第10回浜松国際ピアノコンクール 第2次予選 第2日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

静岡県の浜松市で開催されている、第10回浜松国際ピアノコンクール(通称「浜コン」)(公式サイトはこちら)。

11月16日は、第2次予選の第2日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、第10回浜コンについてのこれまでの記事はこちら。

 

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第1次予選 第1日

第1次予選 第2日

第1次予選 第3日

第1次予選 第4日

第1次予選 第5日

第2次予選 第1日

 

 

1

94 ザン・シャオルー ZANG Xiaolu (中国 1999年生まれ)

 

L. ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第28番 イ長調 Op.101

佐々木 冬彦:SACRIFICE

M. ラヴェル:ラ・ヴァルス

 

美しい歌心、表現意欲にあふれた演奏。

ただ、少しやりすぎに感じるところもないではない。

ベートーヴェンにせよラヴェルにせよ、ふとしたところに「タメ」を入れたり、テンポをすっと変えたりするのだが、それが過剰な印象はある。

もっと大きな視点から音楽を捉えてテンポ設定してほしい。

とはいえ、細部の繊細な表現はさすが。

 

 

2

58 太田 糸音 OTA Shion (日本 2000年生まれ)

 

佐々木 冬彦:SACRIFICE

L. ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第27番 ホ短調 Op.90

F. リスト:ノルマの回想 S.394

 

邦人作品、彼女ならではの集中力、鬼気迫る感じがよく出ている。

ベートーヴェン、彼女が弾くとロマン派的になりすぎるのではとも思ったが、そんなことはなく、後期作品らしい適度な古典性とロマン性とのバランスが聴かれ、引き締まっていて良い(ひとつ前の奏者に足りなかったものは、まさにこれである)。

リスト、これは意外にも彼女の弱点が少し出てしまったかも。

このあまりにも大変な難曲にあっては、彼女ほどの技巧の持ち主であっても、華麗に弾きこなすというところまでは行っていない(ノ・イェジン2015年浜コンライヴ盤や、古海行子2016年パデレフスキコンクールライヴ音源といった見事な演奏と比べてしまうと)。

 

 

3

46 リー・イン LI Ying (中国 1997年生まれ)

 

佐々木 冬彦:SACRIFICE

W. A. モーツァルト:幻想曲 ニ短調 K.397

F. ショパン:ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 Op.58

 

明るめの音による美しい歌が聴かれる。

ただ、技巧的に完全にスムーズというわけでないのが惜しい。

いまいちというほどではないのだが、余裕がなさそうなところがある(モーツァルトの終盤の長調部分やショパンの第2楽章で一瞬もたつく感じになったり、ショパンの第1楽章第2主題直前で和音ががちゃがちゃした感じになったり)。

 

 

4

15 ドミトロー・チョニ Dmytro CHONI (ウクライナ 1993年生まれ)

 

F. リスト:すみか(シューベルト)

佐々木 冬彦:SACRIFICE

S. プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ 第6番 イ長調 Op.82

 

リスト、なかなか雰囲気が出ている。

プロコフィエフ、力強く歯切れよく攻めるというよりは、横に流すかのような、少し風変わりな演奏。

冒頭からして、ペダルの濁りを気にしていない感じ。

それでも、大変に鮮やかとまではいわないまでも、意外とよく弾けているのだから面白い(ペダルの助けを借りがちなところはあるが)。

 

 

5

30 兼重 稔宏 KANESHIGE Toshihiro (日本 1988年生まれ)

 

佐々木 冬彦:SACRIFICE

L. ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 Op.110

B. バルトーク:ピアノ・ソナタ Sz.80

 

イン・テンポ、硬めの音色によるザッハリヒなベートーヴェン。

こういうアプローチも面白いが、ところどころ瑕があるのが惜しい。

彼の演奏様式は、次のバルトークにはぴったり合う。

ただし、やはりメカニックの面でやや弱さがあるか。

 

 

6

66 フィリップ・ショイヒャー Philipp SCHEUCHER (オーストリア 1993年生まれ)

 

佐々木 冬彦:SACRIFICE

M. ラヴェル:「鏡」より 悲しい鳥たち

F. リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178

 

オーストリアらしい落ち着いた味わいがある。

リストのソナタのような曲でも、嘆いたり叫んだりすることがなく、ウィーン古典派のソナタの延長線上にこの曲を捉えた演奏である。

ただし、そのぶん少しのどかな感じになり、この曲らしい緊張感はやや犠牲になっているか。

また、おっとりしたテンポの割にはミスが多いのも残念。

 

 

7

89 イワン・ヤルチェフスキー Ivan YARCHEVSKIY (ロシア 1996年生まれ)

 

佐々木 冬彦:SACRIFICE

L. ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 Op.110

S. ラフマニノフ:前奏曲 ニ長調 Op.23-4

S. ラフマニノフ:前奏曲 嬰ト短調 Op.32-12

S. ラフマニノフ:前奏曲 ト長調 Op.32-5

S. ラフマニノフ:前奏曲 ハ短調 Op.23-7

 

ロシアらしい、深みと余裕のある美しい音色。

ベートーヴェン、美しい歌にあふれているとともに、ベートーヴェンにふさわしい安定感も備えている。

ラフマニノフ、彼の透明感のある音色が曲にぴったり合い、美しい。

ロシア的だが、各音がぐしゃっとならず、明晰さを保っている。

欲を言うと、よりいっそうの力強さ、激烈さ、そしてロマンティシズムが欲しいけれど。

 

 

8

21 アンドレイ・イリューシキン Andrei ILIUSHKIN (ロシア 1995年生まれ)

 

F. J. ハイドン:幻想曲 ハ長調 Hob.XVII:4

佐々木 冬彦:SACRIFICE

R. シューマン:フモレスケ 変ロ長調 Op.20

 

彼もまた、ロシアらしい深みのある音色を持つ。

先ほどのヤルチェフスキーとの違いはというと、ヤルチェフスキーほどの技巧的な確かさがないけれど、そのぶん特有のロマンティシズムを持つ、といったところか。

彼の個性には聴くべきものがあるけれど、私としては技巧的な不安定性が気になってしまう。

 

 

そんなわけで、第2日の演奏者のうち、私が第3次予選に進んでほしいと思うのは

 

94 ザン・シャオルー ZANG Xiaolu (中国 1999年生まれ)

58 太田 糸音 OTA Shion (日本 2000年生まれ)

15 ドミトロー・チョニ Dmytro CHONI (ウクライナ 1993年生まれ)

89 イワン・ヤルチェフスキー Ivan YARCHEVSKIY (ロシア 1996年生まれ)

 

あたりである。

次点で、

 

46 リー・イン LI Ying (中国 1997年生まれ)

 

あたりか。

 

 


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