不正競争防止法2条1項1号の裁判例をよむ

個人的興味からのランダムピックアップ裁判例 その82

 本日は、使用許諾関係にあった当事者の紛争事例を見ていきます。

 本裁判例は、LEX/DB(文献番号27486137)より引用。形式的な修正追加あり(「」等で明示ない箇所もあります)。

 

  東京地判平26・6・24〔シンシンブロック事件〕平成25(ワ)11958

原告 株式会社シンシンブロック(以下「原告シンシンブロック」) 
原告 株式会社林物産発明研究所(以下「原告発明研究所」)
原告 株式会社林物産 (以下「原告林物産」)
被告 日東商事株式会社 

 

■事案の概要等 

 本件は、原告らが、被告による雨水貯留浸透槽用の部材の製造販売に関して、

不正競争防止法2条1項1号、13号及び14号所定の不正競争行為、商標権侵害並びに不法行為による損害賠償を請求した事案です。

 

◆前提となる事実
1.当事者
・原告シンシンブロックは,雨水貯留浸透施設等の設計,施工,監理等を目的とする。
(イ)原告発明研究所は,各種無体財産の取得,保有,運用業務等を目的とする。
(ウ)原告林物産は,雨水貯留浸透槽用の部材を含む環境関連製品の研究,開発を行っている。

・被告は,石油製品の仕入れ販売,ブロック工事業等を目的とする。

 

2.原告らの製品,商標権等
・原告シンシンブロックは,商品名を「シンシンブロック」,ローマ字略記を「SSBB」(以下,これらを併せて「原告標章」という。)とする雨水貯留浸透槽用の部材(以下「原告製品」という。)を平成8年に開発し,その後販売している。原告製品は,平板部分と柱部分等から成るプラスチック製の部材で…地下に複数配列して空間を形成し,その空間に雨水等を貯留することができる。

・原告発明研究所は,別紙商標権目録記載の2件の本件商標権を有している。
・別紙証明書等目録記載のとおり,原告製品又は原告製品を用いた技術等につき,①原告シンシンブロック及び原告林物産は財団法人下水道新技術推進機構(以下「下水道機構」)から同記載1及び2の建築技術審査証明書並びに社団法人雨水貯留浸透技術協会(以下「雨水協会」)から同目録記載4の技術評価認定書を,②原告シンシンブロックは上記財団法人から同目録記載3の新技術研究成果証明書をそれぞれ取得しており,また,③原告林物産は建設省(当時)において同目録記載5の新技術提供システムの登録を受けている(以下,これらの証明書等を「原告証明書等」と総称する。)。
・原告シンシンブロック及び原告林物産は,有効期間を平成19年4月1日から平成24年3月31日までとして,雨水協会から原告製品についての技術推薦書(以下「本件技術推薦書」)を取得した(ただし,有効期間が延長されたかについては争いがある。)。

・被告製品の製造販売に至るまでの経緯
 原告シンシンブロックと被告は、原告シンシンブロックが被告に原告製品を販売し,被告がこれを第三者に転売する取引を行っており,被告を原告シンシンブロックの販売代理店とする旨の代理店取引契約(以下「本件代理店契約」)を締結。原告シンシンブロックと被告は,原告製品を製造するための金型一式を原告シンシンブロックが被告に1億4300万円で譲渡する旨の売買契約(以下「本件金型売買契約」)を締結。さらに,原告シンシンブロックと被告は,通常実施権許諾契約(以下「本件許諾契約」)を締結。

■当裁判所の判断

1.1号の不正競争行為(出所混同惹起行為)を理由とする請求について
(1)裁判所は「原告シンシンブロックが,被告による被告標章(原告標章と同一又は類似の標章)の使用が1号の不正競争行為に当たるとして損害賠償を求めるのに対し,被告は,原告標章の周知性等を争うほか,被告標章の使用につき原告シンシンブロックの許諾ないし承諾を得ていた旨主張するので,この被告の主張の当否につき」以下検討し、認定事実に基づき判断しました。


(2)前提となる事実に加え,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア)「原告製品は,平成8年に原告シンシンブロックが開発し…プラスチック製の雨水貯留浸透槽用の部材としてパイオニア的な存在とされ」、「平成8年から平成18年までの間…、原告シンシンブロック及び原告林物産は新聞及び雑誌に原告製品の広告を掲載しており,原告製品は新聞や雑誌の記事にも度々取上げられ」、「原告製品を用いた槽の技術については,原告シンシンブロック及び原告林物産が平成9年に雨水協会の技術評価認定…を,原告林物産が平成12年に建設省(当時)の新技術情報提供システム(NETIS)の登録」を、「原告シンシンブロック及び原告林物産が平成18年に下水道機構の建設技術審査証明」及び「平成19年に雨水協会の技術推薦(本件技術推薦書)」を受けた。「原告製品は,全国各地の雨水貯留浸透槽の工事に広く納入され,平成20年頃まで上記部材の市場で3割程度のシェアを占めていた」。


イ)平成18年2月頃「原告シンシンブロックが被告に原告製品を販売し,被告がこれを岡三リビック等に転売する継続的な取引を開始」し、「原告シンシンブロックは製造を他社に委託し」、「委託先が原告シンシンブロック所有の金型を用いて原告製品を製造していた」が、「原告シンシンブロックは財務状況が悪く,委託先への代金の支払にも窮し」、「被告は,原告シンシンブロックの求めに応じ」、「数千万円の金銭を貸し付け」、「原告製品製造のための金型を買い取ってその代金を支払う(本件金型売買契約)」などの支援を行った。

 その後、委託先が「被告の所有となった金型を用いて原告製品の製造を続けた」が、「原告シンシンブロックの財務状況が更に悪化し」、「委託先と原告シンシンブロック及び被告が協議し」、「被告が製造を委託する主体」となり、「委託先への代金の支払も被告がする」とされた。その際「原告製品に関して原告シンシンブロック及びその関連会社が有していた特許権等が被告による製造販売の妨げとならないように」し、「被告が支払う対価(ロイヤリティ)を原告シンシンブロックの債務の弁済に充てることを目的とし」、「原告シンシンブロックと被告は,平成20年4月1日,原告シンシンブロックが被告に対し特許権等の産業財産権の実施及び使用を許諾する旨の本件許諾契約を締結した」。

 「原告シンシンブロックの被告に対する債務の額は平成21年3月末時点で約5億4000万円に達し」、「原告シンシンブロックは他の取引先にも多額の債務を負っ」た。「被告と原告シンシンブロックは…債権回収に関する合意をし,上記債務を10年間の分割により弁済することなどを約した」。
 

ウ)「本件許諾契約の締結後は,被告が「シンシンブロック」、「SSBB」との商品名の雨水貯留浸透槽用の部材の製造を他社に委託」し、「委託先がそれまで原告製品の製造に用いていた金型を用い」、「同一の方法及び材料により上記部材を製造」し、「納入を受けた被告が岡三リビック等にこれを販売する」こととなった。「これが被告製品であり,被告は,その一部に「SSBB」との刻印を施し,カタログ及びホームページに被告標章を表示」した。

 「その販売に当たり,被告製品の品質を保証するため」、「技術評価認定等と,平成22年に原告シンシンブロックが取得した下水道機構の新技術研究成果証明」を、「カタログ及びホームページに掲載」などして利用。「被告によるこれらの行為について原告らが異議…はなく」、「原告シンシンブロックは上記証明を受けるための試験費用の負担を被告に求め」、被告は支払った。
 

エ)「東日本大震災の発生後,東京電力福島第一原子力発電所における汚染水の処理のため、雨水貯留浸透槽用の部材の需要が急増」し、平成24年1月頃,東京電力株式会社の本件設置工事発注が明らかにされ、原告発明研究所は「内容証明郵便により,被告に対し,被告製品の取扱い及び商標「シンシンブロック」の使用の中止を求めた」。原告シンシンブロックは「本件許諾契約を解除する旨の意思表示をした」。
 

(3)上記によれな「原告シンシンブロックが従前販売していた原告製品と被告が本件許諾契約の締結後に販売した被告製品は、製品の形状,材質等も,商品名も同一の雨水貯留浸透槽用の部材であることが明らかで」、「原告シンシンブロックは,被告に対し,本件金型売買契約によりその製造に用いる金型を譲渡し,本件許諾契約により産業財産権の実施及び使用を許諾している」から、「被告が,原告製品と同一の被告製品に,原告標章と同一又は類似の被告標章を使用することを認めていたと判断するのが相当である」。


(4)これに対し「原告シンシンブロックは、①「本件許諾契約は,本件代理店契約の期間中に締結され」、「被告が原告シンシンブロックと別個独立して被告製品を製造販売することを前提としていない」,②「本件許諾契約により使用が許諾されたとしても,本件解除により許諾は効力を失った旨主張する」が、以下のとおり、いずれも採用できない。 


ア)「原告シンシンブロックが被告に対し雨水貯留浸透槽用の部材「シンシンブロック」の製造販売を許諾したことは,本件許諾契約の条項上明らかであり」、その後「被告が被告製品の製造委託及び販売を行い、原告シンシンブロックがこれに対し何ら異議を述べていなかったことに照らしても…主張は失当」である。
イ)「本件許諾契約は,相手方の契約違反を理由として解除」できる旨定め、「本契約を解除するにあたり,甲乙相互に債権,債務を精算しなければならない。」と定めている」。「契約が解除された場合,契約当事者の間にはその後も原状回復その他債権債務を精算すべき関係が残るのは当然で」、「上記の条項は,解除の効力を生じさせるためには解除の前に債権債務を精算することを要すると定めたものと解」され,「「解除するにあたり」との文言もこのような解釈に沿う」とみるべき。さらに「原告シンシンブロックは被告に…多額の債務を負」い、「被告がこれを回収する手段の一つとして本件許諾契約を締結したと解され」、被告は「債権を回収する前に本件許諾契約が解除され,被告製品の製造販売ができなくなると」、「多大な不利益を被ることにな」り、「上記条項は,そのような事態を避けるため,債権債務を精算しなければ本件許諾契約を解除…できないと定めた…と解するのが相当である」。かかる「債権債務はいまだ精算されていな」く、「本件解除は効力を生じず「上記主張も採用できない」。


(5)以上によれば「少なくとも本件許諾契約が期間満了となる平成25年3月31日まで」は、被告は被告製品に被告標章を使用することができた」。一方「本件において原告シンシンブロックが1号の不正競争行為を理由とする損害賠償請求の対象とするのは本件設置工事における被告製品の納入行為で」、「その納入は平成24年11月までに完了したと認められ」、「原告シンシンブロックは,平成25年4月以降に被告が被告標章を使用したことにより損害を被ったとの主張立証は」なく、「1号の不正競争行為を理由とする原告シンシンブロックの損害賠償請求」は理由がない


2 13号の不正競争行為(品質誤認惹起行為)を理由とする請求について
(1)裁判所は以下のように認定し判断しました。

「雨水貯留浸透槽用の部材を用いる工事」で、「発注者が、当該部材が雨水協会又は下水道機構の認定等を受けていることを調達の条件としている場合が多」く、1号の不正競争行為について「原告製品と被告製品は同一の製品といえ」、「原告シンシンブロックは両製品の品質が同等であると認識していたと解され」「原告シンシンブロックは,原告製品について雨水協会及び下水道機構から取得した原告証明書等を,被告が被告製品の販売又はその申出をするに当たり使用することを認めていた」。
(2)もっとも「原告証明書等は,雨水協会等の第三者機関が原告製品の品質を証するもので…原告製品以外の製品に使用した場合には,これを取得した原告シンシンブロックの承諾があっ」ても,13号の不正競争行為としての違法性が否定されることはない」。しかし「本件における上記事実関係,殊に,原告シンシンブロックが被告に対し多額の債務を負担し」、「その回収手段の一つとして本件許諾契約を締結したこと」,「その締結後は被告が被告製品を販売するものとされ,その販売活動のために原告証明書等の使用が認められたこと」、「原告証明書等の取得のための費用の一部を被告が負担したこと」に照らせば,「原告シンシンブロックが,被告に対し,被告による原告証明書等の使用により損害を被ったと主張してその賠償を請求することは,信義則に違反し,又は権利の濫用に当た」る
(3)原告林物産について、①「原告らは,A(原告シンシンブロック及び原告林物産の代表者),その妻のB(原告発明研究所の代表者)及び両名の子のC(原告シンシンブロックの元代表者)並びに同人らの親族を多数役員とする同族会社であること」、②「原告シンシンブロックと原告発明研究所は本店所在地を共通にし」、「原告林物産も…移転するまでは本店所在地がこれらと同一で」、このような「関係に照らすと,原告林物産は,被告による被告製品の販売及びそのための原告証明書等の使用につき原告シンシンブロックと同様の認識を有していたとみることができ」、「原告林物産の請求も信義則違反又は権利の濫用として許されない」。
(4)以上「少なくとも本件許諾契約が期間満了となる平成25年3月31日まで」、「被告が13号の不正競争行為による損害賠償義務を負うことはない」。「本件設置工事における被告製品の販売が平成24年11月までに完了し」、平成25年4月以降の原告証明書等の使用により損害を被ったとの主張立証がないことは」,1号の不正競争行為についての前記説示と同様である。したがって「13号の不正競争行為を理由とする原告シンシンブロック及び原告林物産の各損害賠償請求は」いずれも理由がない。

 

3.14号の不正競争行為(虚偽事実告知行為)を理由とする請求について
(1)「雨水貯留浸透槽用の部材の販売につき原告シンシンブロックと被告が競争関係にあ」り、「被告が,本件設置工事における被告製品の販売に当たり,原告シンシンブロック及び原告林物産が原告製品につき雨水協会から取得していた本件技術推薦書の有効期間が平成24年3月31日で切れている旨の本件発言をした」。また「本件技術推薦書の有効期間は,当初は平成19年4月1日から平成24年3月31日まで」で、「平成25年3月31日まで延長された」。「そして,上記部材の調達に関しては雨水協会の承認等が重要視され」たことに照らすと、「本件発言は,被告と競争関係にある原告シンシンブロックの営業上の信用を害する虚偽の事実を告知」し「14号の不正競争行為に当たる」。
(2)そこで,14号の不正競争行為を理由とする原告シンシンブロックの損害賠償請求の当否について以下の事実が認められる。
ア)「東京電力株式会社は…本件設置工事の入札予告をし…前田建設がこれを受注した。前田建設は本件設置工事に用いる雨水貯留浸透槽用の部材を岡三リビックに発注し,これを受注した岡三リビックはその全量を被告から被告製品(当時の商品名はシンシンブロック)を購入して調達することを予定」。
イ)「原告発明研究所は,同月24日付けの内容証明郵便」で、被告に「特許権及び商標権に基づいて被告製品の取扱い及び「シンシンブロック」の商標の使用を中止するよう通知」。「原告シンシンブロックは,そのころ,岡三リビックに対し受注を辞退するよう求めるとともに,前田建設に対し原告製品の調達に向けて営業活動を行った」。被告は「トラブルを避けるため被告製品の商品名を「ジオプール」に変更し」、「前田建設に対し予定どおり納入…できるよう働きかけ」、「最終的に,被告製品を取り扱う岡三リビック及び原告製品を取り扱う物林株式会社と他の1社に,本件設置工事に用いる雨水貯留浸透槽用の部材を3分の1ずつ(それぞれ約2万立方メートル)発注することとした」。
ウ)「前田建設は,被告製品の納入を受けることの条件として,これが雨水協会の技術推薦を受けていることの確認を求め」、「本件技術推薦書の有効期間が同年3月31日で切れていること…を前提に…「御承認変更願」を提出して,商品名「ジオプール」の被告製品は本件技術推薦書の対象である「SSBB」と品質が同一である旨述べ,本件設置工事に使用する製品を「SSBB」から「ジオプール」に変更することの承認を求めた」。「同月31日,雨水協会から,「ジオプール」は本件技術推薦書の対象である「シンシンブロック」と同等品以上であると認める旨の品質確認書の交付を受けた。被告は,そのころ,上記の変更願について前田建設の承諾を得た」。
エ)「被告は,同年8月初め頃から11月3日頃までの間,合計約2万2000立方メートルの被告製品を,岡三リビックを通じて前田建設に納入」。
(3)「原告シンシンブロックは,被告は本件発言をしたことで本件設置工事に被告製品を納入…できたのであるから…被告が本件設置工事によって得た利益の額が原告シンシンブロックの損害の額であると推定される旨主張する」。しかし「本件発言がなかったとすれば前田建設が部材の調達先を変更し,被告が被告製品を納入することができず,その分を原告シンシンブロックが納入することになったと認めるに足りる証拠はない」。「本件発言を受けた前田建設において,原告製品は雨水協会の技術推薦を受けていないと誤信して原告シンシンブロックに対する信用を喪失したり,原告製品の発注を取消したりした事実はうかがわれない」。「本件発言により原告シンシンブロックが何らかの損害を被ったと認め」られず、原告シンシンブロックの主張は前提を欠く。
(4)したがって,14号の不正競争行為を理由とする原告シンシンブロックの損害賠償請求は理由がない。


4.本件商標権の侵害を理由とする請求について
(省略)

5.商標権関係和解の違反を理由とする請求について
(省略)

 

■BLM感想等 

 本件は、不正競争防止法2条1項1号の出所混同惹起行為について、出所は異なるものの、製品の品質が同じである点に着目し、出所の混同を否定した事例と見れるのではないか、と思いました。

 前提として、「原告製品は,平成8年に原告シンシンブロックが開発し」、原告は「プラスチック製の雨水貯留浸透槽用の部材としてパイオニア的な存在」で、新聞及び雑誌に掲載され、雨水協会の技術評価認定、新技術情報提供システム(NETIS)の登録、下水道機構の建設技術審査証明及び本件技術推薦書を受け、「原告製品は,全国各地の雨水貯留浸透槽の工事に広く納入され,平成20年頃まで上記部材の市場で3割程度のシェアを占め」、原告製品は、「シンシンブロック」、「SSBB」との商品名の下で販売等されていました。その後、原告シンシンブロックが被告に原告製品を販売し,被告がこれを岡三リビック等に転売する継続的な取引を開始されるわけですが、この時点であれば、原告と被告は主従の関係にあったと言えるでしょう。また、原告シンシンブロックは製造を他社に委託」し、「委託先が原告シンシンブロック所有の金型を用いて原告製品を製造」しても、同様のことが言えると思います。しかし「原告シンシンブロックは財務状況」が悪化し、結果として、被告が「原告製品製造のための金型を買い取ってその代金を支払う(本件金型売買契約)」などの支援を行い、その後、委託先が「被告の所有となった金型を用いて原告製品の製造を続けた」が、上記財務状況は更に悪化し、「委託先と原告シンシンブロック及び被告が協議し」、「被告が製造を委託する主体」となり、「委託先への代金の支払も被告がする」となったわけです。「被告が支払う対価(ロイヤリティ)を原告シンシンブロックの債務の弁済に充てる」べく、「原告シンシンブロックが被告に対し特許権等の産業財産権の実施及び使用を許諾する旨の本件許諾契約を締結」しています。「原告シンシンブロックの被告に対する債務の額多額で、債務を10年間の分割による弁済等が約されています。
 裁判所は「本件許諾契約の締結後は,被告が「シンシンブロック」、「SSBB」との商品名で、「委託先がそれまで原告製品の製造に用いていた金型を用い」、「同一の方法及び材料により上記部材を製造」し、「納入を受けた被告が岡三リビック等にこれを販売」しているが、「これが被告製品であり,被告は,その一部に「SSBB」との刻印を施し,カタログ及びホームページに被告標章を表示」していると認定しています。さらに「被告製品の品質を保証するため」、「技術評価認定等…新技術研究成果証明」を利用し、原告らが異議を申さず、試験費用の負担を原告シンシンブロックの依頼で被告が支払っています。
 

 以上のような状況で、原告シンシンブロックは、本件許諾契約を解除の主張は、特に、原告シンシンブロックは多額の債務を負い、「被告がこれを回収する手段の一つとして本件許諾契約を締結し」、被告は、債権回収前に解除され,被告製品の製造販売ができなくなると多大な不利益を被るとし、裁判所は認めていません。

 裁判所は「原告シンシンブロックが従前販売していた原告製品と被告が本件許諾契約の締結後に販売した被告製品は、製品の形状,材質等も,商品名も同一の雨水貯留浸透槽用の部材であることが明らかで」、「原告シンシンブロックは,被告に対し,本件金型売買契約によりその製造に用いる金型を譲渡し,本件許諾契約により産業財産権の実施及び使用を許諾している」から、「被告が,原告製品と同一の被告製品に,原告標章と同一又は類似の被告標章を使用することを認めていた」と判断しており、また、「被告が被告製品の製造委託及び販売を行い」、これに原告らは意義を述べていないことからも、「原告シンシンブロックが被告に対し雨水貯留浸透槽用の部材「シンシンブロック」の製造販売を許諾していたことは明らかとも述べています。このことは、換言すれば、被告主導で「シンシンブロック」、「SSBB」との商品名の下で製造販売された製品の出所は同一視でき、出所の混同は生じないと判断されたものと考えます。

 別途主張された13号の不正競争行為(品質誤認惹起行為)を理由とする請求も認めていないことからも、間接的に、このことが言えると考えます。

 すなわち、裁判所は「少なくとも本件許諾契約が期間満了となる平成25年3月31日まで」は、被告は被告製品に被告標章を使用することができた」。一方「本件において原告シンシンブロックが1号の不正競争行為を理由とする損害賠償請求の対象とするのは本件設置工事における被告製品の納入行為で」、「その納入は平成24年11月までに完了したと認められ」、「1号の不正競争行為を理由とする原告シンシンブロックの損害賠償請求」は理由がないと判断しています。

 原告らにとって不本意(但し多額の債務を負い、ある意味自業自得…)ながらも、当事者の契約による関係形成から判断して、裁判所は、不正競争防止法上の周知性等の要件を検討することなく、出所が同一なので、出所混同惹起行為に該当しないと判断したものと考えます。

 

By BLM

 

 

 

 

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