デヴィッド・リーチ監督、シャーリーズ・セロン、ジェームズ・マカヴォイ、ソフィア・ブテラ、ジョン・グッドマン、エディ・マーサン、ビル・スカルスガルド、ティル・シュヴァイガー、ローラン・モラー、トビー・ジョーンズ、ジェームズ・フォークナー出演の『アトミック・ブロンド』。R15+。

 

ベルリンの壁崩壊直前の1989年。英国のMI6(秘密情報部)の諜報員ガスコインがソ連のKGBに殺され、ロレイン・ブロートン(シャーリーズ・セロン)は奪われた西側のスパイのリストが収められた腕時計を入手するためにベルリンに向かう。そして現地に潜り込んでいるエージェントのデヴィッド・パーシヴァル(ジェームズ・マカヴォイ)の手引きで東ドイツの秘密警察シュタージの元職員で機密の内容を知るスパイグラス(エディ・マーサン)を西側に脱出させようとするが、リストを狙う者たちによって命を狙われる。

 

ネタバレがあります。

 

 

マッドマックス 怒りのデス・ロード』のフュリオサ姐さんことシャーリーズ・セロン主演のアクション物ということで期待していました。

 

『怒りのデス・ロード』は大好きな映画だし、そこでのシャーリーズ・セロンはほとんど主役と言っていいほどの活躍ぶりだったから、そんな彼女の大暴れはさぞ迫力あるだろう、と。

 

実際、中盤でのワンショット長廻し風のアクションは見応えあって、これはもう長身美人にぶん殴られたり蹴り飛ばされたい男たちにはご馳走でしょうw

 

かなりトレーニングして臨んだだろうことはその激しいアクションから伝わってくるし(やられる敵役の人たちがスゴいと思った。彼らはスタントマンだろうか)、「面白かった!」と褒めてる人たちも多いようだから、これは僕の理解力のなさのせいなのかもしれませんが、お話の方がちょっとよくわかんなくて。

 

 

 

 

久々に、どう感想を書けばいいのかちょっと途方に暮れてしまった。

 

やはりスパイ物の『裏切りのサーカス』も評価の高い作品だけど、僕は今回と同様に登場人物たちの関係とかストーリー展開についていけなくて、観終わったあとにポカ~ンとしちゃったんですよね。置いてけぼり食らったような感じで。

 

ロレインの上司を演じているトビー・ジョーンズは『裏切りのサーカス』にも出てましたが。

 

一言で「スパイ物」と言ったって、007やキングスマン、ミッション:インポッシブルだってスパイ物だし、それらは僕にも内容は理解できるので一概にスパイ物だからわかりづらいということではないと思うんだけど。

 

この『アトミック・ブロンド』もスパイのリストの入った腕時計という“マクガフィン”が用意されていて、要するにそれの奪い合い、という非常にシンプルな枠組みがあるにもかかわらず、観てる途中でヒロインが今戦ってるのはどこの組織の人間で彼らはなんのために戦ってるのかしばしばわかんなくなる時があった。

 

俺の頭が悪いせいなのか、とも思ったけど、この映画についてはインターネットでもたまに「意味がわからなかった、ついていけなかった」という感想を散見するんで、やっぱりちょっと脚本に難があるのではないかと。

 

リストの奪還が目的だったはずがいつの間にか二重スパイが絡んできて、しかもその種明かしがなんとも性急だったし、それよりも何よりも個人的な好みとして、回想形式で時間が行ったり来たりする作劇とか「これはそれ(冷戦)についての映画ではない」というスカしたような字幕など、イギリスの映画なんかでよくあるノリの僕が苦手なタイプの作品だということがわかってきて、画面が妙に薄暗くてず~っと灰色っぽいのも見づらくてどうもノれなかった。

 

最初に書いたように見応えのあるシーンはあったし、あのヒロインはシャーリーズ・セロンだからこそ成り立ってもいたのだろうから(でも、あれがもしジーナ・カラーノだったら、アクションシーンにも別のリアリティが生まれたかもしれないと思うが)、これはもう好き嫌いの問題としか言いようがないですが、残念ながら個人的にはかなり期待はずれでした。

 

監督のドヤ顔が見えるようで不快だった。何か大事なものが不足していた。

 

これなら僕はベン・アフレック主演の『ザ・コンサルタント』の方がはるかに面白かったなぁ。

 

単純に『ヤング≒アダルト』の時のようにけだるそうでしょっちゅうグラスに酒を注いでタバコばっか吸ってるシャーリーズ・セロンが好みではなかったということもあるけど、とにかくアクション以外の場面が思わせぶりなわりに退屈でしかたなくて。

 

ロシアが絡んでて女性のスパイが戦うアクション映画というとアンジェリーナ・ジョリー主演の『ソルト』を思い出すし、あの映画と本作品を比較してあちらをクサす人もいるけれど、『ソルト』ほど全篇に渡って派手なアクションがあるわけじゃないし、別にリアルなスパイ物というわけでもない。

 

映画の冒頭で全裸のシャーリーズ姐さんの後ろ姿が映るんだけど、ケツがイケメンすぎて全然エロくなかったし。

 

ロレインはいつもバスタブに大量の氷を入れてその中に浸かってるんだけど、あれはなんですか?^_^; 氷風呂で身体鍛えてるのか?

 

車ごと極寒の水の中に落ちた時には凍えてたのに。

 

そもそもロレインはこの映画の中でことごとく任務に失敗しているし(なんか最後に急に解決するけど、すごく強引に感じた)、新人に背中をナイフで刺されて慌てるマカヴォイはロレインの上司が言うような優秀な諜報員にはちっとも見えない。

 

ジェームズ・マカヴォイは劇中でも30代後半、と言われてるし本人もそれなりにいい年してるんだけど、『フィルス』の時もそうだったように小柄で童顔なので、彼がやさぐれたキャラを演じるとイキってる若造に見えるんだよね。

 

 

 

『X-MEN』のハゲの教祖はまだ真面目な役なんでしっくりくるけど、やり手の悪党に見えないんですよ。

 

そもそも彼がこの映画で演じるパーシヴァルは最初からどっからどー見ても怪しいので、実は彼が裏切っていた、みたいな展開は意外でもなんでもないし。

 

それに現地にあんな協力者(ビル・スカルスガルド)がいるんなら、マカヴォイいらねーじゃん。

 

ちなみに、『フィルス』でマカヴォイに酷い目に遭わされていたエディ・マーサンが今回もまた彼に殺される役で出てたけど、なんだろう、マカヴォイにはもれなくマーサンが付いてくるんだろうか。

 

マカヴォイはこの映画でも坊主頭だったけど、「X-MEN」シリーズには今後も出るそうだし、さらに『スプリット』の続篇もあるから、今後しばらくは髪の毛を生やさせてもらえなさそうだな。気の毒に。

 

敵のKGBの諜報員ブレモヴィッチを演じている俳優さんに見覚えがあったんだけど、今年初めに観たデンマーク=ドイツ映画『ヒトラーの忘れもの』で主人公のラスムスン軍曹を演じていたローラン・モラーだった。

 

 

 

あと、ベルリンの遺体安置所でロレインが会う女性を、やはりドイツ映画『ハンナ・アーレント』で主人公のアーレント役だったバルバラ・スコヴァが演じている。

 

そして、スパイ・リストを奪ったKGBの殺し屋バクティン(ヨハンス・ヨハンソン)が立ち寄る時計屋の男には『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』のティル・シュヴァイガー。

 

ベルリンが舞台なのでドイツの有名な俳優さんを揃えた感じ(ローラン・モラーはデンマーク人だが)。

 

…なのだが、これがまた実力派俳優たちの無駄遣いが甚だしいのだ。

 

バルバラ・スコヴァはほんのワンシーンだけの出演だし、ティル・シュヴァイガーも出番はごくわずかで特に活躍もしない。

 

ブレモヴィッチの最期なんてあっさり撃たれておしまい。もったいなさすぎる。

 

その直前にヒロインが銃撃してんだから、それ見て何もせずに突っ立ってるなんておかしいだろう。

 

だいたい、『キングスマン』で両足が刃物になった女殺し屋、『スター・トレック BEYOND』ではやはり足技が得意の女戦士、トム・クルーズ主演の『ハムナプトラ』のリメイク映画では邪悪な王女を演じていたソフィア・ブテラに戦わせないとか、ありえないでしょ。

 

 

 

予告篇観たら、きっと最後は主人公とバトルを繰り広げるんだろうと思うじゃないか。でも違うんだもんね。

 

シャーリーズ・セロンとのラヴシーンではおっぱいも見せてくれて素敵でしたが、彼女もまたあっけなく殺されてしまう。

 

ソフィア・ブテラなら脳天唐竹割りでマカヴォイなんかあっさり真っ二つでしょうに。

 

ジョン・グッドマンだってヒロインの話聞いて相槌打ってるだけだもの。

 

リアルタイムであの当時を過ごした人たちには懐かしいだろう音楽がたくさん流れるし、僕もエンディングの「Under Pressure」は耳に心地よかったけど、映画そのものに80年代っぽさは希薄。ロレインも敵の男たちも登場人物の誰一人として80年代の人間には見えない。

 

Queen feat. David Bowie - Under Pressure

 

 

終盤にロレインが音声テープを切り貼りしてパーシヴァルの会話を捏造するシークエンスもよくわかんなくて、あれは彼を二重スパイに仕立て上げるための細工なんですか?そんなんにMI6は騙されるの?

 

ってゆーか、結局ロレインはなんだったの?敵に彼らの味方だと思わせておいて実はやっぱりMI6でした、ってオチ?

 

あの展開を観て、「ををっ」ってなった人っているのか?

 

僕は、えっ、これ“どんでん返し”のつもりなのか…?と思っちゃったんだけど。

 

スパイ同士の騙し騙されという面白味がまったくなくて、なんかすべてが後出しジャンケンみたいなんだもの。

 

ジョン・グッドマン演じるCIAのお偉いさんも実は仲間でした、とかさぁ。後出しでいいならなんでもアリじゃん。別に伏線も何もないし。

 

とにかく、誰が誰の味方で誰が敵なのかよくわかんなくて。

 

イイ者はどっちで悪者はどっち?すみませんね、頭悪くて。

 

ハードコア』みたいな自動車の衝突や横転などカースタントはかっこよかったし、何度も繰り返すようにシャーリーズ・セロンのアクションは見応えありましたよ。でもそれだけ。

 

お話がよくわかんないから、途中でだんだん興味がなくなってきちゃって。

 

この映画はシャーリーズ・セロンの念願の企画だったそうだし、評判がいいなら続篇もあるかもしれないけど、僕はもういいかなぁ。

 

今後、アンジェリーナ・ジョリーと一緒に『ロレイン vs ソルト』やってくれたら喜んで観ますが。

 

ひとまず今は、フュリオサを主人公にした『怒りのデス・ロード』のスピンオフの実現を心待ちにしています。

※追記:フュリオサの前日譚を描いた『マッドマックス:フュリオサ』はアニャ・テイラー=ジョイ主演で2024年に公開された。

 

 

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