不正競争防止法2条1項1号の裁判例をよむ

個人的興味からのランダムピックアップ裁判例 その93

 本日も、製造業者・販売業者の関係にあった当事者の紛争事例を見ていきます。

 本裁判例は、LEX/DB(文献番号28100631)より引用。形式的な修正追加あり(「」等で明示ない箇所もあります)。

 

  東京高判平17・3・16〔アザレ化粧品事件Ⅰ・控訴審〕平成16(ネ)2000(最二小平17・10・14〔同Ⅰ・上告審〕平成17(受)1086)

控訴人兼被控訴人(以下単に「一審原告」)株式会社アザレインターナショナル
一審原告補助参加人 X2
一審原告補助参加人 X3
控訴人     (以下単に「一審被告」)アザレ東京株式会社
控訴人     (以下単に「一審被告」)アザレアルファ株式会社(旧商号 アザレアゼット株式会社)
控訴人     (以下単に「一審被告」)アザレウイング有限会社
控訴人     (以下単に「一審被告」)アザレ武蔵野株式会社
被控訴人兼控訴人(以下単に「一審被告」)アザレプロダクツ株式会社
被控訴人兼控訴人(以下単に「一審被告」)共和化粧品工業株式会社
被控訴人    (以下単に「一審被告」) Y

 

■事案の概要等 

 本件は、一審原告が、「アザレ」「AZARE」又は「図形」の各表示(以下「本件各表示」)は自己の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものであり,一審被告らが本件各表示を付した化粧品,石けん類及び香料類(以下,これらを総称して「アザレ化粧品」という。)を製造,販売等する行為や「アザレ」を含む商号を使用する行為は,不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に該当すると主張して,同法3条及び4条に基づき,一審被告らに対し,アザレ化粧品の製造,販売等の差止等求め、原判決は、本件各表示は一審原告の周知商品等表示であり,一審被告アザレプロダクツ株式会社は、OEM契約による製造業者であって,一審被告Yを除くその余の一審被告らの行為は不正競争行為に該当するが、一審被告Yによる不正競争行為は認められないなどとして,一審被告Yに対する請求の全部、一審被告アザレプロダクツに対する損害賠償請求の一部、一審被告共和化粧品工業株式会社に対する廃棄請求及び損害賠償請求の一部をそれぞれ棄却し、その余の請求を認容した事案において、一審原告,一審被告ら(一審被告Yを除く。)がそれぞれ各敗訴部分について控訴を提起し、また、一審原告は、当審において、一審被告Y、同アザレプロダクツ及び同共和化粧品に対する損害賠償請求について請求を拡張したのが本件です。

 なお、本件控訴審と、前回本ブログで取り上げたアザレ化粧品事件Ⅰ・第一審とでは判断が分かれた事例です。

 

■当裁判所の判断

(下線・太字・着色筆者)
Ⅰ.本件各表示は一審原告の商品等表示としてのみ需要者の間に広く認識されているか
 裁判所は、認定事実に基づき、以下のように判断しました。

 

(1)「アザレ化粧品の創業の経緯その後の事業体制や事業展開の実際などからすると,アザレ化粧品は、Aが、ジュポン社時代の化粧品製造業者や販売業者の強い要請を受けてそれまでの経験と見識に基づいて培った自然派化粧品という基本的な理念に則り製造技術者の協力の下に,商品化したものであって,その「アザレ」という名も,Aの考案によって商標登録を受けるに至ったもので,形式的にも実質的にも,Aのブランドということができる」。
 アザレの商標について、一審原告代表者X1の陳述書及び本人尋問の結果中に、①「昭和52年になって化粧品の製造販売業を再開するに当たり,ヴァローとジュポンと2度の失敗があるため,商標の問題に注意し」、②「自分が,イスラエルの地名「ナザレ」から,「アザレ」という商標を考案し」,③「「アザレ」の商標は自分とAが相談しながら決めた」などの記載等があるが、「「アザレ」についての最初の…出願…の時期は,ジュポン社が製造委託先を一審被告共和化粧品に代えて1年余り経過し,エレガンスカラーの販売が好調になっていたころで…事業の再開に当たり,X1がこれを考案したというのは不自然で」あり、「アザレ新鹿児島ディストリビューター…発行の広報誌には,「アザレネームの由来」として…、X1の認識とは異なる説明」がされ、「当時、Aと親密な関係にあったX1がその考案に関与した商標を、Aが妻のB名義で出願するというのも考えにくい」などに照らし採用できず、「他にAのブランドであるとの認定を覆すに足りる証拠」はない。

 

(2)前記認定から「Aは、CやGなどの要請を受けてアザレ化粧品の事業を始めるに当たりその販売部門についてはA側が製造部門についてはCがそれぞれ分担し協力していくことを前提として,全国各地にGなど販売担当の本舗を置いてその事業展開をしていくこととし」、「このような基本的な考えに基づき販売部門として,X1を代表者に据えた一審原告(その前身の有限会社)を立ち上げ」、「製造部門としては,当初,Cが経営する一審被告共和化粧品にこれを委ねていたが,その後,Cが中心となって設立された一審被告アザレプロダクツがこれを担当するようになったもの」で、「そのような体制の下で,アザレ化粧品の販売事業は,一審原告を総発売元,一審被告共和化粧品,同アザレプロダクツを製造元として,全国各地に展開される本舗,販売店に商品を供給し,それら本舗等による販売活動等を通じて,次第に消費者の信頼を得て発展していった」。

「このアザレ化粧品については,本舗等に属する販売員による訪問販売方式が採用されており,本件各表示が付されたアザレ化粧品の外箱あるいは瓶底のシール等には,発売元として「株式会社アザレインターナショナル」,製造元として「アザレプロダクツ株式会社(その設立前は共和化粧品工業株式会社)」と表示され,また,各本舗のほとんどは,その商号に「アザレ」の語を用い,パンフレットなど様々な形でアザレの名称等を用いて,消費者に対する販売活動を行って」おり、一審原告,一審被告アザレプロダクツ(その設立前は一審被告共和化粧品)及び各本舗等は,アザレ化粧品の販売普及という共通の目的の下に,発売元,製造元及び販売店として,それぞれの役割を分担し合いながら結合した一つのグループを形成し,対外的にもそのような結合関係にあることを表示していた」とみるのが相当である。このことは「一審原告自身も,アザレリポートやパンフレットにおいて,一審被告アザレプロダクツ及び各本舗等を含めて「アザレグループ」と表示していたことからも明らかである」。
 「そして,消費者にとってみれば,アザレ化粧品は,そのようなアザレグループが提供する化粧品であり,「アザレ」の表示は,上記グループ全体の営業あるいは商品を示すものとして認識されていたものとみるのが自然であって,本件各表示は,そのようなグループ共通の商品等表示として,消費者の信頼を獲得し,周知になっていったものと認めるのが相当である。

 

(3)「このようなアザレグループの中で」、①「一審原告は、販売を担当する本舗を募集し各本舗との間で販売指定店契約を締結して,アザレ化粧品の販売権を付与する一方で,一審被告アザレプロダクツとの間で委託製造取引契約を締結し,これらの契約に基づいて,各本舗から製品の注文を受け付け,一審被告アザレプロダクツに発注して,各本舗に製品を供給していたこと」、②「アザレ化粧品には一審原告の名称が発売元として表示され,アザレ化粧品の宣伝広告にも一審原告の名称が表示されていたこと」、③「一審原告は,各本舗全体に対する情報提供などを行い,パンフレットなどを作成配布し,販促品の提供などをしていたこと」、④「一審原告は,ワンダフルとの間で,唯一本件各商標の使用許諾契約を締結して,毎年相当額の商標使用料の支払をしていたこと」などから、「一審原告は,アザレグループの組織内における中心的な役割を果たしており,対内的にも対外的にも,アザレグループの中核的な企業として認識され,グループ全体の発展に貢献してきた」。
 「他方,一審被告アザレプロダクツの設立により,グループの体制が名実ともに確立されることとなったアザレグループにおいて,同アザレプロダクツは,アザレ化粧品創業当時からの一審被告共和化粧品のアザレ化粧品製造部門を分社化して設立された会社であり」、①「一審被告共和化粧品が製造していた当時と同様に,アザレ化粧品について,独占的な製造権を有し,Aの追求する自然派化粧品の理念に沿うべく,主体的に製品の技術的な研究,開発,品質の保持等に努め」、②「その製造する製品は,全国各地の本舗等を通じて消費者の信頼を獲得し,一審原告の売上高ベースでみても,昭和59年当時12億円余であったものが,平成8年にはその6倍弱の71億円余に達する程の成長を遂げるなど,昭和60年の設立以降,長年にわたりアザレグループ全体の発展に貢献し」、③「アザレ化粧品には,一審原告と並んで,製造元として一審被告アザレプロダクツ(その設立前は一審被告共和化粧品)の名称も表示され…一審原告も,パンフレットなどで,一審被告アザレプロダクツをアザレ化粧品の専用工場として,工場の建設や拡張等について紹介するなど,一審原告と並ぶアザレ製造グループの一員として宣伝していたこと」、④「一審被告アザレプロダクツについては,X1が株主となるとともにその取締役に,一審原告については,Cが株主となるとともにその取締役に,それぞれ就任し」、「このような株式の所有や役員就任は,アザレグループ内では同一審被告と一審原告との間だけであること」などからすると、「一審被告アザレプロダクツも,同共和化粧品のアザレ化粧品製造部門を引き継いで,アザレ化粧品の製造を一手に引き受け,主体的に製品の開発,製造に関わる重要な役割を果たしてきたものであり,対内的にも対外的にも,一審原告と並んでアザレグループの中核的な企業として認識され,グループ全体の発展に貢献してきた」。
(4)「一審原告は,一審被告アザレプロダクツは,同共和化粧品と同様に,単にアザレ化粧品をOEM製造していたものに過ぎないと主張するが」、「一審被告アザレプロダクツがグループ内において果たしてきた役割などの事情に加え…①「アザレ化粧品の創業はCらのAに対する積極的な働きかけが発端であり,Aとしては,事業展開に当たって,その製造部門はCに委せることとしていたこと」。②「アザレ化粧品の創業後,Cは,A及びX1と同行するなどして,アザレ化粧品の本舗網の拡充に協力し,一審被告共和化粧品,その後同アザレプロダクツが,各本舗・一審原告間の販売指定店契約書に立会人として関与するなど,アザレ化粧品の事業展開に深く関わ」り,③「一審原告と一審被告共和化粧品,同アザレプロダクツとの間のアザレ化粧品の製造に関する契約において,一審原告は,同一審被告らに対してのみアザレ化粧品の製造を委託するものとされ,同一審被告らだけがアザレ化粧品の製造元になるとされ」、④「一審被告共和化粧品との契約書では,製品の内容処方や成分については,同一審被告が決定して製造するものとされて」、「一審被告アザレプロダクツとの契約書では,製品(契約書では「製造」)の内容処方や成分については,同一審被告と一審原告が協議の上決定して製造するものとされていたことなど,本件に現れた諸事情を総合考慮すると」、

「一審被告共和化粧品は,アザレ化粧品のほかにも,他社から化粧品製造の委託を受けていたものではあるが,そのことから直ちに一審原告との関係をOEMに過ぎないとすることはできず,アザレ化粧品の創業の経緯その後の事業展開への関わり契約内容などからみても,同一審被告は,アザレ化粧品の販売事業において,単なるOEM業者とは異なる役割を担」い、「一審被告アザレプロダクツは,まさにアザレグループの中核としてその役割を果たし」、「単なる相手先ブランドで販売される製品を製造するOEM業者に過ぎない」とはいえず「一審原告の上記主張は採用できない」としました。


 「一審原告は,一審被告アザレプロダクツは,アザレ化粧品が専用工場で製造されているとの外観・外形を示すことだけを目的に設立されたペーパーカンパニーに過ぎないなどとして,商品表示の主体としての「アザレグループ」は存在していないと主張する」が、「一審被告アザレプロダクツは,その設立後,薬事法に基づく製造許可を得て,専用の工場でアザレ化粧品を製造し,アザレ化粧品に製造元として表示され」、「一審原告自身も,パンフレットで,アザレ化粧品の専用工場として一審被告アザレプロダクツを紹介して」おり、「一審被告共和化粧品の施設,人員を使用するなどしているとしても,一審被告アザレプロダクツの代表者であるCがこれを管理監督していたとみることもでき」,そのことは系列会社の関係にある同一審被告ら内部の問題に過ぎず,そのような施設の所有関係等や経理上の処理などをとらえて,一審被告アザレプロダクツが実体のないペーパーカンパニーに過ぎないということはできない」。「本件のアザレ化粧品の販売事業において,一審原告,一審被告アザレプロダクツ,各本舗等はアザレ化粧品の販売普及という目的の下に結合した一つのグループを形成しているものであり,本件各表示がそのグループ全体を表示するものとして認識され,周知になっていった」。
 さらに「一審被告アザレプロダクツが設立される前までは,一審原告,一審被告共和化粧品,各本舗等が一つのグループをなして,アザレ化粧品の普及に努め、発展してきたものであって,消費者にとって,「アザレ」の表示は,それら営業主体の全体,すなわちアザレグループの商品等表示として認識され,周知になっていった」。「一審被告アザレプロダクツの設立以前に本件各表示が一定の周知性を獲得していたとしても,それは,あくまでアザレグループの商品あるいは事業という,アザレグループ全体と結びついたものとして周知になり,信用を形成していった…」
 

 また「一般に,商品等表示の周知性,著名性は,その周知等の程度において初期の状態から,よりその程度の高い状態まで,企業活動や取引の動向等に応じて拡充されていくのが通常であるところ」,「アザレ化粧品の売上高の推移に照らし」、「たとえ一審被告アザレプロダクツ設立前に,一定程度の周知性を獲得していたとしても,その時期における周知性の程度は,未だそれほど高いものとはいえないというべきであり,専用工場としての一審被告アザレプロダクツが設立された後の売上高の顕著な増加からしても,同アザレプロダクツが,一審被告共和化粧品の果たした役割を引き継いで,さらにその周知性の維持,拡大に貢献していることは明らかであって,一審被告アザレプロダクツが,本件各表示が一定程度の周知性を獲得した後に設立され,アザレグループの一員となった」としても、「同アザレプロダクツが本件各表示の周知性の獲得に貢献していないとか,グループの中核的企業としての役割を持たないなどということができない」。 


 なお「Aは,自然派化粧品という基本的な理念に基づき,アザレのブランドを用いて,アザレ化粧品の販売事業に乗り出したものである自らは,単にその商標権者の地位にとどまり実質的にはともかく,形式的には一審原告の代表取締役に就任することもせずに,専らアザレ化粧品の普及のために全国の各本舗等でアザレ化粧品の理念を啓蒙するなどして,いわばアザレグループの象徴的存在としての役割を果たしていたもので」、「一審原告が,ワンダフル(実質的にはAの個人会社である。)との間で本件各商標使用許諾契約を締結し毎年相当額の商標使用料を支払うこととされたのは,Aがアザレグループによるアザレ化粧品販売事業による収益の分配を商標権の使用対価という形で受けるための手段として採られた方法とみるのが合理的であって(一審原告と一審被告アザレプロダクツあるいは各本舗との契約関係において,一審原告のみが商標使用料を支払っていることはその契約条件の設定に当たり当然考慮されていたであろうことは,推測するに難くない。),本件において,一審原告のみが商標使用料を支払っていることは,前記認定説示したようなアザレグループの存在や一審被告アザレプロダクツの中核的役割などを否定する理由となるものでない」


(5)小括

 「以上のとおり,一審原告と一審被告アザレプロダクツ(その設立前は一審被告共和化粧品)は,いずれもアザレグループにおいて,組織的にはアザレ化粧品の発売部門と製造部門をそれぞれが分担し合う形でその役割を果たし,対内的・対外的にともにグループの中核的な企業として認識され,それぞれの立場でグループ全体の発展に貢献してきたものであって,このような一つのグループ内において,ともに組織的かつ対外的に中核的な地位を占めてきた一審原告と一審被告アザレプロダクツが袂を分かち,傘下の各本舗等を含めてグループ組織が分裂することとなった場合には,そのアザレグループの商品等表示として周知となっていた本件各表示については,それらグループの中核的企業であった一審原告及び一審被告アザレプロダクツのいずれもが,グループ分裂後も,その商品等表示の帰属主体となり得るものと解するのが相当であるから(もっとも,そのような場合の取扱いについて予め企業間に特段の合意が存在する場合は,その合意の内容に従うことは当然であるが,本件においては,そのような特段の合意の存在は認められない。),一審原告と一審被告アザレプロダクツとの間においては,その商品等表示,すなわち本件各表示は,互いに不正競争防止法2条1項1号所定の「他人の」商品等表示には当たらないというべきであり,グループ分裂後にその商品等表示を使用することについて,互いにこれを不正競争行為ということはできないと解すべきである
①判断基準
 「不正競争防止法2条1項1号の規定は,他人の周知な商品等表示と同一又は類似する表示を使用して需要者を混同させることにより,当該表示に化体した他人の信用にただのりして顧客を獲得する行為を,不正競争行為として禁止し,もって公正な競業秩序の維持,形成を図ろうとするものである」。

②本件に関する判断

 「本件のように,販売部門と製造部門を分担し合い,ともにグループの中核的企業として本件各表示の周知性の獲得に貢献してきた一審原告と一審被告アザレプロダクツは,いずれもが当該表示により形成された信用の主体として認識される者であり,グループの分裂によっても,それぞれに帰属していた本件各表示による信用が失われることになるわけではなく,互いに他人の信用にただのりするものとはいえないからである。
 そうすると,一審被告アザレプロダクツが本件各表示の付された被告製品を製造販売する行為は,不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為に該当するものではなく,また,一審被告アザレプロダクツの傘下に属して,アザレの商号を使用し,同一審被告の製造する本件各表示の付された被告製品を販売する一審被告アザレ東京,同アザレアルファ,同アザレウイング,同アザレ武蔵野の行為も,同号所定の不正競争行為に該当しない」

 また「一審被告共和化粧品及び同Yは,いずれも自らの業務として本件各表示の付された被告製品の製造販売を行っているものではないから,同一審被告らについて不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争行為が成立するとは認められないし,一審被告アザレプロダクツの被告製品の製造販売行為は不正競争行為に該当するものではないから,これが不正競争行為に当たることを前提に,一審被告共和化粧品及び同Yについて共同不法行為の成立をいう一審原告の主張も理由がない」。

■結論
 裁判所は「以上によれば,その余の点について検討するまでもなく,一審原告の本訴請求は当審において拡張した部分を含めて理由がない」とし、「一審原告の請求を一部認容した原判決は相当でなく,一審被告ら(一審被告Yを除く。)の本件控訴は理由があるが,一審原告の本件控訴(及び当審において拡張した請求)は理由がない」などと判断しました。

 

■BLM感想等 

 本件において、第一審は、不正競争防止法2条1項1号によって保護される「他人」とは,自らの判断と責任において主体的に,当該表示の付された商品を市場における流通に置き,あるいは営業行為を行うなどの活動を通じて,需要者の間において,当該表示に化体された信用の主体として認識される者」との判断基準を示して、本件の原告側と被告側の関係をOEM契約に基づく関係を前提に、一審原告を製造委託業者として種々判断しました。これに対し控訴審は、同号は、出所混同惹起行為により「表示に化体した他人の信用にただのりして顧客を獲得する行為を,不正競争行為として禁止し,もって公正な競業秩序の維持,形成を図ろうとするものである」との趣旨・半田基準を示し。「本件のように,販売部門と製造部門を分担し合い,ともにグループの中核的企業として本件各表示の周知性の獲得に貢献してきた一審原告と一審被告アザレプロダクツは,いずれもが当該表示により形成された信用の主体として認識される者であり,グループの分裂によっても,それぞれに帰属していた本件各表示による信用が失われることになるわけではなく,互いに他人の信用にただのりするものとはいえない」と判断しています。一見異なる判断基準を示したようにも思われますが、着目点が異なるだけで、それほど違いがないように思います。

 むしろ、控訴審の判断が、第一審と異なる点は、「アザレ化粧品は、Aが、ジュポン社時代の化粧品製造業者や販売業者の強い要請を受けて,それまでの経験と見識に基づいて培った自然派化粧品という基本的な理念に則り,製造技術者の協力の下に,商品化したものであって,その「アザレ」という名も,Aの考案によって商標登録を受けるに至ったもので,形式的にも実質的にも,Aのブランドということができる」と判断した点にあると思います。「アザレ化粧品は、Aのブランド」という認識を出発点として、種々の判断がなされていると考えます。これは、本ブログで見てきた血族関係や親子関係等が絡む関係解消事例で見られる手法と思います。すなわち、誰が正当な承継者か、ということで、原告と被告の両者と捉えたのだろうと思うのです。

 そして商標権のラインセンス料の支払いの意味も、「Aがアザレグループによるアザレ化粧品販売事業による収益の分配を商標権の使用対価という形で受けるための手段として採られた方法とみるのが合理的」と判断しています。

 控訴審は、そうすると、グループとしての表示主体を捉えています。

 すなわち、「一審原告は,アザレグループの組織内における中心的な役割を果たしており,対内的にも対外的にも,アザレグループの中核的な企業として認識され,グループ全体の発展に貢献してきた」とし、一方「一審被告アザレプロダクツも,同共和化粧品のアザレ化粧品製造部門を引き継いで,アザレ化粧品の製造を一手に引き受け,主体的に製品の開発,製造に関わる重要な役割を果たしてきたものであり,対内的にも対外的にも,一審原告と並んでアザレグループの中核的な企業として認識され,グループ全体の発展に貢献してきた」という判断になるというわけだろうと思います。

 もっとも、本ブログで見てきた血族関係や親子関係等が絡む関係解消事例では、主従(一般に本家と分家)という関係があると思うのですが、「その販売部門についてはA側が,製造部門についてはCが,それぞれ分担し協力していくことを前提として,全国各地にGなど販売担当の本舗を置いてその事業展開をしていくこととし」とあり、一審原告側にAが位置付けられるとすると、Aが一審原告の代表者となっていれば、一審原告が本家という関係になった可能性はあります。しかし、さらに続けて裁判所は「このような基本的な考えに基づき,販売部門として,X1を代表者に据えた一審原告(その前身の有限会社)を立ち上げ」、「製造部門としては,当初,Cが経営する一審被告共和化粧品にこれを委ねていたが,その後,Cが中心となって設立された一審被告アザレプロダクツがこれを担当するようになったもの」で、「そのような体制の下で,アザレ化粧品の販売事業は,一審原告を総発売元,一審被告共和化粧品,同アザレプロダクツを製造元として,全国各地に展開される本舗,販売店に商品を供給し,それら本舗等による販売活動等を通じて,次第に消費者の信頼を得て発展していった」としており、両者どちらに軽重はつけられなかったのかもしれません。

 思うに、当事者はもはや関係解消しているかもしれないですが、従前の商標を使用する限り、関係解消していないのかもしれません。従前の商標に対する期待を裏切らないよう、一審原告・被告両社は品質管理に努める必要がありそうです。

 

By BLM

 

 

 

 

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