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 中国を体験したことのない普通の日本人が、中国の日常生活者に関する記述を読めば、「やや誇張した表現で書いているに違いない」 と思うでしょう。しかし、それらは決して誇張ではありません。日本人の感覚からすれば、呆れるというか、腹立たしいほどのことが普通なのです。

【笑ってられない中国の日常生活】
 中国関連の書籍は何冊も読み、自分の足で何回か中国を歩いたことのある私は、この書籍に書かれていることを、苦笑しながらも「ウンウンそうだね」って感じで読むことができます。これから自分の足で中国を回ろうとする予定の人は、真剣に読んでおいた方がいい書籍です。現地では笑ってられなくなるからです。

【色に関する文化の違い(本文より)】
 中国では死者を弔う色は白だが、結婚式や祝い事では赤が使われる。皇帝と中国は黄色、妻を寝取られた男は緑、自然は青、道徳的な高潔さは黒が表すことになっている。茶色と言うものはなく、赤といっても朱から黄色まで広い幅がある。
 10月1日の国慶節には赤い色の洪水になる。共産主義者の彼らのシンボルカラーである赤が、中国人の心を動かす色彩である赤と偶然にも一致したことを喜ばなかったはずはない。 (p.65)


 著者は、男性のようです。それ故でしょうか、この本に食文化に関する記述はありませんでした。なので、私の体験から印象的だった事柄を、以下に記述しておきます。

【色彩から見る中国の都市】
 旅行者が異国を感じるのは、建物の形状もさることながら、色彩ではないでしょうか。上海や香港などの大都市よりも、旧市街の多く残っている台湾の台北のほうが、色彩的な異国情緒を感じることができます。
 街は赤、黄、緑の3つの基本色であふれています。男性旅行者で、綺麗な新市街より、色彩豊かで乱雑な旧市街を好む人々は多いように思います。当たり前ですが、新市街の文化性は希薄にならざるをえません。色彩とお喋りのエネルギーに満ちた中国。この点では、中国大陸より台湾のほうが勝っています。

【慶事の色:赤】
 金と銀のミズヒキのついた麗しいご祝儀袋に見慣れている日本人は、中国や台湾で、ご祝儀袋が真っ赤なのを見て異様に思います。一方、中国人は日本の結婚式で、花嫁さんの白無垢を見て異様に思うようです。上に記述したように、日本では白=無垢が、中国では白=死者、となってしまうからです。

【中国と言えばウーロン茶か?】
 ウーロン茶=中国、という思い込みは正しくありません。むしろ中国ではジャスミン茶を愛飲する地域が多いようです。ウーロン茶を愛飲するのは台湾や華南地域のようです。
 日本にも地域ごとに、宇治茶、狭山茶などがあるように、中国にもロンジン茶など呼称はいくつもあます。醗酵させて作るプーアール茶の堆積状態を見れば、誰だって馬糞の堆積と誤認してしまいます。

【豚文化が基本の中国の華南文化圏】
 華北地域の西安に行けば、羊肉の麺類を容易に食べることができます。華南の香港や台湾に行けば、店先にぶら下がった豚足や、豚のあらゆる部分を分別して煮込んだ屋台を容易に発見することができます。
 中国の華南地域で家畜として尊ばれてきたのは豚でした。「家」という漢字は、「ウ冠」と「豕」で構成されます。つまり屋根の下に豚が住んでいる状態が家だったのです。畳の上で清潔に過ごす習慣の日本人は、中国人の食後のテーブルの汚さに唖然というか憮然としてしまいますが、豚と共生していたのが中国人の文化であることを理解すれば、納得できます。(中国の大衆食堂での実際の体験です。テーブルの下でウンチをしている子供を見たことがあります。誰もそれに気を止めていませんでした!!!店員もお客も!!! 1階に豚、2階に人間が住むような暮らしなのかもしれません。)

【濃厚な味わいの中国 : 日・中・韓、食文化比較】
 日本人の舌には、中国の現地の料理の味は濃すぎて辟易するものです。韓国でも屋台のトッポギを食して、その素材が何なのか、辛過ぎて分らなかったものです。
 この様な、味付けの濃淡の違いは、地理的な風土や気候が原因であると思います。
 温帯に属する日本は、海に囲まれ、急峻な山が多く川の水が豊富ですから、水洗いして、生のまま食する食文化の基本形ができたのです。
 一方、日本ほど容易に水が手に入らない中国や台湾では、殺菌のため、あるいは亜熱帯ゆえ、食物の腐敗を防ぐために、油による高温殺菌が必要だったのです。そして、油の下味を変えようとする過程で味付けが濃厚にならざるをえなかったのです。私は、暑い台北市内で、油まみれの食品ばかりが並ぶ屋台の前を通りながら、このアイデアに確信がもてました。
 韓国の、バカみたいに辛い唐辛子テンコモリ投入料理の習慣も、保存技術のなかった昔に、人間を病気から守るために出来上がった殺菌調理法であったに違いありません。  <了>