カレンは刑務所を仮出所した。もう悪いことはしないときめている。
しかし昔の「仲間」に息子を誘拐されて、銀行強盗を強要された。
息子の救出が失敗して、仕方なく銀行強盗に協力する。
カレンはJ.T.バーカーと協力して「仲間」を罠に嵌める。
製作:1993年、脚本:ウィリアム・オズボーン、ウィリアム・デイヴィス、監督:ラッセル・マルケイ
■ はじめに
◆ 登場人物
カレン・マッコイ(キム・ベイシンガー) - 主人公
ロイ・スウィーニー(ニック・サーシー) - 夫
パトリック(ザック・イングリッシュ) - 息子(9歳)
J.T.バーカー(ヴァル・キルマー)
ジャック・シュミット(テレンス・スタンプ)
◆ 補足
原題は「The Real McCoy」でカレンの苗字から来ているのだが「正真正銘の本物」という意味も。
カレン・マッコイは六年前に銀行強盗で逮捕され、このたび仮釈放された。捕まったのは仲間であったはずのジャック・シュミットに裏切られたからである。息子のパトリックは9歳になっている。
銀行強盗とは言っても、銃で脅すのではなく、夜間に忍び込むスタイルである。「そんなやり方じゃ、忍び込めないだろ!」という気がするが、そこは映画なので許す。
■ あらすじ
◆ 刑務所を仮出所
カレンはジョージア州アテネ刑務所を仮出所してジョージア州アトランタへ向かった。パトリックがいるからである。
夫のロイ・スウィーニー(ニック・サーシー)は再婚している。訪ねて行ってパトリックに会う。しかしロイはパトリックには「ママは死んだ」と言っている。「死んだママの友達」と紹介される。
パトリックが遊んでいるのを遠くから眺めたりしている。むなしい。
まず住居と仕事を確保しなければならない。いろいろなところで面接を受けるが、刑務所にいたということで断られて、なかなか仕事が見つからない。しかしあるところで、面接者が「前は自営業だった」ということにしてくれて就職できた。
住居の方は偶然に知り合ったJ.T.バーカー(ヴァル・キルマー)がアパートを世話をしてくれた。
だがしかし経営者にカレンの経歴がばれた。保護観察官のゲイリー・バックナー(ゲイラード・サーテイン)にもバレた。バックナーから「それには目をつぶってもよい」と言われて、あるところに連れていかれた。広い屋敷の中に猛獣が飼われ番犬が見回っている。ジャックの屋敷。
◆ 銀行強盗を持ち掛けられ、息子を誘拐された
ジャックに銀行強盗を持ちかけられた。しかし六年間刑務所に入ったのはジャックの裏切りのせいである。そして「もう二度と悪いことはしない」と決心もしている。「馬鹿と組むのはごめん」と言って断る。
アパートにいると、突然ロイが怒鳴り込んできた。「パトリックをどこへやった!?」。学校からの連絡でカレンがパトリックを連れ帰ったと聞いたらしい。パトリックが誘拐された!カレンはロイに「車のキーをだしなさい」と言って車を借りる。
◆ 息子の救出が失敗した
麻酔薬を塗ったバンを使って番犬を眠らせてジャックの屋敷に忍び込む。ノートを見てバックナーの住所を掴む。バックナーの家に行くが管理人が「釣りに行っている」と教えてくれる。忍び込んでバックナーがルシール湖に行っていることを掴む。注、ここでバックナーのところにパトリックがいるとなぜ判断できるのかが疑問。
ロイの車でルシール湖畔のバックナーの別荘のそばに来る。双眼鏡でバックナーが出かけたことを確認。忍び込んでパトリックを連れ出す。しかしロイの車がエンストを起こした。事態を察知したバックナーが追いかけてきて銃で脅され殴られる。
◆ 仕方なく銀行強盗に協力⇒侵入の準備作業
しかたなく銀行強盗に協力することになる。ジャックの屋敷の中で準備をする。パトリックも同じ場所にいる。もともとジャックの手下であったJ.T.に協力を求める。
ターゲットのアトランタユニオン銀行を訪れて「貸金庫を借りたい」と言って金庫室に案内してもらい、監視カメラやセキュリティの状況などを確認する。最近改装してAAAのセキュリティとなったそうである。注、ここは顧客の貸金庫が現金を格納しておく地下金庫の中にある。
J.T.と一緒に車で警備会社から銀行に到着するまでの時間を図る。地下金庫に忍び込む時間が足りないので、警報をわざと鳴らして誤作動と思わせ警備陣をごまかす、侵入作業を複数回に分割し、いったん退避して続きを実行するという計画を立てる。注、ここはちょっとロジックがおかしいが許す。
セキュリティをごまかしたり、金庫の扉を開けるための装置も製作する。
実はこの間にJ.T.との連携が進んでおり、J.T.は拳銃を貸金庫に預ける。
◆ 銀行強盗実行⇒ジャックを閉じ込める⇒息子を救出⇒リオに脱出
一味は銀行に侵入し、地下金庫の扉を開ける。この間の展開が長いが省略。
一味が金庫の金を袋に詰め込んでいるところで、カレンとJ.T.は金庫室の(中にあるもう一つの)扉を閉め一味を閉じ込めて脱出する。二人が持って出た金額は1800万ドルのうちのごくわずか(!)の200万ドル。
今度はパトリックの救出。二人でジャックの屋敷に行ってバックナーと格闘してパトリックを救い出す。ついでに屋敷の金庫を爆破して中にある金を奪う。「六年間の借りを返した」。意外にも本作はアクション場面はほとんどない。ここでの格闘が唯一である。
空港からリオデジャネイロに脱出する計画。すでに手配の似顔絵をもった警官が見張っている。カレンはパトリックをロイに戻そうとする。J.T.は反対する。電話をかけてロイと会うが、ロイは拳銃を持ってきておりカレンを脅して金を奪おうとする。これをJ.T.が助ける。
なおもカレンはパトリックに母親であることを明かすのを躊躇するが、J.T.がバラして三人でリオデジャネイロに出発する。パトリックのパスポートはJ.T.が勝手に作った。
■ J.T.バーカー
本作ではカレン=キム姐さんが非常に綺麗であることも特筆ものだが、J.T.バーカーがすばらしい。ヴァル・キルマー。「トップガン」のアイスマン、「バットマン・フォーエヴァー」のバットマンと言えば思い出される方もあるだろう。
もともとはジャックの手下でワルではある。しかし最初にカレンと知り合った時には、ジャックとカレンの因縁は知らない。カレンに対して非常に親切にする。
カレンにアパートの世話をする。
カレンがパトリックに母親であることを隠していると「俺がパトリックならだよ。あんたが母親なら、すごく嬉しい」と言ってパトリックに打ち明けるように勧める。
パトリックやカレンとの信頼関係を築いて助け、ジャック一味をやっつける。
空港でカレンがロイから拳銃で脅されるが、それを助ける。「こんなバカとよく付き合えたな」。
パトリックのパスポートを独断で用意し、最後にまだカレンが母親であることを明かさないでいると、パトリックに「カレンがママで、お前が息子で、お互い大好きなんだろ」。
■ ロイ
J.T.が素晴らしいのに反してロイはクズである。カレンがロイに「あんたって、本当にクズね」と言う場面もある。カレンは金庫破りの才能はあったけれども、男性を見る目はなかったようである。
カレンが刑務所に入っている間に再婚して、パトリックに「ママは死んだ」と説明、カレンは「死んだママの友達」にされてしまう。カレンが刑務所からパトリックに出した手紙も捨てている。
実はロイが住んでいる家もカレンが買ったものである。カレンをできるだけ避けたい雰囲気。
パトリックが誘拐されてカレンがロイの車を借りて救出に向かおうとする時に「どうして帰ればいいんだ」と自分のことばかり心配している。
そしてこれが最悪。カレンが銀行から現金を得たことを知ると、拳銃を持って現れてカレンを脅して現金を奪おうとする。
キム姐さんの出演作の中で、J.T.はベストパートナー賞、ロイはワーストパートナー賞と言ってよいだろう。ベストパートナー賞候補は他にもいる。しかしワーストパートナー賞は断トツ。
■ 名言(?)と名場面(?)
本作にはけっこう名言・名場面がある。
◆ 最初に捕まる時
夜。黒装束。エレヴェーターの空間から天井の空間に忍び込む。注、建物にどのように侵入したかは不明。
天井の一部を丸く切り取る。バットマンが使うようなローブが飛び出すように装置を使って、空中にロープを張る。
ロープにぶら下がって移動し壁まで来て、さかさまの状態でセキュリティのスイッチを切る。
床に降りて金庫室に行こうとすると警報が鳴り響く。これが罠。
慌ててロープをつたって、さらに屋上に出る。しかしちょうど武装ヘリが寄ってきて「動くな、動くと撃つぞ」と警告されて逮捕される。
◆ 時代を先取りしてたの
刑務所で仮釈放される時、預けられていた荷物を一つずつ戻してもらう。
その中になぜかコンドームがある。刑務官が「コンドーム」と言うと「時代を先取りしてたの」と答える。
ここはまったく意味不明だが、おそらくアメリカ人ならば理解できるネタがあるものと思われる。注、VHS吹替えを見ているので英語では不明。
追記、英語を確認できた。「I guess I was ahead of my time.」。吹替えは直訳。でも意味不明。
◆ 「どんな仕事?」「銀行強盗よ」
刑務所を出てアトランタへ帰る列車の中。カレンが席に座っていると「おっ!美人だ」という雰囲気で男性が近寄って話しかけてくる。
「アトランタへ?」「そうよ」「仕事?」「仕事は辞めたの」「どんな仕事?」という展開になる。ここでカレンはにっこりとほほ笑んで「銀行強盗よ」と答える。
その男性は、どのような反応をしてよいか分からず、意味不明の笑いを浮かべながら去っていく。
◆ コンビニ強盗
まだJ.T.とは知り合いではないとき。カレンがコンビニにいたところ、強盗が入ってきて店員に拳銃を突き付ける。「金を出せ!」。これがJ.T.。
しかし拳銃から弾倉が落下する。慌ててJ.T.は弾倉を拾い上げる。そのすきに店員は銃を出してJ.T.に向ける。
J.T.は慌てて逃げ出す。
◆ J.T.との出会い
カレンが保護観察官の事務所から出てきたところ。J.T.がカレンを見かける。
J.T.はカレンを偉大な銀行強盗として尊敬している。さっそくカレンに話しかける。
「俺、あなたのファンなんです」「あの銀行の時は、どのようにして入った?」「警報を泡で包んだってあったでしょ」と矢継ぎ早に質問。
そして「拳銃を使わないって本当?」と聞く。カレンは「人がいないときに入るから不要よ」と答える。J.T.は「かっこいいな~」と感心する。注、ここは後の伏線になっている。
そんなことを話していたのでカレンはバスに乗り遅れて、J.T.の車で送ってもらう。
目的地に着いて降りる時、J.T.は「今度食べに行きましょうよ」と誘う。カレンは「じゃ電話するわ」と立ち去る。J.T.は一瞬間をおいて「番号、知らないでしょ!」と叫ぶ。
◆ 玉蹴り事件
カレンがパトリックが友達と遊んでいるのを見ている場面。
カレンがむなしい気持ちでパトリックを見ていると、ジャックの手下が現れた。
「ジャックが挨拶をしたい」。カレンは近寄って「この豚!」。手下を玉蹴りする。倒れこんだ手下のポケットから拳銃を取り出して投げ捨てる。「これが私の挨拶よ」。
◆ 弾抜き取り事件
パトリックが誘拐されて銀行強盗をせざるを得なくなった時に、J.T.を訪ねて行って協力を依頼する。
J.T.は拳銃を取り出す。カレンは「雨の夜、J.T.バーカー、コンビニに押し入る」と言いながら、拳銃から弾を抜き取る。J.T.は「あそこにいたのか?」。蛇足、この後、J.T.に「まだベータ使ってるの?」と言う。
◆ 銀行偵察
銀行の偵察は計三回行う。いずれも髪を黒く染めて変装する。上品なマダム風(笑)。
一回目。貸金庫を借りる手続き。個人用の貸金庫は地下にあり、預かっている金をしまっておく金庫と同じ場所。これがちょっとおかしいけど。
なので地下金庫に入っていく。ここで地下金庫の構造や警報装置がどのようになっているを調べる。
二回目。今度は口座を作ってもらいに行く。これは地下金庫には行かない。ロビーの状況の調査。
三回目。これは偵察ではなく侵入当日の昼間。名目は当座の口座を作ってもらうため。目的はロビーの縦型のごみ箱の下にリモコンカーみたいなものを入れるため。これを動かして警報を誤作動させる。
◆ 今までの人生で一番すてきなこと
カレンが銀行侵入の準備作業をしているジャックの屋敷にはパトリックも囚われている。
パトリックがラジコンカーで遊んでいるところで二人で話す。この時はカレンはパトリックの死んだママの友達と言うことになっている。
パトリックが母親のことを聞く。カレンは「パトリックが生まれた時、ママは今までで一番すてきなことが起きたと言ってた」と伝聞調で答える。
そして「パトリックはキューピーみたいに毛が立っていて可愛かった」と言うとパトリックは「嘘だ」と言って二人はじゃれる。
ここの場面がなかなか秀逸。
◆ 俺の分は山分けしたくない
J.T.も銀行に貸金庫の手続きに行く。これは貸金庫に拳銃を預けるため。
銀行から出てくるとジャックの手下が「何をしていた?」と聞く。「口座を解約した」「もうすぐ大金が入るだろ!」「俺の分は山分けしたくないのでね」。
◆ 水かけ事件
カレンが銀行侵入の準備をしている間にパトリックは中で遊んでいる。そしてJ.T.と仲良く次第になっていく。カレンとJ.T.が連携していくのが暗黙に描かれている。
J.T.がパトリックにホースで水をかける。カレンが近寄ってくるとカレンにも水をかける。カレンはホースを奪い取って二人に水をかける。
ここの表現は非常によろしい。
◆ 銀行強盗するの?
いよいよ当日。
カレンはパトリックに「今日はこれから出かける。明日はここを出る」というとパトリックは「銀行強盗するの?」と聞く。J.T.が喋ったらしい。
そしてパトリックは「ママも銀行強盗してたの?」と聞く。「パトリックのママはね、ちょっと間違いをしてしまったの」と答える。
パトリックは「大きいプールもあるし、ここでもいいよ」とわりと呑気である。
◆ 拳銃弾なし事件
地下金庫にジャック一味を閉じ込めた時、ジャックが「騙したな!?」と言うと「まあどうしましょう、大変なことになったわ。ほんとにごめんなさいね」。
ジャックが拳銃を取り出すと「おっとこれが見えないの」と拳銃を構える。しかしカレンが構えた拳銃には弾が入っていなかった。
この拳銃はJ.T.が予め貸金庫に入れておいたもの。「弾、入れとかなかったの?」と聞く。しかしJ.T.は「弾のことは言ってなかったでしょ」と驚くべき返答をする。
これには若干の伏線がある。1.カレンは拳銃を使用しないと聞いていたこと。2.カレンがJ.T.の拳銃から弾を抜き取る場面がある。しかしそれを差し引いても弾を入れておかなかったのは変である。
◆ トイレ事件
リオデジャネイロに出発する空港で、カレンはパトリックをロイに戻そうとする。電話をかける。
ロイが登場するが、しかし拳銃を持っておりカレンを脅して金を奪い取ろうとする。男子トイレに連れていく。
トイレの中で拳銃を突き付けられているが、J.T.が駆けつけてカレンを救出する。
◆ 移植臓器
リオデジャネイロ行の飛行機に乗ったときにJ.T.は「ファーストクラスに座って、大金が詰まったカバンと世界一の美人と一緒に」と感激する。
だがしかし、飛行機が滑走路に向けて動き出した時に、パトカーが近づいてくる。二人は「これで終りね」と話す。
警官がタラップを上ってきて入口まで来る。警官は移植臓器を入れる箱を手に持っていた。二人は抱き合う。
■ 出演作
◆ キム・ベイシンガー
(1978)ケイティ/Katie: Portrait of a Centerfold
(1981)解剖室殺人事件/KillJoy/Who Murdered Joy Morgan
(1982)大金塊/Mother Lode
(1984)ナチュラル/The Natural
(1986)ノーマーシィ/非情の愛/No Mercy
(1987)ブラインドデート/Blind Date
(1987)消えたセクシーショット/Nadine
(1988)花嫁はエイリアン/My Stepmother Is an Alien
(1989)バットマン/Batman
(1991)あなたに恋のリフレイン/The Marrying Man/Too hot to handle
(1992)愛という名の疑惑/Final Analysis
(1992)クールワールド/Cool World
(1993)ブロンディー/女銀行強盗/The Real McCoy
(1994)ゲッタウェイ/The Getway
(1994)プレタポルテ/Ready to Wear/Pret-a-Porter
(2000)永遠のアフリカ/I Dreamed of Africa
(2000)ブレス・ザ・チャイルド/Bless the Child
(2004)トラブル IN ベガス/Elvis Has Left the Building
(2004)セルラー/Cellular
(2006)マーメイドの祈り/The Mermaid Chair
(2006)ザ・ゲーム/Even Money
(2013)リベンジ・マッチ/Grudge Match