デヴィッド・リーチ監督、ライアン・レイノルズ、ジョシュ・ブローリン、ジュリアン・デニソン、モリーナ・バッカリン、ザジー・ビーツ、ステファン・カピチッチ(声の出演)、カラン・ソーニ、T・J・ミラー、レスリー・アガムズ、ブリアナ・ヒルデブランド、忽那汐里、エディ・マーサンほか出演の『デッドプール2』。R15+。
007映画風のオープニング曲はセリーヌ・ディオン。
不死身の男“デッドプール”ことウェイド・ウィルソン(ライアン・レイノルズ)はミュータントによるヒーローチーム“X-MEN”の見習いとして出動するが、手から炎を出して暴れている少年ラッセル(ジュリアン・デニソン)がミュータント養護施設で虐待を受けていたことを知って、そこの職員に弾丸をぶち込んで捕まりミュータント専用の収容所“アイスボックス”にラッセルとともに収監される。ところがそこに未来から強力な武器を持った男ケーブル(ジョシュ・ブローリン)が現われてラッセルの命を狙う。ウェイドはミュータントを募集してX-MENならぬ“Xフォース”を作り、ケーブルからラッセルを守ることにする。
ネタバレがありますので、これからご覧になるかたはご注意ください。
2016年の『デッドプール』の続篇。監督は前作のティム・ミラーから『アトミック・ブロンド』の人に交代。
ライアン・レイノルズをはじめ、恋人のヴァネッサ役のモリーナ・バッカリン、ウェイドの行きつけのバーの店主ウィーゼル役のT・J・ミラー、インド人タクシー運転手ドーピンダー役のカラン・ソーニ、X-MENの一員であるネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド役のブリアナ・ヒルデブランドなど、前作からお馴染みの面子が引き続き出演。
新登場のケーブル役のジョシュ・ブローリンは現在も公開中のアメコミ映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の悪役サノスの声を担当してるけど、劇中で早速イジられてます。
前作については僕は微妙な評価だったんですが、でもけっして嫌いじゃなくて、それどころか劇場で3回観てます(1回は吹替版で)。だからもちろん続篇も観る気満々でいた。※今回もすでに字幕版を2回鑑賞。
ヒーローらしからぬデッドプールのキャラが好きなんですよねー。
ケーブルの登場はすでに1作目のエンドクレジットでデッドプール(以下、“デップー”)本人によって予告されていたけど、僕は原作の方をまったく知らないんでどんなキャラなのかもわかんなかった。
で、サノス役のジョシュ・ブローリンが演じるということなので、あぁ、また悪役なのかな、と。そしたら実はイイ奴だったということが判明(くれぐれもサノスの方は改心などしないように)。
だけど最近はゴツい役ばっかになったんだなぁ、昔は『グーニーズ』のお兄ちゃんだったのに(そればっか)。デップーにも「片目のウィリー」とか言われてたし。
なぜか劇中でケーブルは「ジジイ」と呼ばれていたけど、ジョシュ・ブローリンはそんなジジイでもないでしょ。未来から来たんだし。身長180cmあっても「コミックと違ってデカくない」とか言われちゃう。デップー役のライアン・レイノルズの方がデカいんだよな(身長はヒュー・ジャックマンと同じ)。
前作では敵の傭兵たちを惨殺しまくって斬り落とした生首でサッカーやったり死体で人文字作ったりして遊んでたのが、今回は味方の「Xフォース」の面々が戦う前に自滅する。まともにパラシュートで着地することすらできずに、次々と悲惨な死に方をしていく役立たずのミュータント(と約1名、普通のヒゲのおっさん)たちにクスクス笑いが止まらない。
「エクスペンダブルズ」のテリー・クルーズはバスに激突、ヘリのローターに巻き込まれてバラバラになる自称・宇宙人、透明人間は電線に引っかかって感電死。『アトミック・ブロンド』にも出演していたビル・スカルスガルドはゴミ収集車に身体ごと粉砕されて酸性のゲロを吐き、それをもろにかぶったヒゲ男も死亡。ドタバタコメディかw
三日間風呂に入っていないウェイドを「南北戦争で傷口にクソを塗りつけて放置したような臭い」と表現するウィーゼルと、ミュータントチームに応募してきたただのヒゲのおっさん、ピーター
ところで、なんで透明人間がブラピなのか、わかる人がいらっしゃったら教えてください^_^;
そーいえば、原作者のスタン・リーおじいちゃんは今回出てたっけ?気づかなかったんだけど(※どうやら出てないっぽい。前作には出てたのに。マーヴェル映画が多過ぎて忙しかったか)。
しっかりこういうのは撮ってるのに本篇にいないってどーゆーこと^_^;
それにしても、AC/DCの「THUNDERSTRUCK」は鉄板だなぁ。
音楽といえば、一体いつの間にエンヤの曲は拷問シーンやアクションシーンに使われるのが定番になったんだ(デヴィッド・フィンチャーのせい。それとジャン=クロード・ヴァン・ダム)。
前作では敵がミュータントっぽくない、と不満を述べたんですが、今回は悪役として見るからにミュータントなキャラ、“ジャガーノート”が登場。
ジャガーノートは「X-MEN」シリーズの3作目『ファイナル・ディシジョン』でヴィニー・ジョーンズが演じてて、壁でもなんでもかんでもぶっ壊しながらエレン・ペイジを追っかけていた。
「クリステン?キルステン?」と名前をイジられてるキルステン・ダンスト(やっぱりあっちでも紛らわしいと思われてるんだな)は、スパイダーマン繋がり?
前作でも曲が使われてたジョージ・マイケルの死ももちろんネタにしてるし、『アナと雪の女王』の劇中歌のパクリ疑惑まで口にしてディズニーに喧嘩を売る。
DCコミックスの実写化映画のディスりも忘れない。
相変わらず爆笑するようなギャグはほとんどないんだけど、デップーがロシア語訛りのクローム野郎“コロッサス”(声:ステファン・カピチッチ)に連れてこられたプロフェッサーXの屋敷の中で、見覚えのあるX-MENの面々(ハゲのマカヴォイも)が一瞬映ってすぐ引っ込む場面で笑いました。
今回もケツとチ○コネタがいっぱい。幼児サイズのチン○を丸出しにして『氷の微笑』の真似して足を組みかえるとか、限りなく知能指数の低いギャグを披露。
バカはあるけどエロの方は皆無。
前作でも活躍していたネガソニックは同性のミュータントと付き合っている。スーパーヒーロー映画でさりげなく(というか堂々と)LGBTQネタ。
前作ではムチムチしてたネガソニは心なしか痩せたような
お相手のミュータント、“ユキオ”を演じてるのは忽那汐里。最近見かけないと思ってたらX-MENになってたのかw
ちなみにユキオというキャラクターは『ウルヴァリン:SAMURAI』で福島リラが演じててヒュー・ジャックマン演じるウルヴァリンことローガンと一緒に敵と戦ってました。こんなところで再登場とは(外見の変化以上にほぼ別キャラになってるけど)。「ウルヴァリン」ネタは最後にもう一発デカいのがありますが。
ヒュー・ジャックマンがサーカスで唄ってる頃、ウルヴァリンはデップーのオモチャになっていたw
残念ながらネガソニックとユキオの百合シーンは一切ないけど、代わりにデップーがコロッサスに抱かれます(*ノェノ)キャー
それからコロッサスはジャガーノートと巨体同士でくんずほぐれつして、ジャガーノートの尻に強烈なのをぶっ込みます。超痛そう(いろいろアウトな表現だが嘘は言ってない)。
しかし、曲がりなりにも「X-MEN」のミュータントの尻をひん剥いて肛○にエレクトリック・バイブ(笑)を突っ込むとか、えげつなさ過ぎるでしょ(;^_^A こんな恥ずかしいやられ方する悪役もこのシリーズならでは。
映画が始まってまもなくヒロインが殺されてしまう展開はこの手のアクション映画の続篇(マット・デ○モン*主演の奴とか)にありがちなので、またそのパターンか?と思ったんだけど、ウェイドにとって一番大切な存在であるヴァネッサの死には物語のテーマにかかわる重要な意味が込められている。
※マット・デイモ○は未来からタイムトラヴェルしてきたケーブルに気絶させられる2人の中年男性(トイレットペーパーの話をしている)の一人を特殊メイクを施して演じている(ノンクレジット)。もう一人はアラン・テュディック。
これは14歳の少年を人殺しにしないために主人公と仲間たちが協力し合う話なわけで、冗談めかしてはいるけれど実はかなり倫理的なストーリーなんだよね。
「太ったヒーローはいない。デブ差別だ」 “パーやん”がいるやないか!
刑務所の警備員やミュータント養護施設の職員たちは大量に殺されるけど、あれはスター・ウォーズのストームトルーパーとかショッカーの戦闘員みたいなもので。
そしてここでは「X-MEN」とも直接的に繋がる「教育」について語ってもいる。
虐待を受けた少年が教師や世界に復讐しようとする、というのはアメリカで頻発するスクールシューティングを受けたものだろうし。
教育を騙った虐待、ということでは、某大学のアメフト部の一件みたいな話でもありますが。あの部員も相手の大学の選手じゃなくて、自分に理不尽な命令をしたあのバカ監督に思いっきりジャガーノートばりのタックルかましてやればよかったんだよな。
この映画では、これまでに無数の人間を殺めてきた傭兵出身のウェイドが、必死に一人の少年を守ろうとするところが皮肉めいてもいる。
最後にはデップーは手を汚さずに、代わりに運転手のドーピンダーがクズ理事長を始末しますが。これでドーピンダーが殺人に味をしめなきゃいいけど(あ、彼は前作でもすでに1人殺ってたっけ?)^_^;
理事長役のエディ・マーサンは、同じ監督の『アトミック・ブロンド』に続いて劇中で殺されてて、今回は汚れ役に。デップーには「変態みたいな走り方」とか言われてるし。
そして最後にネガソニックが修理した、ケーブルが持っていた腕時計型のタイムトラヴェル装置で“時をかける”俺ちゃん。
エンドクレジットの途中で帰っていったお客さんが何人かいたけど、彼らはおそらく次回作でヴァネッサが当たり前のように生きてる理由がわかんないだろうな。映画は最後まで観ましょう。
ヴァネッサの命を救ったあと、間髪入れずにライアン・レイノルズが消したい過去、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』に登場した“ウェポンXI”(ライアン・レイノルズ)を射殺するデップー。
『X-MEN ZERO』版ウェイド。半目がどこまでも残念。そして殺された
続いて「ついに大作に主演できる!」と喜んで『グリーン・ランタン』のシナリオを手にしている“ライアン・レイノルズ”本人を射殺。
いや、そいつを殺したらあんた(デップー)も消えちゃうだろ^_^;
最大の標的が主人公の「中の人」という、まるで赤塚不二夫のギャグマンガみたいなオチw
2回しか使えなかったはずのタイムトラヴェル装置がなんで何回も使えるの?とか、よくわかんないところもあるけど、まぁいいや。
未来の殺人鬼を子どもの頃に救って将来起こる虐殺を食い止める、というアイディアはライアン・ジョンソン監督の『LOOPER/ルーパー』とかなりカブってるし(原作を知らないから、どちらが先なのかわかんないけど)、すべては教育のせい、とする考え方には正直異論があるんですが(残念ながら“教育”に問題がなくても殺人を犯す奴はいるので)、ともかく「教育」が大切なことや、大人が子どもを信じなければ、という至極もっともな主張には賛成だし、デップーが「これはファミリー映画だ」と言ってたのはただのこじつけではなくて、この映画は最初からずっと命について語っていたんだよね。
前作ではイマイチ存在理由がわからなかったブラインド・アル(レスリー・アガムズ)については、本作品を観て、彼女はウェイドにとっての母親的な役割を果たしているのかな、と思ったり
あのクズ理事長が言っていた「悪しき者」というのはケーブルの家族を惨殺した未来のラッセル=ファイヤー・フィストのことだが、“本当の家族”の愛によって少年が悪しき者になることを防げるのだ、とこの映画は言っている。
監獄の中でウェイドはラッセルに言う。「手下を作ろうとするのはよせ。友だちを作るんだ」「世の中にはいろんな奴がいる。お前を虐待したような奴らだけじゃなくて、優しい人たちもきっと見つかる」
そしてヴァネッサがウェイドに言った「正しい場所」とは、彼がいるべき場所。家族が待っているところ。そのことをウェイドは自分の命をなげうってラッセルに伝える。
すべてが繋がるように描かれている。
この映画は、冒頭で「俺の真似してR15映画作ってハードル上げやがった」とデップーが文句を言っていた『LOGAN/ローガン』と同じテーマを扱っている。「家族」。未来を担う子どもを守ること。
…なんか感動作みたいだな。赤いピエロが主人公の映画なのに。
ウェイドは「脚本が悪い」「ひどい脚本」と自分で言ってますが、いやいや、悪くないんじゃないですかね。
日本では「無責任ヒーロー」なんて名付けられてるけど、誰よりも責任感のある俺ちゃんなのだ。
「ウルヴァリン」シリーズの方は『LOGAM/ローガン』がとても美しく締めくくってくれたので(「X-MEN」シリーズは今後も続くが)もういいかな、と思っているんですが、デッドプールには(R15であり続ける限り)付き合ってもいいかなぁ。
でも、あんな便利な装置を手に入れちゃったら無敵だろうけど。
ってゆーか、これは実質的な完結篇なんじゃないの?
だって、ヴァネッサが帰ってきたということは、ウェイドはこれから彼女と「子作り」するわけでしょ。彼はついに自分がいるべき「正しい場所」を手に入れたのだ。
そして最強の敵、“デップーもどき”と“グリーン・ランタン”も倒したんだからw
まぁ、Xフォースも彼と「運の良さ」が超能力のドミノ(ザジー・ビーツ)を残して全滅したから、これから毎回新しくメンバーを募集して今後10年ぐらい続篇を作り続けるのかもしれませんが。
前作を観た時には、今後ライアン・レイノルズはマスク姿か特殊メイクの腐ったアボカドみたいな顔でしか出られなくて気の毒、みたいに思ったんだけど、今回は素顔でも登場。
今後もこの3パターンでいくのかな。ヒーロー物のお約束をどんどん更新していくよね。
「今年のベストワン」とかには絶対にならないけど(笑)、このユルさの中に真摯なテーマを含んだ作風は好きだなぁ。
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