不正競争防止法2条1項1号の裁判例をよむ

個人的興味からのランダムピックアップ裁判例 その95

 本日も、製造業者・販売業者の関係にあった当事者の紛争事例を見ていきます。

 本裁判例は、LEX/DB(文献番号25446209)より引用。形式的な修正追加あり(「」等で明示ない箇所もあります)。

 

  東京地判平成12・10・31〔レンチラスサーク事件〕平11(ワ)5184

原告 株式会社クリエイトフューチャーズ(代表者N田)
被告 株式会社アイン(代表者M田)(以下「被告アイン」)
被告 株式会社成幸社(代表者I藤)(以下「被告成幸社」)
被告 バイオ電子サービス株式会社(代表者W邉)(以下「被告バイオ電子」)
被告 アルバ こと I澤(以下「被告アルバ」)

 

■事案の概要等  

 本件は、原告は、継続的供給契約に基づき健康食品の供給を受けていたが、売主である被告アイン及び同被告バイオ電子が正当な理由なく商品の供給を停止したことは債務不履行に当たる旨、また、直接の売主でないその余の被告らが原告を排除する目的で右債務不履行に加担したことは不法行為に当たる旨、被告らが右健康食品につき原告と同一の商品表示を用いる行為は不正競争行為に当たる旨主張し被告らに対し債務不履行又は不法行為に基づき損害賠償を求めた事案です

◆当事者間に争いのない事実等
 裁判所は、以下の認定事実もづき、判断しました。

1.原告:健康食品を訪問販売組織を用いて販売することを業とし、レンチラスサークという商品(以下「本件商品」)を扱う。本件商品は「多糖類タンパク(AHCC)にラクリス菌(LBC)を加えた健康食品」で、原告会社はこれに「レンチラスサーク LENTILAS SAHCC」の表示(以下「本件商品表示」)を付して販売している」。
2.本件商品の取扱い会社:当初株式会社クリエイトジャパン(以下「CJ」)が扱い、平成10年2月28日以降は株式会社ロータリーコーポレーション(以下「ロータリ」)が扱い、その後、当時ロータリの代表者であったN田清(現在の原告会社代表者)は、CJに相当する訪問販売組織の販社として、同年6月11日原告会社を設立し」、そ「の代表取締役に就任したのは、被告アインの代表取締役のM田」。

  取扱い:ロータリ(代表N田)

            ↓設立

  訪問販売組織の販社:原告(被告アインの代表M田(のちにN田就任))

            →[レンチラスサーク]販売

                        

  
3 本件商品の供給ルート
株式会社アミノアップ化学(以下「AK」)は原料の供給被告成幸社は本件商品を製造被告アインに卸し→更に被告バイオ電子に卸し→CJに卸していた。
4 被告アルバことI澤は、原告会社の法人営業部長の肩書。平成10年8月3日開催の販社・販社代理店会議の席上で、原告会社の訪問販売組織からの脱退を宣言。原告会社と同様の訪問販売組織を用い本件商品販売(原告主張の日に販社・販社代理店会議が開催されたことは被告バイオ電子及び同I澤の関係では争いがない)。
5 原告会社の株主でもあったN田は、M田が当時原告会社の代表者の地位にありながら取締役としての忠実義務違反を理由にM田を債務者として違法行為差止めの仮処分(以下「本件第一仮処分」)をに申立てたが、訴訟外で原告会社、被告アイン、同バイオ電子及び同I澤の四者の間に、今後は被告アインが同バイオ電子を経由して原告会社、被告I澤の双方に本件商品を供給する旨の合意成立(以下、「四者間合意」)、申立てを取り下げた。また、四者間合意の成立と同時に、M田は原告会社の代表取締役を辞任し、N田が原告会社の代表取締役に就任。
6 原告会社は、平成一〇年九月二三日、四者間合意を破棄する旨の申入書を発送し、右意思表示はそのころ右合意のその余の各当事者に到達。そして、原告は、同月二八日被告成幸社を除く本訴の被告らを債務者として不正競争防止法に基づく商品販売差止め等の仮処分(以下「本件第二仮処分」という。)を東京地方裁判所に申し立てたが、右事件は平成一一年二月一六日和解により終了した。


◆争点
(1)本件標章は被告にとって「他人の商品等表示」に当たるか。
(2)本件標章の周知性
(3)被告による原告元販売店に対する本件標章1及び2の使用許諾の有無
(4)混同のおそれの有無
(5)被告による本件標章の使用は,商標権者による登録商標の使用として適法なものか。

 

■当裁判所の判断

(下線・太字・着色筆者)

 

Ⅰ.前提となる事実関係について
裁判所は、以下の事実を認定し、判断しました。

 

1.本件商品販売の経緯
 「CJ社は、平成6年11月ころから、「レンチンガンマー」(大和薬品の製造にかかるAHCC入りの医薬品)を取り扱うようにな」り、取引は「原料はAK社が供給し、商品の流れは、大和薬品から被告アイン、同バイオ電子を順次経由してCJ社に至る」。「右商品の販売について、当初、CJ社は現金で決済をしていたが、その後クレジットを使用するようにな」り、「ただ、同社の代表者Tが以前に…問題を起こし…同社のクレジットは使えなかったので…「被告バイオ電子の口座を親番とし、CJ社は子番として同被告の加盟店の口座を利用させ」た。「そのころから被告バイオ電子代表者のW邉は、販売促進のための健康セミナーの講師」などの活動行う。
 その後「AK社と大和薬品の紛争から、原料が「AHCC」から「バイオプラン」に切り替えられ、その際、CJ社は、同社独自のブランド商品「ニューレンチンガンマーサーク」という名称で商品の製作を被告アインに依頼し、その製造は大和薬品に依頼」し、「バイオプランの商品説明会が行われたが、当日になって被告成幸社からAHCCが手に入るという情報が伝わったので、T谷と当時CJ社の営業推進本部長であったN田が話し合い、AHCCを引き続き販売することにした」。「新しい商品名として、右「ニューレンチンガンマーサーク」を参考にして、「レンチラスサーク」という本件商品の商品名をN田が考えその製造を被告アインに依頼した。その結果「製造会社が大和薬品から被告成幸社に変わり、本件商品は同アイン、同バイオ電子経由でCJ社に納入されるようになった」。「その後、CJ社の有する本件商品供給契約における買主の地位を…ロータリーが承継し、…ロータリーを出願人とする本件商標権の登録出願」。


2.原告会社が設立された経緯
(1)「CJ社は、クリエイトクラブという本件商品の販売組織を作り、それぞれの販売成績に応じて、販社、代理店、特約店、特別会員、会員といった地位を設け」、「右の地位に応じて、販売手数料が異なるという仕組み」である。

「ロータリーは、N田が代表取締役を務める会社で」、CJ社の「販社の地位」にあり、「被告I澤は、ロータリーの販社で」、右販売組織で「N田の指示・指導により本件商品を販売」。

「本件商品の原料であるAHCCを被告成幸社に卸しているAK社代表者のK砂は」、「AK社の商品につき、販売会社はクレジットを利用して商品を販売し」、「自分が消費する分量以上の商品を購入し…他者に販売する目的でクレジットを利用」するような「販売方法により自社の商品のイメージが毀損されることを懸念し」、被告アインに「即時クレジット販売を中止するように求め」、「被告アインは、同バイオ電子、CJ社にその旨を要請」し、「クレジットの利用状況を調査し…未成年者に対する100万円以上の高額なクレジットによる販売、病人に対するクレジットを利用した販売等の事実が判明」した。
(2)CJ社で「…クーリングオフ等による契約の解除及びクレジット立替金の返還の問題が多数生じ」、「本件商品の供給者であるAK社及び被告成幸社は…CJ社の代表者であるT谷の販売方法に問題があると考え…ロータリーがCJ社の代わりに本件商品を販売する」なら、「AK社は適正な販売方法に改善されることを期待し」、「ロータリーがCJ社の地位を承継した後」、AK社代表者のK砂は「依然としてクレジット販売の問題が解決されず、W邉の行為は薬事法違反の疑いがあるという認識から…被告アイン及び同成幸社に対し、ロータリーに本件商品を販売することをやめた方がよいのではないかと述べ」、「被告アイン代表者のM田は、「新たに会社を設立し、自分が社長になって管理・監督を行うので、もう一度チャンスを下さい。」と述べ、引き続き本件商品を供給してくれるように懇請した。AK社と被告成幸社は、M田の要請を容れ、その結果…原告会社が設立」し、発行済株式総数は800株で、N田は親族名義も含めて418株引受けた。M田は代表取締役に就任したが、株式は二株引受けたのみ。


3.原告会社内部の紛争と八月三日の会議
 原告会社で「N田は取締役営業本部長、被告I澤は法人営業部長の地位」。「原告会社が購入した本件商品はロータリーに供給され、現実に販売を行うのはロータリー又はI澤グループなどで」、「原告会社の役割はそれほど大きくな」く、「M田は、N田に対し、ロータリーの…業務を原告会社に移管するように求めたが、N田はこれに応じなかった。また「被告I澤を中心に、ロータリーが販社に対し所定の販売手数料を支払ってくれないなど、N田によるロータリーの運営に不満を持つ者があ」り、「被告I澤は、M田に対し、N田が…セクハラ行為をした旨や同人の営業行為には販社から苦情が多く寄せられている旨を報告」。被告I澤は「I澤グループの販社であるS木からロータリーはCJ社の時代には売上げの五パーセントであった手数料の額を八パーセントに増額しているという報告を受けてN田を信用する気持ちを完全に失い、ロータリーの販社を辞め、傘下の販社とともに同社から分派独立…を決めた。被告I澤は…その旨をM田に報告」し、「今後は被告アインから直接本件商品を購入したい旨協力を要請し…M田は前向きに検討する旨答えた」。「同じころ、W邉の行う健康セミナーが薬事法や医師法に違反する疑いがあることが再び問題となり、M田とN田が話し合った結果、被告バイオ電子を経由する本件商品の供給ルートは八月末で打ち切ることになった」。

 M田は「原告会社の実体はロータリーのダミー会社であり…N田の営業行為には問題があるという認識から、同人と一緒に原告会社を運営することはできないと判断し…原告会社の代表者を辞任する旨N田に申し出」、「N田は、原告会社の代表者に就任して本件商品の販売組織を維持することに意欲を示し、引き続き本件商品の供給を確保するため被告アインの代表者としてのM田の支援を求めた」。「原告会社の販社・販社代理店会議が行われ…M田は代表者を辞任することを報告し…被告I澤がN田によるロータリー及び原告会社の運営、特に経理には不明朗な部分があるとし…N田を…批判」。「N田はこれに反論」。「……主にN田と被告I澤の間で緊迫したやり取りがあったが、最終的には被告I澤が「俺は離れます。こんな人とは一緒にできない。」と発言して、散会」。 「右会議の終了後…I澤グループの事実上の旗揚げ式が行われ」、「M田とW邉も出席し、M田は「原告会社には一粒たりとも本件商品を流さない。」と発言し」、「W邉も…N田を批判」。


4.四者間合意と覚書について
 「I澤グループの分派独立」により……「原告会社からはN田の相談役的な立場にあったK岡(現在は原告会社の監査役)、被告アインからは代表者の息子…M田専務…が窓口になって、I澤グループの分派独立を認め、本件商品を原告会社とI澤グループの双方に平等に供給する方向で協議を行い…右両名により四者間合意の原案が作成」。「その後、K岡が、N田、W邉、M田、被告成幸社代表者のI藤…各人の意見を調整した結果…四者間合意が成立」し、「原告会社の臨時株主総会が開催されて、M田の取締役辞任が決議され、N田が代表取締役に就任」決定。K岡は「ロータリーについては四者間合意の当事者でなく、被告アインや同バイオ電子から本件商品の供給を受けるわけではないことから、押印を受け」ず、「K岡は、被告アインのM田専務にロータリーが覚書に押印しなかった理由を説明したところ、M田専務は「そうだね」と言って、このまま右用紙を受け取った」。


5.四者間合意の破棄に至るまで
 原告会社は「四者間合意に基づき、被告バイオ電子に対し、本件商品一〇ケース本の注文…ロータリーが覚書に押印していないことを理由に…納品を拒」み、「被告アインから原告会社とロータリーに対し、本件商品以外の商品について30万円まででかつ自己消費分であればクレジットの利用を認める旨の通知…が発出された。N田は、四者間合意ではクレジットによる販売は販売店のレベルでも行わないとされていたのに、わずか半月足らずで条件付きとはいえクレジット販売が認められたことに不審を抱き、…I澤グループでは「本件商品の販売についても、表面上は別の商品の名前を記入させることでクレジットの販売も可能である。」旨の指示が出ていることが判明し…ロータリーと平等の条件で商品を販売するという四者間合意の前提は失われており、仮にロータリーが覚書に押印した場合には、被告アインの側で些細なことを取り上げて原告会社の違反行為とし、商品供給を止める口実にされ、なおかつ裁判に訴えることもできなくなると判断し、押印の上で保管していた覚書を返送することを止め、四者間合意を破棄」した。


Ⅱ.争点1(原告と被告アイン、同バイオ電子との間の契約関係)
1.裁判所は、次の事実を認めました。
(1)「本件商品の供給ルートは、2月末にロータリーがCJ社の地位を承継した時点では、被告アインから同バイオ電子を経由してロータリーに至る」ものだったが、同バイオ電子の「Wが行っていた健康セミナーが薬事法に違反…が問題とな」り、同アインのM田は、原告のN田と話し合い「新たに被告アインから同バイオ電子を通さずに直接ロータリーに供給するルート」を提案した。N田は「仕入れ値が安くなるので、右提案を受け入れた」。
(2)「被告アインとロータリーの間の直接の取引は5月19日ころから始まり」、6月11日の原告会社設立後は、「原告会社に承継され」、原告会社で「被告バイオ電子を経由する取引と被告アインからの直接の取引の割合はおおむね前者が四〇パーセント、後者が六〇パーセントとなっていたが、その選別は被告アインにより行われ、原告会社が注文のファックスを入れると、被告アインから個々の納品分につき伝票の送付先等の具体的な指示がされ」、「右の取引は…二か月間行われた」。
(3)8月に入り「M田とN田との間で被告バイオ電子を…排除する方向で話が進み」、その「在庫を被告アインが買い取る」約束もされた。「原告会社は、直接被告アインに注文を出し、8月6日から同月18日にかけて合計4119本が納品…(被告アインの…在庫…含む。)。
(4)原告会社は…四者間合意に被告バイオ電子との間で継続的な基本契約を締結する旨の約定があったため、…被告アインではなく同バイオ電子に注文を出した。しかし…納品を受けることができなかった。


2.裁判所は認定事実に基づき「遅くとも原告会社が設立された6月11日ころからは、従来の被告バイオ電子を経由する本件商品の供給ルートのほかに、被告アインと原告との間の直接の取引が開始され、右内容の継続的供給契約が締結されていた」と認め、「右の契約は、M田とN田が被告バイオ電子を排除するため、言わば秘密裏に締結したものと認められるから」、被告バイオ電子代表者のW邉が「右の事実を知らなかったとしても何ら不合理ではなく、右認定を左右するものではない」としました。
 

Ⅲ.争点2(被告アイン、同バイオ電子の債務不履行責任)
1 八月四日から九月四日まで
 「原告会社と被告アインの間で被告バイオ電子を排除することが話し合われ、原告会社は被告アインにだけ注文をしていたこと、被告アインも原告会社の注文にほぼそのとおり応じ…被告アインに本件商品供給義務の不履行を認めることはできない」。
2 九月一〇日以降
(1)「原告会社が直接被告アインに対して本件商品を注文した事実は認められ」ず、「被告アインに本件商品の供給義務の不履行責任を問」えない。
(2)原告会社は「被告バイオ電子に対し…注文をしたこと、被告バイオ電子は、この注文を被告アインに取り次いだが、ロータリーが覚書に押印していないことを理由に被告アインが納品を拒んだため、被告バイオ電子は結果的に原告会社の注文に応じられな」く、「四者間合意では、被告バイオ電子を通して本件商品を供給することが規定されているが、それ以前からN田とM田の間では被告バイオ電子を排除することが話し合われ、被告バイオ電子を経由する取引と被告アインとの直接の取引をどのように振り分けるかは被告アインが決めていたという…認定の事情に照らせば、被告バイオ電子は形式的には契約の当事者にとどまっているが、実質的には被告アインの支配下にあり、原告会社に対し、本件商品を供給するかどうかを自ら決定し得る権限を有していなかった」と評価できる。したがって「被告バイオ電子が原告会社の注文に応じなかったことを理由に債務不履行責任を問うことはできない…(なお、被告バイオ電子による本件商品の不供給については…不法行為責任の有無を検討することとし、商品供給を停止した正当な理由として主張する事実を違法性に関する事情として考慮する。)。


Ⅳ.争点3(被告らの不法行為責任)
1 被告アインの責任について
 裁判所は以下の事実を認定し判断しました。
(1)「本件商品の販売について、前記認定のとおりクレジットが利用されていたが、CJ社が契約の当事者であった」当時の「契約のうち、解約の件数は二〇四件であった。これを販社の別でみると、ロータリーが三一パーセント、I澤グループが六九パーセントを占めていた。ロータリーがCJ社の地位を承継した」以降、「ロータリーはクレジットによる販売を行っていたが、解約された事例はなかった。そして、原告会社がロータリーの地位を承継した六月以降はクレジットは利用されていなかった。他方、I澤グループでは、少なくとも七月にはいくつかの販社においてクレジットが利用されていた」。
(2)「四者間合意に向けての話合いの過程で…N田は被告成幸社の事務所を訪ね…N田は被告アインを通さずに直接本件商品を供給できないかと尋ねたが、I藤はこの申し出を断った。また、N田は、ロータリーが本件商標権を持っているので、これに基づき被告I澤、同成幸社に対し訴えを提起するかもしれないと述べた。I藤は…本件商品の信用に傷がつくと考え、原告、I澤グループ、被告アイン間の紛争を円満に解決するための一つの方法として、権利行使をしないという条件で本件商標権を預からせてほしい旨要請し…N田はこれを承諾」。原告の四者間合意が破棄後、「N田は本件商標権を譲渡する…話はなかったことにしたいと申入れ」、「I藤は…積極的に反対せず、その後も本件商標権の譲渡手続…催促…はなかった。
(3)被告アインは、味王食品からクリエイトスーパーシャークという商品を購入していた。…ロータリーが独自に製造していた商品であったが、原告会社が設立されたのを機会に、味王食品から被告アインに納入させ、被告アインから原告会社に卸すという形態にした。ところが、被告アインは、発売元を原告会社とする商品のパッケージを作成して、これに商品の中身を詰めさせ、被告I澤に卸していた。…N田は、更に紛争が拡大することを危惧し…味王食品に指示して約一週間被告アインに対する商品の納入を止めさせたことがあった。しかし、その後は被告アインと味王食品の協議により、商品の供給が再開された」。

 

2.裁判所は認定事実に基づき以下のように判断しました。
(1)覚書について
 「被告アインは、ロータリーが覚書を提出しなかったのは…クレジットの利用を続けていたためであると主張する」が、「ロータリーがその時点でクレジットの利用をしていたことを認めるに足りる証拠はな」く、右主張は前提を欠く。しかも「被告アインにとって、ロータリーが覚書に押印することが本件商品の供給に関わるほど重要な事項であるならば、N田に覚書を交付した際又はK岡が原告会社印を押捺した覚書を持参した際に、四者間合意の当事者ではないロータリーにも覚書の押印を求める理由を説明することもできたと思われるのに、代表者のM田らによりそのような説明はされていない。以上によれば、ロータリーが覚書に押印して提出しなかったことは、本件商品の供給停止の理由にならない」。
(2)本件商標権の譲渡について
 「本件商標権譲渡の合意がされた趣旨は、四者間合意の当事者において本件商品の安定供給を保障することにあったと認められるところ、四者間合意が破棄された後は右の前提が欠ける」から、「被告成幸社にとって、本件商標権は不要なもので…I藤がN田に対して「商標は構わない。」と述べたことにより、本件商標権譲渡契約は合意解約されたものと認められる。そうすると、合意の当事者である被告成幸社が原告に対して本件商標権の譲渡を求めることができない以上、右合意の当事者でない被告アインが、原告に対して、本件商標権の譲渡がされなかったことを理由に本件商品の供給を停止することはできない」。
(3)味王食品に対する新田の干渉について
 「新田が原告会社と被告アインとの間の紛争が未解決であることを理由に一時的に味王食品に対し商品供給の停止を指示したことはやむを得なかったものと評価でき…取引が再開されたことにかんがみれば、同被告にはほとんど損害は生じていない」。「新田が味王食品に対して商品供給の停止を指示したことを理由に本件商品の供給を停止することはできない」。
3.以上によれば「被告アインが主張する事情は、いずれも本件商品の供給停止を正当化」できず、「同被告は、被告バイオ電子への本件商品の供給を停止して同被告から原告会社への本件商品の供給をさせなかったことについて、原告に対し、不法行為責任を負う」。

 

2.被告バイオ電子の責任について
 裁判所は、「被告アインが原告会社との間の直接の契約に関し、本件商品の供給義務を履行しなかったとの事実は認められないから、被告バイオ電子がこれに加担したことを理由とする不法行為による損害賠償請求は理由がない」とした上、「被告バイオ電子が、原告会社を排除し、I澤グループを利する目的で原告会社に対する本件商品供給を停止し、I澤グループの旗揚げ式等で被告I澤を支援する言動をしたとの主張については、被告バイオ電子は本件商品の取引から早晩排除されることが予定され…実際上も被告アインの意向によって本件商品の供給量を調節されていた」から、「そもそも本件商品の供給に関し固有の決定権限を有していなかった」と認め、「被告バイオ電子代表者のW邉は…I澤グループの事実上の旗揚げ式においてN田を批判する言動をしたことが認められるが、それ以上に被告I澤を支援する具体的な行動…を認め」られず、「せいぜいI澤グループを精神的に支援したに止まり、原告に対する不法行為責任を負わない」と判断しました。

3.被告成幸社の責任について
 裁判所は、「被告成幸社代表者のI藤が本件商品の供給を妨害するなどの具体的な行為をしたとの事実は認められない」と判断しました。


4.被告I澤の責任について
 裁判所は、以下の事実を認定し判断しました。

 「被告I澤は…M田にロータリーからの分派独立を相談し…M田はI澤グループの旗揚げ式で「原告会社には本件商品を流さない。」旨発言し…被告I澤は現在アルバ株式会社を設立の上で被告アインから直接AHCC入りの商品(商品名アルバークス)を購入し…この商品につきクレジットの利用を許されていること…からみて、被告I澤と同アインの結びつきは密接であり、被告アインの援助がなければ被告I澤の分派独立はでき」ず、「事実経過を総合すれば、被告I澤としては分派独立の結果原告会社ないしロータリーの組織が弱体化することは認識していたと思われるものの、被告アインや同成幸社に働きかけて原告に対する商品供給を妨害したとの事実までは証拠上認め」られず、「供給停止に対する具体的な寄与があったとまではい」えず、「原告会社ないしロータリーの側でも分派独立の後にI澤グループから販社、代理店等を取り戻そうと盛んに切り崩しを図」り、「被告I澤が原告会社に対し競業避止義務を負っていた」と認められないから、被告I澤の行為が原告に対する不法行為…とまで」いえない。

Ⅴ.争点4(本件商品表示の周知性、著名性について)
1.不正競争防止法2条1項1号について
 上記認定事実等総合すれば「本件商品は、当初から会員組織を用いて販売されており、テレビ、新聞、雑誌等を用いての一般消費者を対象とした広告宣伝は行われていないものであり、原告会社の販売組織の会員や原告会社主催の健康セミナーの出席者の間で本件商品表示が知られているにしても、右の程度をもってはいまだ本件商品表示が原告会社の商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたと認めるには足りない」。


2.不正競争防止法2条1項2号について
(省略)


3.以上によれば、不正競争防止法に基づく原告の請求は理由がない。


Ⅵ.争点5(損害額)
(省略)


■結論
 裁判所は、「以上によれば、原告の請求のうち、被告アインを除くその余の被告らに対する請求は理由がないが、被告アインに対する請求は1000万円及び遅延損害金の支払を求める限度で理由がある」と判断しました。

 

■BLM感想等 

 本件で裁判所は、「本件商品は、当初から会員組織を用いて販売され」、「原告会社の販売組織の会員や原告会社主催の健康セミナーの出席者の間で本件商品表示が知られているにしても…いまだ本件商品表示が原告会社の商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたと認めるには足りない」と判断しました。

 本件商品販売の経緯は、従前、CJ社は「レンチンガンマー」(大和薬品の製造にかかるAHCC入りの医薬品)を取り扱うようにな」り、取引は、原料はAK社が供給していましたが、商品の流れは、①被告アイン、②被告バイオ電子が介在しており、本件は、原料提供者AK社や商品の製造業者被告成幸社は巻き込まれた感が否めず、中間業者と最終的に顧客を抱える販売業者内で争いが生じた事例といえそうです。原料提供者や商品の製造業者は、商品を販売してくれる会社さんたちに強きなことは言えない一方で、自社の名前に傷がつく行為を見逃すこともできないでしょう。この場合、商標・その他の表示を介してコントロールを及ぼすことが認められる事例はありますが、本件の表示主体は、原料提供者や製造業者とは認められないような事案と考えます。 すなわち、本件で、「ニューレンチンガンマーサーク」を参考にして、「レンチラスサーク」という本件商品の商品名を、N田が考え、その製造を被告アインに依頼しており、その結果「製造会社が大和薬品から被告成幸社に変わり、本件商品は同アイン、同バイオ電子経由でCJ社に納入されるようになったという経緯などが認められ、CJ社は、クリエイトクラブという本件商品の販売組織を作り、一方、CJ社の代表者であるT谷の販売方法に問題があると考え…ロータリーがCJ社の代わりに本件商品を販売する」なら、「AK社は適正な販売方法に改善されることを期待し」、「ロータリーがCJ社の地位を承継した後」、AK社代表者のK砂は「依然としてクレジット販売の問題が解決されず、W邉の行為は薬事法違反の疑いがあるという認識」をもったが、「被告アイン代表者のM田は、「新たに会社を設立し、自分が社長になって管理・監督を行うので、もう一度チャンスを下さい。」と述べ、引き続き本件商品を供給してくれるように懇請した。AK社と被告成幸社は、M田の要請を容れ、その結果…原告会社が設立された経緯がありました。

 本件については、筆者は消化しきれていないです。というのも、違法な取引や、又は、違法な取引か否かグレーな状況(裁判で白黒はっきりしていない場合含む)で、商標・その他の表示の周知性獲得が認められる場合があるのか、不明です。本件は、周知性を認めておらず、認めないことで、解決を図った事例とも言えるのだろうか、と思った次第です。

 

By BLM

 

 

 

 

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