第10回浜松国際ピアノコンクール 第3次予選 第1日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

静岡県の浜松市で開催されている、第10回浜松国際ピアノコンクール(通称「浜コン」)(公式サイトはこちら)。

11月19日は、第3次予選の第1日。

ネット配信を聴いた(こちらのサイト)。

ちなみに、第10回浜コンについてのこれまでの記事はこちら。

 

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第1次予選 第1日

第1次予選 第2日

第1次予選 第3日

第1次予選 第4日

第1次予選 第5日

第2次予選 第1日

第2次予選 第2日

第2次予選 第3日

 

 

なお、以下の曲目のうち室内楽は、以下の奏者たちとの共演である。

奇数順:漆原啓子(Vn)、鈴木康浩(Va)、向山佳絵子(Vc)

偶数順:川久保賜紀(Vn)、松実健太(Va)、長谷川陽子(Vc)

 

 

1

95 アンドレイ・ゼーニン Andrey ZENIN (ロシア 1995年生まれ)

 

W. A. モーツァルト:ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 K.478

F. リスト:「巡礼の年 第2年 イタリア」より ダンテを読んで-ソナタ風幻想曲

S. ラフマニノフ:コレルリの主題による変奏曲 Op.42

N. メトネル:忘れられた調べ 第一集 より 祝祭の踊り Op.38-3

 

室内楽にせよソロにせよ、音は美しいのだが技巧的にところどころぎこちない。

モーツァルトでフレージングが滑らかでないのは痛い。

リストでは、同じロシア人で私の好きなピアニストのドミトリー・マイボローダ(本年春の高松コンクールで同曲を弾いた)に比べ、音色のタイプは似ているものの、ロマン的センスといい、音楽をクライマックスへと持っていく大きな流れの作り方といい、どうも見劣りしてしまう。

 

 

2

50 務川 慧悟 MUKAWA Keigo (日本 1993年生まれ)

 

W. A. モーツァルト:ピアノ四重奏曲 第2番 変ホ長調 K.493

J. S. バッハ/F. ブゾーニ:シャコンヌ ニ短調

M. ラヴェル:鏡

 

モーツァルト、ややロマン派風ではあるが、音階やアルペッジョが滑らかで、かつ歌になっている。

モーツァルトは、こうでなくては。

バッハ/ブゾーニもラヴェルも、ただ弾けているだけでなく(それだけでもすごいのだが)、音楽的センスにあふれている。

「道化師の朝の歌」も、やや遅めのテンポではあるが、そのぶん同音連打や二重グリッサンドが丁寧な扱いとなっており、またエスプリとでも言いたいような雰囲気の良さも相まって、会心の出来となっている。

彼はきっと本選に進むだろうし、(コンチェルトがうまく弾ければ)優勝も夢ではないと思われる。

 

 

3

90 安並 貴史 YASUNAMI Takashi (日本 1992年生まれ)

 

W. A. モーツァルト:ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 K.478

F. シューベルト:即興曲 ハ短調 Op.90-1

L. ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 Op.110

E. ドホナーニ:3つの小品 ハ長調 Op.23-1 「アリア」

E. ドホナーニ:4つのピアノ曲 ヘ短調 Op.2-3 「間奏曲」

E. ドホナーニ:4つの狂詩曲 ハ長調 Op.11-3 「ビバーチェ」

 

モーツァルト、明るめの音色と軽やかなタッチが心地よい。

シューベルト、ベートーヴェン、ドホナーニも、粒のそろった明るい音、べたつかないさわやかな歌心が感じられ、大変良い。

1次・2次でのブラームスやドビュッシーも悪かったわけではないが、私の中では今回の3次でかなり印象が良くなった。

彼はウィーン古典派~初期ロマン派あたりの音楽に親和性が高い気がする。

 

 

4

79 牛田 智大 USHIDA Tomoharu (日本 1999年生まれ)

 

W. A. モーツァルト:ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 K.478

F. シューベルト:即興曲 変ト長調 Op.90-3 

F. リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178

 

先ほどの安並貴史がカラッとしたモーツァルトだったのに対し、こちらはよりしっとりとしたロマン的なモーツァルトであり、どちらも良い。

シューベルトも、ニュアンスをしっかり込めていながら、濃厚というよりは清純さがよく出ていて、曲にぴったり。

リストは、この曲特有のどぎついイメージがすっかり洗い流され、高貴な曲として生まれ変わっている。

この曲にあったはずの悪魔的な要素が少し恋しくはあるけれど、また技巧的な華やかさがもう少しあるとなお良いけれど、それでも仕上がりは丁寧で完成度が高いし、これはこれでありだと思う。

 

 

5

35 キム・ソンヒョン KIM Song Hyeon (韓国 2002年生まれ)

 

W. A. モーツァルト:ピアノ四重奏曲 第2番 変ホ長調 K.493

R. シチェドリン:2つのポリフォニックな作品

F. ショパン:24の前奏曲 Op.28

 

モーツァルト、あらゆる音階やアルペッジョが滑らかであり、かなりの安定感(もう少し「歌」があると良いが)。

シチェドリンやショパンでも、彼の確かな技巧が発揮されている。

ショパンの前奏曲は相当な表現力を要する曲と思うが、私の耳が彼の演奏に慣れてきたのか、1次のときほどには音楽性の不足を感じなくなった(なぜか感動というところまではいかないのだけれど)。

 

 

6

94 ザン・シャオルー ZANG Xiaolu (中国 1999年生まれ)

 

W. A. モーツァルト:ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 K.478

F. ショパン:舟歌 嬰ヘ長調 Op.60 

F. リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178

 

モーツァルト、きびきびしていて技巧的にも滑らか。

ショパン、情感豊かな演奏であり、テクニック面でも不足なし。

リスト、牛田智大の同曲演奏にはなかった「どぎつさ」、悪魔的でシャープかつアグレッシブな要素が、こちらの演奏からは聴かれる。

といっても、効果ばかり狙ったこけおどしの演奏というわけではなく、豊かな情感や技巧的な洗練に裏付けられている(最高度とまではいわないにしても、かなりのもの)。

こちらのほうが、曲本来のイメージにより近い気がする。

 

 

そんなわけで、第1日の演奏者のうち、私が本選に進んでほしいと思うのは

 

50 務川 慧悟 MUKAWA Keigo (日本 1993年生まれ)

94 ザン・シャオルー ZANG Xiaolu (中国 1999年生まれ)

 

あたりである。

次点で、

 

90 安並 貴史 YASUNAMI Takashi (日本 1992年生まれ)

79 牛田 智大 USHIDA Tomoharu (日本 1999年生まれ)

 

あたりか。

 

 


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