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ローランド・エメリッヒ監督、チャニング・テイタムジェイミー・フォックスジョーイ・キングマギー・ギレンホールリチャード・ジェンキンスジェームズ・ウッズ出演の『ホワイトハウス・ダウン』。



議会警察官でシークレットサーヴィス志望のジョン・ケイル(チャニング・テイタム)は、娘のエミリー(ジョーイ・キング)とともにホワイトハウスをおとずれていた。しかしテロリスト集団によって国会議事堂が爆破され、ホワイトハウスのなかで大勢が人質になってしまう。ジョンは大統領のソイヤー(ジェイミー・フォックス)を守り、エミリーを無事避難させるためにテロリストたちに戦いを挑む。


マジック・マイクジャンゴがテロリストたちと戦う痛快娯楽アクション。

2009年の『2012』から4年ぶりにエメリッヒの監督作品を鑑賞。

エメリッヒの映画は、日本では昨年『もうひとりのシェイクスピア』(2011)が公開されたけど僕は未見。

ひさしぶりな気がしたけど、コンスタントに撮ってはいるんですよね。

エメリッヒといえば『ID4』こと『インデペンデンス・デイ』が有名だし、いっとき“ディザスター・ムーヴィー”といったらこの人、みたいな状態だったこともあったんだけど、意外なことに彼は3D映画をまだ1本も撮っていない。

真っ先に撮ってそうなイメージがあるけど。

『ID4』の続篇あたりで3D初参戦となるんでしょうか。

でも肝腎のウィル・スミスはギャラが高すぎて続篇には出ない、という話もあって、でも前作が愉快だったのはウィルがイカ宇宙人をぶん殴るところだったんじゃねーのか、あの人出なかったら面白味も半減だろ、と思ったり。

まぁ、最近のウィル・スミスは息子のジェイデンにベッタリで、イマイチ以前のような魅力を発揮できていないようですが。


今回のエメリッヒの最新作は「ホワイトハウスが攻撃される」という、ちょっと前に公開された『エンド・オブ・ホワイトハウス』とモロかぶりな映画ですが、これまた僕は『エンド・オブ~』の方は未見。

『エンド・オブ・ホワイトハウス』
監督:アントワーン・フークア 出演:ジェラルド・バトラー アーロン・エッカート モーガン・フリーマン




じつをいうと、おなじような映画をエメリッヒが撮ってるというのを知って、『エンド・オブ~』の方を敬遠してしまったというのはある。

人によっては『エンド・オブ~』の方がよくできていた、という意見もあるし、逆に『ホワイトハウス・ダウン』の方が好き、という人もいたりして評価は分かれているようですが、いずれDVDになったら観くらべてみようと思ってます。

以下、ネタバレがありますのでご注意ください。



で、僕の評価ですが。

…うーんと、まぁ楽しかったですよ。

なんか歯切れの悪い感想ですが^_^;

いや、エメリッヒの監督作品でここしばらくつづいていた都市が崩壊するVFX映像を目玉にした作品に若干食傷気味だったので、それらにくらべるとキャラクターたちのアクションを前面に押しだしていた点ではよっぽど好感はもてましたが。

ただ、観る前にこの映画を『ダイ・ハード』になぞらえるレヴューを読んだりしてたので、けっこう期待しちゃってたとこがあって。

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たしかに主人公がタンクトップで頑張るし(笑)、出てくるキャラ(敵のメンバーのなかにオタクっぽいハッカーやキレやすい武闘派がいたり)やシチュエーションがカブってる、というより作り手があきらかに『ダイ・ハード』を意識してそうしただろうとおもわせるところはいくつかある。

一般人のふりして「助けてください」と言いながら銃を撃つとことか。

だから、そういうところで『ダイ・ハード』を思いだす人がいるのはわかるんですが。

しかしそこはエメリッヒ・クオリティですから。

さすがに娯楽映画のお手本のような『ダイ・ハード』ほどの精度の高いシナリオではない(そもそも『ダイ・ハード』とならぶ出来のアクション映画というのがめったにないわけで)。

たとえば『ダイ・ハード』の場合、主人公ジョン・マクレーン刑事の妻ホリーの同僚が調子コイて強盗団のボスに接触する場面とか、警察官のアルやウザいTV記者ソーンバーグなど、脇のキャラクターたちの行動にまで伏線がしっかりと張ってあってサスペンスを生みだしていたんだけど、この『ホワイトハウス~』ではそこまで各キャラクターたちは活かされていない。

ジョンは面接でマギー・ギレンホール演じる特別警護官のキャロルにいろいろと彼自身の問題点を指摘されるけど、それがどれもその後の展開につながっていかない。

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ホワイトハウスのガイド(ニコラス・ライト)だって中盤でもっと話にからんでくるのかと思ったら、単なるギャグ要員だったし(終盤でジョンを助けますが)。

テロリストにむかって「それは貴重な美術品だから丁寧にあつかって」と注文つけるとか、ありえねーだろ、と。

「ここが『インデペンデンス・デイ』で破壊された建物です」とかw

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ちゅど~んっっ!!

そういうよけいなサーヴィス精神って、全篇シリアス一辺倒が流行ってる最近のハリウッド大作群からはちょっとズレてる気がして、そんなアホっぽさが微笑ましくもあるけれど。

ツッコミ入れたらキリがありませんが。

いくらなんでもホワイトハウスのセキュリティがザルすぎるだろ、とか。

テロリスト入り放題じゃねーか。

また黒幕の正体も、驚愕のオチというよりは「伏線の張り方がなんてヘタなんだ」と^_^;

『ダイ・ハード』のブルース・ウィリスとアラン・リックマンのように、主人公と事件の首謀者たちとのあいだにもっと「頭脳戦」があってもよかったでしょう。

最初のうちはわりとふつう、というか真っ当なドラマのようなんだけど、中盤以降はどんどんいろんなものを乗っけてくるいつものエメリッヒ式テンコ盛り展開に。

敵の黒幕は二転三転するわ、大統領役のジェイミー・フォックスはロケットランチャー撃ったりするし。

大統領がどんどん“おかわり”してくとことか、ブラックジョークなのかと思った。

エミリーの「旗振り」が伏線になってたのはよかったですが。


主人公ジョンを演じるチャニング・テイタムはアメリカでは大人気だそうで、ここんとこ日本でも出演作が目白押しで名前や顔も知られてきてるけど、僕はこれまで彼の出演作品をろくに観てなくて、『G.I.ジョー』や『エージェント・マロリー』ぐらい。

男性ストリッパーを演じた『マジック・マイク』ではその筋肉美と男尻に女性たち(と一部の男性)がキャーキャー言ってたけど、男のケツには興味がないので無視していた。

そこにゲイのエメリッヒが目をつけたのかどうかは知らないが、ようやく彼の主演作品を観ることに。

『ダイ・ハード』1作目(1988)の時点ですでに若ハゲ気味のオッサン顔だったブルース・ウィリスにくらべれば若々しくてイケメンのテイタムが、娘からちょっと距離を置かれてる悩める父親を演じている。

じつは88年当時のウィリスと現在のチャニング・テイタムがおなじ33歳と知ってけっこう衝撃Σ(゚д゚;)をうけているのですが。

あのイッピカイエーのおっさんが33歳!?(^▽^;)


ジョンは仕事熱心だが妻とうまくいってなくて、しかもうっかり娘の学校での催しを忘れて、彼女から父親なのに“ダディ”ではなく名前で呼ばれるという「ダメ親父」ぶり。

そこでなんとか挽回したいと思ってetc...といったこのへんの父娘のやりとりは、もうハリウッド映画で何十万回観たかわからないような定番中のシチュエーションで、もはやパロディなのでは、とおもえるほど。

僕がこの映画を手放しで褒められない理由がそこで、『ダイ・ハード』はその後のハリウッド製アクション映画に良くも悪くも多大な影響をあたえたエポックメイキングな作品だが、この『ホワイトハウス・ダウン』に目新しい要素はまったくない。

すべてがどこかで見たような既視感をおぼえさせる描写、展開。

逆にそういった部分では安心して観ていられるんですが。


ジョンの娘エミリーを演じるジョーイ・キングは、『ダークナイト ライジング』では穴ぐらから這い出るために命綱なしでジャンプする子どもを、また『オズ はじまりの戦い』では冒頭に登場する足の不自由な少女(と、陶器製の少女の声)を演じていて、どれも言われなきゃ気づかないぐらいの出番だったけど、今回は出ずっぱりで最後は空爆から大勢の命を救う大活躍を見せる。

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子役として着々と知名度を上げてきてますね。


マジック・マイク、もといチャニング・テイタムとボコりあう敵の武闘派テロリスト、ステンツを演じるジェイソン・クラークは、クロエ・グレース・モレッツ主演の『キリング・フィールズ 失踪地帯』にも出演していて、やはり目つきがヤバいキャラを演じていた。

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この人には凶悪系の悪役としてこれからもぜひ活躍してほしい。


シークレットサーヴィスの長官役のジェームス・ウッズはひさしぶりに見た気がするけど、ほんとこの人は「ヤマト」の真田さんばりにマユゲがないよなぁ^_^;

なんか年とってますます顔がジェフリー・ラッシュに似てきたような(って、ウッズの方が年上だが)。

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白髪頭になったらマルコム・マクダウェルみたいだし。演技のテンションも。


キャビン』で楽しいことになってたリチャード・ジェンキンスも下院議長役で出演。

この人はほんとに最近映画でよく見る。

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大統領役のジェイミー・フォックスは、ある人のレヴューを読んだら「奴隷から大統領まで、演じる役柄の幅が広すぎ」と書かれてて笑った。

傭兵を蹴りながらの「わたしのエア・ジョーダンをはなせ!」は可笑しかったな。

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ジャンゴのようなマッチョな役もあるけど、トムクルに振りまわされる『コラテラル』でもそうだったように巻きこまれ型のキャラクターを演じることもある。

次世代のデンゼル・ワシントン、といった感じの人なのかな。

主演のテイタムは大真面目にキャラクターを演じる俳優さんなのか、ブルース・ウィリスのようなトボけた味というのはなくて、それが僕のなかでいまいちこの人の印象が薄い理由なのかもしれない。

ホワイトハウスのツアー客のなかで手をあげてひとりで答えまくるエミリーにむかって、真顔で「正直に言え。イジメに遭ってないか」とたずねるところは笑えたけど。

でもチャニング・テイタムとジェイミー・フォックスのコンビは悪くなかったです。


さて、当然ながらホンモノのホワイトハウスで銃撃戦や爆破の撮影なんてできないから、この映画のホワイトハウスのシーンのほとんどすべては大掛かりなセットを組んでの撮影と実景の合成によって作られている。

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ちょっと気になったのが、VFXの合成がところどころかなり雑に見えたところ。

特に爆発が起こって炎が広がる映像はいかにも合成まるだしだった。

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人間が炎に巻きこまれて吹っ飛ぶ生々しさを抑えるためなのか、この映画の爆破シーンにはまるでリアリティがない。

このあたりは十数年前の『ID4』からほとんど進歩していないような感じ。

エアフォース・ワンが撃墜されるシーンはなかなか迫力あったけど、意外とあっけなかったりもして。

『インデペンデンス・デイ』のときにはそのVFXが話題にもなったけど、最近はほかの監督さんたちに押され気味のようで、エメリッヒ作品がそちらの方面で話題になることはほとんどなくなってしまっているのがちょっと寂しいところ。


武装集団を指揮していたのはシークレットサーヴィスの長官ウォーカーで、しかも彼に重要なパスワードを教えていた黒幕は下院議長のラフェルソンだった。

彼は時代遅れのポケベルを使っていたためにジョンに正体を見破られる。

この映画の敵はアメリカの差別主義者たちで、彼らは黒人の大統領がアラブ諸国と手をとりあうことを快しとせず、核ミサイルで攻撃しようとしていた。

そしてソイヤー大統領は死んだとされ、副大統領もエアフォース・ワンごと撃墜されたために新大統領となったラフェルソンによってテロリストに占拠されたホワイトハウスは証拠隠滅のため空爆されることになる。

いま“空爆”と聞くとなんとなく緊張が走りますが。

敵が海外からのテロリストではなく国内の人間であり、また政府の重要なポストについている者がクーデターをたくらんでいた、というのは娯楽作品ではありがちだが妙に得心がいく。

戦争したがっている人間は外側だけでなく内側にもいる、ということ。


それにしても、この映画のなかのエミリーの母親はじつに影が薄く、また大変なときにエミリーに電話してきてそのために娘はテロリストたちに気づかれて捕まってしまう。

ラストで、ついさっきまであれだけ娘が危険な目に遭ってたのに、なんのためらいもなくまた夫や大統領に同行させるのも、ふつう母親ならもっと躊躇するんじゃないかと思うんだけど。

トニー・スコット監督の『アンストッパブル』のときも、やはり夫に無理解でそのわりには最後に急に態度を変える妻が出てきてものすごく抵抗感があったんだけど、「父と娘」の話になるとなぜいつも母親がないがしろにされるのだろう。

ホワイトハウス占拠事件の首謀者だったウォーカーの妻にしても、夫の犯罪を正当化して説得を拒否したり、なぜか「妻」というのはあまり良く描かれていない。

まぁ、本家の『ダイ・ハード』でも3作目以降はマクレーン刑事は奥さんと別れちゃってるんだが。

逆に妻が活躍する映画では夫が役立たずだったりもするから、おたがいさまなのかも。


たしかに大味なアクション物でいろいろイチャモンもつけましたが、それなりに楽しめる作品で退屈はしませんでしたよ。

ちょっと昔のスタローンの映画みたいだった(そこはウィリスじゃねーのかよ^_^;)。

チャニング・テイタムの今後のさらなる活躍に期待。

やっぱり『マジック・マイク』も観ておいたほうがいいかなぁ^_^;



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