源氏イラスト訳【若紫387】相聞
「よからねど、むげに書かぬこそ、悪ろけれ。教へきこえむかし」
とのたまへば、うちそばみて書いたまふ手つき、筆とりたまへるさまの幼げなるも、らうたうのみおぼゆれば、
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日々の古文速読トレーニングにお役立てください。
【源氏物語イラスト訳】
「よからねど、むげに書かぬこそ、悪ろけれ。
訳)「うまくなくても、まったく書かないのは良くないよ。
教へきこえむかし」とのたまへば、
訳)お教え申し上げようね」とおっしゃると、
うちそばみて書いたまふ手つき、
訳)ちょっと横を向いて書きなさる手つきや、
筆とりたまへるさまの幼げなるも、らうたうのみおぼゆれば、
訳)筆をお持ちなさっている様子があどけないのも、かわいらしくばかり思われるので、
【古文】
「よからねど、むげに書かぬこそ、悪ろけれ。教へきこえむかし」
とのたまへば、うちそばみて書いたまふ手つき、筆とりたまへるさまの幼げなるも、らうたうのみおぼゆれば、
【訳】
「うまくなくても、まったく書かないのは良くないよ。お教え申し上げようね」
とおっしゃると、ちょっと横を向いて書きなさる手つきや、筆をお持ちなさっている様子があどけないのも、かわいらしくばかり思われるので、
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■【よから】…ク活用形容詞「良し」未然形
■【ね】…打消の助動詞「ず」已然形
■【ど】…逆接の接続助詞
■【むげに~(打消)】…まったく~ない
※【むげに】…ナリ活用形容動詞「むげなり」連用形
※【むげなり】…甚だしい。ひどい。最悪だ
■【書か】…カ行四段動詞「書く」未然形
■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
■【こそ】…強意の係助詞(「わろけれ」が結び)
■【悪(わ)ろけれ】…ク活用形容詞「わろし」已然形
■【教へ】…ハ行下二段動詞「教ふ」連用形
■【きこえ】…ヤ行下二段動詞「きこゆ」未然形
※【きこゆ】…謙譲の補助動詞(光源氏⇒若紫)
■【む】…意志の助動詞「む」終止形
■【かし】…念押しの終助詞
■【と】…引用の格助詞
■【のたまへ】…ハ行四段動詞「のたまふ」已然形
※【のたまふ】…「言ふ」の尊敬語(作者⇒光源氏)
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
■【うちそばむ】…ちょっと横を向く
■【て】…単純接続の接続助詞
■【書い】…カ行四段動詞「書く」連用形イ音便
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒若紫)
■【手つき】…手の様子
■【とり】…ラ行四段動詞「とる」連用形
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒若紫)
■【る】…完了の助動詞「り」連体形
■【さま】…様子
■【の】…主格の格助詞
■【幼げなる】…ナリ活用形容動詞「幼げなり」連体形
■【も】…強意の係助詞
■【らうたう】…ク活用形容詞「らうたし」連用形ウ音便
※【らうたし】…かわいらしい
■【のみ】…強意の副助詞
■【おぼゆれ】…ヤ行下二段動詞「おぼゆ」已然形
※【おぼゆ】…思われる
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
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「うちそばみ」とあります。
これは、若紫が横の手本を見て、一生懸命、手習いを書いている場面です。
当時、相聞歌は、贈歌の歌意やキーワードをきちんとふまえて、それを入れ込んで返歌しなければならないので、
なんとか光源氏の贈歌をよく理解しようと、
必死な姿が浮かんできます!
「たまへる」の識別は、入試頻出です。
「たまへ」は、
1.四段活用ならば、尊敬語
2.下二段活用ならば、謙譲語
「る」は、
1.受身・尊敬・自発・可能の「る」終止形
2.完了・存続の「り」連体形
着目ポイントは、助動詞の接続です。
受身の「る」は、【四段・ナ変・ラ変動詞の未然形】にしか接続しません。
つまり、「ア段」にしか、つかないのです。
なので、「たまへ(e)・る」となった時点で、
この「る」は、受身の助動詞「る」ではありません!
したがって、「たまへ」も、
四段動詞の尊敬語でしか、ありえないのです。