不正競争防止法2条1項1号の裁判例をよむ

個人的興味からのランダムピックアップ裁判例 その90

 本日も、製造業者・販売業者の関係にあった当事者の紛争事例を見ていきます。

 本裁判例は、LEX/DB(文献番号28052276)より引用。形式的な修正追加あり(「」等で明示ない箇所もあります)。

 

  東京地判平12・10・31〔麗姿事件・第一審〕判時 1750号143頁(東京高判平13・5・15〔同・控訴審〕平12(ネ)5798)

原告 株式会社和漢生薬研究所(代表者M憲二)
被告 株式会社タケ(代表者T節子)

 

■事案の概要等 

 本件は、「和漢研」「麗姿」の文字を横書き二段組みに表示した本件登録商標を有する原告が、被告に対し、被告標章の使用行為について、第一に原告が有する商標権に基づき、これと選択的に、第二に被告標章の使用行為が不正競争行為に該当するとして、第三に原告・被告間の代理店契約の終了に基づき、その差止めを求めた事案です。

 

■当裁判所の判断

(下線・太字・着色筆者)

Ⅰ.争点1(一)(被告標章の使用による本件商標権侵害の有無、とりわけ本件登録商標と被告標章の類否)
1.被告使用の標章

(1)被告が、「TAKE」と「麗姿」又は「REISHI」との組み合わせを主な要素とする「被告標章(一)、(三)の二、(四)の二、(五)、(六)を、現に使用し、又は過去に使用したことがある事実は、当事者間に争いがない」。また「被告標章(二)は、被告が販売する石鹸のパッケージに使用されたことがあることが認められる」。

 

(2)「被告標章(一)は、毛筆のような書体に丸みを帯びさせるなどし、よりデザイン性を高めた書体で、縦書きされ」、「その称呼は「れいし」で」、

「被告標章(二)は、被告標章(一)と同様な書体を横書きしたもので、称呼は被告標章(一)と同じ」、

「被告標章(三)の二は、横書きにした英大文字「TAKE」の下に配した黒い正方形の中に白抜き文字で、「麗姿REISHI」と二段組横書きにし…称呼は「たけれいしれいし」」、

「被告標章(四)の二は、正方形が黒色でなく、文字も白抜きでない黒い文字である点及び正方形の下に横書きに「Reishi Savon’s」と記載されている点以外は被告標章(三)の二と同様…称呼は「たけれいしれいしれいしさぼんず」で、

「被告標章(五)は、英大文字で「TAKE REISHI」と、二段組横書きにしたもので、その称呼は「たけれいし」」、

「被告標章(六)は、英文字で「Reishi Savon’s」と横書きにしたもので、その称呼は「れいしさぼんず」」。


(3)「被告標章(三)の一及び同(四)の一は」、「被告が実際に使用している標章から…被告が今後使用する可能性のある標章を原告において作成した」と認められ、「それ自体としては、被告が使用したことがなく…原告の本訴請求のうち、被告標章(三)の一、同(四)の一についてその使用の差止め等を求める部分は、その利益を欠く」。

 

2.本件登録商標の特徴
 本件登録商標は、別紙商標目録(一)記載のもの(筆者注:商標登録第3199087号「和漢研\麗姿」(横に二段書き)(指定商品:第3類 化粧品、石鹸類、香料類)で、商標は、「上段には、原告の商号を略した「和漢研」という文字が、太めの角ゴチック体で記載されている。下段には「麗姿」の文字が、上段の「和漢研」よりも僅かに広い幅の中に、これよりもやや太くかつ大きな文字で、同様な書体で描かれ」…「称呼は「わかんけんれいし」」。


3.本件登録商標と被告標章の類否の検討

(1)判断基準

 「商標の類否は、同一又は類似の商品に使用された商標が外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、かつ、その商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである(最高裁平成六年(オ)第一〇二号同九年三月一一日第三小法廷判決・民集五一巻三号一〇五五頁)」。

(2)本件に関する判断
 「本件登録商標は…上段部分の「和漢研」は、原告の社名を略した造語と認められるから、あまり用いられない語である。このうち日本と中国の両方を表す「和漢」は、「和漢朗詠集」「和漢三才図絵」「和漢薬」などといった語もあ」り、「「和漢の事物を広く集めた」という趣旨にも通じる、古風な趣を持った語で」、「研究所を表す「研」と合わさって、「和漢の事物を広く集め、研究している」との観念を生じ」、「取引者等の注意を強く引く語である」。「他方、下段部分の「麗姿」は、原告の造語ではなく…「うるわしいすがた」を表す語であって、「広辞苑」のような、収録語数の多い辞典には掲載されている」。「その生じる観念から、石鹸、歯磨き、化粧品、香料等は、これらを用いた効果として「うるわしいすがた」を得ることができるという意味で、関連性を有」し、これらを指定商品として、「麗姿麗身 レイシレイシン」(二段組み横書き)、「麻保良れいし」、「海爽麗姿」が商標登録されている」。
(3)裁判所は、以上から、「本件登録商標は、「和漢研」と「麗姿」という二つの語を組み合せた…結合商標で」、「前者の「和漢研」部分の方が、一般的でない、前記のような観念を生じる語であることから、取引者・需要者の注意をより強く引く部分である」一方、「「麗姿」部分は、より一般的な語であって、指定商品である「化粧品、石鹸類、香料類」と関連する語であることからすれば、取引者・需要者に特定的、限定的な印象を与える力を有するものではない。そうすると、後述するように「「麗姿」はむしろ被告のブランドであってこれが具体的取引において原告を出所として示す識別標識として使用されているような特段の事情の認められない本件においては本件登録商標については、そのうち「麗姿」部分のみからは出所の識別標識としての称呼、観念を生ぜず、「和漢研 麗姿」全体として若しくは「和漢研」部分としてのみ出所の識別標識としての称呼、観念を生じる」から、「和漢研 麗姿」全体若しくは「和漢研」部分要部である」と判断しました。
 そうすると、被告標章は「単に「麗姿」部分からなる、あるいはこれに「和漢研」以外の、「TAKE」などの語を組み合わせたもので」、本件登録商標の要部たる「和漢研 麗姿」若しくは「和漢研」と外観、称呼、観念のいずれも異にする」から、「本件登録商標とは類似しない」。「以上より、被告が現在使用し又は過去に使用したことのある被告標章(一)、(二)、(三)の二、(四)の二、(五)、(六)についても、商標権侵害を理由としてその使用の差止め等を求める請求は理由がない」。

 

Ⅱ.争点2(一)(被告による被告標章の使用が不正競争行為に該当するか、とりわけ「麗姿」は原告の商品等表示といえるか。)
1.認定事実
(1)「原告は、事業目的を、医薬品…化粧品等の製造並びに販売などとする会社で」、「東洋医学や漢方薬学などの研究の成果を取り入れ、霊芝(きのこの一種)やその他の生薬成分を練り込んだ枠練り石鹸を、平成3年ころから製造し」、「この石鹸には、「和漢ドゥサボン」の名が付けられ、石鹸の本体には「和漢」と型押しされ…パッケージに「和漢 de SAVON」と表示されていた」。この石鹸は、平成5年5月ころには…代理店方式を利用した連鎖的な販売方法の販売元により販売され」、以前の販売元に代わり、「ちえの輪を販売総代理店として、同様な方法により、消費者に販売され」ている。
(2)「被告は、当時「株式会社オフィス・タケ」と称し…(…現在の商号に変更。)、通信販売の方法により物品の販売を行う会社で」、「被告代表者は、平成5年5月ころ、知人からよい石鹸があると言われて手渡され、さらに原告の顧問をしている森を紹介され…この石鹸を気に入った被告代表者は、森を介して、原告に…この石鹸の販売を一手にやらせてほしい旨を申し入れた」。

「原告は、いったんは…断ったが、被告は…粘り強く申し入れ…被告の販売方法は通信販売であり、原告において従来行ってきたような代理店形式による販売方法とは異なっていて、これに抵触しない」とし、「交渉の末、原告は、被告が通信販売の方法により原告の製造する右石鹸を販売することを了承した」。

 「原告・被告いずれの側から出たアイデアか必ずしも定かではないが、被告が販売する石鹸の名称に、これまでの「和漢ドゥサボン」とは異なり、原料に使われている霊芝と言葉をかけた「麗姿」なる名称を用いることが決められ」、「パッケージのデザインも、「和漢ドゥサボン」と異なる、「サボン麗姿」なる文字を入れ」、「ちえの輪が販売するものとは差別化」し、「この間…原告は本件登録商標の商標登録出願をしている」。平成5年後半から同6年1月にかけ「原告・被告間で販売条件等についての交渉が行われ、同年1月末日付けで、両者間に取引基本契約が締結された(取引基本契約書…)」。

 上記契約書には「原告は、継続的に被告が発注するところの被告の指定ブランド化粧品類…の製造を引き受けてこれを被告に売り渡し、被告は買受けること(…第2条)」、「被告は、被告の指定ブランドや指定文字等が記載された容器類、包装資材等の代金等を、原告の請求により別途支払うこと(同第10条2項。…実際には、容器類、包装資材等は、被告において支給することが定められた。)、原告は、いかなる事由があっても商品を第三者に販売し、譲渡したりしてはならないこと(同第12条)などが定められた」。

(3)「右契約により、「サボン麗姿」(中身の石鹸は「和漢ドゥサボン」と同じ。)の通信販売による独占的販売権を得た被告は、雑誌等にこの石鹸の広告を掲載したこの石鹸は、一〇〇グラムのサイズのものが小売価格六〇〇〇円もする高価なもので、被告は、高級であるが東洋医学や漢方薬学などの研究の成果を取り入れたもので効果があることを、宣伝する路線を採った」

原告もこれに協力し、右の石鹸の開発者であるとして、東洋医学や漢方薬学などの研究者である森の顔写真や名を出すようにした」。「「サボン麗姿」のパッケージには、裏面に「製造元」として原告の名称、所在地が、「総発売元」として「株式会社オフィス・タケ麗姿事業部」なる名称と被告所在地が記載されていた右石鹸の雑誌広告には、「取材協力」や「問い合わせ先」として「株式会社オフィス・タケ麗姿事業部」の名称が記載されていた。」
 他方、代理店方式を取るちえの輪では、個々の代理店は地方ごとにあるもので、広告も、個々の代理店が出」し、「地方紙などに掲載したり、パンフレットを配布したりするなどにとどま」り、「ちえの輪の代理店が配布するパンフレット中に、被告が全国誌に出した広告が引用されることもあった」。
(4)平成8年春には、さらに高価な「サボン麗姿ゴールド」が発売された。これは、「サボン麗姿」と同じ一〇〇グラムのサイズのものが小売価格2万円もするもので…日本テレビ系全国ネットで放映された「輝け!噂のテンベスト」という番組で、「世界一高価な石鹸」として紹介され」、「これまでの広告と同様、製造者は原告で、販売者は被告として紹介された」。「この「サボン麗姿ゴールド」は、「サボン麗姿」同様、被告とちえの輪の双方の系列で販売され、本体には「和漢」と型押しされていた」。
 「なお、ちえの輪の系列で販売される石鹸の名称については、当初の「和漢ドゥサボン」から、「麗姿ドゥサボン」「麗姿ドゥサボンゴールド」と変更され」るなどした。…平成8年春以降の広告パンフレットなどの中にも、「麗姿ワカンドゥサボン」「麗姿ワカンドゥサボンゴールド」(甲三の一)、「和漢・ドゥサボン」(甲四六の三)のように、なお「和漢」の名と「ドゥサボン」の名称が表示されているものがある」。

 

2.検討

 裁判所は「被告標章のうち、(三)の一及び(四)の一について「被告が現に使用し、また、過去に使用したことのあるその余の被告標章(前記一1(一)参照)について、原告の主張するように、その使用が不正競争行為に該当するかどうかを、検討する」とし、認定事実等に基づき、以下のように判断しました。
(1)「原告は,「麗姿」の語が原告商品を表示するものとして取引者・需要者の間で広く認識されていると主張する(原告の主張は、「麗姿」の語自体を、原告商品を表示するものとして、主張するものと解される。)」ところ、「前記認定事実によれば、原告・被告間の取引基本契約においては、原告は、被告の指定するブランドの化粧品類を製造してこれを被告に納入し、ブランドの付された容器等は被告の負担により製作され、原告は商品を第三者に販売してはならないものとされているものであり(取引基本契約書。乙一)、また、「サボン麗姿」「サボン麗姿ゴールド」は、その広告等において、「総発売元」又は「取材協力」ないし「問合わせ先」として、常に「株式会社オフィス・タケ麗姿事業部」の表示がされていたことに照らせば、原告・被告間の契約は、被告が自己のブランドを付して販売する化粧品類について、原告がその中身を製造する、いわゆるOEM契約と認めるのが相当であるから、「麗姿」は、むしろ被告のブランドすなわち被告の商品表示というべきであって、これを原告の商品表示であるという原告の主張は失当である(なお、テレビ番組、雑誌広告等において、原告が「サボン麗姿」「サボン麗姿ゴールド」の製造元として取引者・需要者の間で広く認識されるに至っているとしても、その総発売元である被告との間では、互いに「他人の」商品等表示に当たらず、原告が被告の行為を不正競争行為と主張することはできないというべきである。)。 
「以上によれば、原告の不正競争防止法違反の主張は、理由がない」。


Ⅲ.争点3(原告・被告間で、代理店契約が締結されたか、右契約締結の際に、代理店関係解消後は、被告において、「麗姿」の語を被告の商品に使用しない旨の合意があったか。)
1.認定事実
 「平成8年7月29日、被告は、原告の製造する製品の仕入れの便宜のため」と、「原告からの依頼もあ」り、「ちえの輪と代理店加入の契約を締結」し、「被告はちえの輪の他の代理店とは販売方法が異なるため、定型の契約書の「従来のちえの輪のルールによって販売することを前提として」という部分が削除され」、「ちえの輪との右契約の締結後も、商品は原告から直接納入されていた」。「平成8年秋ころ、被告は、ちえの輪の系列での販売と混同が生じている」とし、「「サボン麗姿ゴールド」の中身の石鹸本体も被告独自のものに変えることを考え」、「「和漢」の型押しのない、独自の金型を使用することを原告に申し入れた」。「この際、一回の引取量を1000個とすることでいったん合意したが」、同年末ころ、原告から「5000個としてもらいたい旨の申入れがあった」。「被告は…販売しきれない」ため拒否したが、「結局原告の要求に応じざるを得ず、ちえの輪と共同で原告から仕入れ」ることで、「この数量をこなすことにした」。「このころから原告・被告間の信頼関係が揺ら」ぎ、「被告は、平成9年10月ころ、「サボン麗姿」「サボン麗姿ゴールド」を別の製造元で製造されたものに切り替え」、「ちえの輪の販売代理店や消費者等に対して、麗姿シリーズの生産工程の見直しを図り、製造元をこれまで委託していた原告から自社へと切り替えることにしたことなどを内容とする案内状を送付して、被告独自の商品の販売開始を通知し、また価格も従来の製品より下げて販売するようにな」り、「これにより、被告と原告との関係が打ち切られた」。


2.検討
 裁判所は「原告・被告間で代理店契約が締結されたことを認めるに足る証拠は存」せず、「これとは異なり、原告・被告間で商品供給契約が締結され…これは代理店契約ではなく、原告が被告の指定ブランド化粧品類の製造を引き受けて被告に供給する旨のOEM契約であって、「麗姿」を原告のブランドとして契約終了後は被告に同ブランド名不使用の義務を負わせるものとは、到底解されない」とし、「仮に、原告の主張が、被告とちえの輪との間で代理店契約が締結された」ものでも、「契約当事者でない原告が、被告に対して、契約上の義務を理由として「麗姿」の語を使用しないように求めることはでき」ず、いずも「原告の主張は失当であると判断しました。。以上のとおり、「代理店契約上の義務を根拠とする原告の請求も、理由がない」としました。

 「以上のとおり、代理店契約上の義務を根拠とする原告の請求も、理由がない」。

 

■結語

 裁判所は
四 以上によれば、原告の請求は、いずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。

 

■BLM感想等 

 本件は、まず、石鹸の製造業者(原告)と、この石鹸を買い入れ販売する販売業者(被告)との紛争について、商標権侵害の主張に対し、使用する両表示の類似性を判断しました。そして、裁判所は、「本件登録商標は、「和漢研」と「麗姿」という二つの語を組み合せた…結合商標で」、「前者の「和漢研」部分の方が、一般的でない、前記のような観念を生じる語であることから、取引者・需要者の注意をより強く引く部分である」一方、「「麗姿」部分は、より一般的な語であって、指定商品である「化粧品、石鹸類、香料類」と関連する語であることからすれば、取引者・需要者に特定的、限定的な印象を与える力を有するものではない」とし、「本件登録商標については、そのうち「麗姿」部分のみからは出所の識別標識としての称呼、観念を生ぜず、「和漢研 麗姿」全体として若しくは「和漢研」部分としてのみ出所の識別標識としての称呼、観念を生じる」から、「和漢研 麗姿」全体若しくは「和漢研」部分要部である」と判断しました。かかる判断は、未だ出願商標が使用されていないか、又は、審査官が使用状況をしらずに、出願された商標と指定商品(役務)を見て判断する審査段階ではよく見られるものと考えます。特にすでに登録されている他の商標の中にもあ、「麗姿」と他の文字との結合商標が見られたようなので、併存登録されている場合は、「和漢研」と「麗姿」を一体的に見るなどして「麗姿〇〇」又は「〇〇麗姿」(本件では、「和漢研」以外の、「TAKE」などの語を組み合わせた被告の商標)とは非類似と判断するというのは、違和感はないと思います。

 但し、本件では、「「麗姿」はむしろ被告のブランドであって」と判断しているため、商標出願実務に慣れている方なら、この点で「んっ!?」と思うところでしょう。

 いずれにしても、裁判所は、商標権に基づく請求を認めませんでした。

 次に、裁判所は、原告の不正競争防止法2条1項1号に基づく請求について判断しました。同号は、”他人の商品等表示として周知性を獲得している対象”をまずは把握する必要があるでしょう。第三者に対する請求を、石鹸の製造業者たる原告と、販売業者たる被告とが協力して行うなら、表示主体の具体的認定は必要はなかったでしょう。一つのグループとして認定し、そのグループを出所とする表示について、商品の販売数量、売上高、シェア、宣伝広告の数や販売や広告等された地域的範囲等に基づき、需要者・取引者に広く知られているか(周知性を獲得しているか)を判断すれば足りると考えます。しかし本件では、その協力すべき当事者同士が争ったわけです。そして、原告の有する登録商標「和漢研/麗姿」と「TAKE」と「麗姿(又はREISHI)」からなる標章等とは非類似とされたので、この段階では、実際に使用されていた後者の標章等を対象としてその周知性が判断されることになります。そこで、「TAKE」と「麗姿(REISHI)」を主な要素とする標章等が誰を出所とするのか判断する必要が出てくるわけです。本件では、「原告・被告間の取引基本契約においては、原告は、被告の指定するブランドの化粧品類を製造してこれを被告に納入し、ブランドの付された容器等は被告の負担により製作され、原告は商品を第三者に販売してはならないものとされているものであり(取引基本契約書。乙一)、また、「サボン麗姿」「サボン麗姿ゴールド」は、その広告等において、「総発売元」又は「取材協力」ないし「問合わせ先」として、常に「株式会社オフィス・タケ麗姿事業部」の表示がされていたことに照らせば、原告・被告間の契約は、被告が自己のブランドを付して販売する化粧品類について、原告がその中身を製造する、いわゆるOEM契約と認めるのが相当である」としています。すなわちOEM契約の締結を認め、表示主体は被告であると判断しているわけです。ここまでの段階でも違和感はないでしょう。なにをもってOEM契約というのか争いがあるところかもしれませんが、本件では当事者の関係をそのように判断したわけです。

 ただ、そうすると「「麗姿」は、むしろ被告のブランドすなわち被告の商品表示というべき」とすると少々違和感が出てきます。むしろ「TAKE」と「麗姿(REISHI)」を主な要素とする標章等が被告の表示として、原告と被告の両表示は非類似であるとした方がよかったかもしれません。実務的にはすっきします。関係解消後も、両社は「麗姿」に他の文字を付加して混同防止を図ればよいのね、と納得できます。

 しかし「麗姿」が被告の表示となると、例えば、登録商標のうち「麗姿〇〇」「〇〇麗姿」のいずれにも、本件被告の周知表示に基づく行為規制が及ぶことにもなりかねません。ただ本件は、「原告が「サボン麗姿」「サボン麗姿ゴールド」の製造元として取引者・需要者の間で広く認識されるに至っているとしても」、「その総発売元である被告との間では、互いに「他人の」商品等表示に当たらず、原告が被告の行為を不正競争行為と主張することはできない」とも判示しています。δ(◎◎;「訳がわかりません!」よね…。

 結局、筆者が思うに、裁判所は、当事者間の紛争解決しか図っていない、ということなのではないかと思うのです。要するに両者相互では「出所の混同(不正競争行為)」はないので、行為規制する必要がない、また、提供される商品の品質に差異がないのなら需要者も混同しない。よって差止請求はできない。…という流れで、結論が導かれたのではないかと考えます。ただそのように考えると、裁判所が次のように認定してます。すなわち、「サボン麗姿」(中身の石鹸は「和漢ドゥサボン」と同じ。)の通信販売による独占的販売権を得た被告は、雑誌等にこの石鹸の広告を掲載した。この石鹸は、一〇〇グラムのサイズのものが小売価格六〇〇〇円もする高価なもので、被告は、高級であるが東洋医学や漢方薬学などの研究の成果を取り入れたもので効果があることを、宣伝する路線を採った」。「原告もこれに協力し、右の石鹸の開発者であるとして、東洋医学や漢方薬学などの研究者である森の顔写真や名を出すようにした」。そうすると、被告が、上記の品質をどこまで訴求していたかによるかもしれませんが、盗用医学や漢方薬学などに精通した研究者や研究開発機関等(森氏以外でも例えば医大等にシフトしてもよいと思うのですが。)のお墨付きを根拠にしないと、需要者の期待を裏切る結果となるやもしれません。そのような商品に表示を付しても、不正競争防止法2条1項1号の行為規制外となってしまうのか、出所の混同となるのか、が本件の問題となるように思います。

 この問題、解らないことが多いです。他の事例も検討し、もう少し本件も交えて勉強したいと思います。

 

By BLM

 

 

 

 

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