ジェームズ・ガン監督、イドリス・エルバ、マーゴット・ロビー、ダニエラ・メルシオール、ジョエル・キナマン、ジョン・シナ、デヴィッド・ダストマルチャン、シルヴェスター・スタローン (声の出演)、アリシー・ブラガ、ヴィオラ・デイヴィス、ピーター・カパルディ、ストーム・リード、ホアキン・コシオ、タイカ・ワイティティほか出演の『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』。R15+。

 

音楽は『キック・アス』のジョン・マーフィ。

 

ベル・リーヴ刑務所に収容されている“ブラッドスポート”ことロバート・デュボア(イドリス・エルバ)は、特別な権限を持つ政府高官のアマンダ・ウォラー(ヴィオラ・デイヴィス)によって凶悪犯罪者たちで構成されるチーム「タスクフォースX」、通称「スーサイド・スクワッド(決死部隊)」のリーダーに抜擢される。「スターフィッシュ計画」という極秘実験が行なわれている南米の島国コルト・マルテーゼの研究施設ヨトゥンヘイムの破壊を命じられたスーサイド・スクワッドの面々だったが、味方側の不手際や裏切りが重なり、しょっぱなから大惨事が巻き起こる。

 

ネタバレがあります。

 

DCコミックス原作のアメコミ映画で2016年公開の『スーサイド・スクワッド』(監督:デヴィッド・エアー)の続篇。

 

 

今回の『・スーサイド・スクワッド』は2016年版の“続篇”なのかどうかハッキリ明言されていなくてボカされてるところがあるんですが、監督のジェームズ・ガンによれば「リメイクでもリブートでもない」とのことで、ハーレイ・クイン役のマーゴット・ロビーやアマンダ・ウォラー役のヴィオラ・デイヴィス、リック・フラッグ大佐役のジョエル・キナマン、キャプテン・ブーメラン役のジェイ・コートニーは各自2016年版と同じキャラクターを演じているし、“スーサイド・スクワッド”の設定もほぼ踏襲していて2016年版が「なかったこと」にされているわけではないので(ハーレイとリック・フラッグ、キャプテン・ブーメランは互いを知っているし、ハーレイはリックのことを「友だち」だと言っている)、まぁ、続篇ということでいいんじゃないかと。

 

ジェームズ・ガンとしては、違う監督が撮った2016年版と自分の作品を同じシリーズとしてはあまり認めたくないのかもしれないけど、「リメイクでもリブートでもない」ってことは続篇でしょう。

 

前作でスーサイド・スクワッドのリーダー的な役割を果たしていた“デッドショット”役のウィル・スミスが本作品に出演しなかったのは純粋にスケジュールの都合で、だから今回リーダーを務めるイドリス・エルバ演じる“ブラッドスポート”はスミスの役とは別人(二人とも優れたスナイパーという設定だが)。今後、ウィル・スミスがシリーズに戻ってこられる余地が残してある。

 

 

 

僕は2016年版スースク(以後、“前作”と表記)についてはかなり酷評してしまったんですが、でも、あの作品の最大の功績は何よりもマーゴット・ロビーが演じる“ハーレイ・クイン”を生み出したことで、それだけであの映画には充分な存在意義がある。

 

ちょっと前にTwitterで、ある漫画家のかたが今回のスースクでのハーレイ・クインの服装が前作のものと異なることに不満を述べられていて、それに対してあの映画でのハーレイの格好は原作にはないもので、シリーズ化されたことで原作寄りの衣裳になったのでは、という説明がされていたんだけど、確かに僕もハーレイのあのショートパンツ(とゆーか“ホットパンツ”)と太ももが拝めなかったのは残念ではあったんですが(いや、太ももは披露してくれますけどね、敵を絞め殺す場面で)、でも、あの格好の彼女はすでに前作及びハーレイを主役にした去年の『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』で堪能させてもらったから、今回の赤いドレス姿も悪くなかったと思います。可愛かった(^o^)

 

 

まぁ、ハーレイ・クインだったらなんでも似合っちゃいそうだし、毎回違う格好で出てきても面白そう。

 

 

 

 

邦題の「“極”悪党、集結」などという安っぽい副題は“あえて”なんだろうけど、その狙いがイマイチわからない。『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』の方は、原題も近い意味のものだったんだけど。

 

前作はハーレイ・クインのキャラは誰もが絶賛していたものの、映画自体の出来については僕も含めて「…う~ん」という反応も少なくなかったし、『ハーレイ・クインの華麗なる~』の方もまたお気に入りだという人たちがいる一方で、ちまたでは必ずしも高く評価されているわけでもないのに対して、ジェームズ・ガンによるこの最新作はTwitterのタイムラインでも絶賛の呟きを散見する。

 

このコロナ禍の中、ヒットしてるのかどうかはよくわかりませんが、DCコミックスの映画化作品として成功作と見做す意見は多いようで。

 

ただ、まず白状しておくと、僕はそこまでハマらなかったんですよね。いや、後述するようにけっして嫌いじゃないし、なんかすごくユルくて心地よい時間を過ごせたのは間違いないんですが、最初の予告篇を観て自分が期待したような面白さはそこまで感じなかった。

 

 

 

日本版の予告の作り方が巧かったんだな。だから爆笑必至のコメディなのかと思ってたら、そんなにストレートにゲラゲラ笑わせてくれる映画ではなかった。

 

どっちかというと、グロさにヒキ笑いしながら、それでも最後の戦いでちょっと胸が熱くなる、みたいな。

 

ハーレイ・クインが敵の兵士たちを撃ち殺しまくる場面で血飛沫の代わりに大量の“花びら”が舞うところは『キングスマン』っぽくて(あちらは花火)面白かったけどw

 

ハッキリ言ってしまうと、本作品が「怪獣映画」としてそんなに高く評価されてるんなら、意外と世間の評判はビミョーだった『ゴジラvsコング』の方が僕は燃えたし、あの映画だってもっと評価されてもいいんじゃないの?と思う。

 

もちろん、『GvsK』とこの映画とでは面白がりどころが違うことはわかってますが。

 

何よりもスーサイド・スクワッドのメンバーたちのキャラの愉快さと、彼らが笑っちゃうぐらいガンガン殺されまくっていく様子、全体的になんかヘンな夢でも見てるようなアシッドな雰囲気など、このイッちゃってる感じを楽しむべき映画なのも観てりゃわかる。

 

だって、ラスボスが一つ目の馬鹿デカいヒトデだもの。ふざけてるとしか言いようがないわけでw 前作の魔女どころの騒ぎではない。

 

 

 

海洋生物同士の戦い

 

R指定は伊達じゃない、というか、残酷描写だけじゃなくて15歳未満が観るにはいろいろ危険な要素がいっぱい^_^;

 

なので、この映画の魅力はわかるんです。ハマる人がいるだろうことも。ただ僕はそうじゃなかっただけで。

 

映画を観ながら思ったのは、ジェームズ・ガン、絶対何かキメながら撮ってただろ、と(笑)

 

やたらと時間が行き来するし、冗談めかした場面のあとに妙にセンチメンタルな場面が続いたり、その振り幅の大きさも情緒不安定っぽくて。

 

ネズミをこよなく愛する少女とその父親とか、友だちが欲しいズボンを穿いたサメ男、母親への憎しみを原動力にするイジメられっ子など、アメコミ版「奇面組」みたいな映画だったなぁ。

 

「奇面組」でもウルトラシリーズのパロディがありますが、あれの巨大ヒーロー“ワラトルマン”が出てこないヴァージョン。

 

だって、出てくるスーパーヒーローならぬヴィラン(悪党)たちが揃いも揃って“変態”ばっかだもんね。間違えて敵じゃない人たちを惨殺しまくったり。

 

カラフルな水玉が武器の“ポルカドットマン”(デヴィッド・ダストマルチャン)

 

ジョン・シナ演じる“ピースメイカー”がかぶってるマスクはみんなから「便座」とイジられる

 

日本版の予告篇でも流れてたけど、敵に囚われたハーレイ・クインを救おうとしてたら本人が「何してるのー」って出てきてリック・フラッグが二度見したり、壁を登ってる途中でハーレイに気づくブラッドスポートの格好が絶妙に可笑しくて、ギャグ漫画っぽくてあの辺は好きなんですけどね。

 

劇画から飛び出してきたようなマッチョで長身の兄さんたちが真面目な顔でものすごくアホっぽいことをやってる様子は観ていて本当に楽しい。

 

正義のヒーローたちのような“やってはいけない”枷がない分、彼らは自由で、冒頭で現地にむかうメンバーたちがみんなアタマが悪過ぎて互いに会話が全然噛み合ってないとことか、悪党というよりも「ボンクラ」。

 

 

 

そういう連中が「お笑いウルトラクイズ」みたいに次々と脱落していって、一番マシだった奴らが生き残る。

 

でも、敵と戦う前に部隊がほぼ全滅する、というのは『デッドプール2』でもやってたし、グロ描写もやはりあちらで先にR15指定をやってるからそこまで新鮮味がなかったんだよね。

 

無論、『スーパー!』でも見せていたジェームズ・ガンのグロ趣味はデップーを超えてさらにエスカレートしているんで、そういうのが大好物な人にはお薦めですが。

 

サメ男“キング・シャーク”ことナナウエの声をシルヴェスター・スタローンがアテてるのはジェームズ・ガンが撮ったマーヴェル映画繋がりだし、序盤でとっとと退場するマイケル・ルーカーもそう。

 

ポルカドットマン役のデヴィッド・ダストマルチャンも「アントマン」シリーズで三バカの1人を演じている。マーヴェルとDCの掛け持ち組、増えてますなぁ。

 

つぶらな目をしたサメ男がスタローンのあの声で「トモダチ」「ゴチソウ…」とか言ってるとラヴリー過ぎるよな(^o^)

 

僕はジェームズ・ガンが撮った「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー (GOTG)」シリーズにもハマらなかったんで、もしかしたらこの監督のユーモアとかギャグセンスは合わないのかもしれないけど、でも「GOTG」が宇宙が舞台だったのに対してこちらは地上で戦いが繰り広げられるし、アメコミ映画でありながらグログロはあくまでも人間相手で人体破壊へのこだわりもあって、彼の映画の中では『スーパー!』に次いで好きかなぁ。

 

最後に“怪獣”に戦いを挑むのはしっかり5人で、日本のスーパー戦隊モノっぽいし。

 

この映画のおかげで前作や『ハーレイ・クインの華麗なる~』も作品として底上げされて、ようやくシリーズ物っぽくなったような気がするんですよね。

 

3本ともそれぞれの物語的な繋がりは薄いので1話完結方式に近いんだけど、だからどれか1本だけ単独で観ても、観る順序がバラバラでもお話の意味はわかるし、でもハーレイ・クインという共通のキャラがいることで物語世界はユルく繋がっている。

 

スーパーマンやバットマン、ワンダーウーマンたちが共演していた世界とはまた違う独自のヴィランたち視点の世界がだんだん出来上がりつつある。

 

たとえば、前作の感想で僕はスーサイド・スクワッドを束ねるボス、アマンダ・ウォラーを演じるヴィオラ・デイヴィスが普通のおばさん過ぎる、と文句を言ったんだけど、この続篇ではその普通のおばさんのとんでもなさやあのヴィオラ・デイヴィスの仏頂ヅラがもはや面白くなってきてw

 

部下にゴルフクラブで思いっきりぶん殴られてるし(しかも無事だし)。だんだんキャラが立ってきている。明らかにヴィオラ・デイヴィスの普通のおばさんっぽい風貌を意識的に使ってるよね。

 

この『ザ・スーサイド・スクワッド』でもハーレイは大活躍するんだけど、実はヒロインとしてスポットが当たっているのはネズミを操るラットキャッチャー2(ダニエラ・メルシオール)で、彼女はキング・シャークとも心を通わせるし、ネズミが苦手で自分の娘(ストーム・リード)ともうまくいってないブラッドスポートに変化をもたらしもする。父親役を出番は少ないがタイカ・ワイティティが演じている。

 

これもシリーズ物だからできることですよね。ハーレイ・クインの過去については前作で描かれていたし、『ハーレイ・クインの華麗なる~』で彼女を主人公にしているから、今回はちょっと脇に回っても構わない。

 

この映画は表現の仕方が独特過ぎて登場キャラクターたちに共感するまでには至らなかったけど、でも落ちこぼれ軍団が頑張っちゃう映画なのは伝わるから、そこは確かにグッとくるところではある。

 

メンバーの中ではアマンダ・ウォラーの部下であるリック・フラッグに次いでマトモそうなブラッドスポートも、かつてスーパーマンにクリプトナイトの弾丸を撃ち込んで病院送りにした悪人なんだけど、そんな彼が率いるスーサイド・スクワッドが最終的に何と戦うのか思い返せば、深い映画だったといえるかもしれない。

 

明らかにここではスーパーマンが象徴していた「アメリカ」のイイカゲンさと身勝手さが槍玉に挙げられている。

 

相手が誰なのかもちゃんと確認せずに独裁国家コルト・マルテーゼの反政府組織のメンバーを敵と勘違いしてぶちコロしまくったスーサイド・スクワッドに、アリシー・ブラガ演じる女性ソルが「アメリカ人は何も考えずに殺しまくる」とキレる。

 

ヒトデ型の大怪獣“スターロ大王”を宇宙から地球へ、それも海外に持ち込んだのはアメリカだった。スーサイド・スクワッドはその尻拭いをさせられたのだ。

 

この映画の舞台となるのが南米の独裁国家というのも現実をそのまま反映しているし、現在のアフガニスタンを重ね合わせることもできる。どこまでも無責任なアメリカ。

 

アメリカはアフガンの人々を見捨てたが、悪人戦隊スーサイド・スクワッドは命令を無視して自らの命をなげうってアメリカが生み出した“罪”と戦う。そこに泣けた人もいるでしょう。

 

一寸の悪党にも五分の魂。

 

人に嫌われるネズミたちがヒトデ怪獣を倒すクライマックスは、まるでブルーハーツの歌の歌詞みたいだ。僕はブラッドスポートと同じでネズミは大の苦手ですが。

 

 

 

子どもを殺す、と口にした者は絶対に許さないハーレイ・クインにも、越えてはならない一線があるらしい(そうすると、島に上陸する前に海で溺れ死んだ…と思ったら生きてたアイツや、便座アタマは今後ハーレイのターゲットになるってことだな)。やはりこのシリーズの彼女はヴィランではなくて“アンチヒーロー”だ。

 

ハマらなかった、と書きましたが、でも嫌いにはなれない映画でしたよ♪

 

これからもハーレイ・クインが登場する映画を毎年観たいなぁ。

 

 

 

 

関連記事

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』

『THE BATMAN-ザ・バットマン-』

『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』

『キャッツ』

『アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル』

『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』

『アムステルダム』

『バビロン』

『バービー』

『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』

『バンブルビー』

『ロボコップ』(2014年版)

『DUNE/デューン 砂の惑星』

 

 

 

 

 

 

↑もう一つのブログでも映画の感想等を書いていますので、そちらもどうぞよろしくお願いいたします♪

 

にほんブログ村 映画ブログへ にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ