フィル・ロードクリス・ミラー監督によるCGアニメーション映画『LEGO(R)ムービー』。

2D日本語吹替版で鑑賞。


別の日本語吹替版の予告篇があまりにヒドくて(本篇にはクソつまらん流行語は入っていません。声優さんも別人。残念ながら永井一郎さんは不参加)殺意を覚えるレヴェル。←こういうナメた予告篇が良作からお客さんを遠ざけてしまうのだということをいいかげん配給会社は気づけよ、タコっ!


Everything Is AWESOME!!! 観終わってから頭の中でループするw


レゴブロックでできた町ブロックシティ(原語版:ブリックスバーグ)に住む建設作業員エメットは毎日マニュアル通りの規則正しい生活を送る平凡な青年だったが、「奇跡のパーツ」を手に入れたことから“マスター・ビルダー”の一人、ワイルドガール(Wyldstyle)に悪の“おしごと大王”から世界を救う「選ばれし者」と間違えられて、魔法使いの老人ウィトルウィウスの所へ連れていかれる。


この映画の監督さんたちの2009年の作品『くもりときどきミートボール』は未見で、予告篇も観てなくてこの『LEGO(R)ムービー』の存在自体まったく知らなかったんですが、でも公開が開始されてからTwitterのTLでこの映画についての呟きをやたらと散見するようになったので気になりだしたのでした。

でも、なんでそんなに皆さんがこの映画に反応するのかわからなくて。

だってレゴのアニメなんでしょ?子どもたちならともかく、いい年した大人が観るのか?そんなのを、と。

いや、僕だって子どもの頃はダイヤブロックじゃなくてレゴ派でしたよ。誕生日とかクリスマスなんかによく買ってもらってオリジナルの怪獣やロボット作って自分の机に並べたりしてた。それらを正義側と悪者側に分けて遊んでました。だからレゴそのものには思い入れがないこともないんですが。

だけど、ついこの前ディズニーの『アナと雪の女王』を観たばかりなんでアニメは当分いいなぁと思ったし、すでに公開から日数が経ってて1日に1回の上映、しかも僕が住んでる所では字幕版はやってなくて日本語吹替版のみということでしばらく躊躇してました。

でも観ずにあとで後悔するのも癪だし、どんな映画なのか人の感想や解説などを読んでみたところ、実はかなり好みのお話なんじゃないかと。

さらにライムスター宇多丸師匠が週間映画批評「ムービーウォッチメン」で取り上げていて、こちらも絶賛ということでこれはもう観に行こうと決めました。

で、どうだったかというと。

…スミマセン、おみそれいたしました。自分の情弱ぶりとアンテナの鈍さを恥じ入る次第でございます。

噂にたがわぬぶっ飛んだアニメでした。

何がって、その作り込み、というか描き込みがね。

ストップモーション・アニメを模したCG映画なんだけど、とにかく尋常ではない情報量なので1回観ただけではすべてを把握することができない。




一見実写アニメだけど、全部CGです


できればリーアム・ニーソンモーガン・フリーマンウィル・フェレルなどが声をアテてる字幕版を観たかったんだけど、かえって吹き替えで正解だったかも。DVDであらためて原語版は観てみたいけど。

代わりに山寺宏一玄田哲章羽佐間道夫などのヴェテラン声優たちが何役も兼ねての大熱演を聴かせてくれる。

では、これ以降はストーリーのネタバレを含みますのでご注意ください。

僕みたいに「ただの子ども向けアニメでしょ」とナメてかかると、ちょっと驚きのオチがあります。



決まりきった生活を送る主人公のもとにヒロインがやってきて彼を「選ばれし者」として召喚する、という話は、ようするにレゴの世界で『マトリックス』をやってみた、ということで、ワイルドガールはまさしくトリニティそのもの。

予言者みたいな魔法使いも出てきて助言を与える。

バットマンが予想外に出番が多くて驚かされるし、なんとスターウォーズのあの人たちも登場する。ちなみに原語版ではC-3POアンソニー・ダニエルズ、カルリジアン男爵をビリー・ディー・ウィリアムズと、オリジナルキャストが声をアテている(残念ながらハン・ソロハリソン・フォードではなくキース・ファーガソン)。

バットマンはコスチュームがティム・バートン版のものだけど、中身はアイアンマンみたいなオレ様キャラになっている(声はウィル・アーネット)。




バットマンのテーマ曲は1度も流れないのに(その代わり本人が自作の歌を唄うw)スターウォーズのテーマ曲は思いっきり流れるという、なんだかよくわからないことになってますが。これ、ワーナーブラザーズの映画なのに。

原語版でも一人の声優(俳優)が何役か演じてるのもあるけど、吹替版の方は山ちゃんは“おしごと大王”とバットマンを兼任、玄田さんはバッドコップとグッドコップ両方を、羽佐間さんはジジイ役すべて、主人公エメットの声の森川智之はスーパーマンも、ワイルドガールとユニキャット(Uni-Kitty)を三代目不二子ちゃん(正確には四代目だが)の沢城みゆきが、またC-3PO役の岩崎ひろしが80年代製の宇宙飛行士ベニーやグリーンランタンなど複数キャラを演じている。

 
プロバスケ選手のシャキール・オニールや古くなってヘルメットが割れてるのが芸コマなベニー。

 
バッドコップ(原語版:リーアム・ニーソン)は頭が回転して性格が正反対のグッドコップになる。吹替版では悪い玄田さんと優しい玄田さんの声が聞けます。


全篇を通して聞き覚えのある声が入り乱れますが、さすがプロフェッショナルの皆さん。意外と聴いてて混乱しない。

ただし、かなりのスピードで話が展開していくので慣れるのにけっこう時間がかかってしまった。

もう慌ただしいのなんのって。

幼稚園の年長さんか小学校の低学年ぐらいの子たちを連れたお母さんが2組ぐらい来てたけど、最初のうちは声を出して反応していた子どもたちも途中からはほとんど喋らなくなった。

退屈してる様子はなかったので、見入ってたんだろうなぁ。意外と小さい子たちはこれぐらいのハイテンポについていけたりするのかも。


つねにマニュアル通りに生活していてまわりに溶け込み、それこそが正しい人生だと信じてきたエメットは、しかしそのあまりの特徴のなさから誰にも気にされず、自分は今朝挨拶したばかりの近所の人にさえ「こんな奴知らない」と言われてしまうような存在だったことを思い知ることになる。

またワイルドガールも、エメットが彼女のようにみずから新しいモノを生み出す力を持った“マスター・ビルダー”ではなく、マニュアルがなければ何もできないようなキャラクターだったことに失望する。

いつも笑顔で元気よく過ごしてきたエメットの表情がふと曇り、哀しげな顔をする場面で早くも目頭が…。

:)みたいなシンプル極まりない顔が見せる喜怒哀楽。

 


何しろシンナーで拭かれたら消えちゃう程度の“顔”なんだから。

僕が持ってたミニフィグも、いつの間にか顔が薄れて消えちゃってたのあったなぁ。

でもパラパラ漫画の丸と棒でできたキャラクターのように、この手の人形って形が単純だからこそ妙に愛らしい。

なんか以前にもこういうキャラの出てる作品を観た記憶があると思ったんだけど、あれはピクサーの『モンスターズ・ユニバーシティ』と同時上映された短篇『ブルー・アンブレラ』だったかな。傘に顔が描いてあった奴。


ブラック社を経営する“おしごと社長”の正体は世界征服をたくらむ“おしごと大王”で、彼は究極兵器「スパボン(Kragle)」を使ってすべてのレゴを固定してしまおうとする。

 


仲間たちとともにおしごと大王に戦いを挑むエメットだったが、もう少しのところでスパボン奪取は失敗。絶体絶命の危機に、彼は意を決してブラック社の超高層ビルから飛び降りる。

すると…?

そこは地下室らしき場所で、エメットは床に転がっていた。

“彼”を拾う巨大な“人間の子ども”。

レゴの世界の住人たちが「上の人」と呼ぶ神のような存在とは、レゴで遊ぶ人間のことであった。

出た、俺の大好物の“メタフィクション”!!

レゴの世界に紛れ込んでた絆創膏や突然飛来するゴルフボール、猫の顔、おしごと大王に首チョンパされて死んだウィトルウィウスの霊体を吊ってる糸など、つまりすべては少年の遊戯なのだった。

しかし、彼の父親(演じるのはウィル・フェレル)はレゴを好きなように組み立てる息子に対して、ちゃんと説明書通りに決まった形に戻すよう命じる。

父親がスパボンでレゴたちをくっつけていく。“おしごと大王”とは、すべてを規格通りにしようとするこの父親のことだった。

このままではエメットたちが住む世界は永久に決まった形に固定されてしまう。

少年は床に落ちていた「奇跡のパーツ」に気がつく。

エメットがみつけた「奇跡のパーツ」とは、「スパボン」すなわちすべてをくっつけて固定してしまうボンドの“フタ”だった。

父親は息子がレゴで作った独創的な形のキャラクターや乗り物たちを見て、考えを改める。


“レゴ”の世界を人間の世界に見立てた、これはまさしくマトリックスの世界ですね。

マニュアルから自由になって、想像のおもむくままにレゴを組み立ててみよう。


思い返せば、僕にはマニュアルに沿ってレゴを組み立てるという発想そのものがなくて(だからプラモデルを説明書通りに最後までちゃんと作れたためしがない)、子どもの頃、新しいレゴを買ってもらったらすぐに箱から出して専用の缶かんに入れて全部一緒にしまっていた。

自分で好きなものを考えて作る、というのは当たり前だったな。

じゃあ、オレはマスター・ビルダーだったんだろうか。

いや、僕が参考にしてたのはスーパーロボットアニメやウルトラシリーズの怪獣だった。

8ビットみたいなカクカクした物体を怪獣やロボットに見立てて遊んでいた。残念ながら僕のレゴ遊びはそれ以上進歩しませんでした。

時にはマニュアルも必要。

独創性とマニュアルが備われば、世界はより豊かなものになる。

イイ話だなー。

クライマックスでレゴたちがみんなでめいめいの乗り物に乗って空を飛んだり戦ったりしてる姿を見て、泣きそうになってしまった。

最後は、少年には“妹”という名のモンスターが、エメットたちが住むブロックシティには“デュプロ(1~5才児向けのレゴ)”が侵略してくる、というオチでEND。

面白かったですよ。

もうほとんどの映画館ではやってないかもしれないけれど、観逃したかたはDVDででもぜひご覧ください。

子どもも大人も楽しめる作品です。

す~べてはサイコ~♪




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