アート関連特許その18です。『アート関連特許(その16)』でアートを保護する発明を取り上げましたが、今回もアート自体の発明ではなく、アートを修復する方法についての発明です。
実際、何百年も前のアートを鑑賞できるのは修復技術が縁の下の力持ち的に活躍していることも一因だと思います。そういった修復技術のうち、絵画を修復する技術の発明を取り上げます。
◆どんな特許か?
発明の名称を『絵画の修復方法』とする特許(特許6562407)が取り上げる特許です。
絵画の修復手法にはどのようなものがあるのでしょうか?
上記特許の特許公報によれば、『充填や補彩といった手法が広く用いられている』と記載されています(段落[0004])。しかしながら、『修復を要する箇所ごとに手作業で行われるため、修復箇所が多数存在する場合には膨大な時間が必要』になり、『修復家の技量により仕上がりにバラつきが生じやすく、絵画の価値が損なわれるケースもある』とのこと。
確かにそうですね。スペインの某教会の壁画を修復したところ、元の絵とは全く違う絵になったという例もあります。修復する人の技量がモノをいうということですが、今回の特許はどのような修復方法なのでしょうか?
請求項1を引用します。
『退色、剥落、欠損の少なくとも何れかを含む劣化が生じた劣化部を有する絵画の画像データを取得する工程と、
コンピュータを用いたデジタルシュミレーションにより、前記画像データの前記劣化部を修復したデジタル修復データを生成する工程と、
前記デジタル修復データを、インクを用いて、絵画の裏打ち材にプリントする工程と、
前記プリント後の裏打ち材を絵画の裏面に積層する工程、を有する絵画の修復方法。』
なるほど、絵画の劣化部分をデジタルシミュレーション(上記請求項ではシュミレーションになっていますが、本来は「シミュレーション」ですね。弁理士をやっていると請求項の記載については細かいところにどうしても目が行きがちです…)で復元したデジタルデータを作り出し、そのデータを用い、絵画の裏打ち材にプリントするという手法になっています。
デジタルデータに基づいてプリントするので、プリンターやインクの違いは多少あるとはいえ、修復する人の技量のバラツキをある程度は抑えることができます。
上記特許の特許公報には記載されていませんでしたが、人工知能(AI)、機械学習を応用すれば、より自然な風合いの修復ができるようになるかもしれません。
◆早期審査対象出願
上記特許の特許公報のフロントページに「早期審査対象出願」と記載されています。
特許は、特許出願し、特許庁に対して出願審査請求することで審査が始まりますが、この審査、通常は1年程度はかかります(1年程度で必ずしも特許になるとは限りません。1年程度で特許庁から最初のお便り(拒絶理由か特許査定かはともかく)が来るということです。)。
しかし、事情によって早期に権利化したい場合も当然にあります。
そういった場合に利用できるのが「早期審査制度」です(詳しくは特許庁のHP→コチラをご覧ください。)。
早期審査制度を利用すると、多くの場合、3~4か月で特許庁から特許査定または拒絶理由通知が来ます。制度を利用しない場合に比べ、早期に権利の帰趨について判断することができます。
ただ、3~4か月とは言っても、最近は案件によってはもっと遅くなることもよくあり(半年~8か月程度かかることもあります)、事業戦略上、困ることがあったりします。そういった場合が想定されるのであれば、さらに早い審査をしてもらえる「スーパー早期審査」の利用も考えられます。ただ、出願人がベンチャー企業であればともかく、そうでない場合は「スーパー早期審査」は通常の早期審査より要件が厳しいので、利用できない場合も多々あるのが難点ですが。。。
by KOIP
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