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 ドイツ文化は面白い。 ベンツ、ビール、ソーセージはどうでもいい。

 

 

【権威と敬意】
 ドイツ人は権威というものの信者である。「従うことのできる者こそ、主人にもなれる」 というのが座右の銘である。(p.3)
 この座右の銘をひっくり返せば、「尊敬できる者は、尊敬される」 となる。イチローが世界のホームラン王である王監督を尊敬する態度がこれである。
 最近の日本の若者(特に男性)を、集団でドイツ留学させたらどうだろうか。
 ドイツは老人の社会だ。ドイツ人は、定年後になって初めて本領を発揮する。そのくらいの年齢になると、自らのうちに、血気盛んな若い頃には夢にも思わなかったような保守性や秩序に対する情熱を発見するのである。
  ・・・(中略)・・・ 。
 年配者以外は、年配者に従い、敬意をもって接している。そして、年配者というエリート的地位を得る日を、首を長くして待ち焦がれている。(p.28)
 イギリスとドイツは、このような文化的態度が共通している。
   《参照》   『バトル・アビー こころの教育』 西浦みどり (廣済堂出版)
            【敬意をもって接する文化】

 

 

【ドイツ人とイギリス人】
 ドイツ人の大半はイギリスに敬慕の念を抱くが、過去にその思いが報いられたためしはなかった。かつてイギリスは、政治、社会、産業、テクノロジーのすべてにおいて驚くほど進んだ国として、究極のモデルだった。イギリス人はとても感じがよく、たいてい無害な人々だ。そうドイツ人は思っている。ほとんどドイツ人そのものではないかと。(p.3)

 イギリス人は、ドイツ人の聡明さと徹底主義を常に高く評価しており、ヨーロッパ人の中で一番自分たちに近いのがドイツ人だと思っている。この奇妙な幻想は、おそらく、イギリスの王座を占めたり、権力の黒幕となったりしたドイツ人が数多くいるという事実に由来するのだろう。(p.8)
 ドイツとイギリスの深い関係は、下記リンクに。
   《参照》   『楽しい読書生活』 渡部昇一 (ビジネス社) 《前篇》
             【イギリス国学史】
 

 

【すべてを分類せよ】
 はじめにまずすべてを分類せよ。ドイツではこれが自明である。善と悪、不用と不可欠はふるい分けられねばならず、 ・・・(中略)・・・ 。真と偽は是が非でも弁別されねばならない。 ・・・(中略)・・・ 。
 一切合切を明確な範疇に分類しようなどと決意したのは、ドイツ人ではカントが最初である。(p.13)
 真摯な二項対立の哲学的思弁の文化があるからこそ、ドイツ人はゴミの分類を徹底的にする。
 尊敬もできるけれど、ちょっと可笑しい。
 日本は、この点に関して、ドイツとは根本的に違っている。
            【善悪の仕切り線から身を翻す日本人】
   《参照》  『日本人はなぜ国際人になれないのか』 榊原英資 (東洋経済新報社) 《前編》

            【日本の特性 : 『絶対矛盾的自己同一』 】
            【矛盾するものを両立させる日本】

   《参照》  『顔相と日本人』 坂元宇一郎 (サイマル出版) 《前編》

            【両極を併せ持つ日本人】

 

 

【ハイネとゲーテ】
 詩人のハインリッヒ・ハイネは、こうした気質を次のように要約している。
   フランス人とロシア人は土地を持っている。
   イギリス人は海を持っている。
   しかしわれわれは、天高く浮かぶ、
   夢の領土を統べている。
 ドイツ人は、その逃避癖ゆえに、すなわち物質的世界よりも精神的世界で本質を追究するために、ときとして、浮世離れして見える。ゲーテは無念そうに記す。
 「われわれドイツ人が哲学的問題を解くのに四苦八苦している間に、現実的知性の持ち主であるイギリス人は、われわれをせせら笑い、世界を征服する。」 (p.16-17)
 やはり、日本とドイツは似ているところがある。下記もそうである。

 

 

【ドイツに階級はない】
 ドイツにはもはや階級制度は存在しない。かつては階級差が明確であったが、第二次大戦後は平等化が進んだ。今日では、ほとんど全員が同じ階級、英国式分類に従えば、おおよそ 「中の中の下の上」 に当たる階級に属する。(p.22)

 「第二次大戦後は、・・・」 とあるから、そうなのだろうけれど、ヘルマンヘッセの小説を読んだことがある人なら、「えぇ~、ほんとぉ~?」 って思ってしまうことだろう。

   《参照》  『友情』 フレッド・ウルマン (集英社)

            【転校生】

 

 

【気前のよさ】
 教会の資金は潤沢である。大多数のドイツ人は、礼拝にはほとんど出席しなくても、教会税は喜んで払う。聖職者のガレージでたくさんのメルセデス・ベンツが見いだせるのはこのためだが、教会はまた、福祉事業に多額の資金を提供してもいる。
  ・・・(中略)・・・ 。一時凌ぎの援助を行うのではなく、恒常的な組織化された気前のよさを好むのである。(p.25)
 この点は、日本にはない。

 

 

【ドイツ的】
 ドイツ人は、文学に負けず劣らず、哲学を愛する。「詩人と思想家」 という成句があることからも察せられるように、どちらも文化的英雄だ。よく引用されるのは、フィヒテ、ヘーゲル、カント、ライプニッツ、ニーチェ、ショーペンハウアーだが、そろいもそろって重量級であり、その横に並べられると、フランスやイギリスの哲学者は単なる無礼な冷笑家にしか見えないほどである。
 ドイツ芸術は、内省的、思弁的であり、自分のことで頭がいっぱいである。それをひと言でいえば、ドイツ的ということになる。(p.53)
 表現が面白いから “ドイツ的” なる記述を読んで笑っちゃうけど、長い人生のなかで青年期に “ドイツ的“ でなかったような人間なんて、あんまり面白くないように思う。
 ところで、ドイツの芸術作品は、一人一人をとっても重厚長大である。重厚長大好みのドイツ人には、絵画のような重厚長大ならざる芸術は価値を認められなかったとも書かれている。

 

 

【ビジネス事情】
 たくさん愚痴をこぼし、不平を並べ立てれば、仕事において 「徹底」 を極め、最大限の努力をはらっているのだということが誰にも伝わる。手際よく黙々と仕事をこなしていたのでは、上司にも認めてもらえないし、同僚からもいやな顔をされるだろう。野心と競争心が当然のものとして求められ、刻苦勉励しているところを見せつけねばならない。(p.91)
 なるほど、これではドイツ製造業は日本の上をゆくことはできない。
 ドイツは哲学的思弁の国とはいえ、これを明確に言葉で表現してこそナンボの国である。「黙々と・・・」 は評価されない。

 

 

【ドイツ警察】
 ドイツの法律は、悪夢のように狭量で懲罰的に思えることがある。「おい(メンシュ)」 という言葉を使って警官に抗議したら、それだけで罰金を科された人がいる。「メンシュ(Mensch)」 は文字どおりには 「人」 を意味するが、警官は人間ではないとでもいうのだろうか。警官の採用に当たっては、綿密な審査がなされ、ほんのわずかでもユーモアのセンスを見せたら、はねられる。(p.88)
 こんなのを読むと、もろに映画の中のゲシュタポを思ってしまう。ジョークも駄目なんて笑えない。

 

 

【猫は嫌よ】
 犬を飼わないドイツ人は、一風変わっている(変人とさえいえるかもしれない)。猫を飼うドイツ人は、間違いなくコミュニストであり、通りで惨殺死体となって発見されても不思議ではない。(p.29)
 なんで猫を飼うとコミュニスト!? 
 「ドイツで猫を探せ!」 とかの企画で番組を作ったら面白そう。ゼロじゃなんいだろうから。

 

 

<了>