ペイトン・リード監督、ポール・ラッドエヴァンジェリン・リリーコリー・ストールボビー・カナヴェイルマイケル・ペーニャティップ・"T.I."・ハリスデヴィッド・ダストマルチャンアビー・ライダー・フォートソンジュディ・グリアアンソニー・マッキーマイケル・ダグラス出演の『アントマン』。

2D字幕版を鑑賞。



持ち前の手先の器用さと身体能力の高さを活かして悪徳企業に意趣返しをしたために収監されたスコット・ラングは、出所しても前科のためにせっかくみつけた仕事もクビに。元妻のマギーからは「娘のヒーローになって」と言われて、金を手に入れるためにム所仲間たちと協力して金持ちの家の金庫に忍び込む。ところがそこにあったのは謎のスーツだった。仲間の家でそのスーツを着てみたところ、腕のボタンを押すとスコットの身体が急激に縮んでアリのような大きさになってしまう。


マーヴェル・コミックス原作のアメコミヒーロー映画。

予告篇を観て面白そうだったので、観にいってきました。

以前からこの映画に『スコット・ピルグリム』などのエドガー・ライトがかかわっていることは知っていて、でも僕は彼の監督作品『ワールズ・エンド』で「今後二度とこの監督の映画は観ない」と心に誓ったので(『ワールズ・エンド』は好きな人も結構いる作品だけど、僕の昨年のワーストワン)、彼が監督すると言われていた頃にはこの作品は観る気はなかったんですよね。

そしたらどうも監督は違う人みたいなので(エドガー・ライトは原案と脚本を担当)、だったらいっか、と。

以上、言い訳です。

世間ではとても評判がいいので結構楽しみにしていたんですが、早速お断わりしておくと(お馴染みのフレーズ)、この映画をすでにご覧になって好きなかたは以降の感想はお読みにならない方がいいかもしれません。あまり褒めていないので。

それと、僕は原作コミックスの方は一切読んでいません。映画についてだけ述べます。

ファンの人なら先刻承知のことだと思うんでネタバレしますが、この映画は「アベンジャーズ」シリーズと繋がっていて、劇中にもシリーズでお馴染みの登場人物が何人か出てきます。

“アントマン誕生篇”としてこれまでのシリーズを観ていなくても一応単品でも楽しめるようにはなっていますが、完全にシリーズ初見の人には誰なのかわからないキャラクター(冒頭のアイアンマンのお父さんやキャップの恋人など)が説明もなく会話を始めるので、意味不明な箇所もあるかと。

いきなり空飛ぶ“あの人”とか出てきちゃうもんな。

僕はマーヴェルのシリーズは『インクレディブル・ハルク』と『マイティ・ソー』の2作目以外は観てるんで、誰が何を語っているのか理解はできましたが。

結論から言うと、「面白い場面もあったけど、1本の映画としては自分の評価はそんなに高くない」というのが正直なところです。

よくこの作品は『アイアンマン』の1作目に喩えられるけど、あの映画は僕はわりと好きだったんで、『アイアンマン』がよくて何故この『アントマン』が個人的に「う~ん」だったのかも書いていきますね。

ストーリーについても触れるので、未見のかたはご注意ください。



まず、↓こちらは某映画サイトで圧倒的に好意的な感想が多い中、比較的自分が感じたものに近いレヴュー。


Yahoo!映画ユーザーレビュー あまりにも雑


このレヴュアーさんが書かれているように、主人公のスコット(ポール・ラッド)が娘の養育費云々のために盗みを働く、というのがまったく本末転倒だとは僕も思った。出所して「改心した」って言ってたその舌の根も乾かないうちに。

あと、アントマンスーツの生みの親ハンク・ピム博士(マイケル・ダグラス)の娘ホープ(エヴァンジェリン・リリー)が悪役のダレン・クロス(コリー・ストール)と父親との間をしょっちゅう行ったり来たりしてることの不自然さも同感。




ダレン・クロスはホープの正体に気づいていた、みたいなことをのちに語っていたけれど、映画を観ていると彼はなんともマヌケに見える。

そして、題材に対してユーモアが不足している、というこのレヴュアーさんの指摘にも同意。

これだけでも十分な気はするんですが、人の感想に乗っかるだけではさすがに手抜きなのでもうちょっと自分の意見を書きますと、まずですね、説明台詞が多いよ。

前半なんか、ほとんどピム博士が事の成り行きについて延々と喋ってるのをスコットがフンフンと聞いてて、たまにそのピムさんがホープと唐突に親子喧嘩を始めるもんだからその仲裁をしたりしてる。

それがかなり長いのだ。

そのうちスコットがスーツを着てアントマンとしての能力を発揮できるように訓練しだしたりするけど、スーパーヒーロー物なのに敵との戦いがなかなか始まらない。

 


僕がもし幼児だったら、一緒に観にきた親に「ねぇねぇ、敵の怪人いつ出るのー?」って尋ねてると思う。

いや、この前公開されてた『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』みたいに全篇戦い(あれも途中でちゃんと“打ち上げシーン”があったけど)だったり、その規模も銀河とか地球だったりする“大風呂敷映画”とは違って、敢えて規模を限定したヒーロー物というのは新鮮だったし、アイアンマンのような大富豪じゃなくて前科持ちのバツイチで貧乏なおっさんが主人公、というのも変り種でユニークでしたけどね。

僕も予告観て、そういう冴えなかったお父さんがヒーロースーツ着て娘や元妻のために頑張るファミリー向け映画なのかと思ってたんだけど、なんか微妙に違った。

前歯の抜けた娘ちゃんは中盤はほとんど出番がないし。

仲間の3人のアミーゴが出てきてちょっとギャグタッチなところもあるんだけど、思ってたほど笑いの要素もなくて。

予告篇でも使われている機関車トーマスが脱線するとこみたいなちょっと笑っちゃう場面がいっぱいあるヒーローコメディを想像していたら、そこまでコミカルな映画じゃなかった。

ってゆーか、あれは予告の作り方が巧かったんだな。

まぁ、トーマスが目玉キョロキョロさせながら巨大化して家をぶち破るとこは思わず笑っちゃいましたが。

だって、やってることは「ドラえもん」のスモールライトとビッグライトを使って戦うようなもので、どう考えてもコメディ以外の何物でもない題材のはずでしょ。

ちょうど『ミクロキッズ』がそうだったように、そもそもたわいないにも程があるアイディアなわけで。

でも「アベンジャーズ」シリーズと同じ世界設定を保つためか、敵との戦いもわりとシリアスに描いていくんだよね。

アントマンスーツと同じく伸縮自在の“イエロージャケット”を装着したダレン・クロスが主人公の家に押し入って幼い娘を人質に取るという、やってることはショッカーの怪人と変わりないのに。


怪奇!パワード・蜂男


クライマックスの部屋の中での戦いはそれなりに見応えはあったけど、とにかく前半のピム博士の説明台詞の長さと家庭の事情を人前で開陳する無神経さにはウンザリした。

あそこはどうせならもっとちゃんと「絵」で見せてほしかったよ。

“ワスプ”(ちょっと“ウルトラの母”っぽいコスチュームだった)こと妻のジャネットが亡くなる場面は描いていたけど、たとえば娘のホープが幼い頃についても言葉だけで説明するんじゃなくて父や母との関係をちゃんと映像で見せてくれないと、彼女がなぜ母の跡を継いでスーツを着て戦うことにあれほどこだわるのかわからない。

ず~っとクソ面白くもない親子喧嘩を続けるピムとホープを見ていて、僕がスコットだったらいい加減痺れを切らして「そういう家庭の問題は事前に解決しといてくれよ!」って言うと思う。

だってスコットは彼らとは直接かかわりのない赤の他人なんだし。

そもそもスコットがアントマンに選ばれるいきさつがなんだかスッと飲み込めない。

この映画の中で、ピムとホープの父娘がスコットとその娘キャシー(アビー・ライダー・フォートソン)の親子と対になっているのはわかりますよ。

だから、敢えてホープの少女時代を描かなかったのは、キャシーの姿でそれを見せているから、ってことなんでしょう。

「エレクトラ・コンプレックス」というか、母に代わって父に認められたい娘ホープは、「アントマン」に選ばれたスコットにさえ対抗意識を持つ。

一方では母と別れた前科者の父に健気に懐く幼い娘キャシー。

おそらくかつてのホープはキャシーのように父を敬愛していたのだろう。

それは理屈ではわかるんだけど(台詞でも言ってましたし)、でもハンク・ピムとホープの父娘とスコットとキャシーの父娘はそれぞれ別の親子なんだから(スコットの元妻も健在だし)、ホープの物語はやっぱり「絵」で見せてくれないと、無関係なスコットがただピムたち親子の喧嘩に振り回されてるだけに見えてしまう。

また、これは「カインとアベル」の話、つまり「父」に見放された「兄」と、反対に愛された「弟」の物語でもある。

ダレン・クロスはピムの元弟子だが、彼のピム博士に対する愛憎、承認欲求がちょっと気持ち悪いぐらい強くて異様だった。彼はピムによって(「私に似ていたから」)大勢の中から見出されたにもかかわらず、まったく同じ理由で「父」から拒絶される。

理不尽極まりない。

それはちょうど『スターウォーズ エピソード4 新たなる希望』でオビ=ワン・ケノービがルーク・スカイウォーカーに語った、かつての弟子ダース・ベイダーとの因縁にも似ている。

原作にそういうエッセンスがあるのかどうかは知りませんが、脚本のエドガー・ライトとジョー・コーニッシュは明らかに意識的に「父と娘」「父と息子」というテーマをシナリオに組み込んでいる。

だったら、僕はそこはもうちょっと最後までしっかりと描いてほしかったんですよね。

どうしてダレン・クロスは選ばれず、スコットが選ばれたのか。

ダレン・クロスに欠けていてスコット・ラングにはあったものとは?

自分に与しない者や実験体の子羊の命をためらいもなく奪い、“イエロージャケット”を着たダレンが最終的にスコットの娘キャシーを襲う場面で彼らの決定的な違いがハッキリとするのだが、ダレンの敗北があまりにあっけなさ過ぎるのでスコットの勝利にカタルシスがないんですよね。

スコット=アントマンがイエロージャケットに勝てたのは、限りなく自分をミクロサイズにして消滅しかかりながら再び戻ってくるという“奇跡”を彼が起こしたから…ではなくて、生き物の命を大切にして娘思いでもある彼の勝利は必然だったからだ。

「父」たるハンク・ピムが「かつての自分と似ていた(怒ると暴走する危険がある)から」捨てた元弟子は、自らに欠けていたものに最後に気づいて死ぬべきではなかったか。

ピム博士とホープの仲違いも、博士がホープの母の死について事実をちゃんと話していればもっと早く解決してたことじゃないか。

スコットが二人の話を聞いてちょっとアドヴァイスしたらすぐ和解しちゃって、なんだよそれ(>_<)って。

台詞のやりとりだけで勝手に納得すんじゃなくて、なんてゆーか、もっとこう、戦いの中で親子が互いに絆を取り戻す、みたいなさぁ…そういう展開にできなかったんだろうか。

…なんか面倒臭いこと言ってるようですが、そここそがこの作品の“ファミリー映画”としてのキモだったんじゃないのかなぁ。

「父と子」の話をもっと突き詰めて描いてくれていたら、僕はこの映画を好きになれたかもしれないのに。


まだしばらくツッコミが入りますが、自分が感じたことを率直に記しておきたいのでご理解ください。

アントマンのコスチュームはシンプルでしかもちょっとレトロなイイ意味での「ちょいダサ感」があって悪くないんですが、特にマスク部分の造形が同じくマーヴェル・ヒーロー映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の主人公スター・ロードのそれと酷似していて、ちょっと気になった。

 


無精ヒゲを生やしたスコットを演じるポール・ラッドとスター・ロード役のクリス・プラットのキャラもカブってるし。

アントマンもスター・ロードもそのヘルメットはどう見ても『スターウォーズ』のダース・ベイダーやストームトルーパーのそれのアレンジで、どれも防毒マスクが基になっているんだから似ているのも当然といえば当然だけど(デザイナーが共通している作品もあるからでしょうが)、なんかもうちょっと作品ごとの独自性を出せなかったのかな、って。

 


「ガンダム」と「宇宙刑事」以降の日本の巨大ロボットアニメと特撮ヒーローの顔のデザインがこの2つのシリーズの影響をどうしても受けてしまうのと同じで、確かにカッコ良くはあるんだけれど、あまりにどれもが似通ってるんで正直グッとこないんです。

それ以前のロボットや特撮ヒーローたちって、もっと個性的な顔してたもの。

アイアンマンの顔なんて、なかなかユニークだったのにな。

アントマンのマスクは「個性的」ではなくていかにも既製品っぽいのが逆にいいのかもしれませんが。

あとさぁ、スコットはサーティワンをクビになってるんだから、映画の中盤か後半でサーティワンのアイスクリームを登場させるとか、会社を見返すような場面があったらよかったのに。

機関車トーマスが愉快だったように、これはやっぱりそういうコメディとして描くべきだよ。

アントマンのスーツはやたらと頑丈で(あんなに薄いのにヘタすればアイアンマンスーツよりも丈夫)しかもスゴい腕力やジャンプ力を持っているので、その動きも素早過ぎてセンス・オブ・ワンダーをゆっくり感じる暇がないんだよね。

3Dで観たらもっと迫力あったかもしれませんが。

身長1.5cmの人間が見る世界というものをもっとじっくりと堪能したかった。

せっかく「小さくなる」という特色があるのに、意外とそういう「小人が見た目線」の面白さはないのだ。

なんか敵の施設とか機械の中に忍び込む、みたいな展開ばかりで。

アリたちとの共闘はよかったけど。

水道管の中を固まって水に流されていくとことか、可愛かった。

家の中でアリの大群なんか見たら恐怖だけど、この映画ではアリたちはペットのように健気で忠実な“しもべ”として描かれている。

その中の愛馬のような羽アリの一匹に「アントニー」と名前をつけたり、彼との別れはちょっと切なかったり。




前半の無駄に説明的なシーンもムリヤリな「アベンジャーズ」との繋がりもいらないから、ミクロサイズの世界でのアントマンの冒険をもっと見たかった。

2008年公開のロバート・ダウニー・Jr.主演の『アイアンマン』は、これまでのスーパーマンみたいに自分の正体を隠したりバットマンみたいな悩める大富豪というキャラの完全に反対を行く主人公が目新しくて、しかも軍需産業についても触れていたりとまったくの絵空事ではないところも面白く、サム・ライミスパイダーマンに続く「新しいアメコミヒーロー」の誕生を予感させたんですよね。

まだ見ぬ「アベンジャーズ」という壮大な試みの一環としてもワクワクさせられたけれど、何よりも『アイアンマン』は仮に続篇などなくてもそれ1本だけで映画としてしっかり完結していた。

それと比べると、『アントマン』も単体で楽しめるとは言いつつも、でもやっぱりすでに映像化されていてさまざまなキャラクターが交錯する「アベンジャーズ」縛りはこの映画からかなりの自由を奪っている。

まだ『ガーディアンズ~』の方がよっぽど独立した1本の映画として成り立っていた。

エンドクレジットのあとにはファルコン(アンソニー・マッキー)の他にキャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)やウィンター・ソルジャー(セバスチャン・スタン)も出てきて、さらなる続篇の予告になっていた。

「キャプテン・アメリカ」第3弾ではアイアンマンとキャプテン・アメリカが袂を分かつそうだから、そうするとアントマンはキャップの側についてアイアンマンと戦うことになるわけだな。

それはそれで楽しみにしてますが、やっぱりどこか作り手とファンの間の「馴れ合い感」が漂っていて、ああいうヲタクが内輪で喜んでるノリには僕は感心しないんです。

単発の映画として公開するからには、ちゃんと単独映画として完成させてほしい。


しつこいですが、僕はこの『アントマン』を楽しんで「好き」って言ってる人たちのことをとやかく言うつもりはないです。好みは人それぞれなんで。

こういうタイプの映画にダメ出しみたいなことを書くとすぐに「娯楽作品を素直に楽しめない可哀想な奴」呼ばわりされるんだけど、僕がこうやって書いている事柄は家に帰ってからあれこれ考えたもので、上映中にいちいち頭の中で屁理屈こねて斜めに映画を観ているわけじゃないんですよ。

「素直に」観てるけど、どうもそんなにノれなかったので、なんでだろう?とあとで考えた末にその理由として思いついたことを書き連ねてるんで、その逆ではない。

粗探しするために恐竜映画やアメコミヒーロー物をわざわざ映画館に観にいくほど暇でもないし金の余裕もないんで。

単純に今回は、ちまたでの評判ほどに面白いとは思わなかった、というだけです。

だからやっぱり自分自身の目で確かめなくちゃね。誰かが褒めたとか貶したとかいう理由で勝手に判断するんじゃなくて。


出演者については、僕は主演のポール・ラッドという俳優さんについてまったく知らなくて、フィルモグラフィ見てみたらどうやら『40歳の童貞男』で主人公の仕事仲間の1人を演じてたらしいけど、よく憶えていません。わりと出演作は多くてキャリアもある人だけど、『ガーディアンズ~』のクリス・プラットと同様にマーヴェル・ヒーロー映画での主演は大抜擢ですね。

マイケル・ダグラスってひと頃病気のために俳優を引退、みたいなこと言ってたような気がするけど、『恋するリベラーチェ』やこの作品にしっかり出演しているのでもう大丈夫なのかな。

80~90年代にはこの人の主演映画をよく観ていたから、年を取っても映画で顔が見られるとちょっと嬉しい。

冒頭の80年代の場面では顔が若返ってましたね(反対に、キャプテン・アメリカの憧れの人ペギー・カーター役のヘイリー・アトウェルは特殊メイクで老けてる)。

スコットの友人で元妻の現在の夫でもある警察官のパクストンを演じていたボビー・カナヴェイルは、僕はこの人が出演する映画は今年だけでも『ANNIE/アニー』『シェフ』に続いてこれで3本目なんだけど、ほんとに売れっ子ですね。

そのわりには日本では顔も名前も浸透してないけど。

売れっ子といえば、スコットの元妻マギー役のジュディ・グリアもついこの前の『ジュラシック・ワールド』でも子どもたちの母親役だったし(『トゥモローランド』にも出ていた)、ここんとこやたらと顔を見るけど、いくらなんでも役柄がカブり過ぎでしょ。

同じ人が似たような役をオファーされ続けるのって、日本の映画やTVドラマと一緒ですね。

今、旬の人なんだろうか。小さな子どものいる母親役といえばこの人、みたいな。

“3バカ”の中の人相の悪い一人(デヴィッド・ダストマルチャン)に見覚えがあると思ったら、『ダークナイト』でジョーカーに心酔する若者を演じてた人だった。

あぁ、あの薄気味悪い顔したアイツね。

ここんとこ活躍が目立つルイス役のマイケル・ペーニャもだけど、ハリウッド映画を観続けていると主役だけでなく脇役の俳優たちも一時期ワッとまとまって映画に出る人たちがいて(で、しばらくするとパッタリ見なくなる)、そういうところも確実に時代を反映してるんだな。

ハリウッドの最新作をリアルタイムで観る楽しみって、こういうところもある。

どーでもいいが、マイケル・ペーニャ演じるルイスは話がまわりくどい、というキャラなんだけど、明らかにそれは笑いを誘うのが狙いなのにもかかわらず、彼のまどろっこしい喋りがウザくてちっとも笑えなかった。

メキシコ訛りの台詞廻しもなんかいかにも「笑えるだろぉ?」って感じで。

やっぱり僕にはエドガー・ライトの笑いのセンスは合わないのだろうか。

ルイスは刑務所で屈強な男をパンチで倒した、という設定なので、普段は軽いノリなのにやたらと守衛とかをぶん殴ってて(すげぇイイ音してたし)、そこは可笑しかったですが。

原作者のスタン・リーおじいちゃんが今回は映画が終わる直前にバーテンダー役で登場。

実はどのヒーローよりもこの人の出演回数が一番多いかもw


今年のマーヴェル・ヒーロー映画はこれでとりあえず打ち止めなのかな?

来年は春に『キャプテン・アメリカ3』の公開が控えていて、そこでアントマンは再登場するようですが、人や物を素粒子レヴェルにまで縮小したり、反対に巨大化させることもできる技術を持つアントマンがどんな戦いをするのか興味深々です。

ってゆーか、あんな突拍子もない設定をどうやって他のヒーローたちのそれと擦り合わせるんだろう。

僕は『アントマン』を観ていて、アメコミヒーローよりもむしろ「ウルトラセブン」や「仮面ライダー」など日本の特撮ヒーローを思い浮かべたんですよ。

ウルトラセブンも小さくなって松坂慶子の鼻の穴に入ってましたしw

セブンもライダーも基本的には子ども向け作品だけど、ハリウッド並みの予算をつぎ込んだらアイディア自体はそのまま使えるよな、って思った。

『アントマン』を観ていると、どんなに荒唐無稽な設定でも迫力のある映像やそれっぽい科学的説明によってなんだか観れちゃうってことがわかったので。

まぁ、ハリウッドが日本産のコンテンツを実写映画化したら『ドラゴンボール』みたいになっちゃうから、それは期待してないけど。

ハリウッドとまではいわないけれど、限られた予算でも可能な企画はあるんじゃないかな。

日本の特撮番組って、戦隊物やライダーのような子どもたちや若いお母さん向けか雨宮慶太の「牙狼」みたいな劇画タッチというかアニメ風というかヲタク向けに二分されてしまって、普通の大人が楽しめるようなものがなかなか作られないんだけど、日本の「特撮ヒーロー」も生まれてもう何十年も経つんだから、いい加減おっさんでも楽しめるものが出てきてほしいんですよね。

アメリカじゃ「フラッシュ」とかやってるじゃないですか。観てないけど。

コメディタッチのものでもいいし。

あるいはM・ナイト・シャマランが撮った『アンブレイカブル』みたいなちょっと捻ったものや、「ALWAYS 三丁目の夕日」みたいに近過去を舞台にしたものとか。

スーパーヒーローって、カッコ良くて、でも一方ではダサくてチャチくて幼稚なものでもある。

それ全部を含めて「ヒーロー物」だと思うのだ。

「特撮ヒーロー」というジャンルは、それだけですでに研究に値する。

多くの「元・子どもたち」が通過してきたものだから。

『アントマン』はちょっとかつての特撮ヒーロー的なものをうかがわせたけど、シリーズ物の1本ということでやっぱりアメコミヲタク臭の方に偏っちゃっていた。

そこがちょっと残念だったな。

まぁ、そんなに古い特撮ヒーロー物がいいのなら昔の映画やTV番組だけを観てればいいんだけど、僕はそういう往年の作品たちのテイストも受け継いで最新の技術で作られた“今の映画”が観たいので。

でも古臭かろうがダサかろうが、映画館で胸を熱くしたスーパーヒーローたちには愛着を持ち続けたいし、古くても良いものは大切にしていきたい。

新しけりゃいいってもんでもないし。

だからあーだこーだと文句を垂れてきたけど、ちょっとレトロで可愛くもあるアントマンには愛され続ける要素があるのはわかる。

「特撮ヒーロー」というのは子どもの時から観ているから、その分他のジャンルよりも思い入れが深い(人によっては早々と卒業するが)。そして僕には僕の理想のヒーロー映画像というものがあるので、どうしても注文が多くなったり評価も辛くなる。

だから「大好き!」とか「傑作!」と絶賛することは少ないけど、でもかつて『スーパーマンII』や『バットマン リターンズ』で味わった感動を憶えていてああいう作品たちにまた出会いたいからこそ、僕はヒーロー映画をこれからも観続けるのです。多分。



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