフのop.39-6や9などなかなか。

ただ、直球勝負といった感じで、ロマン的な味わいにはやや欠ける。

また、ベートーヴェンの第2楽章はやや苦しそう。

 

 

5

6 イバン・バシッチ Ivan BAŠIĆ (セルビア 1996年生まれ)

 

S. プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ 第3番 イ短調 Op.28

M. ラヴェル:「クープランの墓」より メヌエット

C. ドビュッシー:練習曲 第5番 「8度音程のための」

F. リスト:パガニーニによる大練習曲 第6番 イ短調 「主題と変奏」

 

鋭いキレ味を見せるところと、曖昧に弾き飛ばすようなところとの落差が大きく、完成度が高いとは言えない。

なお、最後のリスト、曲の途中で拍手した人がいてヒヤリとした(その後すぐに演奏時間終了のベルが鳴ったからよかったけれど)。

 

 

6

75 田母神 夕南 TAMOGAMI Yuna (日本 1994年生まれ)

 

C. ドビュッシー:前奏曲 第2集 より 「月の光がそそぐテラス」

F. ショパン:練習曲 ハ長調 Op.10-1

I. ストラヴィンスキー/G.アゴスティ:組曲「火の鳥」

 

ショパン、力任せになりがちな曲だがそうならず、大変音楽的。

技巧的にもかなりのものだが、ただストラヴィンスキーのほうでは、いま一歩の技巧的華やかさが欲しくはある(表現力は十分だが)。

 

 

7

74 マルセル 田所 Marcel TADOKORO (フランス 1993年生まれ)

 

F. クープラン:クラヴサン曲集 第4巻 第25番 「空想にふける女」
K. シマノフスキ:変奏曲 変ロ短調 Op.3

F. リスト:超絶技巧練習曲 第5番 「鬼火」

 

西欧風の、べたっとしない美しい歌心を持つ。

技巧面でも比較的安定しており、難しいであろうリストの「鬼火」でもなかなかよく弾けている。

 

 

8

85 シエ・ズウェイ XIE Ziwei (中国 1993年生まれ)

 

F. ショパン:練習曲 嬰ハ短調 Op.10-4

S. ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 Op.36 (1931)

 

ダイナミックで激しい音楽性を持ち、これらの曲によく合う。

ラフマニノフの第1楽章展開部や終楽章コーダなど、相当な迫力。

技巧的にもかなりのものであり、2次に進むのはほぼ確実と思われる。

 

 

9

42 イ・ジェヨン LEE Jaeyoung (韓国 1995年生まれ)

 

J. S. バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第2巻 ト長調 BWV.884

F. ショパン:舟歌 嬰ヘ長調 Op.60

F. リスト:超絶技巧練習曲 第4番 「マゼッパ」

 

全体的に、落ち着いた味わいがある。

一方、技巧的にもなかなかで、リストなど迫力ありながらも明晰。

ただ、分厚い和音が続く際、ときにペダルが少し濁るのが気になる。

 

 

10

39 エフゲニー・コノフ Evgeny KONNOV (ロシア 1992年生まれ)

 

F. リスト:超絶技巧練習曲 第10番 ヘ短調

I. ストラヴィンスキー:「ペトルーシュカ」からの3つの断章

 

リストはなかなかうまく、曲の激しい性格もよく出せている。

ただ、ストラヴィンスキーのほうはところどころ技巧的に苦しそう(そもそもこの曲の満足いく演奏を聴けたことはほとんどないけれど)。

 

 

11

50 務川 慧悟 MUKAWA Keigo (日本 1993年生まれ)

 

J. P. ラモー:新クラヴサン組曲集 第1番より 「ガヴォットと6つのドゥーブル」

C. ドビュッシー:練習曲 第6番 「8本の指のための」

F. リスト:「伝説」より 波を渉るパオラの聖フランチェスコ

 

大変に音楽的な演奏であり、また技巧的にも優れている。

ラモーにせよドビュッシーにせよ、ロマン的な解釈だがセンスがある。

リストに至っては、同曲の決定的な演奏の一つだと思う。

彼もまた、少なくとも2次には確実に進むだろう。

 

 

12

70 アリーナ・スミルノワ Alina SMIRNOVA (ロシア 1991年生まれ)

 

S. ラフマニノフ:絵画的練習曲 ニ長調 Op.39-9

F. ショパン:練習曲 ロ短調 Op.25-10

M. ラヴェル:ラ・ヴァルス

 

ロシア人らしい力強さがあり、豪快。

ロマン的な要素もそれなりに感じられる。

ただ、ちょっとごつごつしており、ラヴェルなどもう少し洗練が欲しい。

 

 

13

45 リー・シンイー LI Xinyi (中国 1995年生まれ)

 

J. S. バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第1巻 変イ長調 BWV.862

F. ショパン:練習曲 イ短調 Op.10-2

I. ストラヴィンスキー:練習曲 嬰ヘ長調 Op.7-4

A. ヴェーベルン:ピアノのための変奏曲 Op.27

 

落ち着いた味があり、バッハなどなかなか良い。

ただ、ショパンは右手のメロディラインがところどころ不明瞭で、残念。

ストラヴィンスキーも、堅実ではあるのだがもう少し華麗さが欲しい。

 

 

14

90 安並 貴史 YASUNAMI Takashi (日本 1992年生まれ)

 

B. バルトーク:練習曲 Op.18-2

J. ブラームス:創作主題による変奏曲 Op.21-1

 

むらなく良く弾けているのだけれど、この曲はブラームスのピアノ独奏曲の中で最も美しい曲、と思っている私には少し味気なく聴こえる。

また、全体として、技巧的な見せ場の少ない選曲となってしまったか。

 

 

15

26 ルイス・カルロス・フアレス・サラス Luis Carlos JUÁREZ SALAS (メキシコ 1996年生まれ)

 

W. A. モーツァルト:アダージョ ロ短調 K.540

C. ドビュッシー:練習曲 第9番 「反復音のための」

R. シューマン:アレグロ ロ短調 Op.8

 

音が美しく、モーツァルトやシューマンがなかなか味わい深い。

ドビュッシーも悪くはないのだが、エチュードであえてこの曲を選んだにしては、同音連打がスムーズとは言い難い。

 

 

16

37 エリザベタ・クリュチェレワ Elizaveta KLIUCHEREVA (ロシア 1999年生まれ)

 

F. ショパン:練習曲 嬰ト短調 Op.25-6

F. リスト:超絶技巧練習曲 第10番 ヘ短調

P. チャイコフスキー/S. フェインベルグ:交響曲 第6番 ロ短調「悲愴」Op. 74 より スケルツォ

 

キレと力強さとを兼ね備えており、勢いがある。

テクニックもなかなかで、「悲愴」でこれだけ弾ければ大したもの。

ただ、ミスタッチがけっこう多いのが惜しいところ。

 

 

17

23 チョン・へイン JEON Hyein (韓国 1997年生まれ)

 

J. S. バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第1巻 ホ長調 BWV.854

F. J. ハイドン:ピアノ・ソナタ ホ短調 Hob.XVI:34

F. ショパン:練習曲 イ短調 Op.10-2

R. シューマン:トッカータ ハ長調 Op.7

 

タッチが明瞭で小気味よく、バッハやハイドンが合っている。

ショパンの半音階やシューマンの連続オクターヴも、難所だがかなりの完成度で弾けている(ルバートとペダルの助けを借りているが)。

 

 

18

55 中島 英寿 NAKAJIMA Hidekazu (日本 1995年生まれ)

 

F. ショパン:練習曲 ロ短調 Op.25-10

L. ベートーヴェン:エロイカ変奏曲 変ホ長調 Op.35

 

少し淡白だけれど、力強く充実した演奏。

ベートーヴェンは合っているように思われるが、最後のフーガでやや余裕がなさそうなのが惜しい。

 

 

そんなわけで、第1日の演奏者のうち、私が第2次予選に進んでほしいと思うのは

 

74 マルセル 田所 Marcel TADOKORO (フランス 1993年生まれ)

85 シエ・ズウェイ XIE Ziwei (中国 1993年生まれ)

50 務川 慧悟 MUKAWA Keigo (日本 1993年生まれ)

37 エリザベタ・クリュチェレワ Elizaveta KLIUCHEREVA (ロシア 1999年生まれ)

 

あたりである。

次点で、

 

64 坂本 彩 SAKAMOTO Aya (日本 1989年生まれ)

75 田母神 夕南 TAMOGAMI Yuna (日本 1994年生まれ)

42 イ・ジェヨン LEE Jaeyoung (韓国 1995年生まれ)

39 エフゲニー・コノフ Evgeny KONNOV (ロシア 1992年生まれ)

23 チョン・へイン JEON Hyein (韓国 1997年生まれ)

 

あたりか。

ただ、ここに選んでいない人にも良い点は色々あるし、選ぶのはなかなか難しい。

 

 


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