いずれもネタバレがありますので、これからご覧になるかたはご注意ください。

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  『ザ・ロストシティ』

 

 

アーロン・ニー、アダム・ニー監督、サンドラ・ブロック、チャニング・テイタム、ダニエル・ラドクリフ、ブラッド・ピット、ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ、スティーヴン・ラングほか出演。

 

 

 

予告篇を初めて目にした時から「観たいなぁ」と思っていました。

僕はサンドラ・ブロックの映画を観るのはかなり久しぶりで、映画館では2013年公開の『ゼロ・グラビティ』以来(『オーシャンズ8』はTV放送で視聴)。彼女がアカデミー賞主演女優賞を獲った『しあわせの隠れ場所』も観ていません。

 

 

見るからに「おバカ・コメディ」で、共演はチャニング・テイタムだし、ブラピも出てるし、悪役はハリー・ポッターことダニエル・ラドクリフだし、軽~いノリで楽しめそうだなぁ、って。

もう、まさに予告で感じた通りの作品でしたがw

人気シリーズを手がける女性の流行作家、といえばそれこそ「ハリポタ」の原作者を連想したりするけど(最近ではトランスジェンダーの女性の排斥を支持する発言をしてハリポタ映画の出演者たちからも批判されたりしてますが)、女性作家の秘境アドヴェンチャーといえば、キャスリーン・ターナーとマイケル・ダグラス主演の『ロマンシング・ストーン』を思い出します。…って、これもTV放送でしか観たことないけど。






『ザ・ロストシティ』は映画が始まってしばらくは、ちょっと「インディ・ジョーンズ」っぽいのかな、とも感じたんだけど、インディ・ジョーンズほどアクション尽くしではないし、もっとロマンティック・コメディ寄りでしたね。

サンドラ・ブロックの魅力を活かした企画になっていたし、『フリー・ガイ』でイイ味出してたチャニング・テイタムがここでもバカっぽいマッチョを好演。ブラッド・ピットの無駄遣いぶりも笑える(あのあっけなさ過ぎる退場のしかたは、ちょっとコーエン兄弟の『バーン・アフター・リーディング』っぽかったけど)。

 


ラドクリフ君は『グランド・イリュージョン2』でも金持ちの悪役を演じてたけど、今回もほとんど同じようなキャラで、「子どもかと思ったら髭が生えてた」などとイジられている。

 


本当は歴史を研究する仕事がしたかったのに、イケメンと美女が冒険をする小説を延々とシリーズで書き続ける自分の仕事に限界を感じ始めた女性作家がひょんなことから誘拐されて、彼女の作品の中で主人公と恋に落ちるヒーローのイメージキャラクターを務めるモデルの男が相棒となって古代の遺跡を探すことに。

ほんっっとにたわいないにもほどがある内容なんだけど、映画の楽しさって案外こういう作品に詰まっていたりするものなのかもしれない。

サンドラ・ブロックとチャニング・テイタムの会話の中で、映画『グロリアス』の主人公でフェミニストの「グロリア・スタイネム」の名前がフツーに出てくるところが面白かった。

この映画、なぜかやたらと「尻」をフィーチャーするんだよね(^o^) “Anus(肛門)”連呼するしw

パープルのスパンコールが散りばめられたピッチピチの服を着せられたサンドラ・ブロックがたくましいおケツで転がりまくったり、崖を登る時にはそのお尻をチャニング・テイタムが頭で押したりする。サンドラ姐さん「ちょっと、アソコが」とか言いながらw

チャニング・テイタムもこれ以上ないぐらい極上の「男尻(蛭付き)」を披露。

全裸の彼の前方にまわったサンドラ・ブロックが目撃したその「信じられない」イチモツのサイズが超ビッグだったのか、それともスモールンだったのかは不明だが。

顔と筋肉だけの田舎出の男だと思っていたテイタムが実はファン思いで真面目な人物だとわかって、最後には…という安手のロマンス小説そのまんまな結末なんだけど、現在57歳のサンドラ・ブロックが42歳のチャニング・テイタムとカップルを演じてまったく不自然さがないのが素敵だし、荒唐無稽でたわいないロマコメでありながらも、仕事への姿勢だとか生き方だとかについての言及にどこかに真剣な部分も含んでいるから、ただくだらないだけのコント(くだらないコントも嫌いじゃないですが)に終わっていないんですよね。

出演者たちはみんなちゃんと「真面目に」演じていて、やり過ぎていない。そこんとこのさじ加減が絶妙でした。

サンドラ・ブロック演じるロレッタはラストでは自分の小説に誇りを持つことができて、チャニング・テイタム演じるアランともイイ感じになって大団円となるのだけれど、その演じてるサンドラ・ブロックさんご本人が最近無期限の「休業宣言」をしたというのはなんとも皮肉というか、現実の厳しさというか、映画と現実は地続きなんだなぁ、と。

子どもたちと過ごしたい、とのことですが。

ただ、彼女は2010年頃にも休業宣言してるんですよね。その時も「子どもと過ごすため」と言って。でも当時の出演作品を確認してみると、その後も特に長期休業をしている気配がなくてコンスタントに映画に出ている。

定期的に子どもと過ごしたくなるのかな(^o^)

俳優引退宣言をしていたキャメロン・ディアスさんも最近復帰したそうだし、だからサンドラ・ブロックさんもじっくり休養を取ったり子どもさんたちと一緒に過ごして、そのうちぜひまた戻ってきていただきたいです。

サンドラ・ブロックは『ものすごくうるさくて、ありないほど近い』や『ゼロ・グラビティ』がそうだったようにシリアスな映画にも出ていて素晴らしい演技を見せているし、だからコメディばかりの人ではないのはわかっているんですが、でも僕は彼女のあの笑顔やコメディ演技が好きなんですよね。

椅子に縛りつけられたロレッタが猫車(土などを運ぶための一輪車)みたいなのに乗せられて逃げる場面でのバックの爆発は合成じゃなくて昔の仮面ライダーみたいにほんとに火薬で爆破してるそうだけど、そん時のサンドラ姐さんの「おうおうおう」みたいな表情がサイコー(^o^)

ラドクリフにはババア呼ばわりされたり、「色仕掛けか?気持ち悪いな」とかめちゃくちゃ言われてるし。

よく見るとわりと「面白い系」の顔の人だと思うんだけど(彼女を初めて見たスタローン主演の『デモリションマン』でも、いろんな人に当時の表現で“ミスターレディ”っぽい顔だと言われてたし)、その彼女が「美人」に見えるのは、やっぱりあの笑顔の魅力が大きいと思う。

キャメロン・ディアスもそうですが。

お休みする前に9月公開予定の、今度は主役でブラッド・ピットが出演している『ブレット・トレイン』に彼女も出ているので、そちらもチェックしておこうと思います(^-^)

 

 

 

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  『バズ・ライトイヤー』

 

 

監督:アンガス・マクレーン、声の出演:クリス・エヴァンス、キキ・パーマー、ピーター・ソーン、タイカ・ワイティティ、デール・ソウルズ、ウゾ・アドゥーバ、イザイア・ウィットロック・Jr.、ジェームズ・ブローリンほかのピクサーのアニメーション映画。

 

 

 

ほとんどの映画館では日本語吹替版しかやっていないので、奮発してドルビーシネマで字幕版を鑑賞。

ピクサーのアニメーション映画はここ最近何作もネット配信のみが続いて劇場で公開されなかったため僕は観られなくて、なんか切り捨てられたような気分になっていたんですが(事実、ディズニープラスに加入してない人は切り捨てられつつあるのだが)、この作品は映画館で観られることがわかって楽しみにしていました。

「トイ・ストーリー」シリーズでカウボーイ人形ウッディの相棒で“スペースレンジャー”のアクション・フィギュア「バズ」のモデルとなったキャラクターを主人公にしたスピンオフで、「トイ・ストーリー」シリーズでウッディやバズの持ち主である少年アンディが大好きだった映画、という体裁で作られている。

だから、バズの宿敵という設定の「ザーグ」も悪役としてちゃんと登場する。






日本での公開前から、登場キャラクターの女性同士がキスするシーンが同性愛を禁ずる国で問題視されて上映禁止になって話題になっていますが、日本も他人事じゃないですよね。

つい先日にも、どこぞの政党で同性愛者差別を肯定・助長するような冊子が配布されたりしてますし、選挙演説でも同様のヘイトをカマしてる候補者がいる。

ちなみに、上映終了後にお客さんの二人連れの男性たちが「問題になったシーンってどこにあった?」と喋ってて、実は僕も見逃しちゃったんですよね。

事前に女性同士のキスシーンの件は知ってたから意識して観てはいたのだけれど、どこでしてた?と。

おそらく主人公バズ・ライトイヤーの親友で上官のアリーシャ(軍での階級はバズは大尉で彼女は中佐)と彼女のパートナーがしていたんだろうけど、気づかなかった。




要するに、その程度のささやかな場面だったってこと。大騒ぎするのがほんとにバカバカしい。

くだんのシーンをカットすることを要求されて拒んだピクサーとディズニーの判断は正しかったね。

物語は、──自分の操縦ミスでとある惑星からの脱出に失敗して大勢の仲間たちが取り残されたことを悔やみ続けているバズは、皆を救うために超光速航行が可能なハイパースペース燃料の配分を研究していた。しかし何度挑戦しても光速を超えることができず、実験航行のたびに彼と地上の仲間たちとの間に時間のズレが生じて、ようやく成功させた時には何十年もの年月が経っていて、アリーシャも孫娘のイジーを残して亡くなっていた。
 

今やそのイジーが祖母と同じ道を歩もうとしている。バズはコロニーが謎のロボットの大群「ザーグ」によって安全を脅かされているのを知り、イジーや彼女の仲間たちとチームになって戦う。


手っ取り早く結論から言いますと、『トイ・ストーリー4』で感じた作品の完成度の高さには及んでいなかったように思いました。同様に『モンスターズ・ユニバーシティ』にも。

 

 

ザーグの存在や「無限の彼方へ」というキメ台詞など、「トイ・ストーリー」から踏襲したものもあるけれど、あくまでも「トイ・ストーリー」とは別物、「きれいなジャイアン」みたいな顔したバズのキャラクターもあの所ジョージの声をしたオモチャとは違っていて(アメリカのオリジナル版も日本語吹替版も声優は「トイ・ストーリー」から別の人に代わっている)、子どもが楽しめるように猫型ロボットのソックスやちょっと抜けてる仲間たちの描写などところどころにギャグも散りばめてはいるけれど、お話自体はタイムパラドックスを用いた宇宙SFモノで、「トイ・ストーリー」の世界や物語とはかかわりがない。

それはまぁいいとしても、わりとありがちなお話に思えちゃったんですよね。

ザーグは『トイ・ストーリー2』で「お前の父は私だ」「ウソだぁ~!!」というバズとのスター・ウォーズのパロディを繰り広げていたけれど、この『バズ・ライトイヤー』ではザーグの正体は「未来のバズ」だったことが判明する。年老いたバズは(ちょっとこのあたりの理屈はわかりにくかったので勝手な解釈を加えてますが)イジーたちと一緒に戦っている若いバズとは異なるタイムラインからやってきた別の時空の彼らしく、操縦を誤って人々を惑星に足止めしてしまった過去を「なかったこと」にしようとしている。そして、若きバズに「手を結ぼう」と提案する。老バズと若きバズがそれぞれ持っているハイパースペース燃料を合わせれば、失敗した過去を消すことができる。

しかし、若きバズはその誘いを拒絶する。過去を「なかったこと」にすれば、イジーも存在しなくなるから。惑星で生きてきた人々の人生が「なかったこと」にされてしまう。それはできない、と。

仮に間違いや過ちを犯した過去でも、それを「なかったこと」にはできないんだ、というメッセージはとても「現在」を映し出していると思うし、それこそ「歴史改ざん」が堂々と行なわれようとしている僕たちが住むこの国だって無関係ではないわけで、今生きている私たち誰もが尊重されて誰と比べられて蔑まれることもない社会であってほしい、というのも(だからこそ、同性愛者のカップルとその子どもの描写はただの「ポリコレ対策」などではなくて、ちゃんと大きな意味が込められている)本当に重要なことを言っていると思うんですが、難しいのは、メッセージの妥当性と「映画の面白さ」は必ずしも同期するとは限らない、ということ。

僕は、これもディズニーが作ったマーヴェル映画『キャプテン・マーベル』を観た時のことを思い出したんですが、あの映画もそこに含まれるメッセージには賛意を示しつつも映画自体を「面白かった」とは言えなかったように、この『バズ・ライトイヤー』ももうちょっとストーリーの方をどうにかできなかったのか、という不満は大いにある。

あれこれと設定がややこしいためだろうか、僕の隣りの席で観ていた小学生低学年ぐらいの男の子は途中で椅子をガタガタさせて明らかに退屈そうにしていたし(そんで派手にポップコーンと飲み物を床にぶちまけていた^_^;)、じゃあ、大人には見応えがあったかというと、確かにピクサーはアニメーションの技術はスゴいから迫力ある場面はあったし、ドルビーシネマで観たこともあってアトラクション的な気持ちよさはありましたが、物語的なカタルシスはそんなになかった。




予告篇ではデヴィッド・ボウイの「スターマン」が流れててアガったんだけど、あの曲は映画本篇では使われていません。エンドクレジットでも流れない。つくづく音楽の力は凄いよな。

 

 

 

音楽はおなじみマイケル・ジアッキーノだし、胸が高鳴る曲を作れる人のはずだけど(もちろん、かっこいい曲も流れてはいたんですが)、予告篇を観た時の高揚感が残念ながら映画本篇にはなかったんです。予告負けしていた。

賛否が激しく分かれているらしい『トイ・ストーリー4』は僕は全力で擁護したいし、あの“完結篇”は間違いなく傑作だと信じて疑いませんが、この『バズ・ライトイヤー』への批判にはある程度納得してしまう。

ただし、お断わりしておきますが、僕がこの映画に不満を持っているのはあくまでも「映画としての面白さ」とか「作品としての完成度」に対してであって、同性愛が肯定的に描かれていることだとか「ポリコレ」がどうとかいうことに対してではありません。そこんとこはハッキリ申し上げておきます。

だから、不満はあるのだけれど、僕はこの映画を観てよかったし、ピクサーやディズニーの試みは評価したい(スター・ウォーズでの出演者へのヘイトを放置したことは今後もずっと批判し続けるつもりですが)。反発されたら引っ込めるのではなくて、正しいと思うことは貫く姿勢は見習いたいし支持したい。

劇中で新しい上官から「いずれは滅びる存在」だと言われて「でも今じゃない」とバズが答えるのが、『トップガン マーヴェリック』でトム・クルーズが同じような台詞を言う場面とあまりに似ていたので可笑しかったんですが。

この映画も、そのうち地上波で放送されたらみんなで観れば普通に楽しいだろうし、興行的にちょっと苦戦してるようなことも聞きますが、ディズニーさんはこれに懲りずに、ぜひまた次回作も映画館で上映してください。

 

 

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