源氏イラスト訳【若紫386】稚拙
「いで、君も書いたまへ」とあれば、
「まだ、ようは書かず」
とて、見上げたまへるが、何心なく、うつくしげなれば、うちほほ笑みて、
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【源氏物語イラスト訳】
「いで、君も書いたまへ」とあれば、
訳)「さあ、あなたもお書きなさい」と言うと、
「まだ、ようは書かず」とて、見上げたまへるが、
訳)「まだ、うまく書けないの」と言って、顔を見上げていらっしゃるのが、
何心なく、うつくしげなれば、うちほほ笑みて、
訳)無邪気で、かわいらしいので、ふっと微笑んで、
【古文】
「いで、君も書いたまへ」とあれば、
「まだ、ようは書かず」
とて、見上げたまへるが、何心なく、うつくしげなれば、うちほほ笑みて、
【訳】
「さあ、あなたもお書きなさい」と言うと、
「まだ、うまく書けないの」
と言って、顔を見上げていらっしゃるのが、無邪気で、かわいらしいので、ふっと微笑んで、
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■【いで】…さあ
■【君】…あなた。若紫をさす
■【も】…添加の係助詞
■【書い】…カ行四段動詞「書く」連用形イ音便
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」命令形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(光源氏⇒若紫)
■【と】…引用の格助詞
■【あれ】…ラ変動詞「あり」已然形
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【まだ~(打消)】…陳述の副詞〈未経験〉
■【よう~(打消)】…陳述の副詞〈とても~できない〉
■【書か】…カ行四段動詞「書く」未然形
■【ず】…打消の助動詞「ず」終止形
■【とて】…~と言って
※【と】…引用の格助詞
※【て】…単純接続の接続助詞
■【見上げ】…ガ行下二段動詞「見上ぐ」連用形
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒若紫)
■【る】…完了の助動詞「り」連体形
■【が】…主格の格助詞
■【何心なく】…無邪気で
■【うつくしげなれ】…ナリ活用形容動詞「うつくしげなり」已然形
※【うつくしげなり】…かわいらしい
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【うち微笑み】…マ行四段動詞「うち微笑む」連用形
※【うち―】…語調をととのえる接頭語
■【て】…単純接続の接続助詞
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光源氏は、自分の書いた若紫への懸想歌に対して、
返歌を求めているのでしょうか。
「まだうまく書けません」
と、無邪気に答えた若紫に、
光源氏は、1から、手取り足取り、教えていくつもりでしょう。
「よう書かず」という陳述表現がありますが、
今の関西弁でも、「よう書かへん」と言いますよね。
こんなふうに、陳述の副詞も難しく考えずに、
現代につながっていくものとして、
自然と理解していければいいですね!