マシュー・ヴォーン監督、ブライス・ダラス・ハワード、サム・ロックウェル、ヘンリー・カヴィル、ブライアン・クランストン、キャサリン・オハラ、ジョン・シナ、アリアナ・デボーズ、デュア・リパ、ソフィア・ブテラ、リチャード・E・グラント、サミュエル・L・ジャクソンほか出演の『ARGYLLE/アーガイル』。

 

謎のスパイ組織の正体に迫る凄腕エージェント・アーガイル(ヘンリー・カヴィル)の活躍を描いたベストセラー小説「アーガイル」の作者エリー・コンウェイ(ブライス・ダラス・ハワード)は、愛猫アルフィーと一緒にのんびり過ごす時間を愛する平和主義者。新作の準備を進めている彼女は、アルフィーを連れて列車で移動中に謎の男たちに命を狙われ、エイダン・ワイルド(サム・ロックウェル)と名乗るスパイに助けられる。(映画.comより転載)

 

ネタバレがありますので、ご注意ください。

 

なお、出演者の体型を揶揄するような文章がありますので不快になられるかたがいらっしゃるかもしれませんし、私も人様の外見についてとやかく言えるほどスリムでもありませんが、どうしても触れずにはいられなかったので。なにとぞご理解いただきますようお願いいたします。

 

キック・アス』や「キングスマン」シリーズ等のマシュー・ヴォーン監督の、『キングスマン:ファースト・エージェント』以来3年ぶりの最新作。

 

最初に予告篇観た時に、ブライス・ダラス・ハワード演じる有名作家が事件に巻き込まれる…って、なんかサンドラ・ブロック主演の『ザ・ロストシティ』っぽいな、と思ったんだけど、実際観てみたらほんとに似ていた。

 

『ザ・ロストシティ』+『トータル・リコール』といった感じの映画でした。

 

今回、ブライアン・クランストンが悪役を演じているけれど、ちなみにトータル・リコール』のリメイク版でも彼が悪役を演じていました。

 

 

 

たまたまなのか、あえてのキャスティングなのか知りませんが。

 

マシュー・ヴォーンの映画って僕は『キック・アス』で初めて出会ってから過去作をDVDで観たりしたし、アメコミの実写化映画『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』もわりとお気に入りでもあったし『キングスマン』の1作目も面白かったから、安定したエンタメ映画を提供してくれる監督だという印象があったんですが、『キングスマン』の続篇2本については正直なところそこまでハマれず、なんとなくこれまでの信頼感がちょっと揺らいでる感もあって。

 

この最新作についても、すでに公開が始まっていた北米での興行収入や評価は…?みたいな様子なので、う~ん、大丈夫だろうか、と。

 

で、先に結論を述べると、マシュー・ヴォーンの映画が好きな人は楽しめるんじゃないでしょうか。

 

難しいこと考えたりせずに楽しめる娯楽作ではあるので。

 

カップルや友だち同士で映像ソフトや配信でワイワイとポップコーン食べながら観るのにはもってこいの映画でしょう。

 

だけど日本の映画館じゃワイワイ賑やかに観るわけにはいかないし(応援上映やればいいんだけどね)、上映時間が139分あるので、独りで黙って観ているのはちょっと寂しいものがあるかも。

 

マシュー・ヴォーンの映画って結構長いんですよね。130分ぐらいかそれ以上あるのがほとんどで(2時間以内なのは『キック・アス』を含めた2本ほどしかない)。

 

だから、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』だとか『キングスマン』の1作目みたいに映画に入り込んで夢中になれればいいんだけど、そうじゃないとそのユルさに少々疲れてしまって。

 

最近、長い映画ばかりで若干うんざりしております。

 

悪いけど、この内容に140分近い上映時間はありえないと思う。

 

予告を観ると出演者も豪華で、だから140分ぐらいどってことなさそうに思えるんだけど、実はタイトルにもなっているヘンリー・カヴィル演じる“アーガイル”という名前のキャラクターは思ってたほど登場時間は長くないんですよね。

 

アーガイルはこの映画の主人公・エリー(ブライス・ダラス・ハワード)が書いた小説の主人公で、彼は冒頭の映画内映画以降は時々エリーの“想像”として、また作品の断片として出てくるのみ。一応、ラストにも登場しますが。

 

 

 

 

 

 

デュア・リパ演じるアーガイルを陥れる女・ラグランジェは冒頭のカーチェイスのあとはあっけなく退場するし(ボンドガールっぽさを狙ったんだろうか)、ジョン・シナ演じるアーガイルの相棒・ワイアットもまた、劇中劇の中のキャラクターに過ぎない。

 

それはそういうお話なんだからしょうがないんですが、この「マオカラーのスーツにヘンな髪形」のエージェントは予告やポスターなどで大々的に紹介されているほど活躍しないんですね。

 

あくまでも作家のエリーとスパイのエイダンの珍道中を描いた物語というわけ。

 

僕はブライス・ダラス・ハワードさんもサム・ロックウェルさんも好きな俳優だから、彼らの演技で観続けられたところはあるんだけど、でも途中でだんだん飽きてきちゃって。なんかどーでもいいこと延々とやってるなぁ、と。

 

これだったら2時間以内に収まってた『ザ・ロストシティ』の方が観やすかったし面白かったな、と。

 

それから、以前も別の映画の感想で例に挙げたけど、今ちょうど新作(あいにく僕は観る予定はありませんが)が上映中のガイ・リッチー監督の『オペレーション・フォーチュン』の方がスパイ物としても面白かった。

 

ガイ・リッチーとマシュー・ヴォーンって、これまでにも一緒に仕事したりしていたし、互いに影響を与え合ってもいるのかもしれませんが、ここんとこガイ・リッチーの方が先を行ってる印象。

 

いや、『オペレーション~』と『アーガイル』は別の種類の映画なのはわかるし、つまりこちらはアメコミの実写化映画と同様に、よりマンガっぽかったり作り物っぽい世界なんですよね。基本、コメディだから。

 

007映画のパロディでもあるし、要するに『キングスマン』と同じことやってるんで。

 

それはいいんだけど、VFXの精度があまり高くない気がして。『キック・アス』の頃から技術があまり進歩していないよーな。『キック・アス』って、もう10年以上も前の作品なんだけど。

 

エリーとエイダンが列車からパラシュートで飛んでいくシーンとか、この合成のレヴェルでいいのだろうか、と。

 

全体的にCGが安っぽくないですかね?

 

それだって「あえてチープに見えるようにしている」ってことかもしれませんが、冒頭のカーチェイスシーンもそうだったし、この全篇に漂うB級感が『キック・アス』とは正反対にあまり効果を発揮していないように思えた。

 

ウエスト・サイド・ストーリー』のアリアナ・デボーズがアーガイルの仲間として出てるけど、出番は最初と最後にちょっとだけ。

 

この映画の制作中に彼女がオスカーを獲ったので、慌てて編集をやり直したのだとか。

 

 

 

デボーズさんはディスコシーンで流れる歌も唄ってますが。

 

アリアナ・デボーズ&ボーイ・ジョージ×ナイル・ロジャース Electric Energy

 

 

レイチェルとエイダンの仲間であるアルフレッド・ソロモン役でサミュエル・L・ジャクソンが出ていて、さすがこの人が顔を出すと映画が締まるんだけど、でも彼も出番はそんなに多くはなくて、ほとんどデカいモニターでアメフトだったかバスケだったかを観てるだけ。あとはアップロードの画面を見て机叩きながら叫んでるだけ。

 

 

 

『キングスマン』の1作目で足のブレードを操る殺し屋を演じていたソフィア・ブテラがエリーに重要なものを渡す役で出てくるんだけど、出番はそこだけ。

 

マシュー・ヴォーン組が顔出しして華を添えた、ということだろうけれど、なんかなぁ。豪華キャスト、みたいなゴージャス感があまりないんですよね。

 

どうもマシュー・ヴォーン監督は自己模倣の袋小路に入り込んでいるような気もしていて、ダンスと銃撃とか、ふざけたようなアクションシーンなど、どっかで見たような描写、展開が多い。しかもしつこいし。

 

 

 

この映画の最大の見せ場はあの二人のダンスシーンだし、アイススケートのシーンもそうで(またあとで少し触れますが)、ブライス・ダラス・ハワードさんの熱演のおかげで他では見たことがない場面にはなっているので(あの場面こそ、みんなで笑ったりツッコミ入れながら観ると盛り上がるだろうけど)、そこんところはユニークでしたが、アクション物としては特にアガるわけでもなく、ストーリーが巧みなわけでもないので(しかもそこまで笑えもしない)、個人的な評価としてはマシュー・ヴォーン監督作品の中でもそんなに上の方じゃないかな。

 

この映画は三部作の構想があるそうで、ネタなのか本気なのか知らないけど、1本の映画としてちゃんと面白いものに仕上げてから続篇のことは考えてもらいたい。

 

とにかく、劇中でも言及されるけど“クリフハンガー(宙吊り状態)”、実は○○は△△だった!!みたいな後出しの「どんでん返し(笑)」が続いて、さらにまた!?というのがず~っと続くんですね。

 

前にもどっかの感想で書いたけど、フニャコフニャ夫の漫画「ライオン仮面」みたいなの。

 

だからこれはアクション映画のシリーズ物をパロってるわけで、観客が真面目に物語の粗を指摘しようとしても、ヴォーン監督としては「だからそれはわかっててやってるから」ってことなんでしょう。

 

劇中でキャサリン・オハラ演じるエリーの偽の母親(正体は催眠術を使う博士)が「ちゃんと物語を完結させなさい」と言ってるのは、エリーの記憶の中の秘密を探る目的のためと、もう一方では延々と続篇が作り続けられるハリウッドのアクション映画のシリーズ物へのツッコミでもある。

 

特別出演でマコーレー・カルキンが出てきたら面白かったかも(いや、それじゃほんとに内輪ネタだが)

 

この映画は、その「ツッコミどころだらけ」なアクション物をわざとやってるんですね。そこんとこを面白がれればいいのでしょうが。

 

これまで作家として小説「アーガイル」を書いてきたエリーは、実は本名はレイチェル・カイルという本物のスパイで、任務中の大怪我がもとで記憶を失った彼女は敵の罠にはまって別人としての生活を送ることになった。

 

 

 

 

肉体労働者として働いてた主人公が自分はスパイだったと知る『トータル・リコール』と同じ。

 

で、レイチェルは敵に暗示をかけられているのでたやすく操られるし、彼女は作家のエリーとスパイのレイチェルのそれぞれの人格を行ったり来たりする。

 

エイダンも味方だと思ってたのが途中でなんだか雲行きが怪しくなったり、やっぱり味方だとわかったりと、お話の展開がコロコロと変わっていく。

 

かつてキーファー・サザーランドが主人公ジャック・バウアーを演じたTVドラマ「24 -TWENTY FOUR-」では、誰が裏切者なのか出演者たちは(裏切者の役の俳優自身も)知らされないまま演じていたということだけど、そうやってあとからお話を繋げていく少年ジャンプ方式で、だから1つの作品としては冗長この上ない。

 

しかも、「24」と違ってこの『アーガイル』は「次はどうなる!?」というサスペンスもないから、ほんとにユルいし出来の悪いスパイ映画の見本を観てるみたいで。

 

だって、最大の見どころがブライス・ダラス・ハワードとサム・ロックウェルが踊りながら敵を銃撃していく場面と、ブライス・ダラス・ハワードがスケートで滑りながらやはり銃で敵を滅多撃ちする、どうかしてる場面なんだもの(そのインパクトの大きさを言葉でうまく説明できないのがもどかしいが)。

 

それにしても、ブライス・ダラス・ハワードさんって、こんなにヴォリュームある体型だったっけ。

 

ロケットマン』では『キングスマン』の主演だったタロン・エジャトンが主人公のエルトン・ジョンを演じていて、ブライス・ダラス・ハワードは彼の母親役だったんだけど、あれ?って思ったもんな。デカくなってない?って。特に首から下が。

 

2022年の『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』ではそんなに気にならなかったけど。

 

もう、今回の映画では彼女はそのたくましい太腿やふくらはぎを隠そうともせずに、開脚しながらサム・ロックウェルに持ち上げられて(腰は大丈夫か?)銃を撃ったりスケートで滑ったり、ド迫力なんですよね。

 

これをブライスさんがやります

 

何か「ぽっちゃり系」に光明を与えるような…w

 

とてもエージェントには見えないんですけど。

 

彼女をこの役にキャスティングした人はスゲェなと思いますね。監督本人だろうか。

 

彼女のあの無双シーンを見られるだけでも、この映画には大きな存在価値があるかもしれない。今まで見たことないもの、あんなシーン^_^;

 

劇中で金髪にしたブライス・ダラス・ハワードさんの顔が、ちょっとクロエ・グレース・モレッツを思わせて可愛かった。

 

クロエちゃんもだいぶガタイはよくなってるけど、いつかまたヴォーン監督と組んで映画撮ってくれないかな。

 

ブライス・ダラス・ハワードの魅力全開、な映画ではあった。

 

サム・ロックウェルも愉快だったし。

 

大勢でワイワイやれる環境で観ると楽しい映画でしょう。

 

だけど、そろそろ『キック・アス』を超える映画を撮ってほしいぞ、マシュー・ヴォーン!!

 

 

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