ショーン・レヴィ監督、ライアン・レイノルズ、ジョディ・カマー、ジョー・キーリー、リル・レル・ハウリー、ウトカルシュ・アンベードカル、ブリトニー・オールドフォード、タイカ・ワイティティ、チャニング・テイタムほか出演の『フリー・ガイ』。

 

オンライン・ゲーム「フリー・シティ」の“モブキャラ(その他大勢)”で「いい日ではなくて素晴らしい日を」が口癖の銀行員ガイ(ライアン・レイノルズ)は職場で強盗に襲われる毎日を送っていたが、ある日、道ですれ違ったサングラスの女性モロトフ(ジョディ・カマー)に一目惚れ。銀行強盗からサングラスを奪ったガイがそれをかけると、ゲームのプレイヤーと同様にさまざまなアイテムを入手できるようになり、プログラムを無視して好きなように行動し始める。やがてモロトフと対等なレヴェルにまで到達したガイは、“ブルー・シャツ・ガイ”としてその活躍ぶりが注目されるようになる。

 

ネタバレにご注意ください。

 

デッドプール」シリーズのライアン・レイノルズ主演のヴァーチャル・リアリティ映画。

 

自分がゲームのキャラクターだと知った主人公の物語だという紹介で過去のいろんな映画(『シュガー・ラッシュ』『LEGO(R)ムービー』『ピクセル』『レディ・プレイヤー1』等々)を連想して、好みの作品っぽいなぁ、と思って楽しみにしていました。

 

ライアン・レイノルズ自身も製作にたずさわっていて、デッドプールと同じぐらいかそれ以上に入れ込んで作ったそうだから大いに期待させられたし。

 

監督のショーン・レヴィはロボット同士で試合をする『リアル・スティール』の人で、『リアル・スティール』の主演だったヒュー・ジャックマンが今回は声のカメオ出演をしている(モロトフ・ガールに地図を渡す仮面の男役)。

 

ライアン・レイノルズはヒュー・ジャックマンとはデッドプールがらみでいろいろ因縁があるから、この繋がりは面白いですね(^o^)

 

他にもドウェイン・ジョンソンも声のカメオ出演(銀行強盗その2役)をしていたようだけど、声だけだからわかんなかった。

 

「フリー・シティ」を販売しているスナミ・スタジオの社長アントワン役でタイカ・ワイティティが出演していて、先日観た『ザ・スーサイド・スクワッド』では良いお父さん役だったのが、こちらでは楽しそうに悪役を演じている。『ジョジョ・ラビット』で演じたヒトラー同様のコミカルな演技を披露。

 

結論から言いますと、普通に楽しい映画でした。カップルとか友だち同士で観るのに最適なエンタメ作品かと(僕はいつものようにお一人様での鑑賞でしたが)。

 

逆にいえば、個人的にはそれ以上でも以下でもなく何かガツンとくるものは特になかった。

 

いや、どうやらゲームファンにとっては小ネタがいっぱい仕込まれてるようだし、後述しますが、ハリウッドの映画のシステムについてあれこれ考えるきっかけを与えてもくれているので観てよかったですけどね。「普通に楽しめる」というのは大事なことだし。

 

主人公が、自分が架空のゲームキャラであることに気づく、というお話は珍しくないし、わりとありがちなアイディアだと思うんだけど、それと“モブキャラ”の存在を絡めたことが今っぽいし、ディズニーっぽくもある(映画の企画が立ち上がったのは20世紀フォックスがディズニーに買収される前だったようだけど)。

 

ディズニーが親会社であるおかげでアベンジャーズやスター・ウォーズのネタが堂々とできて(『イン・ザ・ハイツ』『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』に続いてここでもSWネタが出てきて、若干食傷気味なんだが。SWをネタにすれば観客が必ず食いつくと思うなよ、さすがに飽きるわ^_^;)“”もああいう形でカメオ出演できたのだろうけど、少々複雑な心境ではある。

 

ディズニーのせいでこれから危険なことができなくなる可能性もあるのだから(20世紀フォックスは名称が「20世紀スタジオ」に改名されている)。

 

ライアン・レイノルズが主演したR15指定の「デッドプール」シリーズも20世紀フォックスの作品でディズニーが引き継ぐようなことを言われているけど、骨抜きにされやしないかと心配。

 

さて、この『フリー・ガイ』を観ていて妙に気になったのは、主人公ガイを演じるライアン・レイノルズと、プログラマーでゲーム内では“モロトフ・ガール”を操作するミリー役のジョディ・カマー、その元同僚で密かに彼女を愛していて、それがガイのプログラムに影響を与えていたキーズ役のジョー・キーリーは白人の俳優で、その一方でガイの友人の警備員バディ(リル・レル・ハウリー)やキーズの同僚プログラマーの“筋肉ウサギ”ことマウサー(ウトカルシュ・アンベードカル)も、それからガイが毎朝立ち寄るコーヒーショップの女性店員ミッシー(ブリトニー・オールドフォード)、さらには悪役のアントワン社長のタイカ・ワイティティと、脇で主人公を応援したり彼や仲間と敵対する憎まれ役は白人以外の俳優が演じていること。

 

 

 

出演者たちはみんな好演していたし、だから演技力を見込んでキャスティングしたんだと言われるかもしれないけれど、この配役は意識的にやらなければこうはならないはずで、そこんとこで僕は1回観ただけでは映画の作り手の意図を測りかねたんですよね。

 

取るに足らない“モブキャラ”だった主人公が、自分が本当に望む生き方をみつけて「どんな平凡な人生にも価値がある」ことを証明していく物語の中で、マイノリティである非白人の俳優たちが演じるキャラクターたちは当たり前のように“脇役”を割り振られている。

 

これはわかりやすい「ステレオタイプ」に何かのメッセージを込めたキャスティングなのか、それとも作り手がよっぽど無神経なのか、どちらなのだろう。

 

たとえば、キーズの役が友人マウサー役の俳優と逆だったら、あるいはヒロインのミリー役をもしもコーヒーショップの店員役のブリトニー・オールドフォードが演じていたら、印象は全然違うものになっていただろうし、それこそ映画の主人公がガイではなくてバディの方だったら画期的だったと思うんですよね。

 

タイカ・ワイティティの愛嬌のある悪役演技は好評だし、アクションシーンもキマってたジョディ・カマーも、頼りなさげだが純情で善良な青年役がぴったりのジョー・キーリーも、それからもちろん「可もなく不可もない普通の人ガイ」役がハマってるライアン・レイノルズも繰り返すようにみんな好演していたんだけど、観客であるこちらの予想を超えない、「それ以上でも以下でもない」と言ったのは以上の理由で。

 

キメキメでイケイケの、アクション物のいかにもなヒーロー役のチャニング・テイタムはタイプキャスト過ぎて笑えましたが。ダンスが卑猥(笑) この人、最近こんな役ばっかやってる気もするがw

 

主演と製作を務めるライアン・レイノルズは「デッドプール」でもそうだったようにリベラルで反差別的な考えの持ち主なのだろうけれど、彼自身がこの映画の劇中でもマウサーが口にしていた「白人の特権」を享受している身なのだから、それが映画の中でまったく覆らないのは不満が残る(監督のショーン・レヴィも白人)。

 

 

 

 

 

あるいは、「白人の特権」についてわざわざ台詞で言及したように、それは今後のさらなる課題なのだ、と言ってるんだろうか。

 

バディやミッシー、マウサーのような人々を“主人公”として描く映画が作られる、それこそが私たちが目指すべき「いい日」を超えた「“素晴らしい日”」だと。

 

僕が好きな『イン・ザ・ハイツ』だって主要登場人物たちの肌の色のことで批判もあるようだし(メインキャストの中に現実のワシントン・ハイツには大勢いるアフロ・ラテン系の人物が1名しかおらず、ほとんどがバックのダンサー役)、実はエンタメ映画でこそさまざまな現実の問題が色濃く反映されるものなのでしょう。

 

現実を忘れるためにではなく、別の角度から現実を見つめるためにエンターテインメントを作り、それに触れる。そういう姿勢は大切だと思う。

 

ライアン・レイノルズには、これからもそのような作品を作り続けてほしいな。

 

 

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