■ The Getway/ドックレースの金を奪う、しかし仲間割れして死闘
ドクはメキシコの刑務所に捕らえられていたが、妻キャロルがジャックに働きかけて、出所することができた。
その見返りとして二人はルディなどと組んでドッグレースの金を奪った。
ルディは二人を裏切ったが撃たれて河原に転落した。さらにジャックを射殺して、テキサスのエルパソに向かった。
河原から生還したルディとジャックの手下が二人を追いかける。エルパソのホテルで壮絶な銃撃戦が展開される。
製作:1994年、脚本:ウォルター・ヒル、エイミー・ジョーンズ、監督:ロジャー・ドナルドソン 予告編 予告編 予告編
■ はじめに
本作にはジム・トンプソンの原作があり、1972年のスティーブ・マックイーン+アリ・マッグローの前作がある。ストーリーは原作とはわりと違っている。1972年版は未見。本作を見たのた言うまでもなくキム姐さんと当時夫婦だったアレック・ボールドウィンが共演しているから。
登場人物(キャスト)
ドク・マッコイ(アレック・ボールドウィン) - 主人公
キャロル・マッコイ(キム・ベイシンガー) - ドクの妻
ジャック・ベニヨン(ジェームズ・ウッズ) - 本事件の黒幕
ルディ・トラヴィス(マイケル・マドセン) - 本事件の相棒
フランク・ハンセン(フィリップ・シーモア・ホフマン) - 本事件の相棒
ハロルド・カーヴェイ(ジェームズ・スティーヴンス) - 獣医
フラン・カーヴェイ(ジェニファー・ティリー) - ハロルドの妻
キム姐さんは、言ってみれば善人の役が多いが、本作では、拳銃をバンバン撃ちまくっている。母親役のキム姐さんもよいが、このようなキム姐さんを見ると、ウキウキしてくる。最初から最後まで緊迫した場面の連続。
ドクが持っている特殊技術は「金庫破り」。これが生かされる。ちなみに「ブロンディ(The Real McCoy)」でのカレン(キム姐さん)の特殊技術が「金庫破り」。
■ あらすじ
◆ ドクはメキシコの刑務所
冒頭の場面は、ドクとキャロルにルディが案件を持ちかけているところ。脱獄を助ける話。ルディは「分け前は半々で」と言うがキャロルは「私の分もあるでしょ」と主張。
分け前の話がどのように決着したかは不明だが、ドクとキャロルで護送中の囚人を脱走させる。ここでドクの特殊技術が生かされる。
キャロルが車がエンストしたふりをして護送車を止める。止まっている間にドクが車の後ろの錠を壊し、さらに中の檻の錠を壊して囚人を解放する。注、ルディは何をした?
ドクとルディが囚人を連れて飛行機でメキシコの依頼者のところに行く。ドクが囚人を引渡し報酬を受け取って飛行機に戻ろうとするが、ここで罠にかかる。
依頼者は警察に連絡し警察が駆けつける。ドクは飛行機に駆け寄るが、ルディは飛行機を離陸させる。ドクは捕らえられて刑務所行きとなる。
◆ ドクが釈放される
刑務所の中のドクにキャロルが面会に行く。ドクはメキシコの政界にも顔が利くジャックに自分(の特殊技術)を売り込むように依頼する。
キャロルはジャックを訪問し交渉する。「お仕事があるんでしょ。主人のことでお願いが....」。結果、ドクは釈放され、ジャックの仕事を引き受けることになる。
◆ ドッグレースの売上を強奪する
ジャックが黒幕となってドッグレースの売上金を奪うことになる。ジャックの分け前ベが2/3。この案件にはルディも来ている。ジャックの指定。もう一人はフランク。ルディが前回のことでドクに謝るが、ドクはルディを殴り倒す。その後四人で打ち合わせし、実行に移る。
フランクは、タンクローリー車を襲撃しレース場の近くに停車、時限爆弾を張り付ける。ドクはキャロルの協力でマンホールからレース場の地下に侵入する。
ルディとフランクが観客にまぎれてレース場に入る。ドクが停電させる。三人はレース場の管理部門を拳銃を持って襲う。多数の人間を人質にする。ドクが金庫を開ける。注、キャロルは車で待機。
タンクローリーの爆弾が爆発し、その混乱に乗じて三人は現場を離れる。ルディとフランク、ドクとキャロルが、それぞれ車に分乗して逃げる。
◆ 仲間割れ
目指す場所はエルパソのボーダーホテル。ここでメキシコに逃れるための偽造パスポートを作ることができる。
しかしルディは早々に車内でフランクを射殺する。ルディにしてみれば予定の行動であろう。待ち合わせ場所に来て、ルディはドクも射殺しようとする。しかし逆にドクに撃たれて河原に転落する。
◆ 黒幕のベニヨンを射殺する
二人は予め用意していた別の車に乗り換えてジャックのところへ向かう。
キャロルは「このまま金をもらっちゃいましょうよ」と言うが、ドクは「ジャックに(刑務所から出してもらった)借りを返す」と言う。キャロルは「あいつに借りなんかないわ」と意味深な発言をする。行きたくないようである。
到着し、キャロルが車に残り、ドクが中に入っていく。ジャックは、回りくどい言い方で、ドクの釈放のためにキャロルと何があったかを言う。ドクは何をすべきか判断しかねている様子である。
そっとドアを開けてキャロルが入ってくる。キャロル-ドク-ジャックがほぼ直線に並ぶ。キャロルが拳銃を構える。ドクからはキャロルは見えず、ジャックからはキャロルが見える。ジャックはキャロルがドクを撃つと読んでいるらしい。
キャロルが引き金を引いてジャックが倒れる。ドクは慌てて振り返り拳銃を抜いて構える。キャロルはジャックのトドメを刺す。
現場を離れたところで二人は口論する。「あなたのためにしたのに、こんなにひどいことを言われる」。ドクはキャロルを責め一度叩き、キャロルはドクを二度叩く。ドクは悔しいので車を蹴る。
キャロルを車を降りて一人で歩いていく。ドクが追いかけてきて、睨み合いの後キャロルは車に乗る。以降もこの問題で二人は揉める。
ホテルについてからも二人は口論する。キム姐さんのファンだから言うわけではないが、この件についてはキャロルが正しい。何があったにしろ、キャロルはドクのために行動した。
◆ ロッカー事件で金を奪われる
予定を変更して列車でエルパソに行くことにする。駅に到着して、ドクは買い物。
キャロルは、荷物をコインロッカーに預ける。この時、男が近づいてきて、ロッカーに荷物を入れるのを手伝う。カウンターで飲んでいるが、ドクが戻ってきて、荷物を取り出しに行くと、ロッカーの扉は開いていて荷物がなくなっている。
キーがすりかえられた!
駅構内で男を探し回り、いったんは見つけるが見失ってしまう。ドクは発車し始めていた列車に跳び乗り男を探す。発車したばかりで、まだ使えないはずのトイレの扉が閉まっている。中にいた男を捕まえて、バッグを取り戻した。
再度予定を変更して車でエルパソに行くことにする。
◆ 警察とのカーチェイス
ロッカー詐欺男が警察の取り調べをうけて、ドクの顔がばれて手配される。レストランで食事をしていた二人は手配を知り、銃砲店に行って、ライフルと拳銃と弾を購入する。すでに警察が警戒をしている。
銃砲店を出てタクシーを脅して逃げる。パトカーが追いかけてくる。別の車に乗り換えて逃げる。ここのところのカーチェイスがなかなかの迫力。キャロルが運転しドクはライフルでパトカーを攻撃する。パトカーは炎上したり転倒したりする。
危うくダストボックスに隠れる。ゴミ収集車がきてボックスのゴミを回収、ゴミ収集車の中へ。そのまま巨大なゴミ捨て場に捨てられる。
ここで二人は例の問題にやっと決着をつけて仲直りする。
◆ エルパソのホテル到着
河原に転落していたルディは、起き上がって二人の追跡を開始する。
大けがをしているので、まずは獣医を拳銃で脅して治療させる。普通の医者ではなく獣医なのは、警察に察知されるのを避けるため。獣医夫婦のハロルドとフランを脅してエルパソを目指す。途中でハロルドは自殺。
ホテルに到着して支配人を脅して、ドクが来たら知らせるように言い、フランと三階の部屋に入る。
ドクとキャロルが到着し、サンドイッチを注文し二階の部屋に入る。支配人がドクが到着したことをルディに知らせる。
ジャックの手下一行もドクの追跡を開始し、ホテルを目指す。先遣隊が到着し、ドクがホテルに入ったことを確認。
◆ ホテルでの銃撃戦
ドクとキャロルはシャワーを浴びた後休んでいるが、ドクは何かが怪しいことに気がつく。一つは支配人の妻がいなかったこと。ドクはキャロルに服を着るように指示。
ルディとフランが二人の部屋の前に来て、フランがノックして「サンドイッチを持ってきた」と言う。キャロルが時間を稼いでいる間に、ドクはベランダから外に出て他の部屋を通って、ルディとフランの後ろに回る。
ジャックの手下数人がホテルに到着し銃を持ってホテルの中に入る。
これからスゴイ迫力の銃撃戦が開始される。キャロルも拳銃を撃ちまくって大活躍する。
◆ メキシコ脱出
ホテルでの銃撃戦を制した二人はホテルを走り出る。警察が警戒している。
二人は、通りかかった軽トラックの運転手を脅す。しかし運転手は、意外にも気持ちよく二人を乗せる。警察に反感をもっていることもあるらしい。
運転手は快くメキシコ行きを引き受ける。二人は作るはずだった偽造パスポートを持っていないが、運転手は国境の役人と親しいようで、うまく国境をすり抜ける。
国境を過ぎたところで、ドクは車を2万ドルで売ってほしいと持ち掛ける。バッグの中を覗いた運転手は「3万ドル」と要求。ドクは承諾する。しかしキャロルが1万ドルおまけして4万ドルになる。
運転手は満足して徒歩でアメリカに帰っていく。
■ 名場面?
◆ ドクとルディの闘い-まとめ
ルディとは三度戦う。
最初は現金強奪後の待ち合わせ場所。ルディは車を下りて待っている。二人の車が到着する。ドクが車を下りて近づいていく。ルディが拳銃を発射するが、一瞬ドクの方が速く、ルディは河原に転落する。数メートル下の河原であることもあり、ドクは、ルディの止めを刺さず、そのままにする。
二度目。この時点では最初の河原の件でルディはかなりのケガをしている。二人の部屋の前にルディとフランが現れる。前述のようにドクが背後に回る。しかしフランがドクに殴りかかり、いったんドクとルディの力関係が逆転する。キャロルがフランを殴り倒し、ドクもルディを殴り倒しルディは気絶。ドクは拳銃をルディの顔面に突き付ける。だがしかし、ここでもドクは止めを刺すことを躊躇する。
三度目。ジャックの手下をあらかた倒した後、ルディが息を吹き返して、ドクの隙をついて棒で殴りかかる。ドクは倒れ、ルディはドクのライフルを奪って撃とうとする。しかし弾切れ。ドクとルディの格闘になる。しかしルディは大けがをしており、不利と見て、エレヴェーターに飛び込んで下へいくスイッチを押す。ドクはライフルをドアに差し込んで止める。双方ライフルを引っ張る展開。ドクはその状態でライフルの中に弾を込める。引き金を引く。ルディは死亡。
◆ フラン
獣医ハロルドの妻。最初はルディに脅されているが、次第にルディと気が合ってくる。
ルディに協力するようになってくる。ハロルドを無視するようになる。
最後のホテルの戦いでは、ルディに積極的に協力し、ドクとキャロルの部屋にサンドイッチを持ってくる。ドクとルディが格闘しているときに、ドクに殴りかかる。
◆ 「早くしろよ」
冒頭の場面。ドクとキャロルは山の中。キャロルが拳銃の練習をしている。ルディが脱獄手助けの案件を持ってくる。
ルディは、受けるか受けないのかの回答を求めるが、二人はキスをしている。長くキスをしているので、ルディは「早くしろよ」と催促する。
◆ ルディの悪人ぶりが別次元
ドクとキャロルも強盗なのでもちろん悪人なのだが、ルディと比較すると、ずいぶんと実直に見えるから不思議である。
相棒のハンセンをすぐに殺す。ドクも殺そうとする。
獣医夫婦を脅してドクとキャロルを追跡する。
ホテルで支配人の口に拳銃を突っ込んで脅す。
■ 蛇足
本作製作時、キム姐さんとアレック・ボールドウィンは実生活でも夫婦。原作ではドクは40歳でキャロルは27歳だが、キム姐さんの方が年上。
本作が原作通りに銀行強盗ものであれば、キム姐さんは、ブロンディと合わせて銀行強盗役を二つやったことになる。惜しい。ブロンディではカレン・マッコイ役で、本作ではキャロル・マッコイ役。
角川の原作には、(マックイーン版ではなく)本作の場面がカバーに収められている。
原作では、最後は(私には)説明のしようがない奇妙な終わり方をしている。興味があれば、確認されたい。
キム姐さん出演作でタンクローリーに爆弾を張り付ける場面があるのは、本作と「Black November」。こちらは張り付けられるだけで、爆発はしない。
◆ キム・ベイシンガー
(1978)ケイティ/Katie: Portrait of a Centerfold
(1981)解剖室殺人事件/KillJoy/Who Murdered Joy Morgan
(1982)大金塊/Mother Lode
(1984)ナチュラル/The Natural
(1986)ノーマーシィ/非情の愛/No Mercy
(1987)ブラインドデート/Blind Date
(1987)消えたセクシーショット/Nadine
(1988)花嫁はエイリアン/My Stepmother Is an Alien
(1989)バットマン/Batman
(1991)あなたに恋のリフレイン/The Marrying Man/Too hot to handle
(1992)愛という名の疑惑/Final Analysis
(1992)クールワールド/Cool World
(1993)ブロンディー/女銀行強盗/The Real McCoy
(1994)ゲッタウェイ/The Getway
(1994)プレタポルテ/Ready to Wear/Pret-a-Porter
(2000)永遠のアフリカ/I Dreamed of Africa
(2000)ブレス・ザ・チャイルド/Bless the Child
(2004)トラブル IN ベガス/Elvis Has Left the Building
(2004)セルラー/Cellular
(2006)マーメイドの祈り/The Mermaid Chair
(2006)ザ・ゲーム/Even Money
(2013)リベンジ・マッチ/Grudge Match