第10回浜松国際ピアノコンクール 第2次予選 第1日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

静岡県の浜松市で開催されている、第10回浜松国際ピアノコンクール(通称「浜コン」)(公式サイトはこちら)。

11月15日は、第2次予選の第1日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、第10回浜コンについてのこれまでの記事はこちら。

 

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第1次予選 第1日

第1次予選 第2日

第1次予選 第3日

第1次予選 第4日

第1次予選 第5日

 

 

1

95 アンドレイ・ゼーニン Andrey ZENIN (ロシア 1995年生まれ)

 

佐々木 冬彦:SACRIFICE

W. A. モーツァルト:幻想曲 ハ短調 K.475

F. ショパン:バラード 第4番 ヘ短調 Op.52

S. ラフマニノフ:絵画的練習曲 ハ短調 Op.39-7

C. ドビュッシー:前奏曲 第2集 より 「花火」

 

ロシアらしい、深みと透明感のある音色は良い。

しかし、全体的にやや単調な印象は否めない。

もっと大きなスケール感だとか、力強い打鍵、瞑想的なロマンティシズムといったような、聴き手をぐっとつかむ個性が欲しい。

技巧的にも、いまいちというほどではないがそこそこ。

 

 

2

74 マルセル 田所 Marcel TADOKORO (フランス 1993年生まれ)

 

佐々木 冬彦:SACRIFICE

J. ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲 Op.35

C. ドビュッシー:夜想曲

 

1次でさわやかな音楽性が印象に残った彼だが、今回のパガニーニ変奏曲では少しパッとしない。

いまいちというほどではないし、きれいに整ってはいるのだが、この曲ではパガニーニらしい技巧的華麗さとブラームスらしいずっしりした力強さが欲しくなる。

彼にはもっと合う曲があったのでは、と思ってしまう。

 

 

3

50 務川 慧悟 MUKAWA Keigo (日本 1993年生まれ)

 

F. メンデルスゾーン:幻想曲 嬰ヘ短調 Op.28 「スコットランド・ソナタ」

C. ドビュッシー:前奏曲 第1集 より 「雪の上の足あと」

C. ドビュッシー:前奏曲 第1集 より 「さえぎられたセレナード」

佐々木 冬彦:SACRIFICE

A. スクリャービン:ピアノ・ソナタ 第5番 Op.53

 

やはり彼はうまい。

鮮やかなメンデルスゾーン、詩情溢れるドビュッシー。

そして、ロマン的でありながら疾走感にも欠けないスクリャービン。

彼は、自分の魅せ方というか、自身に合った選曲を心得ていそう(心なしか、邦人作品とその前後の曲の配置もうまい気がする)。

 

 

4

90 安並 貴史 YASUNAMI Takashi (日本 1992年生まれ)

 

佐々木 冬彦:SACRIFICE

C. ドビュッシー:「映像 第1集」より 水に映る影

C. ドビュッシー:「映像 第1集」 より ラモーをたたえて

J. ブラームス:幻想曲集 Op.116

 

ドビュッシー、1次で同曲を弾いた永康毅の繊細さに対し、こちらはより勢いがあり、それぞれの良さがある。

ただ、例えば「水に移る影」で水しぶきのように上行下行を繰り返す右手のアルペッジョなど、永康毅の滑らかさに比べると少しムラがある。

ブラームスも悪くないが、2018年高松コンクールで同曲を弾いた坂本彩のずっしりと充実した打鍵に比べると、少し硬さがあるか。

 

 

5

62 佐川 和冴 SAGAWA Kazusa (日本 1998年生まれ)

 

佐々木 冬彦:SACRIFICE

L. ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第22番 ヘ長調 Op.54

C. ドビュッシー:練習曲 第3番 「4度音程のための」

F. リスト:死の舞踏

 

力強い彼の打鍵は、ベートーヴェンやリストに合っている。

ベートーヴェンは、ソナタ第22番の曲調にしては少しごつごつしているが悪くなく、リストは技巧的な華やかさもあってなかなか。

ただ、1次と同様、何でもないようなところでの瑕がちょこちょこある。

また、ドビュッシーはもう少しキレがあるといいかも。

 

 

6

79 牛田 智大 USHIDA Tomoharu (日本 1999年生まれ)

 

佐々木 冬彦:SACRIFICE

F. ショパン:バラード 第1番 ト短調 Op.23

S. ラフマニノフ:ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 Op.36 (1931)

 

彼ならではの、品の良い素直な情感が感じられる演奏。

1次のプロコフィエフよりも彼に合った選曲かも。

ショパンの第2主題など美しいし、ラフマニノフでは意外と激しい表現も聴かれる。

もうあと一押し、突き抜けた迫力やロマン性があるといいが(「毒」のようなもの?)、まぁそうすると彼らしい演奏ではなくなってしまうか。

 

 

7

73 アレクセイ・シチェフ Alexey SYCHEV (ロシア 1988年生まれ)

 

佐々木 冬彦:SACRIFICE

F. リスト:魔王 (シューベルト) S.558/4
F. リスト:イゾルデの愛の死(ワーグナー) S.447 R.280
S. プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ 第7番 変ロ長調 Op.83

 

なかなかの出来。

リストの2曲はもう少しロマン的な味が欲しいが、それでもよく弾けていて悪くない。

プロコフィエフは彼のあっさりした様式がよく合っている気がする。

終楽章もなかなかの高速テンポで最後までさらっと突っ切っている。

 

 

8

35 キム・ソンヒョン KIM Song Hyeon (韓国 2002年生まれ)

 

R. シューマン:幻想小曲集 Op.12

佐々木 冬彦:SACRIFICE

C. ドビュッシー:喜びの島

 

1次のメンデルスゾーンよりは歌えているか。

それでも、シューマン特有のファンタジーを感じさせるところまではいかず、やや持て余している印象(まだ若いので仕方ないが、2009年浜コンで同曲を弾いた15歳のチョ・ソンジンはすでに表現力があった)。

ただ、技巧面でのポテンシャルはかなりのもので、それはドビュッシーでよく発揮されている。

 

 

そんなわけで、第1日の演奏者のうち、私が第3次予選に進んでほしいと思うのは

 

50 務川 慧悟 MUKAWA Keigo (日本 1993年生まれ)

73 アレクセイ・シチェフ Alexey SYCHEV (ロシア 1988年生まれ)

 

あたりである。

次点で、

 

62 佐川 和冴 SAGAWA Kazusa (日本 1998年生まれ)

79 牛田 智大 USHIDA Tomoharu (日本 1999年生まれ)

 

あたりか。

マルセル田所は、魅力あるピアニストと思うが今回は良さを発揮しきれなかったか。

全ての予選でまんべんなく良い演奏をするというのは、何とも難しいことである。

 

 


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