古路巡礼。
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2018-08-03 12:39:26

ゼロヨン、セコイア、朽ちたベンチ

テーマ:バイク
 
「何やってんだお前は!」
 
その日、社長に怒鳴られた。
いや、正確には「その日も」だ。
 
新潟の学校を出てから俺は、埼玉にある伯父が経営する
会社に就職した。
いくらでも稼いで好きなものを買えばいいと、
いい話ばかりされてここに連れて来られたが、
蓋を開けてみると7万円の給与で
会社の3階に住み込み、昔でいう「丁稚」のようなものだった。
 
「もう一度得意先を回って来い!」
 
俺はパンフレットがどっさり入ったバッグと
メットとカッパを鷲づかみにして、原付のキックを蹴り下ろした。
営業所のみんなは営業車を与えられていたが、
「お前ごときを乗せる営業車はない」との事で、
俺は蚊トンボみたいな安い中古の、まさに原動機の付いた自転車で
得意先回りをしていた。
 
(こんなはずじゃあなかったなぁ、、)
 
俺は隣に並んだ車にも邪魔にされながら、
炎天下で真っ白になった交差点で青信号を待っていた。
 

タカマツ「10、20、、、わー!今日は100人はいるぜ!」
 
ワタル「そんないるワケねーだろバーカ!」
 
俺「歩道橋が落ちるっつーの!」
 
この片側3車線あるバイパスは、土曜の夜ともなればどこからともなく
「ギャラリー」と呼ばれる見物人たちが歩道橋に集まり、
俺たちの走りを見ては日ごろの鬱憤を晴らす。
そして俺たちもこの1週間のうちに溜まり溜まった鬱憤を、
400メートルの中でだけ許されるロケットのような加速で揉み消す。
 
「フォン、オン!」
 
軽くアクセルでギャラリーに挨拶をする。
ギャラリーはみな両手の拳を夜空に向かって振り上げ、歓声を上げる。
 
タカマツ「今日は足立からソアラが来るってさ」
 
ワタル「へぇ、何しに?」
 
俺「ここはクルマの来るところではアリマセン」
 
そう、俺たちはまるっきり四輪を侮蔑していた。
その夜は特に車が多く、俺らバイク乗りにとっては走りにくい夜だった。
 
ワタル「四輪ばっかで今日はダメだな」
 
何本か走った後に、俺たちは歩道に足を投げ出し、
我が物顔でホイルスピンをする四輪を眺めていた。
 
「スキュッ!ガッッ!ジャーーーーッ!!」
 
その時だった。1台のバイクが車と接触し、転倒した。
バイク乗りは火花を散らしたバイクと
20メートルほど一緒にアスファルトの上を滑った。
 
俺「なんかアイツ変だな」
 
ワタル「足いっちゃってんじゃねーの?」
 
バイク乗りは追越車線で上半身を起こしたが、
なかなか立ち上がれずにいた。
 
タカマツ「やばい、轢かれちゃうよ」
 
俺「この車が行ったら、渡ろう」
 
猛スピードで流れる車が途切れるのを俺たちは焦りながら待った。
 
「キュィィィィィィン!!」
 
「!!」
 
「そこの人たち、解散しなさい!」
 
パトランプを回しながら、パトカーが近づいてきた。
俺たちはホっとした。
 
警察官「何をしとるか!解散しなさい!」
 
警察官がパトカーから降り、近づいてくる。
 
俺「お巡りさん、あそこの追越車線でバイクが事故って、バイク乗りが、」
 
警察官「うるさい!解散しろ!!」
 
俺「!?」
 
俺「いや、だって助けないと、」
 
警察官「聞こえんのか!?」
 
警察官と押し問答をしている間にいつのまにかギャラリーに
取り囲まれていた。
一触即発、緊迫した雰囲気が張り詰め、あまりの緊張から
バイパスを走る車の爆音すら聞こえなくなっていた。
 
「ドムッッ!!」
 
「!?」
 
その音は、張り詰めた糸が切れる音だと誰もが思った。
ギャラリーのひとりが、パトカーに蹴りを入れた。
 
「やっちまえ!!」
 
誰かが叫ぶと同時に、ギャラリーはパトカーを取り囲んだ。
 
「せーのぉ!!」
 
ギャラリーはそれぞれパトカー掴めるところを掴み、持ち上げ始めた。
パトカーはゆっくりと傾き始めた。
 
「グワッキャン!!」
 
この漆黒の夜空よりも濃い黒のどてっ腹を見せ、パトカーは仰向けになった。
 
「シャーーーー」
 
潰れたパトランプの根本だけが、何かをかき混ぜるように高速で回っていた。
 
警察官「こちら、、、応援を、要請、、」
 
パトカーがひっくり返される前に助手席から逃げ出したもうひとりの警察官が
肩に付けた無線機に向けしゃべり始めた。
ふたりの警察官はどちらも中腰になり、ゆっくりと後ずさりし始めた。
その右手は拳銃を下げたホルスターにかかっていた。
 
俺「お、おい、逃げよう」
 
俺たち3人は殺気立ったギャラリーの塊の中を静かに通り抜け単車に跨り
キーを回すと同時にセルを押す。
 
俺「捕まんなよ!」
 
あちこちからパトカーのサイレンの音が聞こえる中、無我夢中で走った。
どうやって帰ったかは覚えていないが、深夜に鳴った電話で
それぞれの無事を知った。
 
当時は日本の企業は土曜日まで仕事があり、「半ドン」と呼ばれる
午後休暇が当たり前だった。
半ドンで仕事を終えた俺とワタルは、昼メシを買う金もなく、
部屋で寝転んで、時折窓から出ていくタバコの煙を眺めていた。
 
俺「あれからあそこ(ゼロヨン)、行ったかぁ?」
 
ワタル「そうそう、土曜の夜は機動隊のバスが停まってて、もうムリ」
 
俺「そっかぁ」
 
チャイムが鳴り、3階の窓から入口を見下ろすと、タカマツがいた。
 
タカマツ「マックだぜ~」
 
タカマツがハンバーガーを買ってきた。
 
俺「タカマツ、お前、顔、どうした??」
 
タカマツ「うん。先輩に生意気だって、やられちゃってね。。」
 
俺「何!?」
 
タカマツ「俺が、俺が悪いんだけどさぁ、あんなに大勢でこなくても。。」
 
俺「くそっ!」
 
俺たちはケチャップが染みて湿っぽくなったハンバーガーを
モソモソと無言で食べカーペットに寝転んだ。
 
ワタル「さいあき、」
 
俺「ん」
 
ワタル「いいことねぇかなぁ。。」
 
俺「ああ」
 
何もかもが脆弱で、将来を夢見ることなどとてもできない、
そんな時の流れの中で、俺たちは生きていた。
俺たちはまた、窓から出ていくタバコの煙を、いつまでも眺めていた。
 
それからひと月後、俺は会社を辞めた。
 
「新潟まで、自由席1枚。あ、いや、グリーン席1枚」
 
もうこの街に来ることもないだろうと思った俺は、記念にグリーン車を奢った。
 
「はぁ!間に合った!」
 
ホームで新幹線を待っていると、ワタルがビールを持って見送りに駆け付けた。
 
俺「ワタル、ありがとな。俺はもうここには戻らねぇよ」
 
ワタル「俺だって、こんなとこ。。絶対クニ(故郷)へ帰ってやる」
 
ワタルの故郷は、金沢だった。
 
ワタル「金沢帰ったらよ、バイクで日本一周してよ、そん時新潟に寄るから!」
 
ワタルは涙で潤んだ目で、吐き捨てるように言った。
続けて何かをぶちまけるように話していたが、
新幹線の自動ドアが閉まり、聞き取れなかった。
 
(またな)
 
動き出す新幹線のガラス越しに、俺はワタルに口パクで別れを言った。
 
グリーン車のドアが開くとその車両には企業のVIPらしき人がふたりだけ
背もたれを思い切り倒し、新聞を読んでいた。
 
「カシュ!」
 
俺も背もたれを思い切り倒し、ワタルからもらったビールを飲み、
流れるビルの景色をぼんやりと眺めていた。
 
 
事務員「さいあきさんも行くんですかぁ!?」
 
俺「あったり前だろ!関東本社はな、政策的業務をする社屋だ。
  政策的な俺が行かなくてどうする!?」
 
2017年、秋。
俺の勤めている会社は関東は埼玉に進出、新たに社屋を建て、
俺はその人員に志願した。
開所、落成式、そして年末の繁忙期に続き、決算期と
落ち着く暇はなかった。
 
(政策的業務、かぁ。。)
 
先発隊の人数は思いの外少なく、また新潟からの応援体制も
日々薄れて行った。業務は増える一方だが手が足りない。
 
(くそっ!間に合わねぇ)
 
やることなす事後手に回り、俺は自信を無くしていた。
 
俺「所沢、行ってきます」
 
その日、仕事で所沢へ向かった。国道463号は、途中、北浦和を横切った。
その時、かすかに記憶にある風景を見かけた。
 
俺「まだ、あったのか」
 
車を停め、ゆっくりとその小さな公園に入ると「あの頃」原付を停め
メットを傍らに置き、ほか弁をほおばっていた、あのベンチがあった。
ベンチは風雨にさらされ、角は丸くなり、朽ち果てた部分だけ新しい木材で
補修されていた。何度も何度も木ねじを打ちなおされ、ネジだらけになっていた。
 
俺は「あの頃」の事を少しずつ思い出していたが、妙に薄暗い事に気付いた。
 
俺「お前ら、」
 
あの頃、俺の背丈と大して変わらなかったセコイアの植え込みが
なんということだろう、10メートルを超える大木となり、
そこいらを一面日蔭にしていた。
 
俺「こんなに、立派になって」
 
太く頼もしい幹にそっと手を当てる。
あれから、俺とセコイアは別々の場所で年を重ねてきた。
ひょろひょろだったセコイヤはこんなに立派になったというのに
今の俺と言ったらどうだ。
 
朽ちたベンチを見返すと、安いスーツを着て、
ほか弁を頬張る俺が見えたような気がした。
 
あの頃は、何もなかった。だが今は、知識も、経験も、
出会ってきたたくさんの人たちもいるじゃないか。
 
(もう一度、やってみよう)
 
青空に向かって背伸びをするように伸びたセコイアを見上げながら、
俺は思った。
 
「フワァンワンワン」
 
半分電気で動く営業車に乗り込み、
俺はルームミラーに写るセコイアを何度も何度も見返した。
 
金も夢もない時代を過ごしていたあの頃の自分に、
励まされた気がした。
 
(そうさ、もう一度。)
 
***
 
暑中お見舞い申し上げます。
今年は尋常でない暑い夏ですが、
いかがお過ごしでしょうか?
 
グリーン車まで乗って帰郷した
「帰らぬと心に決めた街・埼玉」に
去年の秋に再上陸しまして
休日は、あの頃住んでいた街を散策しては
タイムスリップを楽しんでいます。
 
金も夢もないあの頃はいったい何だったのかと
考える事がよくありましたが、
「2018年夏の自分」を励ますために仕組まれた演出
だったのではないかと思うようになりました。
 
毎日いろんな事が起きますが、起きた事について
どう意味づけするかで、豊かな気持ちになったり
元気がなくなったりするものだと思っています。
 
今暮らしている埼玉も、きっと何十年後の自分が
きっといい意味付けをしてくれる事を願って。。
 
 
 
2017-01-04 10:31:43

その楽器は音が出ない

テーマ:HarleyDavidson FLHTC
「え!?」
 
「何やってんだよ、いったい。。」
 
高1の春のことだ。
俺はあちこちの親戚からもらった入学祝いを
銀行に預けに行った。
 
窓口で渡された記帳済みの通帳には
さっき預けた金額しか残高がなかった。
幼稚園の時から全く使わずに貯めに貯めた
数十万のお年玉は
1円残らず引き出されていた。
この通帳の印鑑は、おふくろが持っていた。
 
「あんたの時もしてあげるから」
 
銀行からぶっ飛んで家に戻り
おふくろに詰め寄ると
洗い物をしながらおふくろは背中でこう言った。
 
おふくろはそれしか言わず
給湯器から流れ出るお湯の音と
カチャカチャと食器のぶつかる音だけが
いつまでもしていた。
 
俺は泣きたくなった。
 
その春、兄貴が大学受験に失敗した。
予備校に行くわけでもなく
図書館通いを始め、何週間か経った頃
大学から補欠繰り上げで合格したと
間の悪い「サクラサク」が届いた。
 
ここまでは微笑ましい出来事だったが
十年以上貯めた俺のお年玉は
兄貴の入学金に消えてしまった。

俺が小さい頃は、少しは裕福だったらしい。
週末はよく家族で外食をした。
行きつけの鶏料理屋があり
新潟名物の半羽揚げ(鶏肉を半羽分丸ごと揚げたもの)を
よく食べに行った記憶がある。
 
新築の家を建てた4年後、オヤジの会社の業績が悪くなり
弟が生まれた。
俺は剣道、サッカー、ボーイスカウト、バロックリコーダーと
いろんなことをやらせてもらっていたが、その年に剣道を残し
すべて辞めさせられた。
 
習い事に費やしていた時間は弟の子守に代わり
おふくろはパートに出た。
 
おふくろは琴の先生で、親父は仕事の傍ら尺八の先生でもあり
週3回、弟子を集め稽古をしていた。
金のために稽古の日を増やし、俺たち家族はますます
夕食を一緒にとることがなくなった。
 
稽古の日は幼い弟にインスタントラーメンを作ってあげた。
 
「あんたたちのためにやってるんだからね」
 
稽古の合間におふくろが顔をのぞかせ言う。
 
(何もそんな言い方しなくても。。)
 
稽古の日でなくとも、おふくろと親父はよく練習をしていたので
しょっちゅう琴と尺八の音色が家中響き渡っていたが
どんな素晴らしい曲であれ、俺の心の中に届くことはなく
やがて俺の耳には楽器の音はまったく聞こえなくなってしまった。
 
その頃からオヤジとおふくろは金のことでよくケンカを
するようになり、たびたび家の中が暗くなった。
 
(やっぱり、世の中、金だ)
 
高1の春のこの出来事は、
これから俺が歩む道を決めてしまった。
高校を出てから東京の叔父の会社に就職するが
叔父が亡くなり新潟に戻ってきた。
 
自分の不注意で負ったケガの後遺症で
なかなか職が決まらなかった俺は
高校の時バイトをしていた食堂で雇ってもらった。
ある日オヤジの会社の守衛室から注文があり
出前に行ったら、仕事が終わったオヤジとバッタリ会った。
 
「オヤジ!」
 
左手におかもちを持ち、空いている右手を振った。
オヤジは俺に気付いたものの、すぐに目をそらし
足早に反対側に消えていった。
 
(オヤジ。。)
 
そりゃあ親からしてみれば
薄汚れた白衣着てラーメンを出前する息子なんて
みっともないかもしれないが
これはかなりキツかった。
 
「やったらやった分くれるで」
 
半年後に大阪商人の会社に転職して、
それはもう働きまくった。
疲れてくじけそうになった時は
あの時の親父の冷ややかな態度を思い出し
自分を奮い立たせた。
 
(クソオヤジめ!)
 
1年後に親父の給与を追い越した俺は
家を出ることにした。
 
おふくろ「家にお金入れてくれないと困るわぁ」
 
俺「助けてあげたいのは山々だけど、俺は次男だから
  自分の事は自分で何とかしなくちゃなんないんだよ」
 
お年玉の事とか、出前の時の事とか
皮肉たっぷりの気持ちで言った精一杯の言葉だった。
それからいくつもの企業で俺は一生懸命働いた。
 
去年の夏が終わった頃、ハーレーのMCメンバーの後輩から
封筒が届いた。
上質な厚い紙でできたその封筒を開けると
結婚式の招待状が入っていた。
 
スーツケースに礼服を詰め込み新幹線に乗る。
久しぶりの横浜はまぶしいほどの日差しが降り注いでいた。
 
「お久しぶりです。ご無沙汰しています。」
 
礼服に着替えロビーに行くと、MCのメンバーが揃っていた。
年に一度は会っているが、会うたびに歳を重ねているのが
目に見えてわかった。
 
宴が始まると、後輩に似つかわしくない
育ちの良さそうな綺麗な嫁と後輩が
スポットライトを浴びながら入場する。
 
「私あの娘が持ってるものひとつも持ってないよ!」
 
招待されたメンバーの女が言う。
 
職場関係に、学生の頃の友人たち、様々な人たちが招待されていたが
俺たちMCメンバーのテーブルだけ、一種異様な雰囲気が漂っていた。
もうこの後輩との付き合いも数十年になる。
初めて会った時はまだ彼は学生だった。
 
この気持ちはいったい何だろう。
家族でもなく、友人でもない。
しかし兄弟を祝福するようなこの気持ち。
なかなか会えずにいたが、
こんな時に付き合いの深さがわかるものだとその時俺は知った。
 
「もう、ハーレーに乗らんのか」
 
宴も終盤に入った頃、年長のメンバーが言った。
 
俺はその問いかけに何も答えず目を落とし、
デザートの皿の模様をじっと見つめていた。
 
宴が終わった後、後輩を囲み居酒屋で飲み
積もる話に花が咲く。
 
「いいファミリーだ」
 
プレジデントが、言った。
 
みんなその言葉で思い思いの事を考え無口になったが
全員笑顔であふれていた。
 
バイク屋「やっぱダメでしたか?」
 
俺「いや、ダメじゃない。ただ、」
 
バイク屋「ただ?」
 
俺「帰ることにしたんだよ」
 
ウィ、ゲッッッシュ!
ドロッ、ドロロロロ!
 
8年ぶりに跨ったハーレーで、雪のちらつく農道を駆け抜ける。
もう、このバイクで20台目になる。
たくさんの、本当にたくさんのバイクに乗れるほど
稼ぐことが少しは上手になったけれど
あの時薄汚れた白衣でオヤジにバッタリ会った時
言って欲しかったな、

「よぉ、ご苦労さん」ってね。
 
 
***
明けましておめでとうございます。
みなさん本当に本当にご無沙汰しております。
こちらは至って元気にしております。
 
そんな理由で「あっち側」に帰る事にいたしまして
メンバーに画像を送った返事はもちろん
「おかえりなさい」でした。
 
ハーレー、ビーエム、ドカにトラ、デザートにベスパと
国産4メーカーを含め9メーカーフルコースを堪能できた事は
バイク乗り冥利に尽き本当に幸せなことだと思っています。
 
昨年は昨今の人不足により本業が激忙でして
ブログを書く時間もバイクに乗る時間もありませんでした。
 
バイクに乗ったのはたったの2回でしたが、
一度跨れば18時間ぐらい走ってしまうので、
走行距離は4,000キロと
回数の割には満足できる走りでありました。
 
また昨年は公私ともに終焉を目の当たりにする機会が多く
物事にはすべて終わりがあるのだなぁと強く感じた年でもあり
ハーレーのFLHTCであればジジイになって足腰弱っても
舟付けてサイドカーにすればいいか、なんて「先を見越した選択」を
した自分はさすがだと思いましたが、つまらん先細りの妄想などしてるより
今年はメットが虫だらけになるぐらい走らないと人生後悔してしまうような
そんな気がしてきました。
 
そんな中、今年の抱負は
 
「広島以上、鹿児島未満」
 
と、させていただきます。
 
今年もどうかよろしくお願いいたします。
2015-11-03 10:19:44

非、紳士的。

テーマ:Triumph TigerExp1200

【新新バイパス】

新新(しんしん)バイパス、新潟市内を貫く
40kmの自動車専用道路。

限定解除をした翌年の事だ。

このバイパスを走っていると、ケツに黒いステーションワゴンが付いた。

追突するぞとばかりに、グイグイと詰め寄ってくる。

車線を変更して譲ったと見せかけ、ワゴンと並走する。

ワゴンはアクセルを踏み込むが、こちらもアクセルを開け譲らない。
ワゴンはますますスピード上げるが、こちらももちろん譲らない。

「北陸道料金所まで3km」

ものすごい勢いで標識が通り過ぎると、それが合図のように
ワゴンはガクンとスピードを落とした。

「ピッピ!」

走行車線を走っているワゴンの男に、追越車線からクラクションを鳴らす。
男がこちらを見た瞬間、単車のカウルに書かれた車名を俺は人差し指と中指で指さす。

(読みやがれ!)

カウルには車名の後に、1リットルを超える排気量の数字が
鮮やかなグラデーションで輝いていた。

男がカウルの文字を読んだことを確認して、1速落としアクセルを開け
ワゴンを後にした。

(忘れんなよ。バイクは車より速いってことを)

【琵琶湖色】

郵便受けのフタを開けると
ドカティの車検の案内ハガキが届いていた。

バイク屋「せっかく来てもらったのですが、、」

俺「え?なになに?」

バイク屋「代車が出払っていて、すみません」

ムルティの車検の予約を入れ、バイク屋に行ったものの
いつもの125ccの代車は他の客で出払っていた。

俺「あ、何でもいいよ。帰れれば」

バイク屋「さいあきさんは、このバイクじゃないとダメだ、
     とかあります?」

俺「いや、乗れば何でも好きになるほうだけど」

バイク屋「じゃあ今回は特別ってことで」

バイク屋が俺の目の前でサイドスタンドをかけたそのバイクは
1170ccのボクサーツイン、BMWだった。

(こりゃいい!)

車検は1週間ぐらいかかることだし、この「特別な代車」で
琵琶湖に行こうと思ったのは当然のことだった。

バイク屋「琵琶湖とか、行かないでくださいね」

俺「あ、ああ。わかってるよ」

BMWを見る俺の目の色は、どうやら「琵琶湖色」をしていたらしく
バイク屋にはお見通しだった。

グロロム!グロッ!グロム!

通勤帰りのイラついたサラリーマンの車が飛ばす北陸道に上がる。
平日のこの時間に走るバイクなど、俺ぐらいのものだった。

白いステーションワゴンが俺の後ろにピッタリと着いた。
走行車線に車線変更し、譲ったと思わせて並走する。

俺を抜かんと踏み込む、その運転手の横顔を見ながら
少しだけBMWのアクセルを開く。

さらにワゴンは踏み込む。

こちらも少しだけ、アクセルを、開く。

中之島見附インターを過ぎたあたりで
2台は相当なスピードが出ていたが
緩い左コーナーを前にワゴンのスピードがガクンと落ち
戦意喪失が手に取るようにわかった。

「パッ!パッ!」

走行車線からワゴンの男に向けクラクションを鳴らす。

男がこちらを見ると同時に、タンクに貼られたエンブレムを
俺は人差し指と中指で指さす。

(競争すんなら、相手選べよ)

俺は追越車線に戻り、ワゴンのフロントグリルに
水平対向が吐き出す排気音を重い切り浴びせかけた。

グロム!グロム!グロロロム!!

(車のくせに)

アクセルを開くたび、ジャイロ効果でフロントが右に振られる。

ミラーの中で小さくなっていくワゴンを確認して
路面に吸い付くようなこのマシンの走りを楽しみながら帰った。

【異常事態】

「いいバイクだったよ!」

休みの日の朝、車検の上がったムルティを引き取りに行った。
さんざん「特別な代車」をエスプレッソを飲みながら
ベタ褒めした後ムルティで走り出した。

20キロほど走り、信号待ちからスタートすると
何の前触れもなくストンとエンジンが止った。

警告灯の全部のランプがランダムに点滅し
液晶のエラーメッセージは1画面では収まりきらず
2つの画面で交互に表示された。

セルは回らず、キーレスのこのマシンは
キルスイッチでパワーを落とすことすら
できない状態だった。

「前代未聞の、異常事態だよ」

ありとあらゆるランプが点滅するムルティを路肩に停め
バイク屋に電話した。

俺はムルティの前でBMWを褒めまくったから
ムルティが妬いてぶっ壊れてしまったと思った。



バイク屋「いい話ではないのですが、、」

仕事から帰り、発泡酒で作ったレッドアイを飲んでいたら
バイク屋から電話があった。

ムルティの電子制御サスをコントロールしているコンピューターが
イカれてしまい、パーツ代だけで数十万円するとのことだった。

この半年の間、ムルティにはずいぶん金をかけた。

乗り出す前からの修理が数回、金額のデカい消耗品の交換に
アクセサリーの購入、そして車検。

俺「そう。仕方ねえよ。ガイシャだもん」

もう7台もガイシャと付き合っているが、国産と比較したら
圧倒的に「何か」がある。それがガイシャというものだ。

とはいえバイク屋は俺の声のトーンで
十分落ち込んでいたことを知っていた。

大枚はたけば修理はもちろん可能ではあるけれど
この個体についての当たりはずれや、経年変化の度合いなどが
絡んでいるようだとバイク屋の話ぶりからわかった。

バイク屋「いい方法を考えますので、時間もらえませんか?」

俺「ああ、今回は、全部預けるよ」

俺はバイク屋の提案を待つことにした。



【バイクの返事】

次の休みにバイク屋へ行った。

外装がすべて外され、むき出しになったムルティを見て
事の重大さに気付いた。

ムルティを前にしてメカニックが今回のトラブルの原因を説明する。

メカニック「このユニットに異常がみられますが、
      この年式のムルティに最近多く見られるトラブルでして」

突然のトラブルの原因と、その修理代を聞いて気持ちがかなり萎えた。

バイク屋「提案があります」

俺の顔色を見計らってバイク屋が言った。
バイク屋の提案は、今までムルティにかけた金と
これからかかる金のことを勘案しての提案だった。

バイク屋の提案はたしかに条件のいい話だった。

その条件で出してきたマシンに跨り、
車体を起こしてハンドルをまっすぐにして、
目をつぶり、うつむく。

バイク屋「車高は今までよりも高くなり、車重も増しますが
     それはすぐに慣れますので、」

店員のセールストークがやまない。

俺は目をつぶったまま、うつむき続けていた。

バイク屋「そしてメーターの脇についているボタンですが、」


俺「申し訳ないが、コイツとふたりにしてくれないか」


バイク屋「え?」


俺「コイツと、ふたりに、してくれないか」

俺はうつむいたまま、バイク屋に言った。

バイク屋は表に出ていった。


バイクとの出会いは嬉しいものだが、別れはつきものだ。

出会ったバイクとの行く末なんて、誰にもわからない。

どんなバイクであろうと、一度跨って走ってしまうと

いろんな事がある。本当にいろんな事がある。


目をつぶり、うつむいたまま、バイクに問いかける。



どんな付き合いになるかわからないが

いい時も悪い時も一緒に付き合ってくれるか?



閉店準備をし始めたバイク屋は、表にある展示車を片付けていた。

俺「もらうよ」

バイクから「いい返事」をもらった俺は、バイク屋に「いい返事」を返した。


【紳士に非ず】

今日取りに行かないと2週間も先になる。

仕事の予定をいくつか移動して、急遽午後から休みをとり
バイクを取りに行った。

バイク屋のではヒーター取り付けのため外装を外され
丸裸になったバイクが俺を待っていた。

バイク屋「急いでやっていますが、夕方になりそうで」

俺「うん。今日しか受け取れないから、夜中になっても待ってるよ」

結局、オプションが組み上がりメカニックの試運転が完了したのは
日が暮れてからだった。

メットをかぶり、キーを回すと液晶パネルに今の時刻が浮かび上がる。

(この前と、同じ時間か)

北陸道に上がると、いつもの殺伐とした空気が充満していた。

上に上がってまだ2kmも走っていないというのに、
黒いツリ目のミニバンがケツに付く。

(懲りねぇやつらだな)

パッパパ!!

ミニバンがパッシングをする。

俺の頭の中でゴングが鳴る。

「見せてやろうぜ。タイガー。」


ヒュン!ヒュム!ヒュム!

ヒュキィィーーーーーッ!!


戦闘機のような排気音のそのバイクは
排気音だけでなく、加速までも戦闘機のようだった。

ミラーの中で小さくなっていくミニバンを見届けながら
このバイクにむかって叫ぶ。

「これからも、よろしくな!!」

こうして俺たちふたりは、始まったんだ。



紳士の国からやってきた、とても紳士的とはいえないバイク。

Triumph Tiger Explorer 1200

負けず劣らず、乗り手もまた、非紳士的。

単車、乗り換えました。





2015-08-01 20:51:36

Tom's TAPE

テーマ:ブログ
(今日も真夏日となります。熱中症にご注意ください、)

毎朝天気予報から同じフレーズが流れる季節になった。
今年の夏は、例年以上にクソ暑く感じる。

先日、毎年恒例の職場の納涼会があった。



春川「今日こそは言うぞー!」

春川は入社6年目。薄々感づいてはいたが、
おととし入社した俺の部下、小山に想いを寄せているらしく
飲んだ勢いで告白するつもりらしい。

春川「さいあきさん、今日は告白しますんで!」

俺「俺が小山だったらごめんだな」

春川「えー!?なんでですか!?だって彼氏いないんですよね?」

俺「はぁ?彼氏がいねぇ?
  それじゃお前「あわよくば付き合ってください」
  みたいなもんじゃねーかよ!人を好きになるってのはな、」

春川「人を好きになるっていうのは?」

俺は春川と話すうちに、人を好きになるということは
天地がひっくり返ってしまうぐらい
自分がどうかなってしまうことを思い出した。




【Tom's TAPE】

「トムが一番で、さいあき君が二番!」

「うそうそ!怒った?」

いたずらな顔をして下から俺の顔を覗き込む。

俺「あーそー。」

トム・クルーズが好きなその娘は
のんちゃんという娘だった。

のんちゃんのバイト先まで迎えに行き、
門限の22:00まで家に送る。

車を運転して、そしてちょっとだけ車を停め話をする。
これが毎日の日課だった。

のん「帰りたくないよー」

俺「だめ。絶対だめ。帰りなさい。」

のんちゃんは実家住まいであったため
門限があった。

のん「あと30分ぐらい大丈夫だよ」

俺「だぁーーーめ!」

以前、実家住まいの娘と付き合ったことがあったが
門限を過ぎた日があり、相手の親がそれはもう不機嫌になり
それからギクシャクしたふたりは結局別れてしまった。

のんちゃんとはそんなことにならないよう気を付けていた。

(困ったな。。)

まったく車から降りようとしないのんちゃんを
見ながらそう思った。

俺「あ、じゃあ今度の休みに美味しいパスタ食べに行こうな!」

のん「うん!行きた~い!」

俺「はい!じゃあ降りて降りて!」

やっと車から降ろした。

俺「じゃあまた明日」

ルームミラーに写った手を振るのんちゃんを見ながら
車を走らせた。

(このままじゃ門限を破るのも時間の問題だなぁ)

信号待ちでそんなことを思っていたら
いいアイデアを思い付いた。



次の日、バイト先にのんちゃんを迎えに行き、
車を停めてしばらく話し、そしてまもなく門限の時間となった。

のん「帰りたくなーい♪帰りたくなーい♪」

今日はEテレの「おかあさんといっしょ」に出てくる
「帰りたくない歌」を歌い始めた。

俺「今日はきっと帰りたくなる理由があるよ」

のん「えー。そんなんないよー!」

俺「これだよ」

俺はグローブボックスを開け、1本のカセットテープを出し
指ではさみ、のんちゃんの目の前でカタカタと振った。

のん「えー!なにそれー!」

俺「Tom's TAPE」

のん「ええー!なになに??」

トム・クルーズが好きなのんちゃんのために
俺がラジカセを前に60分間、DJバリのトークと
音楽を録音した「ボイスレター」だった。
このボイスレターに「Tom's TAPE」とい名を付けた。

のん「聞きたーい!今聞こ!」

俺「だぁーめ!のんちゃんがなかなか帰らないから
  家で聞いて楽しむために作ったの!さ、降りて降りて!」

のんちゃんはその夜はゴネることなく
サっと車を降りた。

俺「お楽しみに!」

そう言って車を出すと、のんちゃんが握っていた
カセットテープは、手を振るごとにカタカタ鳴った。




「ハーイ!今夜もアリガトウ!」

家に送ったのんちゃんが、風呂を上がってから聞くと
想定して作ったテープなので、始まりはいつも
「今夜もありがとう」で始めた。

「じゃあ今夜は俺が17歳の時によく聞いていたこの曲をどうぞ!」

ラジカセをポーズボタンで停め、17歳の時によく聞いていたCDを
探すが、あると思った場所にない。

さんざんあちこち探したが、ついに見つからなかった。

仕方がないので20歳の時によく聞いていたCDを入れた。

「はい、20歳の時によく聞いていた曲を聞いてもらいました!」




翌々日、バイト帰りののんちゃんにやっぱり言われる。

のん「ねぇ、この前のテープでさぁ、17歳の時に聞いていた曲をどうぞ!って言って
   曲が終わったら20歳の時によく聞いていた曲でしたって言ってたんだけど
   どーゆーこと??」

俺「ん?そんなんあったっけ?」

のん「あったよー。なんでそーなっちゃったの??」

俺「さーねー。。」

のん「なんでー??」

俺「曲がかかってる間に3年経っちゃったんじゃない?」

のん「そんなことあるわけないじゃん!」

この一件から、話す内容や流す曲をちょっと準備するようになったが
なにせ素人のお手製テープなので、いろいろ不手際があった。

テープを渡す夜はずっとずっと続いた。

あの「帰りたくない」とゴネていた頃が懐かしく思える。

そうしているうちに、俺も職場で大きな仕事を任されるようになり
帰りが遅くなる日も多くなった。

のんちゃんを送り、停めた車で話しているうちに
仕事の疲れで眠ってしまうこともあった。




のん「ねぇ」

俺「あ、ごめん。寝ちゃったね。ごめん」

のん「もう、いいよ」

俺「え?何が?」

のん「テープ。もう作らなくていいよ」

俺「うん。。でも。。」

のん「もういっぱいもらったから。今までどうもありがとう」

俺「テープ、何本になった?」

のん「120本。ほら、きょうどキリがいいし!」

俺「ん~、ごめんな。キリが悪くて」

そう言ってグローブボックスから
121本めのテープを出し、
カタカタと振ってからのんちゃんに渡した。

俺「こんなことだったら。。」

のん「なに?」

俺「ギネスに申請しておけばよかった」

のん「大丈夫!あたしの中のギネスブックでは
   さいあき君が世界一だから!」

門限を守るために作ったTom's TAPEは
結局3年間作り続け
121時間のんちゃんに語り続けた。

のんちゃんとは結局結ばれることはなかったが
「いつか男になって世の中の男たちを仕事で見返してやる」と
いつも口癖のように言っていた働き者ののんちゃんは
今では大きな企業の取締役になったらしい。

俺がまた恋に落ち、あの時と同じことができるかと言ったら、
きっとそれはできないだろう。

たぶん俺の事だからきっと、
またとんでもないことを思い付きやってしまうと思う。

天地がひっくり返ってしまうぐらい
自分がどうかなってしまう理由ってのは



いつの時代も、愛に恋。
2015-06-28 20:55:26

夏に咲く華。

テーマ:Multistrada 1200S

シューーーーッッ!!!

福島のメンバーの家に着いたとたん、
タイヤがパンクした。
2.5Barのエアがガレージの埃を巻き上げる。

いずれにしても修理に持っていかなければならないので
パニアケースを外すことにした。

シーーィィ、、、

パニアケースを外し終わった時にはエアは全て抜けてしまった。

すでに一杯やってるメンバーにも手伝ってもらい、
ムルティをトレーラーに載せる。

俺「じゃあ、ちょっと行ってきます」

けん引するジープの助手席から
「一杯」を中断したメンバーに声をかけた。



街の修理工場に着くなり、トレーラーの上で
パンクを修理してもらった。





メンバーの家に戻り、まずは仏壇にお参り。

その仏壇には、若くして亡くなったメンバーの奥さんと
毎年この福島で会っていたバイク仲間のトモコの遺影。

(今年も、俺をお守りください)

毎年ここで手を合わせる時に、同じことを願う。

18年前から毎年6月に福島で集まっていたが、
数年前の6月、トモコは秋田に帰る途中、
東北道で事故で亡くなった。

それから何年か、どうも気がのらず顔を出さなかったが、
ある年の6月、トモコの霊もここに来ているんじゃないかと
思いはじめ、また顔を出すようになった。

それからと言うもの、顔を出すたびに、その夏は
トモコに守ってもらうことにしている。



いつもの6月のように、数人のメンバーとその気の置けない
仲間たちで飲む。

夕方から近年ありがちな集中豪雨に遭い
俺たちはテラスのバーベキューから室内に避難する。

「コッホコホコホ!コホ」

1年ぶりに会うクラブの会長は、一度咳き込むとなかなか止まらない。

会長「お前、今年どこ走った?」

俺「先月、名古屋から福井経由、京都行きで、まだ1300キロほどです」

会長「そうか、来年俺の孫がデビューするから、よろしくな」

俺「かしこまりました」

会長「俺はもうそんなに遠くまで走れない。頼むな」



俺は、とてもショックだった。

この18年の間、青森から兵庫まで、あちこち共に走った会長の
この言葉にショックを受けた。

そりゃあ子供ができたからとか、金が無いからとか、
今までもいろんな理由でバイクを降りたヤツはいる。

ただ、ただ、俺は加齢が理由で、バイクを降りる人間を
目の当たりにしたことがなかった。



会長「頼むな」

俺「・・・」

俺は返す言葉もなく、ただうつむいていた。



翌朝、仲間のワタさんがすでに目を覚ましていた。

俺「おはようございます」

ワタさん「おはよう」

ワタさん「さいあき、俺もここ何年か仕事が忙しくて大して走れなかったけど、
     今年は走ろうと思った」

    「体が続くまで、ね」



俺はこのワタさんの言葉で、また昨日の会長の話を思い出した。

俺が会長の歳になるまで何年ある?

いや、そんなことは本当は関係なくて、

俺らバイク乗りは全員「夏に咲く華」なんだ。

人生の夏だけにしか咲かない華なんだ。



新潟に入った最初のパーキングでバイク屋に電話をした。

バイク屋「え!?タイヤ交換リアだけって言ってませんでしたっけ?」

俺「だからさ、急で悪いんだけど、フロントも頼むわ!
  片方ずつ換えてる時間ないんだ!」

バイク屋「何か、あったんすか?」

俺「何でもないよ!次の休みに行くから!」



本当は、思い出したんだ

バイクに乗れる季節に、限りがあることを。

電話を切って、残りの磐越道をかっ飛ばす。



そうさ、俺たちは所詮

夏に咲く華。

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