源氏イラスト訳【若紫368】几帳
こなたは住みたまはぬ対なれば、御帳などもなかりけり。惟光召して、御帳、御屏風など、あたりあたり仕立てさせたまふ。
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【源氏物語イラスト訳】
こなたは住みたまはぬ対なれば、御帳などもなかりけり。
訳)こちらは使用なさっていない対の屋であるので、御几帳などもなかった。
惟光召して、
訳)惟光をお呼びになって、
御帳、御屏風など、あたりあたり仕立てさせたまふ。
訳)御帳や、御屏風など、ここかしこに整えさせなさる。
【古文】
こなたは住みたまはぬ対なれば、御帳などもなかりけり。惟光召して、御帳、御屏風など、あたりあたり仕立てさせたまふ。
【訳】
こちらは使用なさっていない対の屋であるので、御几帳などもなかった。惟光をお呼びになって、御帳や、御屏風など、ここかしこに整えさせなさる。
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■【こなた】…こちら
■【は】…取り立ての係助詞
■【住み】…マ行四段動詞「住む」連用形
■【たまは】…ハ行四段動詞「たまふ」未然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
■【対(たい)】…対の屋。寝殿の別棟の建物
■【なれ】…断定の助動詞「なり」已然形
■【ば】…順接確定条件(原因・理由)の接続助詞
■【御―】…尊敬の接頭語(作者⇒光源氏)
■【張(とばり)】…仕切りの布。几帳(きちょう)
■【など】…例示の副助詞
■【も】…類推の係助詞
■【なかり】…ク活用形容詞「なし」連用形
■【けり】…過去の助動詞「けり」終止形
■【惟光(これみつ)】…光源氏の腹心の従者
■【召し】…サ行四段動詞「召す」連用形
※【召(め)す】…「呼ぶ」の尊敬語(作者⇒光源氏)
■【て】…単純接続の接続助詞
■【御帳(おんとばり)】…御几帳
■【屏風(びょうぶ)】…仕切りの装飾品
■【あたりあたり】…ここかしこに
■【仕立て】…タ行下二段動詞「仕立つ」未然形
■【させ】…使役の助動詞「さす」連用形
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)
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「張(とばり)」というのは、部屋の仕切りに使う調度品のことです。
「几帳(きちょう)」などとも言われます。
「源氏物語」では、こういう古文常識もよく出てくるので、
1つひとつ、イメージを湧かせて理解をしていくことが望ましいと思います。