初めに:このJ.Sバッハが、、作曲したと言われる、ハ長調のフルートソナタ(BWV=1033)、これは、B.W.V ナンバーが与えられているのにもかかわらず、J.Sバッハの真作ではないという学説が、有力になって来ています。
私としては、バロック作品としてよくある事態ですし、そのようなことは、あまり気にしません。それになかなか聴きごたえのある曲ですので、紹介すべくアップロードしました。
今回、モダンフルート界の代表、エマニュエル=パユー、一方リコーダーの女王、ミカラ=ペトリにこのBWV-1033を演奏してもらい、その大きな表現の違いに驚いてもらいます。
エマニュエル=パユー ミカラ=ペトリ
違いは、四楽章の、メヌエットです。この楽章は、メヌエット1、メヌエット2、再びメヌエット1という構成です。特に、再びのメヌエットに注目してください。
ちなみに、最近、エマさん、藤井香織さん等、期待のフルート奏者に焦点を当てて来ましたが、やはり、パユーの存在感は、再認識しましたね。それでは、パユーの演奏から。
Pahod plays BWV1033
今回の目標は、メヌエットの第四楽章の比較ですから、動画のタイムボタンを6:10に移動し、四楽章から聞き始めてください。このメヌエット楽章の構成は、テーマを提示する、メヌエット1 , 大きく曲想が、変わる、メヌエット2、そして、メロディは同じだが、豊富な装飾に施された元のメヌエット1に戻ります。最初のメヌエット1とは、印象が随分、違っていることはおわかりでしょう。それでは、すぐに、ミカラペトリの演奏に移ってください
Michala Petri : Bach C-Dur Flute Sonata
例によってこの動画も四楽章から見るのでタイムボタンを、4:20に移動させてください、パユーもかなり大胆に、戻った最後のメヌエットを装飾的に演奏をしていましたが、ミカラペトリは、その比では、ありません。
メヌエット2あたりから、大胆な装飾的演奏に移っています。これは、ジャズ演奏で言えば、即興演奏です。彼女の場合は、最後のメヌエットをまさに、ジョン=コルトレーンを彷彿とさせるような即興演奏に徹しています。バロック音楽が、よくジャズと似ているという理由は、ここにあるのです。
もし、これが最初のメヌエッットと同じだったら、バロック時代の聴衆は、失望したでしょう。このことから、バロック時代、装飾的、即興的演奏が、歓迎されたのは言うまでもありません。しかし、モダンジャズとは違って、どんなに細かい音符で、装飾的演奏をしても、決して基本のメロディーは、壊さないのが、慣例です。
もちろん、パユーの師匠オーレル=ニコレは、余り装飾的な演奏はしません。ほんのわずか、変奏を入れるくらいです。それは演奏者の美学によるのでしょう。私は、ペトリのように大胆に即興演奏を入れる方が好きですね。というのも、ジャズも大好きですから。このように論点を決め、注意深く音楽を聴いて様々な当時の技法や習慣を体得していくことが、バロック音楽を学ぶということです。