■ The Natural/銃撃で16年間を無駄にした野球選手


製作:1984年、脚本:ロジャー・タウン、フィル・ダッセンベリー、監督:バリー・レヴィンソン   予告編  


■ あらすじのあらすじ

ロイは野球選手をめざして故郷を出発した。しかし銃撃された。
16年後、ロイはプロ球団に入団し、大活躍。球団はトップ争い。
メモと言う魅力的な恋人もできる。また幼馴染の恋人も訪ねてくる。
しかし銃撃の傷が元で入院した。体調は良くないが、無理をして最後に試合に出場する。


■ はじめに

◆ 登場人物(キャスト)

ロイ・ホッブス(ロバート・レッドフォード) - 野球選手
アイリス・ゲインズ(グレン・クローズ) - ロイの幼なじみの恋人

ワーマー(ジョー・ドン・ベイカー) - 有名プロ野球選手
マックス・マーシー(ロバート・デュヴァル) - スポーツ記者
ハリエット・バード(バーバラ・ハーシー)

ポップ・フィッシャー(ウィルフォード・ブリムリー) - ニューヨーク・ナイツの監督
レッド・ブロウ(リチャード・ファーンズワース) - ニューヨーク・ナイツのコーチ
バンプ・ベイリー(マイケル・マドセン) - ニューヨーク・ナイツの外野手
メモ・パリス(キム・ベイシンガー) - ポップ・フィッシャーの姪

判事(ロバート・プロスキー) - ニューヨーク・ナイツのオーナー
ガス・サンズ(ダーレン・マクギャヴィン)

参考:ナイツはKnights(騎士)。
 


■ あらすじ

◆ プロ球団に入団しようとするが銃撃される

冒頭はロイが父親と野球の練習をしている場面。アイリスが興味深そうに見ている。

ロイは恋人のアイリスに別れを告げて、プロ野球選手を目指してシカゴに旅立った。雷で倒れた木から作った自作のバット「WONDER BOY」を持っている。

途中、ワーマー、マックスに出会った。列車の給水停車の折りに、投手としてワーマーと勝負をして三球三振に打ち取った。見逃し⇒空振り⇒空振り。ハリエットがこれを見ている。

シカゴに着くと、ハリエットから電話が来て部屋を訪ねる。そしてハリエットに拳銃で撃たれる。

◆ 35歳でプロ球団に入団する

事件から16年後!、ロイはニューヨークナイツと契約し球場に現れる。しかし監督のポップはロイを無視する。三十代半ばの新人選手を無視するのは、ポップと言わず当然の反応かもしれない。

折しもナイツは最下位を驀進中。ポップはいやいやながらもロイにバッティング練習をさせるが、すべてホームランとなる。少しはロイを見直したようである。

守備でミスをしたライトのバンプの代打に指名されて打席に立つ。一球目見逃し、二球目ホームラン。

バンプがフライを追ってフェンスにぶつかり死亡するアクシデントが発生。ロイが定位置を獲得。ロイの大活躍によりチームの成績は急上昇。ロイの活躍がチーム全体に好影響を及ぼしたことも大きい。

自作のバットも注目を集める。バットボーイのボビーがバットの作り方を教えてくれと頼む。またロイの経歴が不明なことも注目される。

◆ メモ・パリスと出会う

ポップの姪のメモとはお互いに興味を持ったようである。もともとはバンプが恋人。最初はエレヴェーターで偶然一緒になり、パーティで会う。二人は付き合い始める。

だがしかしメモと付き合い始めるとロイはスランプに陥る。まったく打てない。古い話で申し訳ないが、高田みづえと結婚した後の若嶋津のようである。

◆ 幼馴染のアイリスと再会する

アイリスは仕事でシカゴの喫茶店にいる時にロイの噂を聞き、かっての恋人が活躍していることを知る。

球場に行って観戦する。折しもロイは(メモのせいで?)スランプの真っ最中。観客席でアイリスは立ち上がる。ロイはアイリスに気がつき、ホームランを打つ。観客席で立ち上がったアイリスが、なぜロイに分かったかと言えば、アイリスの愛情が強かったからである。

試合終了後、アイリスからメモが届いており、二人は喫茶店で会う。アイリスは結婚していないそうである。

ロイはスランプを脱出し、ナイツの成績は再び急上昇、優勝戦線に躍り出る。

次は約束なしにアイリスが球場の外で待っていて、アイリスの自宅に行く。野球のグラヴがあるので聞くと、息子がいることを打ち明ける。父親は一緒ではなく「ニューヨークに住んでいる」と言う。アイリスはそれ以上は話さない。

◆ 銃撃事件の傷が悪化し入院する

だがしかし大事件が起こった。ロイが倒れて病院に担ぎ込まれた。入院先は近くにあった産婦人科病院!

腹部からハリエットに撃たれた銃弾がでてくる。医師によれば、もう野球はできないとのこと。

病院にはチームの仲間の他に三人が訪ねてくる。一人はメモ、もう一人はアイリス。最後の一人は判事。

◆ 野球賭博

実は、判事とガスは、野球賭博をしている。メモも一味。そしてナイツが優勝しない方が都合がよい。また優勝しない場合はポップが球団を去ることになっている。

判事は病院にロイを訪ねてきて、優勝がかかった最後の試合に出場しないように言う。そして金を置いていく。

ロイは、この金をいったん受け取ってしまう。しかし後で判事を訪ねて、金を突き返す。この場にはガスとメモもいる。判事は「まだ他に手は打ってある」という。

◆ 最後の試合

ナショナルリーグの優勝がかかった最後の試合。ロイは出場するつもりである。医者からは制止されている。ポップは、スタメンからいったんはロイを外すが、球場に出てきたロイを見て、思い直してスタメンに入れる。

アイリスが息子と一緒に来ている。判事、ガス、メモも見ている。

第一打席は三球三振。第二打席も三球三振。

アイリスが観客席から球場の係員にロイへのメモを渡す。断られるが強引に頼み込む。「あなたの息子が来ている」。

九回裏。思いがけずもチャンスが巡ってくる。二対ゼロで負けてはいるが、一塁と三塁に走者。そしてロイがバッターボックスに入る。しかし体調はよくない。

ボール、ボールと重なってピッチャーが交代する。ファウル、空振り、ファウル。しかしこのファウルの時、ずつと使ってきたWONDER BOYが折れてしまう。ここでボビーが作ったバットを使う。「SAVOY SPECIAL」と彫ってある。

次の球は、ホームラン!照明塔を直撃。

最後は故郷に帰って、アイリスが見守る中で息子とキャッチボールをしている。これで場面が一周した。

 


■ 三人の女性

三人の女性が登場する。アイリス、ハリエット、メモ。この三人の対比が鮮明である。すばらしい。

◆ アイリス・ゲインズ

まずはアイリス。彼女はロイの幼馴染の恋人である。ロイが故郷を離れ、長~い空白があり、有名野球選手になった後も、揺らぐことなくずっと彼を愛し続けている。

結婚もしていない。一言で言えば純粋な女性である。しかし息子がいる。この息子はロイの子供なのだが、最後の試合でロイの子供であることをを明かす。


◆ ハリエット・バード

次のハリエット。彼女の素性は明らかにされない。16年前のシカゴに行く列車。ワーマーとの勝負を見ている。

ワーマーとの決着がついた後、列車の中でハリエットがロイに話しかけてくる。ロイを称賛する雰囲気を醸し出している。「恋人はいるの?」と手を握る。ロイが「試合を見に来てくれ」というと「もちろん」と言う。

後でアイリスとハリエットの話をしたときに、ロイはハリエットに惹かれたことを正直に認める。しかしアイリスは批判的な顔をしない。

そしてシカゴのホテルでハリエットはロイを銃撃する。動機はまったく明らかにされない。列車の中での話とはずいぶんと違う。これが謎。これが原因でロイは16年間の空白を強いられる。

本作のネットのレビューを見ると、ハリエットはなぜロイを撃ったのか?、16年間どうしていたのか?が明らかにされてないことについて批判があるようである。私の考えでは、説明しない方が正解である。説明するのは、わざとらしい。説明するとしらける。それが余韻と言うもの。

 


■ メモ・パリス

三人のうちメモを別枠で書くのは、私がキム姐さんのファンであるということと、書くべきことが多いから。

メモが非常に妖しい。メモの言動を集めると男性を惑わすための名言集ができそうである。

メモの二重性。メモはロイに恋する女性であり、また野球賭博の一味である。そしてその役目をきちんと使い分けることができない。これがメモにさらに妖しい(&怪しい)雰囲気を付加している。

最初はエレヴェーターで偶然に一緒になる。ロイはコーチのレッドと会うため。エレヴェーターを降りてレッドに会い「知り合い?」と聞かれる。答えはノーだが、互いに相手を振り返る。コーチと話しているとレストランにメモがバンプと現われる。ロイはメモをちらちら見る。

次に二人が会うのはパーティ。ガスと一緒にいて紹介される。賭けをやっていて、ロイの成績を賭けているとのこと。ロイがダンスに誘い、さらにメモが外に誘い海岸に出る。

ここでメモは自分からいろいろ喋る。「エレヴェーターで見た時から感じてたの?どこかで会ってない?」「私は真実の愛なんて信じない」。「バンプは最高、でも普通の人。あなたは違う。誰とも違う」と惑わすような言動をする。「ガスは力になってくれる、羽振りがいい。何でもくれるの。こういうのってよくない?いつだってリスクはあるものよ」。メモの方からロイに抱き着く。

海岸から戻ってきてポップとすれ違う。メモといるのを見て自分の姪なのに「あの娘は不幸をもたらす」と囁く。二人はホテルに入る。

メモは「ガスが私の様子が変だと気がついてる」と言う。ロイはスランプに陥る。しかし二人は楽しそうに、ずっと付き合っている。

だがしかし、メモの神通力(?)もロイがアイリスと再会するまでで、以降のメモは支離滅裂の様相を呈してくる。

ロイがシカゴでアイリスと会ってスランプから抜け出した頃。ロイとメモの関係も希薄になっている。メモがロイに電話をしてくる。「今部屋で真っ白なネグリジェでいるの。会いたいわ」。実はこの電話は、黒い服を着て判事とガスの傍でかけている。二人に「上手でしょ!」という。ロイのせいで賭けの展開が読めなくなってきたので、工作するためである。

ナイツのナショナルリーグの優勝が手が届くところまで来た頃パーティが開かれ、そこでロイが倒れて入院する。メモが訪ねてくる。メモはロイのことをある意味本当に心配しており、またロイを騙そうともしている。

「試合に出たら命が危ない」。否定されると「喪服を用意しとかなきゃ」。「二人でどこかに行こう、いますぐ引退して!」「ガスが金を出してくれる」。

判事が病室に来て金を置いていき、後でロイは返しに行く。判事とガスとメモがいる。ロイが金を返すとメモが拳銃を取り出して引き金を引く。注、照準をロイに向けているわけではない。そして泣きながら「大嫌いよ!」。ロイが出ていく時に「待って!」と言う。もう二重人格状態。
 


■ 蛇足

本作は実際に見てみて、ある意味では予想外。良かった。キム姐さんのファンであるからして、いわば義理で買って見た。「ロバート・レッドフォードの恋人役はグレン・クローズで、キム・ベイシンガーの出番はほんの少しで、魅力的な場面はないだろう」と思っていた。この予想が裏切られた。ラッキー。

「ナチュラル」というタイトルは「生まれながらの天才」の意味らしい。

判事の「まだ他に手は打ってある」と言うのは、ピッチャーも買収しており八百長をさせること。試合の途中でロイが気が付き、ピッチャーに注意する。

「メモ」という名前はなに?

球団のオーナーは「判事」と呼ばれているが、名前は明らかにされない。

レッドフォードは学生時代に野球の経験があるらしい。キャッチボールのフォームがさまになっている。


キム・ベイシンガー
(1978)ケイティ/Katie: Portrait of a Centerfold
(1981)解剖室殺人事件/KillJoy/Who Murdered Joy Morgan
(1982)大金塊/Mother Lode
(1984)ナチュラル/The Natural
(1986)ノーマーシィ/非情の愛/No Mercy
(1987)ブラインドデート/Blind Date
(1987)消えたセクシーショット/Nadine
(1988)花嫁はエイリアン/My Stepmother Is an Alien
(1989)バットマン/Batman
(1991)あなたに恋のリフレイン/The Marrying Man/Too hot to handle
(1992)愛という名の疑惑/Final Analysis
(1992)クールワールド/Cool World
(1993)ブロンディー/女銀行強盗/The Real McCoy
(1994)ゲッタウェイ/The Getway
(1994)プレタポルテ/Ready to Wear/Pret-a-Porter
(2000)永遠のアフリカ/I Dreamed of Africa
(2000)ブレス・ザ・チャイルド/Bless the Child
(2004)トラブル IN ベガス/Elvis Has Left the Building
(2004)セルラー/Cellular
(2006)マーメイドの祈り/The Mermaid Chair
(2006)ザ・ゲーム/Even Money
(2013)リベンジ・マッチ/Grudge Match